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三姉妹探偵団 3 珠美・初恋篇, 三姉妹探偵団 3 Chapter 11

三 姉妹 探偵 団 3 Chapter 11

11 めぐり合い

「 キャーッ !

助けて ! 誰 か 来て ! 突然 、 けたたましい 悲鳴 が 、 響き わたった 。

小峰 邸 の 門 の 辺り に 配備 さ れて いた ガードマン たち が 、 一瞬 、 顔 を 見合わせる 。

「 今 の は 何 だ ?

「 悲鳴 だった みたいだ ぜ 」

と 、 やって いる 内 に 、 また 、

「 キャーッ !

誰 か 来て え ! と いう 叫び声 。

「 おい 、 あっ ち だ !

一斉に 、 声 の した 方 へ と 駆け 出して 行く 。

声 は 、 木立 ち の 中 から 聞こえて 来た 。

何しろ 大きな 屋敷 だ 。

門 から 裏手 の 広い 庭 へ と 抜ける 道 は 、 ちょっと した 林 の 中 を 通って いる のである 。

「 おい 、 どこ だ !

── どこ に いる ! ガードマン たち が 、 ライト で 木立 ち の 間 を 照らして 怒鳴った 。

「 おい !

返事 を しろ ! と 、 一 人 が ライト を 横 へ 振る と ──。

「 キャッ !

女の子 が 一 人 、 光 を 浴びて 飛び上った 。

「 おい 、 今 悲鳴 を 上げた の は 、 君 か ?

と 、 ガードマン が 訊 いた 。

「 悲鳴 ?

私 が ? 女の子 は キョトンと して 、「 私 ── 何 か 言った ?

と 、 今 まで 抱き合って いた 男 ── 何だか 変な 格好の 男 で 、 ワイシャツ を ズボン の 外 へ だらしなく 出して いる ── の 方 へ 言った 。

「 うん 。

かなり 派手な 声 を 出した よ 」

と 、 男 が 肯 いて 、「 すみません 。

気 に し ないで 下さい 。 凄く 感じ やすい 子 なんで ……」

「 あら 、 感受性 が 豊か だって 言って よ 。

あなた の 恋人 に なる に は 、 これ ぐらい 繊細な 神経 の 持主 で ない と だめな の よ 」

「 そりゃ 確かだ ね 」

「 ねえ 、 可愛い 人 ……」

と 、 女の子 は 、 男 を 抱きしめて キス した 。

「── あんまり 人騒がせな 声 を 出さ ないで 下さい 」

と 、 ガードマン は 渋い 顔 で 言って 、「 おい 、 戻る ぞ 」

と 、 他の 連中 を 促した 。

「 金 持って の は 、 変人 が 多い な 」

「 今 の 娘 なんか 、 いく つ だ ?

せいぜい 十五 、 六 だ ぜ 、 全く ! ── ブツブツ と 言葉 を 交わし ながら 、 ガードマン たち が 門 の 方 へ 戻って 行く 。

「 やれやれ ……」

国 友 は 息 を ついた 。

「 うまく 行った ようだ な 」

「 当然 よ 」

と 、 ルミ が 得意 そうに 、「 私 の 熱演 の 成果 。

認めて くれる でしょ ? 「 大した もん だ 」

と 、 国 友 は 肯 いた 。

「 演劇 部 に でも いる の かい ? 「 オーバーな お 芝居 なら 、 素人 だって 簡単な の よ 」

と ルミ は 言って 、 また 国 友 に 抱きついて 行った 。

「 お 、 おい ──」

国 友 が あわてて 、「 もう 演技 は 終り だ よ 」

「 あら 、 急に やめたら 、 却って 怪しま れる わ よ 」

「 しかし ──」

「 彼女 の ため を 思う んだったら 、 続 演 し なきゃ 」

「 続 演 ね ……」

国 友 に は 、 夕 里子 が 納得 する と は 、 とても 思え なかった 。

しかし 、 否 も 応 も なく 、 ルミ は 国 友 を 抱きしめて 、 ギュウギュウ と 唇 を 押しつける のだった ……。

「── おい 、 早く 来い よ 」

と 、 勇一 が 振り向く 。

「 分 って る わ よ 」

夕 里子 は 、 そう 言い 返し ながら 、 それ でも 何となく 足 は 前 へ 進み た がら ない ……。

「 早く 来 ない と 、 ガードマン に 見付かる ぜ 」

「 分 って る って ば !

