盾 の 勇者 の 成り上がり 2 Chapter 13 (1 )
十三 話 命 以外 の 全て を 奪う 「いや ぁ ……神 鳥 の 馬車 に 乗れる と は 私 も 幸運でした 」
「神 鳥 です か ? 」その 日 は 隣 の 町 に 行きたい と いう 商人 が 馬車 に 乗せて くれ と 言った ので 、乗せて いた 。 「ご 存じ ない ? えっと 、アナタ が 馬車 の 持ち主 です よ ね ? 隠して も わかります よ 」 商人 は 世間話 を して いた ラフタリア で は なく 、俺 を 指差す 。
一応 ラフタリア に 馬車 の 主 を 装わ せ 、俺 は 薬 の 調合 役 の フリ を していた のだが 。
「そう だ が ……」
「巷 で 有名 に なって います よ 。 神 の 鳥 が 引く 馬車 が 奇跡 を 振りまいて 各地 で 商売 を している と 」
ゴトゴト と 揺れる 車内 から 、俺 は フィーロ に 視線 を 向ける 。
随分 高く 見られて いる んだ な 。 本人 は ただ の 食いしん坊 の 甘え たがり だ 。
しかし 、奇跡 と は 何の 事 を 指して いる の か よく わからん 。
ん ?
「クエエエエエエエエエエエ ! 」その フィーロ が 、突然 奇声 を 上げて 爆走 し 始める 。 「 うわ ! 」車 内 に いた 俺 と ラフタリア と 商人 は 、転がら ない ように 馬車 の 手すり に しがみ付く 。 「── ギャアアァァァァァ ……」
「──ヤス 様 ああ ぁぁ ぁぁ ぁ ……」
ガラララララララ !
車輪 が 大きな 音 を 立てて いた ので 外 の 状況 が よく 聞こえ ない 。 たまに こういう 爆走 を フィーロ は する んだ よ なぁ 。 行商 を 始めて もう 四 回 目 か 。 気まぐれな 奴 だ 。
「俺 達 だけ じゃ ない んだ から 気 を 付けろ よ 」
「 は ー い 、 じゃ なくて …… クエ ! 」商人 に 聞かれ ない ように 小声 で やり取り する 。 なんだか んだ で 喋る 魔物 で は 注目 を 浴びて しまう し 、いらぬ 厄介 事 を 招き かねない 。 ……既に 注目 は 浴びて いる ような 気 も する けど 。
現に 商人 の 奴 、俺 の 方 を 見て ビックリ して いる 。
「人 語 を 解する と は 聞きました が 凄い です ね 」 「俺 も そう 思う 」
考えて みれば 人 の 話 を 理解 する の は 良い と しても 、喋れる と かどれ だけ ハイスペック な んだ 。
魔物 の 可能性 の 高さ と 見れば 良い のだろう 。 そういう 意味 で は 凄く 珍しい かも しれない 。
「俺達 は 普通に 薬 の 行商 や こうして 乗り合い 馬車 代わり の 仕事 を 何でも こなして いる だけ なのだが な 」
話 を 戻し 、商人 に 答える 。
「病 で 苦しむ 人々 を 馬車 に 乗った 聖人 が 特別な 薬 を 飲ま せて 救った と 話題 に なって います よ 」 「へ ー ……」
あれ って ちょっと 高い けど 、一般人 でも 手 が 届く 金額 の 治療薬 な んだ が な 。 ちなみに 症状 に 合わせて 薬草 を 変える こと も 可能だ 。 俺 が 最初 に 作った 治療 薬 は その 中 でも 万能 タイプ で 効能 が 低く 、呼吸器系 に 若干 効果 が ある 程度 だ 。 今 は 多種多様な 薬草 が 手 に 入って いる ので 、用途 に 合わせて 作って いる 。
熱病 、肺病 、消化器系 、皮膚病 と 使う 薬草 に よって 効果 が 変わる 。 一応 は 治療 薬 の 一括 くくり で 纏められて いる だけ だ 。 中級 レシピ の 本 に は その 辺り が 事細かに 記載 されて いた 。 一応 盾 で 出た 技能 に も 混ぜる 薬草 の 種類 に よる アシスト が 表示 さ れ る 。
「ただ の 治療 薬 だ ぞ ? 」俺 は 商人 に 商品 箱 から 出した 治療 薬 を 見せる 。 「これ が 奇跡 の 薬 です か 」
商人 は 治療 薬 の 蓋 を 外して 匂い を 嗅ぐ 。
「確かに ……昔 服用 した 薬 と 同じ 匂い が します ね 」 「……わかる の か ? 」こいつ も 薬屋 な の か ? と 、疑問 に 思い 尋ねる と 、商人 は 首 を 横 に 振る 。
