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Aozora Bunko Readings (4-5mins), 067. 「の」の字の世界 - 佐藤春夫

067. 「の」の字の世界 - 佐藤春夫

「 の 」 の 字 の 世界 - 佐藤 春夫

うた ちゃん は 、三人 兄弟 の 末 で 、来年 から は 幼稚園 へ 行こう と いう のです が 、早く から 、自分 で は お姉ちゃん 気どり で 「えい ちゃん 」「えい ちゃん 」と 、自分 を よんでいます 。 「えい ちゃん 」と は 、ねえちゃん の かたこと な のです 。

うた ちゃん は 、「えい ちゃん 」だけ に 、二 つ 上 の なき虫 の 兄 が なく と 、すぐ 手ぬぐい を 持って行って 、なみだ を ふいて やったり 、頭 を さすったり 、まことに よく 気 の つく 、りこうな 子 な のです 。 それ だ のに 、どうしても 字 を おぼえません 。 なき虫 の 兄さん の 方 は 、うた ちゃん の 年ごろ に は 、だれ も 少しも 教え ない のに 、野球 かるた で 、平 が な はすっかり 読み書き を おぼえ 、それから は 、すもう の 名 まえ と いっしょに 、その 本字 まで たくさん おぼえて いた もの です 。 兄弟 でも 、これほど ちがう もの か 。 うた ちゃん も 、今 には ひとり で おぼえる だろう 、と いっていても 、なかなか その けぶり も ありません 。 うた ちゃん は 、え 本 でも なんでも 、あけて みて は すぐ おもしろい お話 を こしらえて 、みな ひとり で 読んで しまう のです 。 これ で は 、まるで 字 の 必要 も ない わけ なのだ 、と 気 が つきました 。 それにしても 、自分 の 名まえ ぐらい 書け ないで は ようち園 で も こまる だろう 。

ちょっと ためしに 、名 まえ の 三 字 だけ でも おぼえ させて 見よう 、と 「う 」の 字 から 教え はじめた が 、やっぱり だめな のです 。 二 、 三 日 か ゝって 、 やっと 読み 方 は おぼえた が 、 書く こと は どうしても だめな ので 、 あきらめて 「 の 」 の 字 を 教え はじめました 。 「 う 」 の 字 の 下 を 「 の 」 の よう に 書く の に 気 が ついた から です 。 「 の 」 の 字 を 、 はじめ は まるい 字 と よんで 、 これ を 読む こと は すぐ おぼえました が 、 書く の は 、 逆の 方向 に まげたり 、 しっぽ の 方 から 頭 へ もって行ったり 、 どうしても だめでした が 、 三 日 ほど したら 、 どうやら それ らしい 字 が でき はじめました 。 書き はじめて も 、 読み 方 を わすれて は いけない 、 と 書く けいこ を さ せ ながら も 、 え 本 や 学校 の 本 など を 出して きて 、 うた ちゃん に 「 の 」 の 字 を さがし出さ せて いる うち に 、 兄さん の 野球 の 雑誌 から も 、 お 父さん の 新聞 の うしろ から も 、 うた ちゃん は 「 の 」 の 字 さえ 見れば 、 きっと ひろい 出す よう に なり 、 書く こと も だんだん 上手に なりました 。 うた ちゃん の 世界 は 、 今や 「 の 」 の 字 の 世界 に なりました 。 新聞 に は 、 大きい の や 小さい の や 「 の 」 の 字 は どっさり 。 うた ちゃん に は 、 新聞 も 「 の 」 の 字 ばかり です 。 お 兄さん の まわす コマ が 、「 の 」 の 字 を 書いて いる し 、 コマ の ヒモ も 、 お えんがわ で 「 の 」 の 字 に なって います 。 お 庭 の カタツムリ は 「 の 」 の 字 を しょって 歩いて いる し 、 うた ちゃん の 夜具 の カラクサ もよう も 、 あちら むき や こちら むき の 「 の 」 の 字 が 一 ぱい です 。 お 兄さん の 頭 の 上 に 、 だれ か 「 の 」 の 字 を 書いて いる と いう の を 見る と 、 つむ じ の こと な の です 。 お 庭 に 「 の 」 の 字 が 生きて 動いて いた 、 と いう ので 、 ついて 行って 見る と 、 ミミズ が いた ので 、 みんな で わらいました 。 みんな が わらった ので 、 うた ちゃん は 、 ひどく しょげて しまった ので 、 わたし は

『 ほんとうに 「 の 」 の 字 が 生きて 、 ねん ね して いた ね 』

と 、うた ちゃん を 、なぐさめて やって から いいました 。 『うた ちゃん 、字 は 「の 」の 字 の ほか に も まだ たくさん ある の です 。 うた ちゃん の 「う 」の 字 でも 、「た 」の 字 でも 、ね 。 みんな おぼえます か 』 うた ちゃん は 、大きく うなずいた 。 うた ちゃん は 、一字 おぼえて 自信 が でき 、おもしろく なった のでしょう 。 うた ちゃん は 、今 に 字 を みな おぼえて 、世界中 を 読む でしょう 、きっと 。

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