盾 の 勇者 の 成り上がり 02 Prologue
プロローグ 分け 合う 痛み
その日 、俺 は 城 の 倉庫 で 目 を 覚ました 。
埃 臭くて ウンザリする 。 だけど ……目覚め は 悪く は ない 。
「す ぅ ……す ぅ ……」
俺 の 隣 に ある 藁 の 束 の 中 から 寝息 が 聞こえてくる 。 そこ に は ラフタリア と いう 少女 が 眠っていた 。
まず は 今 まで の 出来事 を 反芻していこう と 思う 。
俺 の 名前 は 岩谷 尚文 。 大学 二年生 だ 。
普通に 日本 で 生まれ 、自分 で 言う の も なんだ が オタク 趣味 に ハマっていた 日本人 だった 。
何の 因果 か 図書館 で 見つけた 本 、四聖武器書 という 本 を 読んでいる うちに 、気 が 付いたら その 物語 の 登場人物 、盾 の 勇者 として 召喚されていた 。
この 世界 は 波 と いわれる 魔物 が 次元 の 裂け目 から 大量に 現れる 謎 の 災害 に 襲われており 、その 災害 を 乗り越える ため に 勇者 を 召喚 した のだ と いう 。 そして 、俺 の 持つ この 盾 は 、どんな 呪い が 掛け られている の か は 不明だ が 装備 を 外す こと が できず 、しかも 守る こと しか できない という 大問題 を 抱えている 。
だけど 俺 は ネット ゲーム の 経験 を 生かし 、自分 は 守る こと に 重点 を 置き 攻撃 は 仲間 に 頼ろう と した 。
そんな 大 冒険 が 始まる と 胸 を 高鳴らせて いた のだが 、卑劣な 罠 に 掛かり 、あらぬ 疑い によって 冤罪 を 被って しまった 。 その 所 為 で 俺 は 人間 不信 に なり 、仲間 は 出来 ず 、無一文 で 城 を 追い出さ れ て 生活 する 羽目 に なった 。
じゃあ 波 と 戦わなければ 良い と 思う だろう が そう は いか ない 。
勇者 は この 異世界 の 波 という 災害 に よって 大体 一 ヶ月 毎 に 、その 波 に 対処 する ため 、強制的に 召喚 されてしまう という 問題 が ある 。
守り たく も ない 連中 を 命 を 懸けて 守ら ねば ならない と いう 使命 を 無理やり 与え られ 、時に 石 を 投げ られ つつ 俺 は 必死に 金 を 稼いだ 。
で 、俺 の 隣 の 藁 の 束 で 寝ている 女の子 ……ラフタリア を 亜人 奴隷 として 購入 した 。
この 世界 で は 奴隷 が 存在 し 、この 国 メルロマルク で は 亜人 と いう 、人間 に 似て いる けれど 動物 の 耳 や 尻尾 が ある 者 を 奴隷 として 使役 して いる 。
買った 当初 は 幼い 女の子 だった のだが 、いつの間にか 俺 より 若干 若い 程度 の 外見 に まで 成長 して しまって いた 。 なんでも この 世界 の 亜人 という 種族 は 、急速に Lvを上げる と それに 応じて 幼い者 が 成長してしまうそうだ。
最初 は 奴隷 と して コキ 使って やろう と 思って いた が 、自己 満足 な 決闘 を 申し込んで 来た 元康 と の 戦い で 俺 を 信じて くれて 、自分 の 利益 を 犠牲 に して 行動 して くれた 。 そんな こと も あり 、今では 大切な 仲間 として 信頼 する こと に している 。 正直 、この 世界 の 連中 なんて 全員 死んで しまえ と 思って いた けれど 、少し だけ 助け たい と 思える ように なった 。
「 あ ……」
ラフタリア が 目 を こすり ながら 起き上がる 。
「おはよう ございます 。 ナオフミ 様 」
「ああ ……おはよう 」
ラフタリア は かなり の 美少女 だ 。
顔 の つくり は 芸術 品 に 匹敵 する ほど 整って いて 、美少女 という 言葉 以外 で 表現 する の も 憚られ る 。
