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コンビニ人間, 2.

2.

コンビニ 店員 として 生まれる 前 の こと は 、どこ か おぼろげで 、鮮明 に は 思いだせない 。 ・・

郊外 の 住宅地 で 育った 私 は 、普通の 家 に 生まれ 、普通に 愛されて 育った 。 けれど 、私 は 少し 奇妙 がられる 子供 だった 。 ・・

例えば 幼稚園 の ころ 、公園 で 小鳥 が 死んで いた こと が ある 。 どこ か で 飼われて いた と 思われる 、青い 綺麗な 小鳥 だった 。 ぐにゃり と 首 を 曲げて 目 を 閉じて いる 小鳥 を 囲んで 、他の 子供 たち は 泣いて いた 。 「どう しよう か ……? 」一 人 の 女の子 が 言う の と 同時に 、私 は 素早く 小鳥 を 掌 の 上 に 乗せて 、ベンチ で 雑談 している 母 の 所 へ 持って行った 。 ・・

「どうした の 、恵子 ? ああ 、小鳥 さん ……! どこ から 飛んで きた んだろう ……かわいそうだ ね 。 お 墓 作って あげよう か 」・・

私 の 頭 を 撫でて 優しく 言った 母 に 、私 は 、「これ 、食べよう 」と 言った 。 ・・

「 え ? 」・・

「お 父さん 、焼き鳥 好き だ から 、今日 、これ を 焼いて 食べよう 」・・

良く 聞こえ なかった のだろうか と 、はっきり とした 発音 で 繰り返す と 、母 は ぎょっと し 、隣 に いた 他 の 子 の お母さん も 驚いた の か 、目 と 鼻 の 穴 と 口 が 一斉に がばり と 開いた 。 変な 顔 だった ので 笑い そうに なった が 、その 人 が 私 の 手元 を 凝視 している の を 見て 、そうか 、一羽 じゃ 足りない な と 思った 。 ・・

「もっと とって きた ほう が いい ? 」・・

近く で 二 、三 羽 並んで 歩いて いる 雀 に ちらり と 視線 を やる と 、やっと 我 に 返った 母 が 、「恵子 ! 」 と とがめる ような 声 で 、 必死に 叫んだ 。 ・・

「小鳥 さん は ね 、お 墓 を つくって 埋めて あげよう 。 ほら 、皆 も 泣いてる よ 。 お 友達 が 死んじゃって 寂しい ね 。 ね 、かわいそう でしょう ? 」・・

「 なんで ? せっかく 死んで る のに 」・・

私 の 疑問 に 、母 は 絶句 した 。 ・・

私 は 、父 と 母 と まだ 小さい 妹 が 、喜んで 小鳥 を 食べて いる ところ しか 想像 でき なかった 。 父 は 焼き鳥 が 好きだ し 、私 と 妹 は 唐揚げ が 大好きだ 。 公園 に は いっぱい いる から たくさん とって かえれば いい のに 、何で 食べ ないで 埋めて しまう の か 、私 に は わから なかった 。 ・・

母 は 懸命に 、「 いい 、 小鳥 さん は 小さくて 、 かわいい でしょう ? あっち で お墓 を 作って 、皆 で お花 を お供えして あげよう ね 」と 言い 、結局 その 通り に なった が 、私 に は 理解 できなかった 。 皆 口 を そろえて 小鳥 が かわいそうだ と 言い ながら 、泣きじゃくって その辺 の 花 の 茎 を 引きちぎって 殺して いる 。 「綺麗 な お 花 。 きっと 小鳥 さん も 喜ぶ よ 」など と 言っている 光景 が 頭 が おかしい ように 見えた 。 ・・

小鳥 は 、「立ち入り 禁止 」と 書かれた 柵 の 中 に 穴 を 掘って 埋められ 、誰か が ゴミ箱 から 拾って きた アイス の 棒 が 土 の 上 に 刺されて 、花 の 死体 が 大量に 供えられた 。 「ほら 、ね 、恵子 、悲しい ね 、かわいそうだ ね 」と 母 は 何度も 私 に 言い聞かせる ように 囁いた が 、私 は 少しも そう は 思わなかった 。 ・・

こういう こと が 何度 も あった 。 小学校 に 入った ばかりの 時 、体育 の 時間 、男子 が 取っ組み合い の けんか を して 騒ぎ に なった こと が あった 。 ・・

「誰 か 先生 呼んで きて ! 」・・

「誰 か 止めて ! 」・・

悲鳴 が あがり 、そう か 、止める の か 、と 思った 私 は 、そば に あった 用具 入れ を あけ 、中 に あった スコップ を 取り出して 暴れる 男子 の ところ に 走って 行き 、その 頭 を 殴った 。 ・・

周囲 は 絶叫 に 包まれ 、男子 は 頭 を 押さえて その 場 に すっ転んだ 。 頭 を 押さえた まま 動き が 止まった の を 見て 、もう 一人 の 男子 の 活動 も 止めよう と 思い 、そちら に も スコップ を 振り上げる と 、・・

