死神 の 使い
死神 の 使い
戦国 時代 に は 、多く の 殿さま が 自分 と 良く 似た 家来 を 影武者 (かげ むしゃ →敵 を あざむく ため 、殿さま と 同じ かっこう を させた 武者 )に して 、自分 が 殺される 確率 を 減らしていました 。
ある 日 の 夕方 。 髪 の 毛 が 真っ白 の おじいさん が 、お城 へ と やって 来ました 。 「こら 、用 の ない 者 が 入ってはならん ! 」門番 が 追い返そうとしました が 、おじいさん は 門番 の 腕 を すり抜けて 、そのまま 城 の 中 へ と 入っていった のです 。 「くせ者 じゃ 、取り押さえろ ! 」 門番 が 大声で 言った 時 、すでに おじいさん は 影武者 の 部屋 に 入っていました 。 「何者か ? 」影武者 が 言う と 、おじいさん が 答えます 。 「お前さま を 、お迎え に まいってございます 」「迎え とは 、わし を どこへ 連れて行く つもりだ ? 」「はい 、冥土 の 旅 へ でございます 。 明日 の この 時間 に 、また 参ります 。 それ まで に 、お 支度 を なさって お かれ ませ 」それ を 聞いて 、影武者 に は お じいさん の 正体 が 分かりました 。 「お 主 は 、死 神 の 使い だ な 。 だが 、わし は まだ 死なぬ ぞ 。 死んで たまる か ! 」影武者 が 、刀 を 抜きました 。 でも 、おじいさん は 落ち着いた 声 で 言います 。 「死に とうない と お思い なら 、よい 事 を お教え いたしましょう 。 お前 さま と 良く 似た お方 を 、明日 の この 時間 に 、この 部屋 に おかれませ 。 お前 さま の 代わり に 、その お方 を 連れて 行きましょう 。 ・・・お前 さま に 良く 似た お方 とは 、言わ なく とも わかります な 」おじいさん は そう 言う と 、煙 の 様 に 消えて しまいました 。 「わし に 、良く 似た お方 か ・・・」影武者 は 少し 考えて 、ニンマリ と 笑いました 。 影武者 に 良く 似た 者 は 、この お城 に 一人 しか いません 。 「これ こそ 、もっけ の さいわい と いう もの 。 一生 影武者 の まま で 生きる しか ない わし が 、本当の 殿さま に なれる 時 が 来た 。 本当の 殿さま に なれば 、あの 美しい 奥方 は 、わし の 妻 。 そして 、この 領地 も わし の 物 。 フフフフッ 、こいつ は いい 」
あくる 朝 、影 武者 が 殿さま に 言いました 。 「昨日 は 、見知らぬ 白髪 の 老人 が 城 に 忍び込んだ と の うわさ が あります 。 用心 の 為 に 、今日 は わたくし め が 殿 の 代わり を 」こうして 今日 一 日 は 、影 武者 が 殿さま の 部屋 に 、殿さま が 影 武者 の 部屋 で 過ごす 事 に した の です 。
その 日 の 夕方 、昨日 の おじいさん が お城 へ と やって来ました 。 「くせ者 じゃ ! 」門番 が おじいさん を 取り押さえようとしました が 、おじいさん は またもや 門番 の 腕 を すり抜けて 、そのまま 影武者 の 部屋 へ と やって来ました 。 おじいさん に 気づいた 殿さま が 、大声で 叫ぼうとしました 。 「無礼者 ! 誰か ・・・」しかし 殿さま は 、そのまま たたみ の 上 に 倒れてしまい 、家来たち が 駆けつけた 時 に は 、もう 死んでいました 。
その 夜 、主だった 家来たち が 緊急の 会議を 開き 、影武者が 殿さまに なる 事が 決まりました 。 殿さまが 急死した と 敵国に 知られたら 攻め込まれる かもしれない ので 、急死した のは 影武者だ と いう 事にした のです 。 殿さまに なる 様に と 言われた 影武者は 、ニンマリと 笑いました 。 「フフフフッ 、何もかも うまく いった ぞ 」
次の 日 、殿さまに なった 影武者は 主だった 家来たちを 広間へ 集めると 、今まで の いくさの 手柄に 対する ほうび だと 言って 、家来たちに 次々 と ほうびを 与えました 。 家来たち の 中 に は 影武者 が 殿さま に なった の を 良く 思わない 者 が いる ので 、そんな 家来たち の 機嫌 を 取る 為 です 。 殿さま に なった 影武者 が 上機嫌 で 家来たち に ほうび を 与えている と 、その 家来たち の 中 に 、あの 死神 の 使い の おじいさん が ちょこんと 座っていた のです 。 殿さま に なった 影武者 は 後ろ に 立てかけて ある ヤリ を つかむ と 、怖い 顔 で 言いました 。 「何 ゆえに 、また 参った ! その 方 の 用 は 、すんだ はず じゃ ! 」家来 たち は 息 を のみ 、いっせいに 白髪 の おじいさん を 見つめました 。 おじいさん は 、落ち着いた 声 で 言い ます 。 「おそれながら 、お前 さま を お迎え に 。 実は 殿さま の ご 寿命 ( じゅみょう ) も 、 影 武者 と 一 日 違い で ございました 」 「 おのれ 、 死 神 め ! 」殿さま に なった 影武者 は 、おじいさん に 向かって ヤリ を 突き出しました 。 しかし 足 を 滑らせて 、殿さま に なった 影武者 は 、自分 の ヤリ で 自分 の 心臓 を 突き刺して しまった の です 。 「殿 ! 」家来 たち が 駆け寄る と 、殿さま に なった 影武者 は 、もう 死んで いました 。 「まあ 一日でも 、願いが かなって 、よろしゅうございました な 」白髪の おじいさんは そう 言う と 、煙の 様に 消えて しまいました 。
おしまい