髪 の 色 は 茶色 で 、背中 まで 伸ばして おり 、長くて 若干 カール が 掛かって いる 。 瞳 は 大きく 、澄んで いる ように 思える 。 色 は 綺麗な 紅茶 色 。 俺 が 今まで 出会った 女の子 の 中 で 、その 瞳 の 美しさ は 他 に 類 を 見 ない 。
ここ まで 純粋 そうな 瞳 を 維持 する の は 難しい 。 外見 年齢 に 不相応な ピュア な 瞳 が ラフタリア の チャームポイント だ 。
この ラフタリア と 一緒に 俺 は Lv 上げ と 金 稼ぎ を 最初の 波 ……この 世界 で 二 番目の 波 が 発生する まで 行い 、幸いに も 乗り切った 波 との 戦い は 後 で 説明しよう と 思う 。 問題 は 波 の 後 の こと だった 。
「では 朝食 を 頂き に 行き ましょう 」
「そう だ な 、城 の 食堂 で 貰える かな ? 」「おそらく は ……行って み ましょう 」 と 、今 まで の 出来事 を 思い出す の は 程々に して 、俺達 は 食堂 に 向かった 。
ちなみに 俺 の 汚名 は まだ 雪がれて おらず 、国 の 連中 の 俺 へ の 態度 は よく ない 。 現に 食堂 に 行く と 兵士 が 俺達 の 行く手 を 遮り 、勇者達 が 食事中 だ とほざいた 挙句 、兵士の 食事 が 終わって から に しろ と 続ける 。 盾 の 力 で 攻撃 する こと が できない と いう 制限 が 無かったら 殴り 飛ばして いる ところ だ 。
俺 も その 勇者 の 一人 である はずな のに も かかわらず な !
さて 、食事 を 終えた 俺達 は 謁見 の 間 に 通さ れた 。
今回 、俺達 が 城 に 居る の は 波 から 世界 を 守った こと の 報酬 を 受け取る ため だ 。
たく 、支払う の が 翌日 だった の なら さっさと 言えば 良い ものを ……この クズ は 俺 へ の 嫌がらせ に 命 でも 懸けて いる のか 。
ただ で さえ 顔 を 合わせる の も 嫌な 奴 等 と 一緒に 居る んだ 。 胃 に 穴 が 空いたら どう する んだ 。
俺 が クズ と 心 の 中 で 呼んで いる の は 、この 国 の 国王 オルトクレイ =メルロマルク ……何 世 だった かな ? 覚え たく も ない 。 ともかく 、俺 を 召喚 した 国 の 王 だ 。
俺 が 冤罪 の 嫌疑 を 掛け られた 時 、真実 の 追究 なんか 放っておいて 、俺 に 罪 を 被せ やがった 酷い 王 だ 。 挙句 、昨夜 は 権力 を 使って 無理やり 騒ぎ を 起こし やがった 。
「では 今回 の 波 まで に 対する 報奨金 と 援助金 を 渡す と しよう 」
次の 波 に 備える ため の 金 だ 。 クズ 王 は 勇者 全員 に 渡す こと を 約束 して いた 。
ツカツカ と 金 袋 を 持った 側近 が 現れる 。
「では それぞれ の 勇者 達 に 」
金 袋 の 方 に 視線 が 向く 。
確か 、月々 の 援助金 として 、最低 でも 銀貨 五〇〇 枚 は 貰える はず 。
今回 の 金 で 何 を 買う か 。
とりあえず ラフタリア の 武器 あたり が 妥当 か ?
あるいは 、この際 だ から 良い 防具 を 買う という 選択 も ある 。 ああ 、でも そろそろ 薬 の 調合 で 使う 機材 の 新調 も し たい ところ だ し なぁ 。 実は あの 機材 、盾 が 反応 していて 、吸わ せたら 何 に なる か 興味 が あった んだ よ なぁ 。 ジャラジャラ という 金 袋 の 音 に 、何 を 買おう か と 夢 が 広がる 。
俺 の 目の前 に 金袋 の 中身 が わかる ように 見せられる 。
ひ ー ふ ー み ー ………… うん 、 きっちり 数えて 五〇〇 枚 ある 。
「モトヤス 殿 に は 、今回 の 活躍 と 依頼 達成 に よる 期待 と を あわせて 銀貨 四〇〇〇 枚 」
おい !
