8.1 魔法 薬 の 先生 (2)
大 演説 の 後 は クラス 中 が 一層 シーン と なった 。 ハリー と ロン は 眉根 を ちょっと 吊り上げて 互いに 目配せ した 。 ハーマイオニー ・グレンジャー は 椅子 の 端 に 座り 、身を乗り出す ように して 、自分 が ウスノロ で はない と 一刻も早く 証明 したくて ウズウズ していた 。
スネイプ が 突然 、「ポッター ! 」と 呼んだ 。
「アスフォデル の 球根 の 粉末 に ニガヨモギ を 煎じた もの を 加える と 何に なるか ? 」なんの 球根 の 粉末 を 、なに を 煎じた ものに 加える って ? ??ハリー は ロン を チラッ と 見た が 、ハリー と 同じ ように 「降参 だ 」と いう 顔 を して いた 。 ハーマイオニー が 空中 に 高々 と 手 を 挙げた 。
「わかりません 」ハリー が 答えた 。 スネイプ は 口元 で せせら 笑った 。
「チッ 、チッ 、チ ──有名 な だけ では どうにも ならん らしい 」
ハーマイオニー の 手 は 無視 された 。
「ポッター 、もう 一つ 聞こう 。 ベゾアール 石 を 見つけて こい と いわれたら 、どこ を 探す かね ? 」ハーマイオニー が 思いっきり 高く 、椅子 に 座った まま で 挙げられる 限界 まで 高く 手 を 伸ばした 。 ハリー に は ベゾアール 石 が いったい なん な の か 見当 も つかない 。 マルフォイ 、クラップ 、ゴイル が 身を よじって 笑って いる のを 、ハリー は なるべく 見ない ように した 。
「わかりません 」「クラス に 来る 前に 教科書 を 開いて 見よう とは 思わなかった わけだ な 、ポッター 、え ? 」ハリー は 頑張って 、冷たい 目 を まっすぐに 見つめ続けた 。 ダーズリー の 家 に いた 時 、教科書 に 目 を 通しはした 。 スネイプ は 、「魔法 の 薬草 と きのこ 千種 」を 隅 から 隅 まで ハリー が 覚えた と 思っている のだろうか 。
スネイプ は ハーマイオニー の 手 が プルプル 震えて いる のを まだ 無視 していた 。
「ポッター 、モンクスフード と ウルフスベーン と の 違い は なんだ ね ? 」この 質問 で とうとう ハーマイオニー は 椅子 から 立ち上がり 、地下 牢 の 天井 に 届かん ばかりに 手 を 伸ばした 。 「わかりません 」ハリー は 落ち着いた 口調 で 言った 。 「ハーマイオニー が わかって いる と 思います から 、彼女 に 質問 して みたら どうでしょう ? 」生徒 が 数 人 笑い声 を 上げた 。 ハリー と シェーマス の 目 が 合い 、シェーマス が ウィンク した 。
しかし 、スネイプ は 不快 そうだった 。
「座り なさい 」スネイプ が ピシャリ と ハーマイオニー に 言った 。
「教えて やろう 、ポッター 。 アスフォデル と ニガヨモギ を 合わせる と 、眠り 薬 と なる 。 あまりに 強力な ため 、『生ける 屍 の 水薬 』と 言われて いる 。 ベゾアール 石 は 山羊 の 胃 から 取り出す 石 で 、たいてい の 薬 に 対する 解毒剤 と なる 。 モンクスフード と ウルフスベーン は 同じ 植物 で 、別名 を アコナイト とも 言う が 、とりかぶと の こと だ 。 どう だ ? 諸君 、なぜ 今 の を 全部 ノート に 書き とらん のだ ? 」いっせいに 羽 ペン と 羊皮 紙 を 取り出す 音 が した 。 その 音 に かぶせる ように 、スネイプ が 言った 。
「ポッター 、君 の 無礼な 態度 で 、グリフィンドール は 一 点 減点 」