「いえ 、ただ なんとなく です よ 」
わから ない の か よ 。
「で 、お前 は 何 の 商人 な んだ ? 」「私 は 宝石 商 です よ 」 宝石 という と アレ だ よ な 。 この 世界 に も いる んだ な 。
大方 貴族 の アクセサリー と か を 商売 に している という ところ か 。
「宝石 商 ね ……そんな 金持ち 御用達 の 商人 が 一人 ? 」金持ち 相手 の 商人 が 商売 を する の なら 、それ 相応の 護衛 が 必要だ 。 なのに 一人 旅 と は 怪しい 。
「痛い ところ を 突きます ね 」 ハハハ と 軽く 笑い ながら 商人 は 答える 。
「ピン から キリ まで います よ 。 厳密に 言う の なら 私 は アクセサリー 商 と でも 言う べきでしょう か 」
「どこ が 違う んだ ? 」「では 私 の 商品 を 見て みます か ? 」そう 言って アクセサリー 商 は 自身 の 荷物 袋 を 俺 に 見せて くれた 。 中 を 見る と 、確かに ブローチ と か ネックレス と か が 入って いる 。 他 に ブレスレット か 。
しかし 、使って いる 金属 は どうも 鉄 や 銅 が 目立つ 。 そして 嵌って いる 宝石 も ……なんて いう か 、宝石 と 呼ぶ に は 些か 貧弱だ 。 「基本 的に 安物 しか ありません 」 「は ぁ ……商売 で 失敗 でも した の か ? 」「いえ 、今回 扱って いる の が 稼ぎ の 低い 冒険者 用 の アクセサリー でして 」 「へ ー ……」
アクセサリー 商 の 話 に よると 、アクセサリー に は 魔法 の 付加 を 与えて 能力 を 補佐する 効果 が ある らしい 。
「ちなみに 一個 どれ くらい の 金額 で 売れる んだ ? 」「そう です ねぇ ……この 攻撃力 増強 の 鉄製 ブレスレット 一つ で 銀貨 三〇 枚 程度 でしょうか 」 う ……結構 高 めだ 。 俺 の 薬 は 治療 薬 でも そこ まで 高く 売れ ない 。
「魔力 を 付与 すれば 一 個 あたり 銀貨 一〇〇 枚 は する でしょう ね 」
「そう な の か 」
「 ええ 」
ふむ ……これ は 考える 余地 が ある 。
薬 の 販売 は 現在 、頭打ち に ある 。 一応 は 完売 に 近く 、反響 は 得て いる ものの 、薬草 の 買い取り も 行って いる ので 利益 が そこ まで 出 ない 。 もう 一々 採取 して いて は 間に合わない 。
行商 を する 前 なら 良かった かも しれない が 、採取 し つつ 作る ので は 効率 が 悪い 。
「そういう の は 細工 を 施して いる の か ? 」「そう です ねぇ ……形 を 作る の は 良い です が 、私 は これ に 魔力 付与 を 行います ので 、そこ まで 含めれば 細工 でしょう か ね 」 ……なるほど 、アクセサリー の 形 を 作り 、魔法 を 付与 して 初めて 効果 を 発揮 する わけ か 。
魔力 付与 ……これ が 曲者 だ 。
嫌な 響き で も ある 。 なんて いう のだろう 。 薬 の 調合 に も 時々 混じる 単語 で も ある のだ 。
魔力 水 と 魂 癒 水 の 作り方 に も 、この 言葉 が よく 使われている 。 これ は 魔法 が 使え なければ 作れ ない こと を 意味 している のだ 。
「 ご しゅじん さま ー 、 なんか 来る よ 」
フィーロ が 若干 緊迫 した 声 を 出して 俺 に 注意 し 、足 を 止める 。
俺 と ラフタリア は 、止まった 馬車 から 急いで 外 の 様子 を 確認 した 。
する と 森 の 奥深く から 人影 が 現れた 。
全員 が それぞれ 武器 を 持ち 、好意的な 歓迎 と は 反対の 態度 で こちら に 向かって くる 。
格好 は かなり ばらばら だ が 、それぞれ 鎧 を 着込み 、野蛮 そうだ 。 どうも 山賊 と か そういう 類 の 連中 に 見える 。
「盗賊 だ ! 」アクセサリー 商 が 焦った ように 叫ぶ 。 「へ へ へ ……お前 等 、金目 の 物 を 置いて いきな 」
なんとも ありがちな 常 套句 に 半ば 呆れる 。
こういう の は アレ だ よ な 。 無言 で 襲撃 する こと に 意味 が ある んじゃ ない か ?
