朗読 原稿 【 第 9 回 】 好奇心 の まなざし
【 第 9 回 】 好奇心 の まなざし 「 明日 、 自分 が 死ぬ と したら 、 今日 を 一生懸命 に 生きて いない の は いやだ 」 これ は 僕 の 想い です 。 「いつ 死んで も 悔い は ない 」という 意味 では ありません 。 起きて 、仕事 を して 、テレビ を 見て おしまい 。 それ が 人生 最後 の 日 なんて 、死んで も 死に きれ ない くらい 悔しい と 思う のです 。 だからといって 、夢 の ような 出会い や わくわく する 冒険 で 日々 を 彩りたい わけ では ありません 。 明日 で 命 が 終わる と して も 、後悔 せ ず 、おだやかに 世 を 去る 方法 ——それ は 、今日 を ていねいに 生きる こと 。 これ だけ だ と 僕 は 思います 。 ていねいに 生きる に は 、その 日 が 大切な 一日 である こと を 思い出させて くれる 、きっかけ が 必要 です 。 何 か 一 つ だけ でも いい から 、暮らし に 新し さ を 投げ込みましょう 。 この 夏 、『暮らし の 手帖 』編集部 に 僕 が 投げ込んだ 小さな 新しさ は 、扇子 でした 。 何も やる 気 に なれない ほど 暑い 毎日 、どう やったら 夏 を 楽しめる か と 考えた 僕 は 、編集 部員 全員 に 扇子 を プレゼントした のです 。 「さあ 、この 暑さ を 扇子 で 乗り切りましょう ! 」僕 が 話す と 、みんな 笑いました 。 小さな 扇子 で パタパタ やる より 、エアコン の ほう が 手っ取り早い と いう 人 も いる でしょう 。 しかし 扇子 と いう 、これ まで の 生活 に なかった 小さな 新しさ が 外 から ポーン と 入って くる こと で 、その 夏 は 変わります 。 扇子 を 見る たび 、「この 夏 は がんばろう 」と 思う 人 も いる かも しれません 。 一緒に パタパタ やれば 、扇子 は 「力 を 合わせて 働こう 」と いう アイコン に も なります 。 たかが 扇子 でも 新し さ が 加われば 、毎日 が 新鮮 に なります 。 おろし たて の まっさらな ノート を 大切に 使う が ごとく 、新鮮な 日 であれば ていねいに 生きよう と 思えます 。 扇子 は 物理 的な きっかけ です が 、毎日 を 新鮮に する 一番 の 方法 は 好奇心 を 持つ こと 。 ありふれた 今日 に 潜む 、新しさ を 見つける 好奇心 ——なんとも すてきな 響き だ と 思う のは 、僕 だけ で はない はずです 。 新しさ を 見つける 朝 が 、はじまり です 。 かけがえのない 一 日 に なります ように 。 松浦 弥太郎 『今日 も ていねいに 。