その後 も 魔法 薬 の 授業 中 、 グリフィンドール の 状況 は よく なる どころ で は なかった 。 スネイプ は 生徒 を 二人 ずつ 組 に して 、おでき を 治す 簡単な 薬 を 調合 させた 。 長い 黒 マント を 翻し ながら 、スネイプ は 生徒 たち が 干 イラクサ を 計り 、ヘビ の 牙 を 砕く の を 見回った 。 どうも お 気 に 入り らしい マルフォイ を 除いて 、ほとんど 全員 が 注意 を 受けた 。 マルフォイ が 角 ナメクジ を 完璧に ゆでた から みんな 見る ように 、と スネイプ が そう 言った 時 、地下 牢 いっぱい に 強烈な 緑色の 煙 が 上がり 、シューシュー という 大きな 音 が 広がった 。 ネビル が 、どういう わけ か シェーマス の 大 鍋 を 溶かして 、ねじれた 小さな 塊 に してしまい 、こぼれた 薬 が 石 の 床 を 伝って 広がり 、生徒 たち の 靴 に 焼けこげ 穴 を あけて いた 。 たちまち クラス 中 の 生徒 が 椅子 の 上 に 避難 した が 、ネビル は 大鍋 が 割れた 時 に グッショリ 薬 を かぶって しまい 、腕 や 足 の そこら中 に 真っ赤な おでき が 容赦なく 噴き出し 、痛くて うめき声 を 上げて いた 。
「バカ 者 ! 」スネイプ が 怒鳴り 、魔法 の 杖 を 一 振り して 、こぼれた 薬 を 取り除いた 。 「おおかた 、大鍋 を 火 から 降ろさない うちに 、山嵐 の 針 を 入れた んだ な ? 」ネビル は おでき が 鼻 に まで 広がって きて 、シクシク 泣きだした 。 「医務室 へ 連れて いきなさい 」苦々しげに スネイプ が シェーマス に 言いつけた 。 それから 出し抜けに 、ネビル の 隣 で 作業 を していた ハリー と ロン に 鉾先 を 向けた 。
「君 、ポッター 、針 を 入れて は いけない と なぜ 言わなかった ? 彼 が 間違えば 、自分 の 方 が よく 見える と 考えた な ? グリフィンドール は もう 一点 減点 」
あまりに 理不尽な ので 、ハリー は 言い返そう と 口 を 開きかけた が 、ロン が 大鍋 の 陰 で スネイプ に 見えない ように ハリー を 小突いた 。
「やめた ほう が いい 」と ロン が 小声 で 言った 。
「スネイプは ものすごく 意地悪 になる って みんな が 言ってる よ 」一時間 後 、地下牢 の 階段 を 上がりながら ハリーは 頭 が 混乱し 、滅入って いた 。 最初の 一週間 で グリフィンドール の 点数 を 二点 も 減らして しまった ──いったい どうして スネイプ は 僕のこと を あんなに 嫌いなんだろう ?
「元気 出せ よ 」ロン が 言った 。
「フレッド も ジョージ も スネイプ には しょっちゅう 減点 されてる んだ 。 ねえ 、一緒に ハグリッド に 会い に いってもいい ? 」三時 五分 前に 城 を 出て 、二人 は 校庭 を 横切った 。 ハグリッド は 「禁じられた 森」の 端 にある 木 の 小屋 に 住んでいる。 戸口 に 石 弓 と 防寒 用 長靴 が 置いて あった 。 ノック する と 、中 から メチャメチャに 戸 を 引っ掻く 音 と 、ブーン と うなる ような ほえ 声 が 数回 聞こえて きた 。
「退れ 、ファング 、退れ 」ハグリッド の 大声 が 響いた 。
戸 が 少し 開いて 、すき 問 から ハグリッド の 大きな ひげ モジャ の 顔 が 現れた 。
「待て 、待て 、退がれ 、ファング 」と ハグリッド が いった 。
ハグリッド は 巨大な 黒い ボアーハウンド 犬 の 首輪 を 押さえる のに 苦労 し ながら 、ハリー たち を 招き入れた 。
中 は 一 部屋 だけ だった 。 ハム や きじ 鳥 が 天井 から ぶら下がり 、焚き火 に かけられた 銅 の ヤカン に は お湯 が 沸いて いる 。 部屋 の 隅 に は とてつもなく 大きな ベッド が あり 、パッチワーク ・キルト の カバー が かかっていた 。
「くつろいで くれや 」
ハグリッド が ファング を 離す と 、ファング は 一直線に ロン に 飛びかかり 、ロン の 耳 を なめ はじめた 。 ハグリッド と 同じように 、ファング も 見た目 と 違って 、まったく 怖く なかった 。
「ロン です 」と ハリー が 紹介した 。
ハグリッド は 大きな ティーポット に 熱い お湯 を 注ぎ 、ロック ケーキ を 皿 に 乗せた 。