夕 里子 は 、 足音 に 用心 し ながら 、 建物 の 反対 側 へ と 進んで 行った 。

「── うまく 行った みたいだ ね 」

と 、 勇一 が 言った 。

「 そう ね 」

ルミ と 国 友 が 、 ガードマン の 注意 を ひ きつける 。

その 間 に 、 勇一 と 夕 里子 が 、 門 から 反対 側 の 方 へ と 入り 込む と いう 寸法 だった のだ 。

それ は まあ 成功 した らしい が ……。

「 気 に なる んだ ろ 」

と 、 勇一 が からかう ように 言った 。

「 大事な 恋人 と あの 娘 が 何 して る かって 」

「 うるさい わ ね !

夕 里子 は 、 かみつき そうな 声 を 出した 。

「 子供 は 黙って なさい よ 」

「 分 った よ 」

勇一 が 笑い ながら 言った 。

── その 内 、 夕 里子 も 一緒に 笑い 出した 。

「 あんた 、 ませて る わ ね 」

「 今 なら 普通だ よ 」

と 、 勇一 は 言った 。

「 そう 。

そう かも しれ ない 」

夕 里子 は 、 ふと 、 勇一 を 見て 、「── ねえ 、 正直に 答えて 」

「 何 を ?

殺し なら 、 俺 じゃ ない ぜ 」

「 そう じゃ ない わ よ 。

珠美 の こと 」

「 あの 子 の こと ?

「 あの 子 、 あんた の こと 、 好きな の よ 」

勇一 は 、 ちょっと 間 を 置いて 、

「 悪い 冗談 言わ ないで くれ よ 」

と 言った 。

「 本当 よ 。

── 珠美 に とっちゃ 初 恋 だ わ 。 少なくとも 、 私 の 知って る 限り で は ね 」

「 こんな 不良に ?

「 ねえ 。

── 本当の こ と 言って 。 珠美 と は どんな 仲 ? 「 どんな 、 って ……」

「 珠美 も あんた も 若い し 、 お互いに 、 傷つけ 合わ ない ように して ほしい の よ 」

「 それ ── どういう 意味 だ よ 」

勇一 が 、 呟く ような 口調 に なって 、 言った 。

ガードマン の 声 が 近づいて 来る 。

「 行こう 」

と 、 夕 里子 が 低い 声 で 促した 。

ガレージ は 、 確かに あった 。

正面 の 扉 は 降りて いる ので 、 二 人 は 、 わき の ドア を 開けて 中 へ 入った 。

中 は 、 ほの暗い が 、 一応 明り が 点いて いた 。

「── あれ だ 」

と 、 勇一 が 言った 。

ガレージ と いって も 、 車 四 台 が 楽に 入る 広 さ で 、 ロールス ・ ロイス が 一 台 、 ベンツ が 一 台 、 そして ── 青い ビュイック が 一 台 ……。

まだ 一 台 分 の スペース が 空いて いた 。

「 やっぱり あった わ ね 」

夕 里子 は 、 息 を ついた 。

「 珠美 は ここ へ 連れて 来 られた んだ わ 」

「 でも 、 どうして だろう ?

と 、 勇一 が 言った 。

「 何 か 目的 が あった んだ ろ ? 「 お 金 目当て じゃ ない の は 確か ね 」

夕 里子 は 首 を 振った 。

「 ちょっと 見当 が つか ない 。 たぶん 、 あんた の お 母さん が 殺さ れた 事件 と 関係 して る と 思う んだ けど 」

「 俺 の せい か 」

勇一 の 顔 が 曇った 。

「 危 い 目 に 遭って なきゃ いい けど ……」

「 そういう 意味 で 言った んじゃ ない わ 」

夕 里子 は 、 勇一 の 肩 を 軽く 叩いた 。

「 心配 して くれて 嬉しい わ 」

「 捜そう 」

と 、 勇一 は キッ と した 表情 に なって 、「 この 屋敷 の どこ か に いる よ 、 珠美 は 」

「 そう ね 。

こういう 日 だ から 、 中 へ 入った って 、 そう 怪しま れ ない かも しれ ない 」

夕 里子 が 、 ちょっと 考えて 、「 どこ から どう やって 入れば いい かしら 」

と 、 呟いた とき だった 。

ガレージ の 扉 が 、 ガタガタ と 音 を たてた 。

「 隠れて !

