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LibriVOX 04 - Japanese, (7) Amedama - 飴だま (Nankichi Niimi - 新美南吉)

(7) Amedama - 飴 だ ま ( Nankichi Niimi - 新美 南 吉 )

春 の あたたかい 日 の こと 、 わたし 舟 に ふた り の 小さな 子ども を つれた 女 の 旅人 が のりました 。 舟 が 出よう と する と 、 「 お オ い 、 ちょっと まって くれ 。」 と 、 どて の 向こう から 手 を ふり ながら 、 さむらい が ひとり 走って きて 、 舟 に とびこみました 。 舟 は 出ました 。 さむらい は 舟 の まん 中 に どっかり すわって いました 。 ぽかぽか あたたかい ので 、 その うち に いねむり を はじめました 。 黒い ひげ を はやして 、 つよ そうな さむらい が 、 こっくりこっく りする ので 、 子ども たち は おかしくて 、 ふ ふ ふと 笑いました 。 お母さん は 口 に 指 を あてて 、 「 だまって おい で 。」 と いいました 。 さむらい が おこって はたいへんだ から です 。 子ども たち は だまりました 。 しばらく する と ひと り の 子ども が 、 「 かあちゃん 、 飴 だ ま ちょうだい 。」 と 手 を さしだしました 。 すると 、 もう ひと り の 子ども も 、 「 かあちゃん 、 あたし に も 。」 と いいました 。 お母さん は ふところ から 、 紙 の ふくろ を とりだしました 。 ところが 、 飴 だ ま は もう 一 つ しか ありません でした 。 「 あたし に ちょうだい 。」 「 あたし に ちょうだい 。」 ふた り の 子ども は 、 りょうほう から せがみました 。 飴 だ ま は 一 つ しか ない ので 、 お母さん は こまって しまいました 。 「 いい 子 たち だ から 待って おいで 、 向こう へ ついたら 買って あげる から ね 。」 と いって きかせて も 、 子ども たち は 、 ちょうだい よ オ 、 ちょうだい よ オ 、 と だ だ を こねました 。 いねむり を して いた はずの さむらい は 、 ぱっちり 眼 を あけて 、 子ども たち が せがむ の を みて いました 。 お母さん は おどろきました 。 いねむり を じゃま さ れた ので 、 この お さむらい は おこって いる の に ちがいない 、 と 思いました 。 「 おとなしく して おい で 。」 と 、 お母さん は 子ども たち を なだめました 。 けれど 子ども たち は ききません でした 。 すると さむらい が 、 すらりと 刀 を ぬいて 、 お母さん と 子ども たち の まえ に やってきました 。 お母さん は まっさおに なって 、 子ども たち を かばいました 。 いねむり の じゃま を した 子ども たち を 、 さむらい が きりころす と 思った のです 。 「 飴 だ ま を 出せ 。」 と さむらい は いいました 。 お母さん は おそるおそる 飴 だ ま を さしだしました 。 さむらい は それ を 舟 の へり に のせ 、 刀 で ぱ ちん と 二 つ に わりました 。 そして 、 「 そ オ れ 。」 と ふた り の 子ども に わけて やりました 。 それ から 、 また もと の ところ に かえって 、 こっく りこっく り ねむり はじめました 。


(7) Amedama - 飴 だ ま ( Nankichi Niimi - 新美 南 吉 ) |あめ|||||にいみ|みなみ|きち (7) Amedama (Nankichi Niimi - Nankichi Niimi)

春 の あたたかい 日 の こと 、 わたし 舟 に ふた り の 小さな 子ども を つれた 女 の 旅人 が のりました 。 はる|||ひ||||ふね|||||ちいさな|こども|||おんな||たびびと|| 舟 が 出よう と する と 、 「 お オ い 、 ちょっと まって くれ 。」 ふね||でよう||||||||| と 、 どて の 向こう から 手 を ふり ながら 、 さむらい が ひとり 走って きて 、 舟 に とびこみました 。 |||むこう||て|||||||はしって||ふね|| 舟 は 出ました 。 ふね||でました さむらい は 舟 の まん 中 に どっかり すわって いました 。 ||ふね|||なか|||| ぽかぽか あたたかい ので 、 その うち に いねむり を はじめました 。 黒い ひげ を はやして 、 つよ そうな さむらい が 、 こっくりこっく りする ので 、 子ども たち は おかしくて 、 ふ ふ ふと 笑いました 。 くろい|||||そう な|||こっく りこっく|||こども|||||||わらいました お母さん は 口 に 指 を あてて 、 「 だまって おい で 。」 お かあさん||くち||ゆび||||| と いいました 。 さむらい が おこって はたいへんだ から です 。 子ども たち は だまりました 。 こども||| しばらく する と ひと り の 子ども が 、 「 かあちゃん 、 飴 だ ま ちょうだい 。」 ||||||こども|||あめ||| と 手 を さしだしました 。 |て|| すると 、 もう ひと り の 子ども も 、 「 かあちゃん 、 あたし に も 。」 |||||こども||||| と いいました 。 お母さん は ふところ から 、 紙 の ふくろ を とりだしました 。 お かあさん||||かみ|||| ところが 、 飴 だ ま は もう 一 つ しか ありません でした 。 |あめ|||||ひと|||| 「 あたし に ちょうだい 。」 「 あたし に ちょうだい 。」 ふた り の 子ども は 、 りょうほう から せがみました 。 |||こども|||| 飴 だ ま は 一 つ しか ない ので 、 お母さん は こまって しまいました 。 あめ||||ひと|||||お かあさん||| 「 いい 子 たち だ から 待って おいで 、 向こう へ ついたら 買って あげる から ね 。」 |こ||||まって||むこう|||かって||| と いって きかせて も 、 子ども たち は 、 ちょうだい よ オ 、 ちょうだい よ オ 、 と だ だ を こねました 。 ||||こども||||||||||||| いねむり を して いた はずの さむらい は 、 ぱっちり 眼 を あけて 、 子ども たち が せがむ の を みて いました 。 ||||||||がん|||こども||||||| お母さん は おどろきました 。 お かあさん|| いねむり を じゃま さ れた ので 、 この お さむらい は おこって いる の に ちがいない 、 と 思いました 。 ||||||||||||||||おもいました 「 おとなしく して おい で 。」 と 、 お母さん は 子ども たち を なだめました 。 |お かあさん||こども||| けれど 子ども たち は ききません でした 。 |こども|||| すると さむらい が 、 すらりと 刀 を ぬいて 、 お母さん と 子ども たち の まえ に やってきました 。 ||||かたな|||お かあさん||こども||||| お母さん は まっさおに なって 、 子ども たち を かばいました 。 お かあさん||||こども||| いねむり の じゃま を した 子ども たち を 、 さむらい が きりころす と 思った のです 。 |||||こども|||||||おもった|の です 「 飴 だ ま を 出せ 。」 あめ||||だせ と さむらい は いいました 。 お母さん は おそるおそる 飴 だ ま を さしだしました 。 お かあさん|||あめ|||| さむらい は それ を 舟 の へり に のせ 、 刀 で ぱ ちん と 二 つ に わりました 。 ||||ふね|||||かたな|||||ふた||| そして 、 「 そ オ れ 。」 と ふた り の 子ども に わけて やりました 。 ||||こども||| それ から 、 また もと の ところ に かえって 、 こっく りこっく り ねむり はじめました 。