呆 気 け に 取られた 俺 は 元康 の 持つ 、重そうな 袋 に 目 を 奪われた 。 文句 を 言ったら それ こそ 、何 倍 も の 嫌味 を 言われ そうだ から 黙って いる が 、拳 に 力 が 集まる の を 感じる 。
この モトヤス と 呼ばれた 奴 、本名 は 『北村 元康 』。 俺 と 同じく 異世界 の 日本 から 来た 勇者 で 、選ばれた 伝説 の 武器 は 槍 。 だから 槍 の 勇者 と 呼ばれている 。
年齢 は 二一 歳 。 俺 以外 の 勇者 は この 世界 に よく 似た ゲーム を プレイ した 経験 と 知識 を 持って いる らしい 。 しかし 、その 知識 を 俺 に は 教え ず 、俺 以外 の 勇者 は 俺 を ハメ て 蹴落とした のだ 。
で 、この 元康 、何でも 女 関係 で 刺さ れて この 世界 に 飛んで きた そうだ 。 あくまで 本人 談 な ので 真偽 は 不明 だ 。
この 元康 、仲間 は 全員 女 、と いう ハーレム パーティー を 作って いる 無類の 女好き だ 。
昨夜 の 事 、ラフタリア が 俺 の 奴隷 として 戦い を 強い られている と 思いこんだ コイツ は 、ラフタリア を 救う と 意気込んで 強引に 決闘 を 申し込んで きた 。
本来 決闘 と は 双方 が 譲れない こと を 賭けて 戦う もの なのだが 、コイツ は 俺 に とって 損に しか ならない 条件 を 提示 し 、俺 に 攻撃手段 が 無い こと を 知り ながら 決闘 を 仕掛けてきた 。 もちろん 、受ける 義理 も 無かった ので 断った が 、前述 の クズ 王 が 強引に 決闘 を 行わ せた 。 しかも 俺 が 負ければ ラフタリア を 解放 する だけ で 、元康 に は 何の デメリット も 無い 、不公平 極まりない 戦い を させられた 。
だからといって 簡単に 負け を 認める わけに は いか ない 。 俺 は 無い 知恵 を 絞って 元康 を 追い詰めた 。 そこ で 卑怯 な 横やり が 入り 、 俺 は 無理やり 負け させられて しまった 。
最終 的に は 、ラフタリア が 自ら の 意思 で 元康 の 手 を 拒んで 俺 の 元 に 戻って くれた のが 救い だ 。
そんな 感じ で コイツ は 俺 の 不幸 の 元凶 に 一 枚 噛んで いる 敵 だ 。
正直 言えば 女性 経験 が 豊富 そうな イケメン の ナンパ な 男 と いう の が 元康 の 外見 だ 。
豪華な 銀 の 胸 当て を 着け 、まさしく 勝ち 組 に 乗った 勇者 と 表現 する の が 正しい だろう 。
「次に レン 殿 、やはり 波 に 対する 活躍 と 我が 依頼 を 達成して くれた 報酬 を プラス して 銀貨 三八〇〇 枚 」
お前 も か !?
クール を 装って いる が 、元康 に 負けて いる の が 悔しい ような 顔付き で 錬 が 金 袋 を 持っている 。 しかも 小声 で 『 王女 の お気に入り だ から だ ろ ……』 と 、 毒 づ いて いる 。
この 錬 という 奴 は 、本名 は 『天 木 き 錬 』と いい 、俺 と 同じく 異世界 の 日本 から 召喚 さ れた 剣 の 勇者 だ 。 歳 は 一六 歳 だった か 。
但し 、俺 の 知る 日本 で は なく 異世界 の 日本 ……えっ と 具体的に いう と VRMMO と いう 架空 の 電脳 世界 に 入る こと が できる ほど 科学 の 進んだ 日本 から この 世界 に 来た という 経緯 が ある。
様々な 日本 が ある ようで 、昔 の 俺 だったら 錬 の 世界 に も 行って みたい と か 思った だろう 。
錬 は 年相応 の 身長 で 女 顔 の 美少年 剣士 だ 。 性格 は クール を 演じて いる 熱血 ……な の か ? 内心 は 他者 を 見下して 、「俺 の 知る ゲーム 知識 で 世界 を 救う 。 本当の 勇者 は 俺 だ 」と か 思って い そう 。
「そして イツキ 殿 ……貴 殿 の 活躍 は 国 中 に 響いて いる 。 よく あの 困難な 仕事 を 達成 して くれた 。 銀貨 三八〇〇 枚 だ 」
樹 に 至って は 『この 辺り が 妥当 でしょう 』と 呟き つつ 、元康 の 方 へ 羨ましそうな 目 を 向けている の が わかった 。
樹 の 本名 は 『川澄 樹 』、歳 は 錬 より 一つ 上 の 一七 歳 。 物腰 の 柔らかい 少年 と いう の が 第 一 印象 だ 。 ただ 、なんて いう か 儚げ だ 。 所持 する 伝説 の 武器 は 弓 。
あまり 接点 が ない から よく 知ら ない 。 それ でも 元康 や 錬 の ように ゲーム の 知識 を 持って いて 、俺 と は 違う 世界 の 日本 出身 だ 。
勇者 の 中 じゃ 一 番 幼く 見える だろう な 。 実年齢 は 錬 が 一番 下 だろう けど 。
そんな 事 より も 、錬 へ の 依頼 って 何 だ よ ? 初めて 聞いた ぞ 。
「ふん 、盾 に は もう 少し 頑張って もらわ ねば ならん な 」
名前 で すら ない ! 誰 が 盾 だ 。
頭 の 血管 が 切れ そうな 苛立ち を 感じる 。 昨日 あれ だけ 我侭 を ほざいた 貴様 が 言う の か !?