夕 里子 は 、 勇一 と 共に 、 一 番 近く に 駐 め て ある ロールス ・ ロイス の 陰 に 、 身 を ひそめた 。

扉 が 電動 で 、 ゆっくり 上って 行く 。

「 誰 か 来た の ね 。

── こっち へ 入って 来た ところ を みる と 、 この 家 の 人 かしら 」

「 パーティ の 客 じゃ ない ようだ な 」

と 、 勇一 が 答える 。

扉 が 上って しまう と 、 車 の ライト が 、 ガレージ の 中 を 照らし 出した 。

車 が 入って 来る 。

並んだ 三 台 の 車 に 比べる と 、 入って 来た の は 、 割合 小型に 見えた 。

いや 、 日本 車 なら 、 中型に 当る のだろう が 。

その 車 は 、 空いて いた スペース に 入る と 、 停止 した 。

エンジン の 音 が 止る 。

降りて 来た の は ── 頭 を 低く して いる 二 人 に は 、 よく 見え なかった が 、 女 だ と いう の は 確かだった 。

カッ 、 カッ と いう 足音 が 、 ガレージ を 横切って 、 夕 里子 たち が 入って きた ドア の 方 へ と 向 う 。

足 だけ が 、 車 の 下 を 通して 見えた 。

ハイヒール が 目 に 入る 。

── 女 。 誰 だろう ?

女 が ドア を 開けて 出て 行く と 、 二 人 は ホッと 息 を ついた 。

「 顔 、 見えた ?

夕 里子 が 訊 く 。

「 いい や 、 見え なかった よ 」

「 そう 。

私 も よ 」

「 今 の 女 の 後 を つけて 行こう ぜ 」

と 、 勇一 が 体 を 起こした 。

「 どこ から 入りゃ いい か 分 る 」

「 賛成 」

夕 里子 は 肯 いて 、 立ち上った 。

そっと ドア を 開けて 表 を 覗く と 、 細い 露地 の ような 所 を 、 今 の 女 が 歩いて 行く 後 姿 が 見えた 。

しかし 、 ちょうど 光 が 逆に 射 して いて 、 女 の 姿 は シルエット に しか 見え ない 。

する と ── 女 が 、 ヒョイ 、 と わき へ 消えた 。

いや 、 建物 の 中 へ 入って 行った のだろう 。

「 あそこ が 入口 らしい わ ね 」

と 、 夕 里子 は 言った 。

「 少し 間 を 置いて 、 入ろう ぜ 」

二 人 は 足音 を 殺して 進んで 行った 。

── 植込み の 陰 に なって 、 ほとんど 目立た ぬ ドア が ある 。 いわば この 屋敷 の 勝 手口 、 と いう ところ らしい 。

「 入ろう 」

勇一 が ドア を 開けた 。

何だか いやに ごろごろ した 、 狭苦しい 部屋 だ 。

倉庫 に 近い 、 と 言える だろう 。

「 物置 ね 。

── 缶詰 だの 、 非 常食 が 並べて ある わ 」

「 非 常食 か 。

── いつ 食う んだろう ? と 、 勇一 は 首 を 振った 。

「 いつも 〈 非常 〉 の 家 が いくら で も ある って のに 」

「 理屈 ね 」

夕 里子 は 微笑んだ 。

「 出入 口 は どこ かしら ? 「 きっと そっち の ──」

歩いて 行って 、 二 人 は 足 を 止めた 。

「 こんな こと って ──」

夕 里子 は 目 を パチクリ さ せて いた 。

正面 は ただ の 壁 な のだ 。

大して 広い 部屋 で も ない から 、 ぐるっと 回って みた のだ が 、 出入 口 は 、 二 人 が 外 から 入って 来た ドア 一 つ しか ない のである 。

「 じゃ 、 あの 女 、 どこ へ 行っちゃ った の ?

「 幽霊 に は 見え なかった けど な 」

「 でも 確かに この 中 へ ──」

と 言い かけて 、「 あの 音 は ?

