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銀河鉄道の夜 『宮沢賢治』(Night on the Galactic Railroad), 9-2. ジョバンニ... – Text to read

銀河鉄道の夜 『宮沢賢治』(Night on the Galactic Railroad), 9-2. ジョバンニ の 切符

고급 1 일본어의 lesson to practice reading

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9-2.ジョバンニ の 切符

ごと ごと ごと ごと 汽車 は きらびやかな 燐 光 の 川 の 岸 を 進みました 。 向こう の 方 の 窓 を 見る と 、野原 は まるで 幻燈 の ようでした 。 百 も 千 も の 大小 さまざま の 三角 標 、その 大きな もの の 上 に は 赤い 点々 を うった 測量 旗 も 見え 、野原 の はて は それら が いちめん 、たくさん たくさん 集まって ぼおっと 青白い 霧 の よう 、そこ から か 、または もっと 向こう から か 、ときどき さまざまの 形 の ぼんやりした 狼 煙 の ような もの が 、かわるがわる きれいな 桔梗 いろの そら に うちあげられる のでした 。 実に その すきとおった 奇麗な 風 は 、ばら の におい で いっぱいでした 。

「いかが です か 。 こういう りんご は おはじめて でしょう 」向こう の 席 の 燈台 看守 が いつか 黄金 と 紅 で 美しく いろどられた 大きな りんご を 落とさない ように 両手 で 膝 の 上 に かかえて いました 。 「おや 、どっから 来た のですか 。 立派 です ねえ 。 ここ ら で は こんな りんご が できる のですか 」青年 は ほんとうに びっくり した らしく 、燈台 看守 の 両手 に かかえられた 一もり の りんご を 、眼 を 細く したり 首 を まげたり しながら 、われ を 忘れて ながめて いました 。 「いや 、まあ おとり ください 。 どうか 、まあ おとり ください 」

青年 は 一 つ とって ジョバンニ たち の 方 を ちょっと 見ました 。 「さあ 、向こう の 坊ちゃん が た 。 いかが です か 。 おとり ください 」

ジョバンニ は 坊ちゃん と いわ れた ので 、すこし しゃくに さわって だまって いました が 、カムパネルラ は 、「ありがとう 」と 言いました 。 すると 青年 は 自分 で とって 一 つずつ 二人 に 送って よこしました ので 、ジョバンニ も 立って 、ありがとう と 言いました 。 燈台 看守 は やっと 両腕 が あいた ので 、こんど は 自分 で 一つ ずつ 眠っている 姉弟 の 膝 に そっと 置きました 。 「どうも ありがとう 。 どこ で できる のです か 。 こんな 立派な りんご は 」

青年 は つくづく 見 ながら 言いました 。 「この 辺 で は もちろん 農業 は いたします けれども たいてい ひとりでに いい もの が できる ような 約束 に なって おります 。 農業 だって そんなに 骨 は 折れ は しません 。 たいてい 自分 の 望む 種子 さえ 播け ば ひとりでに どんどん できます 。 米 だって パシフィック 辺 の ように 殻 も ない し 十 倍 も 大きくて 匂い も いい のです 。 けれども あなた が たの いらっしゃる 方 なら 農業 は もう ありません 。 りんご だって お 菓子 だって 、かす が 少しも ありません から 、みんな その ひと その ひと に よって ちがった 、わずかの いい かおり に なって 毛あな から ちらけて しまう のです 」にわかに 男の子 が ばっちり 眼 を あいて 言いました 。 「ああ 、ぼく いま お母さん の 夢 を みて いた よ 。 お母さん が ね 、立派な 戸棚 や 本 の ある とこ に いて ね 、ぼく の 方 を 見て 手 を だして にこにこ にこにこ わらった よ 。 ぼく 、おっかさん 。 りんご を ひろって きて あげましょう か 、と 言ったら 眼 が さめちゃった 。 ああ ここ 、さっき の 汽車 の なか だ ねえ 」

「その りんご が そこ に あります 。 この おじさん に いただいた のです よ 」青年 が 言いました 。 「ありがとう おじさん 。 おや 、かおる ねえさん まだ 寝てる ねえ 、ぼく 起こして やろう 。 ねえさん 。 ごらん 、りんご を もらった よ 。 おきて ごらん 」