「ウィーズリー 家 の 子 かい 。 え ? 」ロン の そばかす を チラッ と 見 ながら ハグリッド が 言った 。 「おまえ さん の 双子 の 兄貴 たち を 森 から 追っ払う のに 、俺 は 人生 の 半分 を 費やしてる ような もん だ 」ロック ケーキ は 歯 が 折れる くらい 固かった けれど 、二人 とも おいしそうな ふり を して 、初めて の 授業 に ついて ハグリッド に 話して 聞かせた 。 ファング は 頭 を ハリー の 膝 に 載せ 、服 を よだれ で ダラダラ に していた 。
ハグリッド が フィルチ の こと を 「あの 老いぼれ 」と 呼んだ ので ハリー と ロン は 大喜び した 。
「あの 猫 だ が な 、ミセス ・ノリス だ 。 いつか ファング を 引き合わせ なくちゃ な 。 俺 が 学校 に 行く と な 、知っとる か ? いつでも ズーッ と 俺 を つけまわす 。 どうしても 追い払え ん ──フィルチ の やつ が そう させ とる んだ 」
ハリー は スネイプ の 授業 の こと を 話した 。 ハグリッド は ロン と 同じ ように 、気にするな 、スネイプ は 生徒 という 生徒 は みんな 嫌いな んだ から 、と 言った 。
「でも 僕 の こと 本当に 憎んでる みたい 」
「ばかな 。 なんで 憎ま なきゃ ならん ? 」そう 言い ながら 、ハグリッド は まともに ハリー の 目 を 見なかった 、と 、ハリー には そう 思えて ならなかった 。 「チャーリー 兄貴 は どう してる ? 」と ハグリッド が ロン に 尋ねた 。
「俺 は 奴 さん が 気に入っとった ──動物 に かけて は すごかった 」ハグリッド が わざと 話題 を 変えた んじゃないか 、と ハリー は 勘ぐった 。 ロン が ハグリッド に 、チャーリー の ドラゴン の 仕事 の こと を いろいろ 話している 間 、ハリー は テーブル の 上 の ティーポット ・カバー の 下 から 、一枚 の 紙切れ を 見つけた 。 「日刊 予言者 新聞 」の 切り抜き だった 。
グリンゴッツ 侵入 さる
七月 三十一日 に 起きた グリンゴッツ 侵入 事件 について は 、知られざる 闇 の 魔法使い 、または 魔女 の 仕業 と されている が 、捜査 は 依然として 続いている 。 グリンゴッツ の 小 鬼 たち は 、今日 に なって 、何も 盗られた もの は なかった と 主張 した 。 荒された 金庫 は 、実は 侵入 さ れた その 日 に 、すでに 空 に なって いた 。
「そこ に 何が 入って いた か に ついて は 申し上げられません 。 詮索 しない 方が みなさん の 身 の ため です 」と 、今日 午後 、グリンゴッツ の 報道官 は 述べた 。
汽車 の 中 で ロン が 、グリンゴッツ 強盗 事件 に ついて 話して くれた こと を ハリー は 思い出した 。
ロン は いつ 起きた か と いう 日付 まで は 言わ なかった 。
「ハグリッド ! グリンゴッツ 侵入 が あった の は 僕 の 誕生日 だ ! 僕たち が あそこ に いる 間 に 起きた の かも しれない よ ! 」と ハリー が 言った 。
今度 は 間違い ない 。 ハグリッド は ハリー から はっきり 目 を そらした 。 ハグリッド は ウーッ と 言い ながら ハリー に また ロック ケーキ を すすめた 。 ハリー は 記事 を 読み返した 。
「 荒さ れた 金庫 は 、実は 侵入 された その 日 に 、すでに 空 に なって いた 」
ハグリッド は 七一三 番 金庫 を 空 に した 。 汚い 小さな 包み を 取り出す こと が 「空 に する 」と 言える なら 。 泥棒 が 探して いた の は あの 包み だった の か ?
夕食 に 遅れ ない よう 、ハリー と ロン は 城 に 向かって 歩き だした 。 ハグリッド の 親切 を 断りきれ なかった ため 、ロック ケーキ で ポケット が 重かった 。 これ まで の どんな 授業 より も ハグリッド と の お茶 の 方 が いろいろ 考え させられた 。 ハグリッド は あの 包み を 危機一髪 で 引き取った のだろう か ? 今 、あれほど こ に ある んだろう ? スネイプ に ついて 、ハグリッド は ハリー に は 言い たく ない 何ごと か を 知っている のだろうか ?