Hikoichi and Hanami
むかし 、むかし 、彦一 さん という たいへん 賢い 若者 が おりました 。ある 春 の 日 、お 殿様 が お 花見 に 出かける こと に なりました ので 、彦一 さん も 一緒に ついていく こと に なりました 。皆 が 出かける 支度 を して いる と 、お 殿様 は こう 声 を かけました 。「皆 の もの 、なに か 荷物 を 運んで もらう が 、それぞれ 好き な もの を 持って いけば よい ぞ 。」お 花見 に 持って いく 荷物 は 、殿様 が 座る いす 、地面 に 敷く 毛せん 、歌 を 詠む とき に つかう 筆 、墨 など の 道具 、お 茶 の 道具 など いろいろ あります 。 家来 たち は 「どうせ 持って いく なら 軽い もの が いい ぞ 。」 と 我先に 軽い もの を 選んで 持って いきました 。 彦一 さん が 残った 荷物 を 見た とき は 、皆 の 握り飯 が 入って いる お弁当 など 重そうな もの しか 残って いませんでした 。 でも 、彦一 さん は 「これ は いい もの が 残った ぞ 。」 と にっこり 笑って 重い お弁当 を 運び 始めました 。 家来 たち は 、「 賢い 彦一 の くせに 、 今回 ばかり は 貧乏 くじ を ひいた な 。」 と 心 の 中 で 笑って おりました 。 花見 を 楽しみ 、おいしい 食事 も 済ませ 、お殿様 は お城 に 帰る こと に しました 。 彦一 さん は お殿様 に こう 声 を かけました 。 「お殿様 、あちら を ごらんください 。 まだまだ 美しい 桜 が 咲いて おります 。 山 の あちら の ほう から お帰り に なれば 、花見 を しながら お城 に 帰る こと が できます 。」 お殿様 は 山 の 向こう を ご覧に なって 、「そう じゃの 、彦一 の いう とおり じゃ 、あちら の ほう から 帰ろう 。」 家来 たち は 、荷物 を 持って 山 の 向こう まで 行かなくてはならない ので 、本当 は いやでした が 、お殿様 に は 逆らえません 。 家来 たち が それぞれ 自分 の 荷物 を 持ち上げて 帰る 用意 を して いる というのに 、彦一 は なにも 入って いない 風呂敷 を たたんで ふところ に しまいました 。 手ぶら です 。 家来 の 一人 が 彦一 さん に こう 尋ねました 。 「もしもし 、彦一 様 、あなた 様 の お荷物 は どこ に いきました か ? 」彦一 さんは 、にっこりと 笑って こう 答えました 。 「はい 、皆様の おなかの 中に 入って しまいました 。」 彦一 さんは 、一人だけ らくらくと 花見を しながら お城に 帰っていった という ことです 。
おしまい 。