人工知能 は 人間 を 超える か Chapter07(2)
その 評価 を 得て は 学習 し 、つくる という こと を 繰り返せば よい 。
映画 や テレビ 番組 など の コンテンツ 制作 、ファッション や 食 など でも この 方法 が 主流 に なる こと も 考えられる 。 製造 業 と 同じ 肉体 労働 でも 、タクシー や トラック の 運転手 と いう の は 、少し 前 まで は 、人間 の 労働 として 残り続ける 仕事 だ と 思われていた 。 ところが 、自動 運転 車 や ドローン の 登場 で 雲行き が 怪しく なって きた の は 、みなさん も よく ご存じ だろう 。
自動車 でも 飛行機 や 電車 でも 、操縦士 ・運転士 の 大きな 仕事 の ひとつ は 「おかしな こと が 起こって いない か 」と いう 「異常 検知 」である 。 異常 検知 と いう タスク は 、高次 の 特徴量 を 生成 し 、そこ から 「通常 起こる べき こと 」を 想定 し 、それ と 異なって いれば 何か おかしい と 感じる と いう こと だ から 、特徴 表現 学習 の 得意 とする ところ だ 。 この 仕事 を コンピュータ が できる ように なる と 、運転 を 人工 知能 が 行う こと も 、遠隔 で 操作 する こと も 、いま より ずっと 簡単に なる 。
自動 運転 は 、実は 安全 性 が 高い 。
自動 運転 が できれば 、地方 に 住む 遠隔 の 高齢者 に も 、便利で 安全性 の 高い サービス が 提供 できる 。 すでに 飛行機 は 離着陸 以外 は その 大半 が 自動 操縦 化 されて いる 。 車 で 食事 に 行って お酒 を 飲み 、車 で 帰って こられる と したら 、こんなに 快適な こと は ない 。 広告 ・マーケティング は 、前述 の ように 、真っ先に 変化 が 訪れる 分野 の ひとつ である 。
データ が 多く 、短期的な サイクル で 回る 最適化 は コンピュータ の 最も 得意 とする ところ だが 、それ が 徐々に 長期の もの に も 進出してくる はずだ 。 たとえば 、現在 は 人間 が 行って いる マーケティング も 、刻々 と 変わる 顧客 ニーズ を リアルタイム に 、的確に とらえる こと で 、完全 自動 で 最適化 されていく 可能性 が ある 。 長期 的な ブランド イメージ の 向上 や 商品 企画 など は 、人間 の 仕事 と されている が 、そこに も データ 分析 と 人工 知能 の 介在 する 余地 は 大きい 。 医療 、法務 、会計 ・税務 という のは 、最も 人工 知能 が 入ってきやすい 領域 だろう 。
医療 は 高度な 専門 領域 だ が 、同じ 医師 でも 、画像 診断 技術 が 向上 する と 、内科 医 の 仕事 の ほう が 先 に コンピュータ に 置き換わる 部分 が 増える かも しれない 。 「診療 の 適切性 」と 「責任 」の 問題 は 、自動運転 と 同じく 、難しい 問題 である 。
弁護士 は 社会的 地位 の 高い 仕事 である が 、その 中 でも 、クライアント の 情報 を 整理 したり 、関連 法令 を チェック したり 、過去 の 判例 を 調べたり する こと は 、人工知能 の メリット を 活かし やすい 。
だが 、民事 裁判 、特に 離婚 や 相続 で もめている 案件 に ついて は 、情緒的な 面 を 含めて 、当事者 の 利害関係 を 調整する という 面 が あり 、人間 が 得意な ところ かも しれない 。 「あなた の 主張 が 法廷 で 通る 確率 は 15%だ」と機械に言われるよりも、人の顔を見て話して納得したい人は少なくないはずだ。 会計 や 税務 は すでに 置き換え が 進んで きて いる 。
判断 が 必要な ところ や 知識 が 必要な ところ に 関して も 、少しずつ 人工 知能 が できる 領域 が 増えて いく だろう 。
金融 は 、人工 知能 が 活躍 できる 大きな 領域 である 。