姉 は わらって 眼 を さまし 、まぶし そうに 両手 を 眼 に あてて 、それ から りんご を 見ました 。 男の子 は まるで パイ を たべる ように 、もう それ を 食べて いました 。 また せっかく むいた その きれいな 皮 も 、 くるくる コルク 抜き の ような 形 に なって 床 へ 落ちる まで の 間 に は すうっと 、 灰 いろ に 光って 蒸発 して しまう のでした 。 二 人 は りんご を たいせつに ポケット に しまいました 。 川下 の 向こう岸 に 青く 茂った 大きな 林 が 見え 、その 枝 に は 熟して まっ赤 に 光る まるい 実 が いっぱい 、その 林 の まん中 に 高い 高い 三角 標 が 立って 、森 の 中 から は オーケストラ ベル や ジロフォン に まじって なんとも 言えず きれいな 音 いろ が 、とける ように 浸みる ように 風 に つれて 流れて 来る のでした 。 青年 は ぞくっと して からだ を ふるう ように しました 。 だまって その 譜 を 聞いて いる と 、そこら に いちめん 黄いろ や 、うすい 緑 の 明るい 野原 か 敷物 か が ひろがり 、また まっ白 な 蝋 の ような 露 が 太陽 の 面 を かすめて 行く ように 思われました 。 「まあ 、あの 烏 」カムパネルラ の となり の 、かおる と 呼ばれた 女の子 が 叫びました 。 「からす で ない 。 みんな かささぎ だ 」カムパネルラ が また 何気なく しかる ように 叫びました ので 、ジョバンニ は また 思わず 笑い 、女の子 は きまり 悪 そうに しました 。 まったく 河原 の 青じろい あかり の 上 に 、黒い 鳥 が たくさん たくさん いっぱい に 列 に なって とまって じっと 川 の 微光 を 受けて いる のでした 。

「かさ さぎ です ねえ 、頭 の うしろ の とこ に 毛 が ぴんと 延びてます から 」青年 は とりなす ように 言いました 。 向こう の 青い 森 の 中 の 三角 標 は すっかり 汽車 の 正面 に 来ました 。 その とき 汽車 の ずうっと うしろ の 方 から 、あの 聞きなれた 三〇六 番 の 讃美歌 の ふし が 聞こえて きました 。 よほど の 人数 で 合唱 している らしい のでした 。 青年 は さっと 顔 いろ が 青ざめ 、たって 一ぺん そっち へ 行き そうに しました が 思いかえして また すわりました 。 かおる 子 は ハンケチ を 顔 に あてて しまいました 。 ジョバンニ まで なんだか 鼻 が 変に なりました 。 けれども いつ とも なく 誰 とも なく その 歌 は 歌い出さ れ だんだん はっきり 強く なりました 。 思わず ジョバンニ も カムパネルラ も いっしょに うたい だした のです 。

そして 青い 橄欖 の 森 が 、 見えない 天の川 の 向こう に さめざめ と 光り ながら だんだん うしろ の 方 へ 行って しまい 、 そこ から 流れて 来る あやしい 楽器 の 音 も 、 もう 汽車 の ひびき や 風 の 音 に すりへらされて ず うっとかすかに なりました 。 「あ 、孔雀 が いる よ 。 あ 、孔雀 が いる よ 」

「あの 森 琴 の 宿 でしょう 。 あたし きっと あの 森 の 中 に むかし の 大きな オーケストラ の 人 たち が 集まって いらっしゃる と 思う わ 、まわり に は 青い 孔雀 や なんか たくさん いる と 思う わ 」

「ええ 、たくさん いたわ 」女の子 が こたえました 。 ジョバンニ は その 小さく 小さく なって いま は もう 一つ の 緑 いろ の 貝 ぼたん の ように 見える 森 の 上 に さっさっと 青じろく 時々 光って その 孔雀 が はね を ひろげたり とじたり する 光 の 反射 を 見ました 。 「そう だ 、孔雀 の 声 だって さっき 聞こえた 」カムパネルラ が 女の子 に 言いました 。 「ええ 、三十 匹 ぐらい は たしかに いた わ 」女の子 が 答えました 。 ジョバンニ は にわかに なんとも 言え ず かなしい 気 が して 思わず 、

「カムパネルラ 、ここ から は ね おりて 遊んで 行こう よ 」と こわい 顔 を して 言おう と した くらい でした 。

ところが その とき ジョバンニ は 川下 の 遠く の 方 に 不思議な もの を 見ました 。 それ は たしかに なに か 黒い つるつるした 細長い もの で 、あの 見えない 天の川 の 水 の 上に 飛び出して ちょっと 弓 の ような かたち に 進んで 、また 水 の 中に かくれた ようでした 。 おかしい と 思って また よく 気 を つけて いましたら 、こんど は ずっと 近く で また そんな こと が あった らしい のでした 。 その うち もう あっち でも こっち でも 、その 黒い つるつるした 変な もの が 水 から 飛び出して 、まるく 飛んで また 頭から 水 へ くぐる のが たくさん 見えて きました 。 みんな 魚 の ように 川上 へ のぼる らしい のでした 。