ブーン 、 と いう 低い 音 が 、 正面 の 壁 の 中 から 聞こえて 来た 。

「 モーター か 何 か の 音 みたいだ 」

と 、 勇一 が 言った 。

「 上 から よ 」

そう だった 。

壁 の 前 に 立って 、 じっと 耳 を 澄まして いる と 、 その 音 は 、 壁 の 中 から 、 それ も 、 上 の 方 から ゆっくり と 降りて 来る のだ 。

「 どうやら 、 この 壁 の 中 に 何 か 仕掛け が ある んだ 」

と 、 勇一 が 言った 。

「 その辺 を 捜して みよう ぜ 」

大小 、 いく つ も の 段ボール を 積み 上げた 棚 の 辺り を 、 二 人 は 、 かがみ 込んだり 伸び 上ったり し ながら 捜し 回った 。

「── おい !

これ らしい や 」

勇一 の 声 が した 。

「 ボタン みたいな の が ある 。 押して みる ぜ 」

── 少し の 間 は 、 何も なかった 。

「 あの 音 ──」

と 、 夕 里子 は 、 ブーン と いう 音 が 、 今度 は 下 から 上って 来る の に 気付いて 、 呟いた 。

と ── 正面 の 壁 が スルスル と 横 へ 滑る ように 開いた 。

「 へえ !

エレベーター な んだ 」

勇一 が 愉快 そうに 言った 。

「 金持 って 、 ずいぶん むだづかい が 好きな の ね 」

と 、 夕 里子 は 呆れて 首 を 振った 。

「 乗り ましょう よ 」

「 何 階 へ 参り ます か 」

と 、 勇一 が ふざけて 言った 。

「 知ら ない わ よ 。

下 から 来た んだ から 、 下 の 方 へ の 矢印 を 押して みたら ? 何も なきゃ 、 また 上れば いい んだ し 」

「 OK 」

下向き の 矢印 を 押す と 、 扉 が 閉って 、 スッ と 下って 行く 感覚 が あった 。

「 地下 が ある んだ な 」

「 何 を やって る の かしら ね 」

静かに 停止 して 、 扉 が 開く 。

── 目の前 に 、 中年 の 男 が 立って いた 。

夕 里子 たち は ギョッ と した が 、 向 う は 別に 平気な 顔 で 、

「 失礼 」

と 、 エレベーター に 乗り 込んで 来た 。

「── 降り ない の か ね ? 「 あ 、 いえ 、 降り ます !

夕 里子 と 勇一 は 、 あわてて 外 へ 出た 。

「── ああ 、 びっくり した 」

と 、 夕 里子 は 息 を ついて 、「 地下 は トイレ で も ある の かしら ?

「 わざわざ エレベーター で 、 トイレ に 行く の か ?

「 と いった って さ ……」

廊下 だった 。

── きちんと カーペット も 敷き つめ られ 、 およそ 「 地下 」 と いう イメージ で は ない 。

「 あっ ち で 声 が する 」

と 、 勇一 が 言った 。

ワーッ 、 と どよめく 声 。

拍手 。 ── 結構 大勢 の 人間 が 集まって いる 様子 だ 。

「 何かしら ?

「 宴会 場 で も ある んじゃ ない の か 」

そう 。

── 確かに 、 そんな 雰囲気 で は あった 。 しかし 、 地上 で は 、 あれ だけ 大がかりな パーティ を やって いる と いう のに 、 どうして わざわざ 、 こんな 地下 で ……。

「 行って みよう 」

と 、 勇一 が 言った 。

「 ええ 」

夕 里子 とて 、 こんな とき に ためらう こと は ない 。

当って 砕けろ は 夕 里子 の 信条 である 。 廊下 を 進んで 行く と 、 突き当り に ドア が あり 、 そこ が 半分 開いて いた 。

中 を 覗く と 、 それほど 広い 部屋 と いう わけで も ない 。

いや 、 実際 は 広い のだろう が 、 人 が 大勢 立って いる ので 、 狭く 見える のである 。

ちょっと 見た 限り で は 、 集まって いる の は やはり パーティ に 招か れた らしい かなり 年輩 の 、 会社 の 社長 、 取締 役 、 と いった 印象 の 男性 たち だった 。

