天狗 の 酒盛り
天狗 の 酒盛り
むかし むかし 、 急ぎ の 仕事 で 箱根 の 山 を 越えよう と する 、 二人 連れ の 飛脚 ( ひきゃく ) が いました 。 ♪ えっさ 、 ほ い さっさ ♪ えっさ 、 ほ い さっさ やがて 日 も 西 に 傾き 、 月 が 街道 を ほんのり と 照らしました 。 「おい 、見ろ よ 。 いい 月 だ ぜ 」「うん 。 それにしても 前 の 方 から 、にぎやかな 声 が 聞こえて こない か ? 」「ああ 、聞こえる 、聞こえる 。 もしかすると 、旅 の 人 かな ? 」「それにしても 、馬鹿 に 派手 じゃない か ? 」 「 うむ 。 大勢 の ようだ が 、まさか 殿さま の 行列 が 、こんな 夜中 に 通る わけもない し 」不思議 に 思い ながら も 二人 が 走って いく と 、街道 を さえぎった 紅白 の 幕 に ぶつかりました 。 にぎやかな 声 は 、その 中 から 聞こえて きます 。 歌声 や 手拍子 に 、楽しそうな 笑い声 も 聞こえて きます 。 二 人 の 飛脚 は 、幕 の 外 から 耳 を そばだてました 。 「 おい 。 どうやら 、酒盛り の 最中 らしい な 」「うん 。 つづみ や 太鼓 の 音 も 、聞こえて くる ぞ 」「しかし 、こんな ところ で 酒盛り されて は 邪魔 だ 。 こちとら 、急ぎ の 飛脚 なのに 」「そうだ 。 江戸 まで は 、まだまだ 遠い ぞ 」そこ で 二人 は 、幕 の 中 に 向かって 声 を かけました 。 「 もし 、 もし 。 わたくし ども は 、急ぎ の 飛脚 で ございます 」「なにとぞ 、ここ を お 通し ください ませ 」する と 幕 の 中 から 、年寄り らしい 声 が 丁寧に 返事 を し ました 。 「 おう 、 飛脚 どの か 。 遠慮 のう 、お 通り なされ 」そこ で 二人 は 、「では 、遠慮 無く 」と 、幕 を くぐって 中 に 入りました 。 する と 不思議な 事 に 、今 まで あった 紅白 の 幕 が パッと 消えて しまった のです 。 歌声 も 笑い声 も 、つづみ や 太鼓 の 音 も 突然 消えて 、ただ 明るい 月 が 、いつも の 街道 を さびしく 照らして いる だけ です 。 二 人 の 飛脚 は びっくり して 、しばらく きょとんと していました が 、やがて 、「えい 。 奇妙な 事 だ が 、こうして は おれ ぬわ 」「その 通り 。 それ 、急げ ! 」と 、二人 が 走り出す と 、後ろ の 方 から 、またもや にぎやかな 酒宴 の 騒ぎ が 聞こえて きました 。 (はて ? )二人 が 一緒に 振り返る と 、消えた はず の 紅白 の 幕 が 、いま 通って きた ばかり の 街道 に 張られている で は ありません か 。 「おいおい 、こりゃ 、ひょっとすると 、うわさ に 聞いた 天狗 の 酒盛り じゃ なかろう か ? 」 「 うん 。 どうやら 、そう らしい な 」「うっかり しとる と 、つかまる ぞ ! 」「それ 、逃げろ ! 」二人 の 飛脚 は 、大急ぎ で 逃げて 行きました 。
おしまい