032 .星 の 銀貨 ,DIE STERNTALER -グリム 兄弟 ,Bruder Grimm
星 の 銀貨 ,DIE STERNTALER -グリム 兄弟 ,Bruder Grimm
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楠山 正雄 訳
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むかし 、むかし 、小さい 女の子 が ありました 。 この 子 に は 、おとうさん も おかあさん も ありませんでした 。 たいへん びんぼう でした から 、 しまい に は 、 もう 住む に も へや は ない し 、 もう ねる に も 寝床 が ない よう に なって 、 とうとう おしまい に は 、 からだ に つけた もの の ほか は 、 手 に もった パン ひと かけ きり で 、 それ も なさけぶかい 人 が めぐんで くれた もの でした 。
でも 、この 子 は 、心 の すなおな 、信心 の あつい 子 で ありました 。 それ でも 、こんなに して 世の中 から まるで 見すてられて しまって いる ので 、この 子 は 、やさしい 神さま の お力 に だけ すがって 、ひとりぼっち 、野原 の 上 を あるいて 行きました 。 すると 、そこ へ 、びんぼう らしい 男 が 出て 来て 、
「ねえ 、なに か たべる もの を おくれ 。 おなかが すいて たまらない よ 。」 と 、いいました 。 女の子は 、もっていた パン ひとかけ のこらず 、その 男に やってしまいました 。 そして 、
「どうぞ 神さま の おめぐみ の あります ように 。」 と 、いのって やって 、また あるき だしました 。 すると 、 こんど は 、 こども が ひとり 泣き ながら やって 来て 、
「 あたい 、 あたま が さむくて 、 こおり そうな の 。 なに か かぶる もの ちょうだい 。」 と 、いいました 。 そこで 、女の子 は 、かぶって いた ずきん を ぬいで 、子ども に やりました 。 それから 、女の子 が また すこし 行く と 、こんど 出て 来た こども は 、着物 一枚 着 ずに ふるえて いました 。 そこで 、じぶんの 上着を ぬいで 着せて やりました 。 それから また すこし 行くと 、こんど 出てきた こどもは 、スカートが ほしいと いうので 、女の子は それも ぬいで 、やりました 。 そのうち 、女の子は ある 森に たどり着きました 。 もう くらく なって いました が 、 また 、 もう ひと り こども が 出て 来て 、 肌着 を ねだりました 。 あくまで 心 の すなおな 女の子 は 、(もう まっくらに なって いる から だれ に も みられ やしない でしょう 。 いい わ 、肌着 も ぬいで あげる こと に しましょう 。 )と 、おもって 、とうとう 肌着 まで ぬいで 、やって しまいました 。 さて 、それ まで して やって 、それ こそ 、ない と いって 、きれいさっぱり なくなって しまった とき 、たちまち 、たかい 空 の 上 から 、お 星 さま が ばらばら おちて 来ました 。 しかも 、それが まったくの 、ちかちか と 白銀色 を した 、ターレル 銀貨 で ありました 。 その うえ 、 つい いましがた 、 肌着 を ぬいで やって しまった ばかりな のに 、 女の子 は 、 いつのまにか 新しい 肌着 を きて いて 、 しかも それ は 、 この上 なく しなやかな 麻 の 肌着 で ありました 。 女の子 は 、 銀貨 を ひろい あつめて 、 それ で 一しょう ゆたかに くらしました 。