上 の パーティ で は 、 それ こそ 国 友 の 珍妙な スタイル が そう 目立た ない くらい 、 風変りな スタイル の 若者 も 多かった のだ が 、 ここ で は 、 いかにも 高級な 背広 に ネクタイ と いう スタイル ばかり が 目 に つく 。

いや ── その 間 に 、 夫人 らしい 女性 の 姿 も 見える 。

例外 なく 、 凄い 毛皮 を はおったり 、 肩 に かけたり して いた 。

「 きっと 何 千万 も する の よ 、 あの 毛皮 」

と 、 夕 里子 は 言った 。

「 二 、 三 枚 かっぱ ら うか な 」

「 よして よ 」

と 、 夕 里子 は 顔 を しかめた 。

「 そっと 中 へ 入る の よ ……」

幸い 、 集まった 人間 たち の 注意 は 、 部屋 の 奥 に しつらえた 、 小さな ステージ の ような 場所 の 方 へ 向いて いて 、 夕 里子 たち は 、 ドア から 壁 に 沿って 、 部屋 の 中 へ と 入り 込む の に 成功 した 。

「 では 、 次の 品物 です 」

と 、 声 が した 。

ステージ の 上 に 、 若い 男 が 立って いる 。

司会 役 と いう ところ らしい 。

「── 何 やって んだろう ?

勇一 が 、 低い 声 で 言った 。

「 分 ん ない けど …… 競売 か 、 懸賞 って とこ かしら ね 」

「 次 は 、 名門 、 堂 内 家 より ご 提供 いただいた 、 貴重な 品 です 」

と 、 若い 男 が 言った 。

わき から 、 女 が 一 人 、 小さな 箱 を 手 に して 出て 来た 。

「 ご覧 下さい 。

── 金 と ヒスイ で 出来た 、 美しい 仏像 です 」

ホーッ 、 と 声 が 上る 。

「── 高い んだろう な 」

と 、 勇一 は そっと 言った 。

「 でも 、 あんまり ありがた み は な さ そう よ 」

と 、 夕 里子 は 言って 、「── あの 女 、 誰 かしら ?

と 、 眉 を 寄せた 。

見た ような 顔 である 。

確かに どこ か で ……。

── どうやら 、 これ は 美術 品 ── それ も 、 あまり まともで ない 手段 で 手 に 入れた 品 を 、 愛好 家 に 秘 か に 売り つける 、 競売 の ようだ と 夕 里子 に も 分 って 来た 。

だ から 、 こんな 地下 で 開いて いる 。

大がかりな パーティ に かこつけて 、 愛好 家 を 集めて いる のだろう 。

「 どこ から 盗んだ 品 か ね 」

「 この前 、 美術 館 から 消えた と 聞いた が ……」

と いった 会話 が 耳 に 入って 来る 。

「 呆れた もん ね 」

と 、 夕 里子 は 首 を 振った 。

「 いくら 好きな 物 でも 、 盗ま れた もの と 分 って て ……」

「 金 持って の は 、 そう なる んじゃ ない の か 。

自分 は 法律 の 外 に いる 、 みたいな 、 さ 」

「 かも しれ ない わ ね 」

と 夕 里子 が 肯 いて 、「── そう だ わ 、 あの 女 」

と 、 目 を 見開いた 。

「 さっき ガレージ から 出て 行った 女 ?

「 いいえ 。

── あの 、 品物 を 運んで 来る 役 を して る 女 よ 。 あれ 、 丸山 が 殺さ れた とき に 見かけた 、 えんじ の コート を 着た 女 だ わ 」

「 へえ 」

「 あんた 、 あの 女 を 見かけ なかった ?

「 気 が 付か なかった なあ 」

と 、 勇一 は 首 を 振った 。

しかし 、 あの 女 、 ここ で あんな こと を して いる ところ を 見る と 、 この 小峰 家 で 働いて いる らしい 。

なぜ 丸山 と 国 友 が 会う 喫茶 店 に 来て いた のだろう ?

「 でも さ ──」

と 、 勇一 が 言った 。

「 珠美 はいそう も ない ぜ 」

「 そう ね 。

── 戻って 、 あの エレベーター で 上 に 行って み ましょう か 」

「 そう だ な 」

壁 に 沿って 動き 出そう と した とき 、

「 ねえ 、 パパ !