で 、俺 が 金 袋 を 受け取ろう と する と 何故 か 引っ込め られた 。
「奴隷 紋 の 解呪 代 として 援助金 は なし と させて もらう ! 」て め ぇ ! 「……あの 、王様 」
ラフタリア が 手 を 上げる 。
「 なんだ ? 亜人 」
「……その 、依頼 と は なんです か ? 」ラフタリア も 察して いる のだろう 。 報酬 が 貰え ない こと に 目 を 瞑って 、別の 観点 から 尋ねる 。
「我が国 で 起こった 問題 を 勇者 殿 に 解決 して もらって いる のだ 」
「……何故 、ナオフミ 様 は 依頼 を 受けて いない のですか ? 初耳 な の です が 」
「 フッ ! 盾 に 何 が できる 」
う ぜ ぇ !
謁見 の 間 が 失笑 に 包ま れる 。
ああ 、やばい 。 怒り で 暴れ だし そう 。
「…………」
そう 思った のだ が 、ラフタリア の 方 から 拳 を ぎゅっと 握り締める 音 が 聞こえて 来た 。
見る と 無言 で 怒り を 押し殺して 震えて いる 。
…… うん 。 堪え きれ そう 。
「ま 、全然 活躍 し なかった もん な 」
「そう です ね 。 波 で は 見掛け ませ ん でした が 何 を して いた のです か ? 」「足手まとい に なる なんて 勇者 の 風上 に も 置け ない 奴 だ 」 三 勇者 共 が それぞれ 皮肉 混じり に 言った 。
苛立ち も 最高潮 だ 。 せめて 嫌味 だけ でも 言って おく か 。
「民間 人 を 見殺し に して ボス だけ と 戦って いれば 、そりゃ あ 大 活躍 だろう さ 。 勇者 様 」
そう 、コイツ 等 は 波 で 現れた ボス に だけ 目 が 行って 、今にも 死に そうな 連中 を 無視して 突撃して いった 。 その お 鉢 が 回って きて 、俺達 は 村 の 連中 を 助けて 歩く こと に なった 。
「 ハッ ! そんな の は 騎士団 に 任せて おけば 良い んだ よ 」
「その 騎士 団 が ノロマ だ から 問題 なんだ ろ 。 あの まま だったら 何 人 の 死人 が 出た こと やら ……ボス に しか 目 が 行っていない 奴 に は それ が わからなかった んだ な 」
元康 、錬 、樹 が 騎士団 の 団長 の 方 を 向く 。 すると 団長 の 奴 、 忌 々 し そうに 頷 うなずいた 。
「だが 、勇者 に 波 の 根源 を 対処 して もらわ ねば 被害 が 増大 する の も 事実 、うぬぼれる な ! 」この 野郎 ……お前 が それ を 言う の か ? 城 で ふんぞり返って いた だけ の 分 際 で 偉そうに 。 そもそも 勇者 って 俺 も 勇者 だ よ 。 それとも アレ か 、盾 は 勇者 じゃ ない って か ?
「は いはい 。 じゃあ 俺 達 は 色々 と 忙しい んで ね 。 行か せて もらい ます ヨー 」
ここ で ムキ に なって も 意味 は ない 。 この 程度 で 立ち去る の が 妥当 だろう 。
「まて 、盾 」
「 あ ? なんだ よ 。 俺 は 城 で ふんぞり返って る だけ の クズ 王 と 違って 暇 じゃ ない んだ 」
「お前 は 期待 はずれ も いい ところ だ 。 消え失せろ ! 二度と 顔 を 見せる な 」
くっ !?コイツ は どこまでも 俺 を 不快に させる 野郎 だ !
