5.山女
山 女 ( やま め )
親戚 の 神社 で お祓い の 手伝い を した とき の 話 。
確か 夏 の 頃 だった と 思う 。 一 人 の 中年 男性 が 社務所 に 来た 。
その 人 が 言う に は 「 どこ か の 山 に 登って 以来 、 女性 が つきまとう 」
と いう 話 だった 。 うち の 地方 は 県内 でも 変わって いて 、 いまだに 妖怪 と か
山 の 物 の 怪 と かって 話 が 多い 。 神主 を して いる 叔父 曰く 、
「 ヤマメ に 魅入られた かも しれ ん 」 と の こと だった 。 確かに その 男性 は とりつかれた 経緯 を 話して いる 間 も 目 が 山 の 方 を 見て いて 、
うわ の 空 で 話して いる ような …… 何とも 薄気味悪い 雰囲気 だった 。 とにかく お祓い を 、 と いう こと に なった 。
神前 に 榊 と お神酒 、 お供え 物 を して 、 その 前 に 男性 に 座って もらった 。 神主 である 叔父 が 御幣 を 捧げて から
祝詞 を 唱える 。 その 間 俺 は 男性 の ななめ 後ろ で 待機 して いた 。
何かしら の 指示 が 出る の を 待って いた のだ 。 男性 は 頭 を 少し 下げて 神妙に 祝詞 聞いて いる ように 見えた 。
しかし しばらく して 頭 が 激しく 振れ 始め 、 苦し そうに うめき声 を 上げ 始めた 。
「 おい 、 押さえろ 」 叔父 に 言わ れて 男性 を 押さえ 込む 。
すると 物 凄い 力 で 暴れ だした 。 なんとかかんとか を 押さえ 込んで いる と 、 叔父 が 御幣 を 神棚 から 取り
男性 の 背中 に 当てて サッと 払った 。
すると 背中 の 真ん中 あたり から 、 長い 黒 髪 の 束 が バサッ と 翻った 。
「 うわ 、 出た !」 と 思った 。 その 男性 の 背中 から 出た 髪 の 長 さ は 、1 m 以上 は あった と 思う 。
男性 の 背中 から 生えて いる のに 、 頭 が ついて いて 暴れて いる か の ように バサバサ と 動いて いた 。
「 おい 、 髪 を 引っ張れ !」 叔父 が 怒鳴る 。
腰 が 引けて いた けど 両手 で 髪 を 掴んで 、 思いっきり 引っ張った 。 大根 と か を 引き抜く ような 感じ が して 、
急に スッ と 抜けた 。 勢い 余って ひっくり返った けど 、 すぐに 起き上がって 両手 を 見る と
一 束 の 黒 髪 が あった 。 「 それ こっち に 渡せ 」
叔父 に 言わ れて 渡す と 、 叔父 は その 髪 の 毛 を 懐紙 に 包み 、 神前 に 置いた 。
「 あと で 焼いて 清め ん と な 。 女 の 髪 は 念 が 籠る 」
男性 は 気絶 して いた 。 男性 に 清め 塩 かけて 御幣 で 払う と 起き上がり 、
「 体 が 軽く なり ました 」 と いう 男性 に 叔父 が 言った 。
「 ヤマメ に 魅入られた んです ね 。 今度 から は 心 を 清めて 入山 して ください 。
あの まま だ と あなた は 山 に 魅入られて 、 帰って 来 れ なかった かも しれ ない 」
男性 に 髪 の 毛 の 束 を 見せる と 腰 を 抜かして いた 。 その 男性 は 礼 を 言って 、 何度 も 頭 を 下げ ながら 帰って 行った 。
その後 、 叔父 と 俺 は 境内 に 小さな やぐら を 組み 清め 塩 と お神酒 を かけ 髪 の 毛 を 燃やした 。
普通の 髪 の 毛 は 燃える と 嫌な 臭い が する けど 、 その 髪 は 植物 と 土 の 匂い が した 。