もう 帰ろう よ ! と 、 急に 女の子 の 声 が すぐ そば で 聞こえて 、 夕 里子 は びっくり した 。

大人 の 間 に 埋 れて 、 見え なかった のだ が 、 見た ところ 十二 、 三 の 女の子 が 、 父親 の 腕 を 引 張って いる のだ 。

「 もう すぐ 終る から 、 待って なさい 」

と 、 父親 が 言って も 、

「 もう くたびれちゃ った よ 。

帰ろう よ 。 ねえ ! 女の子 の 方 は 、 すっかり すねて しまって いる 。

こんな 競売 など 、 子供 に とって は 退屈に 違いない 。

もちろん 、 女の子 も パーティ 用 に 、 ビロード と レース の 立派な ドレス を 着て 来て いる 。

夏物 を 着て 肌寒い 夕 里子 と は 違って 、 暖か そうである 。

「 ママ の 所 へ 行って りゃ いい じゃ ない か 」

と 、 父親 が 言う と 、

「 ママ は どうせ 誰 か 男 の 人 と 浮気 して る から 、 い ない よ 」

と 言い 返す 。

話 が 耳 に 入る 周囲 の 男 たち が 笑って いる 。

「── で は 、 最後 の お 楽しみです !

と 、 ステージ の 上 で 、 若い 男 が 言った 。

「 ほら 、 もう 、 これ で 終り だ から な 」

と 、 父親 の 方 も ホッと した 様子 だ 。

「 これ が 面白い んだ 」

「 何 が 出て 来る の か な 」

と いった 囁き が 、 そこ ここ で 交わさ れて いる 。

「 実は ──」

と 、 若い 男 が 言った 。

「 今回 は 、 皆さん に お 見せ できる ような 値 打 物 を 、 どうしても 手 に 入れる こと が でき ませ ん でした 」

なんだ 、 と いった 失望 の 声 が 上る 。

「 ですが ──」

と 、 若い 男 は 声 を 高く して 、「 その 代り に 、 大変 珍しい 人形 を 、 提供 し たい と 存じ ます 」

「 人形 ?

── ねえ 、 人形 だって 」

今 まで ふてくされて いた 女の子 が 、 急に 目 を 輝か せた 。

「 ね 、 パパ 、 可愛い 人形 だったら 、 買って ! 「 うむ ……。

見て から だ な 」

父親 の 方 は 、 何だか 落ちつか ない 様子 である 。

「 これ は 、 等 身 大 、 実物 そっくり の 、 まるで 生きて いる ような 人形 です 」

と 、 説明 が 続いて いる 。

「 どちら か と いう と 、 大人 の 方 の ため の 人形 、 と いえる かも しれ ませ ん 」

「 おい 、 もう 出よう か 」

と 、 父親 が 、 ちょっと あわてた ように 娘 を 促した が 、 今度 は 、 女の子 の 方 が 、

「 いや !

見て くんだ から ! と 動か ない 。

「 では 、 ご覧 に 入れ ましょう 」

と 、 若い 男 が 手 を 上げて 見せる と 、 あの 女 が 、 車 椅子 を 押して 現われた 。

場 内 が 、 スッ と 静かに なる 。

── 車 椅子 に 座って 目 を 閉じて いる の は 、 可愛い ドレス に 身 を 包んだ 、 どう 見て も 本物 の 人間 の 少女 で ──。

「 あれ ……」

勇一 が 愕然と した 。

「 珠美 だ わ 」

夕 里子 が 呟いた 。

大声 が 出 なかった の が 、 却って 幸いだった 。

「 さあ 、 この 人形 を 、 皆さん に 買って いただく こと に し ましょう 」

と 若い 男 が 言った 。

「── 百万 だ !

「 二百 !

「 三百 !

「 五百万 出す !

たちまち 声 が 上る 。

夕 里子 は 、 顔 を 真 赤 に して 、 拳 を 握り 固めた 。

── もちろん 、 買い たい と いう 男 たち は 、 あれ が 生身 の 人間 と 知って いる のだ 。

その ため に 珠美 を 誘拐 して 来て ──。

何て 連中 だ !

「 ねえ 、 パパ 、 買って !