あ 、フィーロ が 先 に 気付いた から 、そのまま 襲撃 した の か 。 勝てる と か 舐めた こと 考えて いる ような 顔 して いる 。 もしくは 何 か 裏 が ある な 。
そう 言えば さっき の 村 で 凶悪な 盗賊団 が 徒党 を 組んだ とか 危ない 話 を 耳 に した なぁ 。
「知っている んだ ぞ ! この 馬車 に 宝石 商 が 乗って いる こと くらい ! 」盗賊 の 連中 が 、俺達 の 方 に 怒鳴り 散らす 。 俺 は 馬車 内 で アクセサリー 商 に 顔 を 向ける 。
「高値 で 売れる 代物 は ない とか 言って なかった か ? 」「はい ……今回 の 売り物 に は ありません が ……」 恐る恐る アクセサリー 商 は 懐 に 手 を 入れて 、何か 大事 そうに 押さえて いる 。
「高額 で 取り引き さ れる アクセサリー が あり まして ね 」
「なるほど ……それ が 目当て か 」
厄介な 客 を 乗せて しまった もん だ 。
「安物 しか 扱って いない 商人 という ふれ込み なら 襲われる はずもない と 護衛 費 を ケチり まして 」 「馬鹿 かお 前 は ! は ぁ ……後 で 迷惑 料 を 請求 する から な 」
「…… わかりました 」 アクセサリー 商 は 渋い 顔 を し ながら 頷く 。
「ラフタリア 、フィーロ 、敵 だ 」
「 はい ! 」 「 うん ! 」俺 の 指示 に ラフタリア は 馬車 から 飛び出して 臨戦 態勢 を 取る 。 アクセサリー 商 を 引きずる ように して 、俺 も 後 を 追う 。
「絶対 に 俺 から 離れる な よ 」
「は 、はい ! 」能力 解放 中 の 盾 から 戦闘 用 の 盾 に 変化 させる 。 「あ 、あなた は 盾 の ? 」 「 ああ ……」 神 鳥 の 馬車 の 持ち主 が 悪名高い 盾 の 勇者 だ と 知って 、アクセサリー 商 の 奴 は 驚いて いる 。
「 なんだ ? 俺 達 と やろうって の か ? 」「ああ 、降りかかる 火 の 粉 は 払わ ねば やって いけない ので ね 」 俺 は 盗賊 を 睨み付け ながら 答える 。
今回 の 戦闘 に おいて 重要な のは 、敵 の 目的 を 達成 させない こと 。 それ は すなわち 、アクセサリー 商 の 所持 する 物 を 奪わ れ ない ように する こと だ 。
「ラフタリア 、フィーロ 、やれる か ? 」「ええ 、やら ねば やられます 」 「丁度 退屈 だった の 」
「そう か 、じゃあ ……ヤレ ! 」俺 の 命令 と 同時に 盗賊 も 武器 を 振りかざして 襲い掛かって くる 。 敵 の 数 は 見た 感じ で 一五 人 前後 。 それなり の 人数 だ 。
「 エアストシールド ! 」走り抜けて くる 敵 に これ見よがしに 空中 に 盾 を 出す 。 そして 俺 は 徐に 次の スキル を 発動 さ せた 。
「 チェンジシールド ! 」チェンジシールド は 、エアストシールド と シールドプリズン で 出現 して いる 盾 を 俺 の 知る 盾 に 変化 させる スキル だ 。 俺 が 指示 した の は ビーニードルシールド 。
ビーニードルシールド の 専用 効果 は 針 の 盾 (小 )と ハチ の 毒 (麻痺 )。
「な 、突然 盾 が ! ガハ ──」
走って くる 盗賊 の 一人 の 顔面 に 突然 現れた 盾 に ぶつかり 、盗賊 は 転び 、痺れて 痙攣する 。 上手く 専用 効果 が 作動 して くれて 助かった 。
「 シールドプリズン ! 」「なんだ こ ──」 そして 盾 の 檻 で 他の 盗賊 を 一人 拘束 した 。
それぞれ 制限 時間 は ある 。
チェンジシールド の クールタイム は 三〇 秒 。 連続 で 使用 する の は 厳しい 。
けれど 、数 は それ だけ 削れる ので 効果 は 高い 。
盗賊 が 三 名 ほど 俺 の 目の前 に 立ちはだかる 。 護衛 の くせに 盾 しか 持って いない バカ と でも 思った の だろう 。 俺 は 商人 の 前 に 立ち 、攻撃 に 備える 。
盾 を 構えた 所 に 火花 が 散り 、盗賊 の 攻撃 は 金属 音 と 共に 跳ね返さ れる 。 どうやら 俺 の 防御力 を 上回る 攻撃力 が 無い らしい 。
今 装備 して いる 盾 は キメラ ヴァイパー シールド 。
専用 効果 は 蛇 の 毒 牙 (中 )と フック 。
盾 に 施されて いる 蛇 の 彫刻 が 動き出し 、俺 に 攻撃 を 仕掛けた 盗賊達 に 噛み付く 。 蛇 の 毒 牙 は 俺 を 攻撃 した 敵 に 反撃 する 毒 の 攻撃 だ 。
「 グアアア ! 」「く 、この 程度 ──ガハ ! 」「き 、気分 が ……」 蛇 の 毒 牙 は そのまま 攻撃 して きた 相手 を 毒 に する 。 耐性 の ある 奴 に は 効果 が 薄い 。
人間 に 効果 が ある か 試して いない けれど 、威力 は やはり 高い ようだ 。 決定 打 に は ならない けど 。
俺 は 盾 から フック を 指示 。 盾 に 施さ れた 蛇 の 装飾 が 盗賊 の 一人 を 縛り 上げた 。
この フック と いう 効果 、攻撃 能力 は 無い が フック を 掛けられる 範囲 は 二 メートル 以内 、物 を 引っ掛けたり 崖 を 上る とき に 役立つ 。 実際 盗賊 の 動き が 見る見る 悪く なり 倒れる 者 まで 出てきた 。