「まあ 、なんでしょう 。 た あ ちゃん 。 ごらん なさい 。 まあ たくさん だ わ ね 。 なん でしょう あれ 」

眠 そうに 眼 を こすって いた 男の子 は びっくり した ように 立ちあがりました 。 「なんだろう 」青年 も 立ちあがりました 。 「まあ 、おかしな 魚 だ わ 、なんでしょう あれ 」

「海豚 です 」カムパネルラ が そっち を 見 ながら 答えました 。 「海豚 だ なんて あたし はじめて だ わ 。 けど ここ 海 じゃ ない んでしょう 」

「いるか は 海 に いる と きまって いない 」あの 不思議な 低い 声 が また どこ から かしました 。 ほんとうに その いるか の かたち の おかしい こと は 、二 つ の ひれ を ちょうど 両手 を さげて 不動 の 姿勢 を とった ような ふうに して 水 の 中 から 飛び出して 来て 、うやうやしく 頭 を 下 に して 不動 の 姿勢 の まま また 水 の 中 へ くぐって 行く のでした 。 見え ない 天の川 の 水 も その とき は ゆらゆら と 青い 焔 の ように 波 を あげる のでした 。

「いるか お 魚 でしょう か 」女の子 が カムパネルラ に はなしかけました 。 男の子 は ぐったり つかれた ように 席 に もたれて 眠って いました 。 「いるか 、魚 じゃ ありません 。 くじら と 同じ ような けだもの です 」カムパネルラ が 答えました 。 「あなた くじら 見た こと あって 」

「僕 あります 。 くじら 、頭 と 黒い しっぽ だけ 見えます 。 潮 を 吹く と ちょうど 本 に ある ように なります 」「くじら なら 大きい わ ねえ 」「くじら 大きい です 。 子供 だって いるか ぐらい あります 」「そう よ 、あたし アラビアンナイト で 見た わ 」姉 は 細い 銀 いろ の 指輪 を いじり ながら おもしろ そうに はなし していました 。 (カムパネルラ 、僕 もう 行っちまう ぞ 。 僕 なんか 鯨 だって 見た こと ない や )

ジョバンニ は まるで たまらない ほど いらいら し ながら 、それ でも 堅く 、唇 を 噛んで こらえて 窓 の 外 を 見て いました 。 その 窓 の 外 に は 海豚 の かたち も もう 見え なく なって 川 は 二 つ に わかれました 。 その まっくらな 島 の まん中 に 高い 高い やぐら が 一つ 組まれて 、その 上 に 一人 の 寛い 服 を 着て 赤い 帽子 を かぶった 男 が 立って いました 。 そして 両手 に 赤 と 青 の 旗 を もって そら を 見上げて 信号 している のでした 。

ジョバンニ が 見て いる 間 その 人 は しきりに 赤い 旗 を ふって いました が 、にわかに 赤旗 を おろして うしろ に かくす ように し 、青い 旗 を 高く 高く あげて まるで オーケストラ の 指揮者 の ように はげしく 振りました 。 すると 空中 に ざ あっと 雨 の ような 音 が して 、何か まっくらな もの が 、いく かたまり も いく かたまり も 鉄砲丸 の ように 川 の 向こう の 方 へ 飛んで 行く のでした 。 ジョバンニ は 思わず 窓 から からだ を 半分 出して 、そっち を 見あげました 。 美しい 美しい 桔梗 いろ の がらんと した 空 の 下 を 、 実に 何 万 と いう 小さな 鳥 ども が 、 幾 組 も 幾 組 も めいめい せわしく せわしく 鳴いて 通って 行く のでした 。

「鳥 が 飛んで 行く な 」ジョバンニ が 窓 の 外 で 言いました 。 「どら 」カムパネルラ も そら を 見ました 。 その とき あの やぐら の 上 の ゆるい 服 の 男 は にわかに 赤い 旗 を あげて 狂気 の ように ふりうごかしました 。 すると ぴたっと 鳥 の 群れ は 通ら なく なり 、それ と 同時に ぴしゃあん という つぶれた ような 音 が 川下 の 方 で 起こって 、それから しばらく しいんと しました 。 と 思ったら あの 赤 帽 の 信号 手 が また 青い 旗 を ふって 叫んで いた のです 。