例の 女の子 が 、 父親 の 腕 に しがみつく ように して 、 せがんで いる 。

「 う 、 うん ……。

しかし ……」

と 、 父親 が 困り 果てた 様子 で 口ごもって いる と 、 突然 、

「 待って くれ 」

と 、 声 が あった 。

「 小峰 様 ──」

若い 男 が 、 戸惑った ように 言った 。

あれ が 小峰 ……。

夕 里子 は 、 ステージ に 現われた 初老 の 男 を 眺めた 。

そして 、 ハッと した 。

── あれ が 、 この 勇一 の 祖父 な のだ 。

「 小 峰 か 」

勇一 も 思い出した らしい 。

「 さっき 、 車 の 中 で 、 何 か 言って た な 。 あいつ が どうした って ? 「 しっ !

後 で 話す わ 」

と 、 夕 里子 は 言った 。

「 皆さん 。

大変 申し訳ない が ──」

と 、 小峰 は 、 ステージ に 立つ と 両手 を 広げて 、「 この 人形 は 売れ ませ ん 。

売り物 で は ない のです 」

そこ ここ に 、 当惑 の 声 が 上った 。

「 手違い で 、 ここ へ 出して しまった 。

大変 申し訳ない 。 次の 機会 に は 、 必ず これ の 何 倍 も すばらしい もの を ──」

小峰 が 、 そこ まで 言い かけた とき だった 。

バン 、 と 激しく 叩きつける ような 音 が した と 思う と 、 小峰 が 胸 を 押えて 、 呻いた 。

「── 撃た れた ぞ !

勇一 が 目 を 見張った 。

「 大変だ わ !

夕 里子 が ステージ へ 駆け寄ろう と した とき 、 突然 明り が 消えて 、 部屋 は 闇 に 包ま れた 。

「 何 だ !

「 逃げろ !

叫び声 が 飛び交う 。

ワッ と 出入 口 へ 向 って 人 が 殺到 した 。

わざと 誰 か が 明り を 消した んだ 、 と 夕 里子 は 思った 。

停電 で ない の は 、 廊下 の 方 が 明るい の を 見て も 分 る 。

しかし 、 群衆 と いう ほど の 人数 で ない に して も 、 一気に 駆け 出す と 、 巻き 込ま れ ない ように する の は 容易じゃ なかった 。

突き飛ばさ れ 、 押しのけ られ 、 よろけた ところ へ 、 誰 か が 夕 里子 の 足 を けった 。

アッ と 思った とき は 、 床 に 転倒 。

お腹 を もろ に けら れて 、 痛 さ に 声 も 出 ない 。

誰 か が 、 夕 里子 に つまずいて 転んだ 。

続いて 、 一 人 二 人 ── たちまち 、 夕 里子 は 、 その 下敷 に なって しまった 。

「 ど いて !

こら 、 あっ ち 行け ! 犬 でも 追い払って いる ような 声 を 出した が 、 相手 だって 、 そう 簡単に は どけ ない のだ 。

さらに 二 、 三 人 の 重 み が 加わって 、 夕 里子 は 息 が 出来 なく なった 。

── このまま 窒息 して 死ぬ んじゃ ない か 。

そんな 思い が 頭 を かすめる 。

── と 、 体 が 急に 軽く なった 。

「 大丈夫 か よ !

勇一 の 声 だ 。

「 何とか ── 生きて る わ よ 」

と 、 夕 里子 は 答えた 。

足音 が 遠ざかって 、 部屋 の 中 は 静かに なった 。

── 廊下 の 明り で 、 中 の 様子 も 何とか 見てとれる 。

「 ひどい 目 に 遭った わ ……。

殺さ れる か と 思った 」

夕 里子 は そう 言って から 、 ハッと して 、「 ねえ 、 珠美 を 連れ出さ なきゃ !

「 そうだ 。

早く 下 へ おろして ──」

二 人 して 、 ステージ の 方 へ 目 を やって ……。

「 いやだ わ 、 どこ に ──」

夕 里子 は 、 思わず 口走った 。

ステージ の 上 に は 、 小峰 が 倒れて いた 。

そして 、 車 椅子 が 残って いる 。 しかし 、 空 の まま だ 。

珠美 の 姿 は 、 消えて いた のである ……。

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