×

우리는 LingQ를 개선하기 위해서 쿠키를 사용합니다. 사이트를 방문함으로써 당신은 동의합니다 쿠키 정책.

무료 회원가입
image

Aozora Bunko Readings (4-5mins), 088. おにぎりの味 - 中谷宇吉郎

088. おにぎりの味 - 中谷宇吉郎

おにぎり の 味 -中谷 宇 吉郎

お握り に は 、いろいろな 思い出 が ある 。 .北陸 の 片田舎 で 育った 私たち は 、中学 へ 行く まで 、洋服 を 着た 小学生 という もの は 、誰 も 見た こと が なかった 。 紺 絣 の 筒っぽ に 、ちび た 下駄 。 雨 の 降る 日 は 、藺草 で つくった みの ぼうし を かぶって 、学校 へ 通う 。 外套 や レインコート は もちろん の こと 、傘 を もつ こと すら 、小学生 に は 非常な 贅沢 と 考えられて いた 。 .そういう 土地 である から 、お握り は 、日常 生活 に 、かなり 直結 した もの であった 。 遠足 や 運動会 の 時 は もちろん の こと 、お弁当 に も 、ときどき お握り を もたされた 。 梅干 の はいった 大きい お握り で 、とろろ 昆布 で くるむ か 、紫蘇 の 粉 を ふり かける か して あった 。 浅草 海苔 を まく と いう ような 贅沢な こと は 、滅多に し なかった 。 .しかし そういう お握り の 思い出 は 、あまり 残って いない 。 それ より も 、今 でも 鮮か に 印象 に 残っている のは 、ご飯 を 焚いた 時 の おこげ の お握り である 。 .十 数 人 の 大 家族 だった ので 、女中 が 朝 暗い うち から 起きて 、煤けた かまど に 大きい 釜 を かけて 、粗朶 を 焚きつける 。 薄暗い 土間 に 、 青 味 を おびた 煙 が 立ちこめ 、 かまど の 口 から 、 赤い 焔 が 蛇 の 舌 の よう に 、 ちらちら と 出る 。 .私 と 弟 と は 、時々 早く 起きて 、この かまど の 部屋 へ 行く こと が あった 。 おこげ の お握り が もらえる から である 。 ご飯 が たき上がる と 、女中 が 釜 を もち上げ 、板敷 の 広い 台所 へ もってくる 。 釜 の 外側 に は 、煤 が 一面 に ついている ので 、それ に 点いた 火 が 、細長い 光 の 点線 に なって 、チカチカ と 光る 。 まだ 覚め 切ら ぬ ねぼけ まな この 目 に は 、それ が 夢 の つづき の ように 見えた 。 .やがて その 火 も 消え 、女中 が 蓋 を とる と 、真白い 湯気 が もうもう と 立ち上がる 。 たき 立て の ご飯 の 匂い が 、ほのぼの と おなか の 底 まで 浸み込む ような 気 が した 。 女 中 は 大きい しゃもじ で 山盛り に ご飯 を すくい上げて 、おひつ に 移す 。 最後 の おこげ の ところ だけ は 、上手に 釜底 に くっついた まま 残されている 。 その 薄 狐 色 の おこげ の 皮 に 、塩 を ばらっと ふって 、しゃもじ で ぐいと こそげる と 、いかにも おいしそうな 、おこげ が とれて くる 。 女 中 は 、それ を 無雑作 に ちょっと 握って 、小さい お握り に して 、「さあ 」と いって 渡して くれた 。 .香ばしい お こげ に 、よく 効いた 塩味 。 この あつい お握り を 吹き ながら 食べる と 、たき 立て の ご飯 の 匂い が 、むせる ように 鼻 を つく 。 これ が 今 でも 頭 の 片隅 に 残って いる 、五十 年 前 の お握り の 思い出 である 。 .その後 大人 に なって 、いろいろ おいしい もの も 食べて みた が 、幼い 頃 の この おこげ の お握り の ような 、温かく 健やかな 味 の もの に は 、二度と 出会った こと が ない ような 気 が する 。 .都会 で 育った うち の 子供 たち は 、恐らく こういう 味 を 知ら ず に 過ごして きた に ちがいない 。 一ぺん 教えて やりたい ような 気 も する が 、それ は ほとんど 不可能に 近い こと であろう 。 お こげ の お握り の 味 は 、学校 通い に 雨傘 を もつ という ような 贅沢 を 、一度 おぼえた 子供 に は 、リアライズ されない 種類 の 味 と 思われる から である 。 .(昭和 三十一 年 九月 五日 )

Learn languages from TV shows, movies, news, articles and more! Try LingQ for FREE