「 いま こそ わたれ わたり鳥 、 いま こそ わたれ わたり鳥 」 その 声 も はっきり 聞こえました 。 それ と いっしょに また 幾 万 と いう 鳥 の 群れ が そら を まっすぐに かけた のです 。 二 人 の 顔 を 出している まん中 の 窓 から あの 女の子 が 顔 を 出して 美しい 頬 を かがやかせ ながら そら を 仰ぎました 。 「まあ 、この 鳥 、たくさん です わねえ 、あら まあ そら の きれいな こと 」女の子 は ジョバンニ に はなしかけました けれども ジョバンニ は 生意気な 、いやだい と思い ながら 、だまって 口 を むすんで そら を 見あげて いました 。 女の子 は 小さく ほっと 息 を して 、だまって 席 へ 戻りました 。 カムパネルラ が きのどく そうに 窓 から 顔 を 引っ込めて 地図 を 見て いました 。 「あの 人 鳥 へ 教えて る んでしょうか 」女の子 が そっと カムパネルラ に たずねました 。 「わたり鳥 へ 信号 して る んです 。 きっと どこ から かの ろし が あがる ため でしょう 」

カムパネルラ が 少し おぼつかな そうに 答えました 。 そして 車 の 中 は し い ん と なりました 。 ジョバンニ は もう 頭 を 引っ込め たかった のです けれども 明るい とこ へ 顔 を 出す のが つらかった ので 、だまって こらえて そのまま 立って 口笛 を 吹いて いました 。 (どうして 僕 は こんなに かなしい のだろう 。 僕 は もっと こころもち を きれいに 大きく もた なければ いけない 。 あす この 岸 の ず うっと 向こう に まるで けむり の ような 小さな 青い 火 が 見える 。 あれ は ほんとうに しずか で つめたい 。 僕 は あれ を よく 見て こころもち を しずめる んだ )

ジョバンニ は 熱って 痛い あたま を 両手 で 押える ように して 、そっち の 方 を 見ました 。 (ああ ほんとうに どこまでも どこまでも 僕 と いっしょに 行く ひと は ない だろう か 。 カムパネルラ だって あんな 女の子 と おもしろ そうに 談 して いる し 僕 は ほんとうに つらい なあ )

ジョバンニ の 眼 は また 泪 で いっぱい に なり 、天の川 も まるで 遠く へ 行った ように ぼんやり 白く 見える だけ でした 。

その とき 汽車 は だんだん 川 から はなれて 崖 の 上 を 通る ように なりました 。 向こう岸 も また 黒い いろ の 崖 が 川 の 岸 を 下流 に 下る に したがって 、だんだん 高く なって いく のでした 。 そして ちらっと 大きな とうもろこし の 木 を 見ました 。 その 葉 は ぐるぐる に 縮れ 葉 の 下 に は もう 美しい 緑 いろ の 大きな 苞 が 赤い 毛 を 吐いて 真珠 の ような 実 も ちらっと 見えた のでした 。 それ は だんだん 数 を 増して きて 、 もう いま は 列 の よう に 崖 と 線路 と の 間 に ならび 、 思わず ジョバンニ が 窓 から 顔 を 引っ込めて 向こう側 の 窓 を 見ました とき は 、 美しい そら の 野原 の 地平 線 の はて まで 、 その 大きな とうもろこし の 木 が ほとんど いちめんに 植えられて 、 さ や さ や 風 に ゆらぎ 、 その 立派な ちぢれた 葉 の さき から は 、 まるで ひる の 間 に いっぱい 日光 を 吸った 金剛 石 の よう に 露 が いっぱいに ついて 、 赤 や 緑 や きらきら 燃えて 光って いる のでした 。 カムパネルラ が 、

「あれ とうもろこし だ ねえ 」と ジョバンニ に 言いました けれども 、ジョバンニ は どうしても 気持ち が なおりませんでした から 、ただ ぶっきらぼうに 野原 を 見た まま 、「そう だろう 」と 答えました 。 その とき 汽車 は だんだん しずかに なって 、いくつか の シグナル と てんてつ器 の 灯 を 過ぎ 、小さな 停車場 に とまりました 。 その 正面 の 青じろい 時計 は かっきり 第 二 時 を 示し 、風 も なくなり 汽車 も うごかず 、しずかな しずかな 野原 の なか に その 振り子 は カチッカチッ と 正しく 時 を 刻んで いく のでした 。 そして まったく その 振り子 の 音 の たえま を 遠く の 遠く の 野原 の はて から 、かすかな かすかな 旋律 が 糸 の ように 流れて 来る のでした 。