「恵子 ちゃん 、やめて ! やめて ! 」・・

と 女の子 たち が 泣き ながら 叫んだ 。 ・・

走って きて 、惨状 を 見た 先生 たち は 仰天 し 、私 に 説明 を 求めた 。 ・・

「止めろ と 言わ れた から 、一番 早そうな 方法 で 止めました 」・・

先生 は 戸惑った 様子 で 、暴力 は 駄目だ と しどろもどろに なった 。 ・・

「でも 、止めろ って 皆 が 言ってた んです 。 私 は ああ すれば 山崎 くん と 青木 くん の 動き が 止まる と 思った だけ です 」・・

先生 が 何 を 怒って いる の か わからなかった 私 は そう 丁寧に 説明 し 、職員 会議 に なって 母 が 呼ばれた 。 ・・

なぜ だ か 深刻な 表情 で 、「 すみません 、 すみません ……」 と 先生 に 頭 を 下げて いる 母 を 見て 、 自分 の した こと は どうやら いけない こと だった らしい と 思った が 、 それ が 何故 な の か は 、 理解 でき なかった 。 ・・

教室 で 女 の 先生 が ヒステリー を 起こして 教卓 を 出席簿 で 激しく 叩き ながら わめき 散らし 、皆 が 泣き 始めた とき も そう だった 。 ・・

「先生 、ごめんなさい ! 」・・

「やめて 、先生 ! 」・・

皆 が 悲壮な 様子 で 止めて と 言って も 収まらない ので 、黙って もらおう と 思って 先生 に 走り寄って スカート と パンツ を 勢いよく 下ろした 。 若い 女 の 先生 は 仰天 して 泣きだして 、静かに なった 。 ・・

隣 の クラス の 先生 が 走って きて 、事情 を 聞かれ 、大人 の 女 の 人 が 服 を 脱がされて 静かに なっている のを テレビ の 映画 で 見た こと が ある 、と 説明する と 、やっぱり 職員 会議 に なった 。 ・・

「なんで 、恵子 に は わから ない んだろう ね ……」・・

学校 に 呼び出さ れた 母 が 、帰り道 、心細 そうに 呟いて 、私 を 抱きしめた 。 自分 は また 何 か 悪い こと を して しまった らしい が 、どうして なの か は 、わから なかった 。 ・・

父 も 母 も 、困惑 して は いた ものの 、私 を 可愛がって くれた 。 父 と 母 が 悲しんだり 、いろんな 人 に 謝ったり し なくては いけない の は 本意 で は ない ので 、私 は 家 の 外 で は 極力 口 を 利かない こと に した 。 皆 の 真似 を する か 、誰かの 指示 に 従う か 、どちら かに して 、自ら 動く のは 一切 やめた 。 ・・

必要な こと 以外 の 言葉 は 喋ら ず 、自分 から 行動 し ない ように なった 私 を 見て 、大人 は ほっと した ようだった 。 ・・

高 学年 に なる に したがって 、あまりに 静かな ので 、それ は それ で 問題 に なる ように なった 。 でも 、私 に とって は 黙る こと が 最善 の 方法 で 、生きて いく ため の 一番 合理的な 処世術 だった 。 通知 表 に 「もっと お 友達 を 作って 元気に 外 で 遊ぼう ! 」と 書かれて も 私 は 徹底 して 、必要 事項 以外 の こと を 口 に する こと は なかった 。 ・・

二つ 年下 の 妹 は 、私 と 違って 、「普通 」の 子ども だった 、かといって 私 を 敬遠 する わけで も なく 、むしろ 慕って くれていた 。 妹 が 私 と 異なり 普通の こと で 母 に 叱られている とき 、母 に 私 は 近づいて 「どうして 怒っている の ? 」と 理由 を 尋ねた 。 私 が 母 に 質問 した せい で お 説教 が 終わる と 、 庇 ( かば ) われた と 思う の か 、 妹 は いつも 私 に 「 ありがとう 」 と 言った 。 お菓子 や 玩具 に あまり 興味 が なかった 私 は 、それら を 妹 に あげる こと も 多かった 。 その ため 、妹 は いつも 私 に ついてまわっていた 。 ・・

家族 は 私 を 大切に 、愛して くれて いて 、だからこそ 、いつも 私 の こと を 心配 して いた 。 ・・

「どう すれば 『治る 』の かしら ね 」・・

母 と 父 が 相談 している の を 聞き 、自分 は 何か を 修正 しなければならない のだ なあ 、と 思った のを 覚えている 。 父 の 車 で 遠く の 街 まで カウンセリング に 連れて 行かれた こと も ある 。 真っ先 に 家 に 問題 が ある ので は ない か と 疑わ れた が 、 銀行 員 の 父 は 穏やかで 真面目な 人 で 、母 は 少し 気弱だ が 優しく 、妹 も 姉 である 私 に よく 懐いていた 。 「とにかく 、愛情 を 注いで 、ゆっくり 見守りましょう 」と 毒 に も 薬 に も ならない こと を 言われ 、両親 は それでも 懸命に 私 を 大切に 愛して 育てた 。 ・・

学校 で 友達 は できなかった が 、特に 苛められる わけで も なく 、私 は なんとか 、余計な こと を 口にしない ことに 成功した まま 、小学校 、中学校 と 成長していった 。 ・・

高校 を 卒業 して 大学生 に なって も 、私 は 変わら なかった 。 基本 的に 休み 時間 は 一人 で 過ごし 、プライベートな 会話 は ほとんど しなかった 。 小学校 の ころ の ような トラブル は 起き なかった が 、そのまま で は 社会 に 出られない と 、母 も 父 も 心配 した 。 私 は 「治ら なくて は 」と思い ながら 、どんどん 大人 に なって いった 。 ・・

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