「それ は 良かった です ね 、ナオフミ 様 」
満面 の 笑み で ラフタリア が 答える 。
「…… え ? 」「もう 、こんな 無駄な 場所 へ 来る 必要 が なくなり ました 。 無意味 に 時間 を 浪費 する より も 、もっと 必要な 事 に 貴重な 時間 を 割き ましょう 」
「あ ……ああ 」
なんか ラフタリア が 頼り に なって きて いる 気 が する 。
ギュッと ラフタリア に 手 を 握られた 。 きっと ラフタリア も 怒って いる んだろう 。 一 人 だけ だ と 耐え られ ない 怒り も 鎮まって いく ように 感じた 。
「ちょっと 待って ください 」
樹 が 手 を 上げて クズ に 異論 を 唱えた 。
「なんじゃ 弓 の 勇者 殿 ? 」何 を 言う つもりだ ? どうせ 碌 な 事 を 言わ ない んだろう けど さ 。
「昨日 の 事 な のです が 、尚文 さん に 対して 行った 不正 に 関する 問題 を どう 考えて いる のですか ? と 、尋ねて いる のです 」一瞬 で 場 の 空気 が 固まった 。
「どう 、と は ? 」「ですから 、ラフタリア さん を 賭けた 勇者 同士 の 戦い に おいて 不正 を 行った に も かかわらず 、勝手に 奴隷 紋 でした っけ ? …… を 、 解いて おき ながら 援助 金 を 支給 しない と いう の は どう な の です か と 聞いて いる ん です 」
なんだ ? 樹 の 目 が 普段 に も 増して 鋭く 、クズ を 強く 詰問 している ようだった 。
「そう だ な 、俺 も 見て いた が 、明らかに 尚文 は 元康 に ルール 上 で は 勝って いた 」
「俺 は 負けて ねぇ ! 」元康 が 異議 を 唱える が 、錬 と 樹 の 目 は 冷たい 。 「返答 次第 で は 尚文 さん が 本当に 性 犯罪 を 犯した の か ? と いう 所 まで 遡る こと に なり ます 」
「あ 、う ……」
クズ の 奴 が 視線 を 泳がせ ながら 口 を つむぐ 。
「違い ます わ イツキ 様 、レン 様 ! 」派手な 装飾 を 身 に 付け 、厚い 化粧 を した ビッチ の ような 女 が そこ に 割り込んで 言い放った 。 そう 、コイツ が 諸悪 の 根源 に して 俺 に 犯罪者 の 汚名 を 着せた 最低の ビッチ 女 だ !
マイン =スフィア 。 本名 は マルティ と 言う らしい が 、名前 なんて どう で も いい 。
性格 を 表した 血 の ように ドス 赤い 髪 、忌々しい が 容姿 だけ は 美しい 。
国 が 用意 した 冒険者 が 誰一人 と して 俺 の 仲間 に なろう と しなかった 中 で 唯一 俺 の 仲間 に なった 。 だが 、 支度 金 と して 支給 された 俺 の 金 を 全て 奪った 挙句 元康 の 元 へ 下り 、 俺 に 性 犯罪者 の 汚名 を 着せた 、 とんでもなく 腹黒い 女 だ 。
だ から これ から 俺 は 心 の 中 で この クソ むかつく 魔女 を ビッチ と 呼ぶ こと に 決めた 。
しかも 事もあろうに この ビッチ 、この 国 の 王女 だ と か 。
俺 が 異世界 に 飛ぶ 前 に 読んでいた 書物 、四 聖 武器 書 に も ビッチ っぽい 姫 が 出てきた 。 コイツ の 事 な んじゃないか と 睨んでいる 。
「盾 の 勇者 は 一 対 一 の 決闘 において マント の 下 に 魔物 を 隠し持っていた のです 。 ですから 私 の 父 である 国王 は 采 さい配 は いと して 決着 の 判決 を 見送った の です 」
何 を 言って やがる 。 攻撃 の 手段 が 無い 俺 に 対して 一対一 で 決闘 を 申し込んだ 時点 で 勝敗 も 糞 も ない だろう が ! 当然 それ を わかって いて 決闘 さ せた んだろう が な 。
「考え は わかり ます けど ……」
「納得 は 無理 だ ろ 」
樹 と 錬 が 不満 気 に して いる 。
ビッチ の 奴 も 忌々しげ に 言い訳 を 考えている 。 こういう ビッチ は 悪知恵 だけ は 働く から な 。