顧客 対応 の システム を スイス の 大手 銀行 の UBSグループが提供しているし、資産状況に応じたポートフォリオを提供するのも重要だ。 証券 会社 は 、自ら の 提供 する 付加 価値 を 見直す 必要 が ある かも しれない 。 トレーディング の 世界 は すでに 機械化 が 進み 、恐ろしい ほど の 戦い が 繰り広げられている 。 不動産 も 、価格 情報 の 推移 を 分析 し 、活かす こと が できる はずである 。
教育 は 、データ 分析 に よって もっと 進化 する 分野 であろう 。
アイデア は 単純 で 、多く の 生徒 を 見る こと が できたら 、そこ で 学習 の パターン や 向き 不向き を より 的確に つかみ 、適した 学習 方法 を 提示する こと が できる から だ 。 いま は 教師 が 定年 に 達する まで の 間 、教え方 の 知識 を 積み上げている が 、コンピュータ は 多く の 生徒 の データ を 分析する こと で 、そうした ノウハウ を 短期間 で 習得する こと も できる だろう 。
教育 の 中 でも 、コンテンツ を 教える 教育 、考え方 や 精神的な 態度 を 教える 教育 は 別 かも しれない 。
そして 、やる 気 に させる 方法 、競わせる 方法 など 、さまざまな 方法 に 分解され 、人間 の 果たすべき 役割 と 、コンピュータ の 果たすべき 役割 が うまく 連携して 、より 高い レベル の 教育 を 提供できる ように なる かもしれない 。
この ほか に も 、産業 分野 ごと に 、さまざまな 変化 が 起こる だろう 。
ここ で すべて を 書き きる こと は できない が 、読者 の みなさん の 関係する 産業 が 、人工 知能 に よって どのように 変わる 可能性 が ある の か 、ぜひ 考えて みて ほしい 。 それ が 、この 先 の チャンス で も あり 、また 自分 の リスク を 減らす 方法 で も ある はずだ から だ 。 われわれ の 仕事 に は 、具体的に どんな 影響 を 与える のだろうか 。
人工 知能 が 人 の 職 を 奪う ので は ない か と いう 議論 は 、メディア でも よく 目 に する 。
コンピュータ が 発達 して 、すでに 単純な 事務 作業 は 人間 に 代わって 機械 が 行う ように なった 。 人工 知能 が このまま どんどん 進化 する と 、人間 の 仕事 が 機械 に 奪われて しまう ので は ない か と いう 危惧 である 。 『機械 と の 競争 』と いう 本 で は 、次 の ような 議論 が されている (*注 51 )。 ひと つ の 議論 は 、「 科学 技術 の 発展 は いま に 始まった こと で は なく 、 その たび に なくなる 仕事 も できる が 、 代わり に 新しい 仕事 が 必ず できる 」 と いう こと である 。
これ まで の 200 年間 は そう であった 。 たとえば 、耕作機 が できて 人間 は 田畑 を 耕さなくて よくなった が 、耕作機 を つくる 人間 、耕作機 を 使う 人間 、そして 売ったり 維持 したり する 人間 が 必要に なった 。 したがって 、心配 する に は 及ば ない 。
もう ひとつ の 議論 は 、人工 知能 の 発展 は 性質 の 違う もの であり 、これまで の 変化 は 少数 の 人 だけ に 影響 が ある もの だった かもしれない が 、今回 の 変化 は 大多数 の 人 に 影響 を 与える もの かもしれない と いう 点 である 。
そして 、富む もの と 貧しい もの の 差 が 広がる と いう こと である 。 これ は 根本的に は 、富 の 再分配 に よって 是正する しか ない 。 トマ ・ピケティ の 『21 世紀 の 資本 』が 流行って いる が (*注 52 )、格差 や 平等 に ついて 考える の は 重要な こと だろう 。 また 、国際的な 経済 格差 の 可能性 に ついて も 考え なければ ならない 。
で は 、もっと 具体的に どういう 仕事 が 残りやすく 、どういう 仕事 は なくなりやすい のだろうか 。
