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Aozora Bunko Readings (4-5mins), 080. 指 - 江戸川 乱 歩

080 .指 -江戸川 乱歩

指 -江戸川 乱歩

患者 は 手術 の 麻酔 から 醒めて 私 の 顔 を 見た 。

右手 に 厚ぼったく 繃帯 が 巻いてあった が 、手首 を 切断されて いる こと は 、少しも 知らない 。 彼 は 名 の ある ピアニスト だ から 、右 手首 が なくなった こと は 致命傷 であった 。 犯人 は 彼 の 名声 を ねたむ 同業者 かも しれない 。

彼 は 闇夜 の 道路 で 、行きずり の 人 に 、鋭い 刃物 で 右 手首 関節 の 上部 から 斬り 落とされて 、気 を 失った のだ 。 幸い 私 の 病院 の 近く で の 出来事 だった ので 、彼 は 失神 した まま 、この 病院 に 運びこまれ 、私 は できるだけ の 手当て を した 。

「あ 、君が 世話を してくれた のか 。 ありがとう ……酔っぱらって ね 、暗い 通りで 、誰か わからない やつに やられた ……右手 だね 。 指は 大丈夫 だろうか 」

「大丈夫 だよ 。 腕 を ちょっと やられた が 、なに 、じきに 治る よ 」

私 は 親友 を 落胆 させる に 忍び ず 、 もう 少し よく なる まで 、 彼 の ピアニスト と して の 生涯 が 終わった こと を 、 伏せて おこう と した 。

「指 も かい 。 指 も 元 の 通り 動く かい 」

「大丈夫 だよ 」

私 は 逃げ出す ように 、ベッド を はなれて 病室 を 出た 。

付添い の 看護婦 に も 、今 しばらく 、手首 が なくなった こと は 知らせない ように 、固く いいつけて おいた 。

それから 二 時間 ほど して 、私 は 彼 の 病室 を 見舞った 。

患者 は やや 元気 を とり戻して いた 。 しかし 、まだ 自分 の 右手 を あらためる 力 は ない 。 手首 の なくなった こと は 知ら ないで いる 。

「痛む かい 」

私 は 彼 の 上 に 顔 を 出して 訊ねて みた 。

「うん 、よほど 楽に なった 」

彼 は そう いって 、私 の 顔 を じっと 見た 。 そして 、毛布 の 上 に 出していた 左手 の 指 を 、ピアノ を 弾く 恰好 で 動かし はじめた 。

「いいだろうか 、右手 の 指 を 少し 動かして も ……新しい 作曲 を した ので ね 、そいつ を 毎日 一度 やって みない と 気がすまない んだ 」

私は ハッと した が 、咄嗟に 思いついて 、患部 を 動かさない ため と 見せかけながら 、彼 の 上膊 の 尺骨神経 の 個所 を 、指 で 圧さえた 。 そこ を 圧迫する と 、指 が なくて も 、ある ような 感覚 を 、脳中枢 に 伝える こと が できる からだ 。

彼 は 毛布 の 上 の 左手 の 指 を 、 気持 よ さ そうに 、 しきりに 動かして いた が 、

「ああ 、右 の 指 は 大丈夫 だ ね 。 よく 動く よ 」

と 、呟き ながら 、夢中に なって 、架空の 曲 を 弾き つづけた 。

私 は 見る に たえなかった 。 看護婦に 、患者の 右腕の 尺骨神経を 圧さえている ように 、目顔で さしずしておいて 、足音を 盗んで 病室を 出た 。

そして 手術室の 前を 通りかかる と 、一人の 看護婦が 、その 部屋の 壁に とりつけた 棚を 見つめて 、突っ立っている のが 見えた 。

彼女の 様子は 普通では なかった 。 顔は 青ざめ 、眼は 異様に 大きく ひらいて 、棚に のせてある 何かを 凝視していた 。

私は 思わず 手術室に はいって 、その 棚を 見た 。 そこに は 彼の 手首を アルコール漬けに した 大きな ガラス瓶が 置いてあった 。

一目 それを 見ると 、私は 身動きが できなくなった 。

瓶 の アルコール の 中 で 、 彼 の 手首 が 、 いや 、 彼 の 五 本 の 指 が 、 白い 蟹 の 脚 の よう に 動いて いた 。

ピアノ の キイ を 叩く 調子 で 、しかし 、実際 の 動き より も ずっと 小さく 、幼児 の ように 、 たよりなげ に 、しきりと 動いて いた 。

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