「マイン さん 。 それ でも あなた が 後ろ から 魔法 を 放った こと は 反則 です 」
「仕事 を して いない の は 確か だろう が 、見た 感じ だと ギルド から の 依頼 も 来て いない みたいだ し 、最低限 の 援助 は 必要な んじゃないか ? 実際 、騎士 団 の 代わり に 村 を 守った んだ ろ ? 」ビッチ が 小さく 舌打ち する の が 聞こえて くる 。 ざまあ ない な 。 権力 で 揉み消す に も 、相手 は 勇者 だ から 騙す に 騙せない の は わかっている だろ 。
現状 証拠 で こっち の 方 が 優勢な んだ よ 。 他 に 証人 が いなかった 冤罪 の 時 と 一緒に するな 。
「…… しょうが ない 。 では 最低 限 の 援助金 だけ は 支給 して やろう 。 受け取る が 良い 」
クズ が 高らかに 命令 する と 金 袋 が 俺 に 受け渡さ れ る 。
「では 王様 、私達 は おいとま させて いただきます ね 。 勇者 様 方 、正しい 判断 に 感謝 いたし ます 」
と 軽やかな 歩調 で ラフタリア は 俺 を リード し 、城 を 後 に する 。
「負け 犬 の 遠吠え が 」
お前 が 言う な と 言い たく なる 元康 と 、無言 で 肩 を すくめる 錬 と 樹 。
…… うん 。 理不尽 を 共有 する って 、こんなに も 気分 が 楽に なる んだ な 。
錬 も 樹 も 、一応 は 元康 へ の 疑い を 持った ようだ 。 ま 、見て 見ぬ 振り を して いる のだ から 許し は し ない けど 。
「では 、あの 奴隷 商 の テント に 行って 奴隷 紋 を 掛けて もらい ましょう 」
「 え ? 」城 を 出る と ラフタリア が 振り向いて 言った 。 「じゃ ない と ナオフミ 様 は 私 を 心から 信じて くれません から ね 」
「いや ……もう 、別に 奴隷 と か じゃ なくて も 良い んだ ぞ ? 」「ダメ です 」 「 はい ? 」「ナオフミ 様 は 奴隷 以外 を 信じ られ ない 方 です 。 嘘 を 吐いた って ダメ です よ 」
……俺 は ラフタリア の 育て方 を 間違えた の かも しれない 。
確かに 奴隷 以外 信じ られ ない と いう の は 事実 だ けど 、ラフタリア は 奴隷 で なく たって 信じて も 良い 。
もしも ラフタリア が 自分 の 事 だけ を 考えて いた なら 、決闘 の 時 に 元康 の 下 へ 行けば 良かった 。
現に この 国 の 連中 に 嫌わ れて いる 俺 と 一緒に いて 良い 事 なんて 無い し 。
「あの さ 、ラフタリア 」
「なん です か ? 」「別に 呪い を 掛け なくて も 良い んだ ぞ ? 」「いいえ 、掛けて もらい ます 」 ……何故 、この 子 は こんなに も こだわる んだ ?
「私 も ナオフミ 様 に 信じて もらって いる 証 が 欲しい のです 」
その 言葉 を 聞いて 、純粋に この 子 を 守り たい と 思った 。
俺 の 胸 の 中 に 湧いて くる 思い 、これ が 恋心 か と も 思う が 、何か 引っかかる 。
外見 こそ 大人 だ が 、ラフタリア は ほんの 少し 前 まで 子供 だった 。 というのも 、亜人 と いう 種族 は Lv が 上がる と 年齢 以上 に 成熟 していく と いう 特徴 が ある のだ。
ラフタリア は 親 を 波 の 災害 に 襲われて 亡くして いる 。 だから 、守り たい と 思う 気持ち は 恋心 と いう より は 親心 に 近い の かも 。 幼い ラフタリア が 大きく 育った から ……そうに 違いない 。
これ が 親心 と いう 物 な のだろう 。 だから 俺 が 親 代わり に なら ねば 。
「さ 、行き ましょう 」
そこ まで 言う の なら 止める 必要 は 無い 。 好きな ように させよう 。
俺 達 は 奴隷 を 扱って いる 、あの テント に 顔 を 出す こと に した のだった 。