これ に 関して は 、「どの くらい の 時間 を 念頭 に 置く か 」で 答え が 大きく 変わる と 思う 。 参考 まで に 図 28 を 見て いただきたい 。 これ は 、オックスフォード 大学 の 論文 で 提示 さ れた 「あと 10 ~20 年 で なく なる 職業 と 残る 職業 の リスト 」である 。 702個の職業を「手先の器用さ」「芸術的な能力」「交渉力」「説得力」など9つの性質に分解し、この先10年でなくなるかどうかを予想し、その予想される確率の順に並べてある(*注53)。 また 、スポーツ の 審判 や 荷物 の 受発注 業務 、工場 機械 の オペレーター など の 「手続き化しやすい 」職業 も なくなる 確率 が 高い と されている 。 一方 、なくなる 確率 が 低い ほう の リスト を 見る と 、医師 や 歯科医 、リハビリ 専門職 、ソーシャルワーカー 、カウンセラー など の 職業 が 入っている 。 対人 コミュニケーション が 必要な 職業 は 、当面 は 機械 で 置き換える の が 難しい のだろう 。
こういった リスト も 参考 に しながら 、短期 から 長期 に かけて の 、人 の 仕事 の 移り変わり を 予想 して みよう 。
短期 的 (5年以内)には、それほど急激な変化は起きないだろう。
ただし 、会計 や 法律 と いった 業務 の 中 に ビッグ データ や 人工 知能 が 急速に 入り込む かも しれない 。 また 、ビッグ データ や 人工 知能 は マーケティング に も 活用 さ れ る だろう 。 さまざまな 事業 で ビッグ データ の 分析 と 人工 知能 の 活用 が 進んで いく ので 、データ 分析 の スキル や 知識 、人工 知能 に 関する 知識 は 重要に なる だろう 。 広告 や 画像 診断 、防犯 ・監視 と いった 一部 の 領域 で は 急速に 人工 知能 の 適用 が 進んで いく はずだ 。
中期 的 (5 年 から 15 年 )に は 、生産 管理 や デザイン と いった 部分 で 、人間 の 仕事 が だいぶ 変わって くる はずだ 。
先ほど も 述べた ように 、異常 検知 と いう タスク は 、高次 の 特徴量 を 生成 できる 特徴 表現 学習 の 得意 とする ところ であり 、「何か おかしい 」こと を 検知 できる 人工 知能 の 能力 が 急速に 上がってくる 。
たとえば 、監視 員 や 警備 員 といった 仕事 だ 。 明示 的に 監視 する と いう 仕事 で なく とも 、店舗 の 店員 や 飲食店 の 従業員 でも 、「何か おかしい こと に 気づいて 対応する 」と いう 業務 が 仕事 の 中に 織り込まれている こと も 多い 。 こうした 仕事 は 、基本的に センサー +人工 知能 で 代替 する こと が できる 。
例外 処理 は 例外 処理 で 別に つくれば よく なる ので 、ルーティンワーク の 多く の 部分 は 人工 知能 に 任せる こと が できる ように なる 。 そして 、「何か おかしい 」こと が 発生した とき だけ 人間 が 対応する ように なる 。 商品 の 数 を 数える 、売上 を まとめて エクセル を つくる 、定期的に 顧客 に メール を 送る といった 仕事 の 大半 は 、人工知能 が やっている 可能性 が ある 。
この 段階 で は 、まだ ルーティン でない 仕事 、クリエイティブ な 仕事 は 人間 の 仕事 として 重要である 。
たとえば 、顧客 の 例外 対応 を する 、提案書 を 書く 、など である 。
長期 的 (15 年 以上 先 )に は 、例外 対応 まで 含めて 、人工 知能 が カバー できる 領域 が 増えてくる 。
異なる 領域 を またがって 知識 を 活用 する こと が 進み 、顧客 対応 や 提案書 作成 といった こと も 可能に なって くる 。
この 段階 で 、人間 の 仕事 として 重要な もの は 大きく 2 つ に 分かれる だろう 。