「新 世界 交響楽 だ わ 」向こう の 席 の 姉 が ひとりごと の ように こっち を 見 ながら そっと 言いました 。 全く もう 車 の 中 で は あの 黒 服 の 丈 高い 青年 も 誰 も みんな やさしい 夢 を 見ている のでした 。

(こんな しずかな いい とこ で 僕 は どうして もっと 愉快に なれ ない だろう 。 どうして こんなに ひと り さびしい のだろう 。 けれども カムパネルラ なんか あんまり ひどい 、僕 と いっしょに 汽車 に 乗って いながら 、まるで あんな 女の子 と ばかり 談している んだ もの 。 僕 は ほんとうに つらい )

ジョバンニ は また 手 で 顔 を 半分 かくす ように して 向こう の 窓 の そと を 見つめて いました 。 すきとおった 硝子 の ような 笛 が 鳴って 汽車 は しずかに 動きだし 、カムパネルラ も さびし そうに 星めぐり の 口笛 を 吹きました 。 「ええ 、ええ 、もう この 辺 は ひどい 高原 です から 」

うしろ の 方 で 誰 か としより らしい 人 の 、いま 眼 が さめた と いう ふうで はきはき 談している 声 が しました 。 「とうもろこし だって 棒 で 二 尺 も 孔 を あけて おいて そこ へ 播かない と はえない んです 」

「そう です か 。 川 まで は よほど ありましょう か ねえ 」「ええ 、ええ 、河 まで は 二千 尺 から 六千 尺 あります 。 もう まるで ひどい 峡谷 に なって いる んです 」

そう そう ここ は コロラド の 高原 じゃ なかったろう か 、ジョバンニ は 思わず そう 思いました 。 あの 姉 は 弟 を 自分 の 胸 に よりかからせて 眠らせ ながら 黒い 瞳 を うっとりと 遠く へ 投げて 何 を 見る でも なし に 考え込んで いる のでした し 、カムパネルラ は まだ さびし そうに ひとり 口笛 を 吹き 、男の子 は まるで 絹 で 包んだ りんご の ような 顔いろ を して ジョバンニ の 見る 方 を 見ている のでした 。

突然 とうもろこし が なくなって 大きな 黒い 野原 が いっぱいに ひらけました 。 新 世界 交響楽 は いよいよ はっきり 地平線 の はて から 湧き 、その まっ黒 な 野原 の なか を 一人 の インデアン が 白い 鳥 の 羽根 を 頭 に つけ 、たくさんの 石 を 腕 と 胸 に かざり 、小さな 弓 に 矢 を つがえて いちもくさんに 汽車 を 追って 来る のでした 。 「あら 、インデアン です よ 。 インデアン です よ 。 おねえさま ごらん なさい 」

黒 服 の 青年 も 眼 を さましました 。 ジョバンニ も カムパネルラ も 立ちあがりました 。 「走って 来る わ 、あら 、走って 来る わ 。 追いかけて いる んでしょう 」

「いいえ 、汽車 を 追って る んじゃ ない んです よ 。 猟 を する か 踊る か してる んです よ 」

青年 は いま どこ に いる か 忘れた と いう ふうに ポケット に 手 を 入れて 立ち ながら 言いました 。 まったく インデアン は 半分 は 踊って いる ようでした 。 第 一 かける に しても 足 の ふみ よう が もっと 経済 も とれ 本気に も なれ そうでした 。 にわかに くっきり 白い その 羽根 は 前 の 方 へ 倒れる ように なり 、インデアン は ぴたっと 立ちどまって 、すばやく 弓 を 空 に ひきました 。 そこ から 一羽 の 鶴 が ふらふら と 落ちて 来て 、また 走り出した インデアン の 大きく ひろげた 両手 に 落ちこみました 。 インデアン は うれし そうに 立って わらいました 。 そして その 鶴 を もって こっち を 見て いる 影 も 、もう どんどん 小さく 遠く なり 、電しん ば しら の 碍子 が きらっきらっと 続いて 二 つ ばかり 光って 、また とうもろこし の 林 に なって しまいました 。 こっち 側 の 窓 を 見ます と 汽車 は ほんとうに 高い 高い 崖 の 上 を 走って いて 、その 谷 の 底 に は 川 が やっぱり 幅ひろく 明るく 流れて いた のです 。 「ええ 、もう この 辺 から 下り です 。 なんせ こんど は 一ぺん に あの 水面 まで おりて 行く んです から 容易じゃ ありません 。 この 傾斜 が ある もん です から 汽車 は 決して 向こう から こっち へ は 来ない ん です 。 そら 、もう だんだん 早く なった でしょう 」さっき の 老人 らしい 声 が 言いました 。

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