1 つ は 、「非常に 大局的 で サンプル数 の 少ない 、難しい 判断 を 伴う 業務 」で 、経営者 や 事業 の 責任者 の ような 仕事 である 。 たとえば 、ある 会社 の ある 製品 の 開発 を いま の 状況 で どう 進めて いけば よい か は 、何度 も 繰り返さ れ る こと で は ない ため データ が なく 、判断 が 難しい 。 こうした 判断 は いわゆる 「経験 」、つまり これ まで の 違う 状況 に おける 判断 を 「転移 」して 実行 したり 歴史 に 学んだり する しか ない 。 いろいろな 情報 を 加味 した 上 で の 「経営 判断 」は 、人間 に 最後 まで 残る 重要な 仕事 だろう 。
一方 、「人間 に 接する インタフェース は 人間 の ほう が いい 」と いう 理由 で 残る 仕事 も ある 。
たとえば 、セラピスト や レストラン の 店員 、営業 など である 。 最後 は 人間 が 対応 して くれた ほう が うれしい 、人間 に 説得 さ れる ほう が 聞いて しまう など の 理由 で 、人間 の 相手 は 人間 が する という こと 自体 は 変わらない だろう 。 むしろ 人間 が 相手 を して くれる と いう ほう が 「高価な サービス 」に なる かも しれない 。
以上 を まとめる と 、短期 から 中期 的に は 、データ 分析 や 人工 知能 の 知識 ・スキル を 身に つける こと は 大変 重要である 。
ところが 、長期的に 考える と 、どうせ そういった 部分 は 人工知能 が やる ように なる から 、人間 しか できない 大局的な 判断 を できる ように なる か 、あるいは 、むしろ 人間対人間の 仕事に 特化していった ほうが よい 、と いうことに なる 。
さらに 忘れて は なら ない の が 、人間 と 機械 の 協調 である 。
すでに チェス で は 、人間 と コンピュータ が どのような 組み合わせ で 戦って も よい 、フリースタイル の 大会 が ある 。
さまざまな 仕事 に おいて も 、この 「フリースタイル 」方式 が 出て くる はずである 。 人間 と コンピュータ の 協調 に より 、人間 の 創造性 や 能力 が さらに 引き出される こと に なる かもしれない (*注 54 )。 そうした 社会 で は 、生産性 が 非常に 上がり 、労働 時間 が 短く なる ために 、人間 の 「生き方 」や 「尊厳 」、多様な 価値観 が ますます 重要視 される ように なる ので は ない だろう か 。
人工 知能 が 生み出す 新規 事業
ここ まで の 話 は 、人工 知能 、特に 特徴 表現 学習 に 起因 する 技術 の 発展 を ベース に 考えた 5年から20年くらいのスパンでの社会変化の話であった。
では 、人工 知能 に よって これ から 先 、新しい 事業 を つくり出す こと は でき ない のだろう か 。 本書 を 手 に とった 方 の 中 に は 、企業 で 人工 知能 に よる 新規 事業 を 考えて いる 方 も いる かも しれない 。
図 29 は 、米国 ブルームバーグ 社 の アナリスト に よる 、最近 の 世界中 の 人工知能 の ベンチャー を まとめた 図 である (*注 55 )。
およそ 2000 社 を 調べて つくった もの で 、参考 に なる だろう 。 これ を 見る と 、人工 知能 に 関する 新しい 事業 の 試み が 、さまざまな 領域 に 広がっている こと が わかる 。
「はじめ に 」で 触れた ように 、現在 、人工 知能 は 春 の 時代 を 迎え 、ブーム に なり つつ ある 。
人工 知能 に 関連 する 事業 は 、米国 でも 一気に 増えて いる が 、私 なり に 検討 した 結果 、急激に 成長 する 事業 は そうそう 立ち上がら ない かも しれず 、少し 慎重に 考えた ほうが よい かも しれない 。
まず 、図 の 最上段 に 書かれている 「コア ・テクノロジー 」という 部分 は 、機械学習 そのもの を 提供する ビジネス である 。 画像 認識 と 音声 認識 は 、特徴 表現 学習 が 最も 進んでいる 技術 分野 な ので 、その 2 つ の 分野 も 取り上げられている 。