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三姉妹探偵団 2 キャンパス篇, 三姉妹探偵団(2) Chapter 00 (1)

三姉妹 探偵団 (2) Chapter 00 (1 )

プロローグ 「今夜 は 眠れ そう も ない ぜ 」先に 着替え を 済ませて いた 先輩 の 北山 が そう 言って 、帽子 を かぶった 。 「何 か ある んです か ? 」太田 は 、ガードマン の 制服 の ボタン を 一 つ ずつ とめ ながら 訊いた 。 M サイズ の 制服 が 、やっと 二十 歳 に なった ばかりの 太田 に は 、少し 窮屈だった 。 しかし 、Lサイズは腹の出た中年の体型向きに作られているので、いずれにしても太田には合わない。 いくら 制服 支給 った って 、サイズ が 合わ ない んじゃね 、と 太田 は いつも ブツブツ 言っていた 。 ズボン だって 短 めで 、靴下 が 覗いて いる のだ 。 何とも カッコ悪い のである 。 体 は 丈夫だ し 、腕力 に も 自信 が ある が 、あまり 知性 に は 自信 の ない 太田 が ガードマン という 職業 に ついた のは 、多少 、制服 姿 に 憧れた から で も あった 。 いや 、正確に 言う と 、制服 姿 に 憧れる 女の子 に 憧れた 、と 言う べき かも しれない 。 要するに 、制服 を 着て りゃ もてる か な 、と 思った のである 。 もともと 、あまり もてる 方 じゃ なかった から だ 。 だ から 、その 肝心の 制服 が チンチクリン で は 、大いに 不満な わけだった 。 「何とか って スター が 泊る んだ 、この ホテル に 」「スター ですか 」TVなしで一日過すと頭痛がして来るという太田は、ちょっと興味を感じた。 「女の子 です か ? 」北山 は ニヤリ と して 、「男 だ よ 。 だから 大変な んじゃ ない か 」「つまり ファン の 女の子 が ──」「どの 部屋 に 泊ってる か 、かぎ 回る の が 必ず 五 、六 人 は いる 。 うまく 追い返さ ない と いけない から な 」「物好き だ なあ 」もし 、これ が 女優 か 何 か だったら 、自分 だって 部屋 を 見 に 行く くせに 、太田 は 、ちょっと 呆れた ように 言った 。 「誰 が 泊って る んです か ? 」「何とか いう 歌手 さ 」北山 は ロッカールーム から 出 ながら 、首 を ひねって 、「ええ と ……、よく 名前 を 憶えて ない んだ 。 ほら 、 週 末 は どう と か いう 歌 が はやってる だろう 」 「〈 週 末 の ロンサムナイト 〉 です か ? 」 TV の 歌 番組 の ベスト ・ テン なら 、 大体 太田 は 諳んじて いた 。 「そうそう 、それ だ 」「じゃ 、神山田 タカシ です ね 」「そう だった っけ 。 何だか 長たらしい 名前 だった な 」 二人 は 〈 保安 センター 〉 と 書かれた ドア を 押して 中 へ 入って 行った 。 「五分 遅刻 だ ぞ 」前 の 組 の 一人 が 、冗談 混り に 北山 へ 言った 。 「自分 は もっと 遅刻 してる くせに 」と 北山 が 応じる 。 「──何 か 問題 は ? 」「今 の ところ 、静かな もん だ 」モニター の テレビ が 、目の前 に 並んで いる 。 ホテル の 正面 玄関 と 通用口 、フロント 、それ から 金庫 の ある 事務所 の 入口 を 映し出している 。 「聞いて る だろ 、例の 神 山田 タカシ の こと 」と 、前の 組 の チーフ が 帽子 を 手 に 取って 、言った 。 「何 号 室 だ ? 」「最上 階 。 二〇一四 号 だ 」「スイート か 。 豪勢 だ な 」と 、北山 は 首 を 振った 。 「もう 入った の か な 」「ああ 。 一 時間 くらい 前 に チェック・インしてたよ。 今 の ところ ファン らしい 女の子 の 姿 は 見え ない な 」「穏やかに お 引き取り 願う んだ な 、もしや って 来たら 」「うまく やって くれ 。 ──それ じゃ 」「ご 苦労 さん 」──殺風景 な 部屋 は 、北山 と 太田 の 二人 に なった 。 「その 神 ──何とか いう の は 、いくつ ぐらい なんだ ? 」と 、北山 が 訊いた 。 「十八 歳 って 言って ます けど 、本当 は 二十 歳 を 越えてる らしい です よ 」芸能 情報 に は 詳しい 太田 が 言った 。 「それにしても 、若い んだ な 」北山 は 、ちょっと ため息 を ついた 。 ──北山 は もう 四十 代 の 半ば 。 頭 が 少し 薄く なり かけて いた 。 太田 は 壁 の 時計 を 見た 。 「──あと 五 分 で 十二 時 です ね 。 巡回 に 行って 来ます 」「ああ 、頼む 。 ──おい 、太田 」「は あ 」立ち上って 、ドア の 方 へ 行きかけた 太田 は 、足 を 止めて 、振り向いた 。 「その 歌手 を 目当て に うろついてる 女の子 を 見たら ──」「分 って ます 。 追い返し ます よ 」「いや 、そう じゃ ない 」と 、北山 は 手 を 振って 、「穏やかに やる んだ 。 ──相手 は 十五 、六 の 女の子 だ 。 当人 は それなり に 真剣に 思い詰めて る から 、下手に 馬鹿に しよう もん なら 、むき になる 。 廊下 で キーキー 喚かれたら お客 が みんな 起き ちまう ぞ 。 プレゼント や 手紙 が あったら 、 預って 、 ちゃんと 渡して やる 、 と 言って 、 うまく 説得 する ん だ 。 いい な ? 間違っても 、 怒鳴ったり する な よ 」 「 分 りました 」 なるほど 、 そんな もんか 、 と 太田 は 感心 した 。 業務 用 の エレベーター で 、一 番 上 の 二十 階 へ 上る 。 そこ から 下 へ 、一階 ずつ 見回って 、階段 で 降りて 行く のである 。 廊下 は 静か だった 。 ──二十 階 は 、いわば 上 客 だけ の 泊る フロア で 、部屋 も 広い 。 神山 田 タカシ の いる 二〇一四 号 室 も 、スイートルーム で 、四 人 は 泊れる ように なっている のだ 。 「神 山田 タカシ 、か …」太田 から 見たら 、あんな 、ナヨナヨ した 、やせっぽち の 、どこ が いい んだ 、という こと に なる 。 まあ 、どうせ 、一 、二 年 で 消えて 行く 、流れ星 みたいな 「スター 」の 一人 だろう が 、それでも 今 、若い 女の子たち が 熱狂 している のは 事実 だった 。 「まあ 、客 は 客 だ から な …」と 、太田 は 肩 を すくめて 呟いた 。 二〇一四 号 室 の 前 を 通る と 、中 から 笑い声 が 聞こえて 来た 。 グラス に 氷 を 入れて いる ような 音 も する 。 マネージャー と でも 飲んで る の か な 、と 太田 は 思った 。 二十 階 の 廊下 に は 、誰 も いなかった 。 太田 は 、十九 階 、十八 階 、と 降りて 行った 。 この ホテル で 働く ように なって 、もう 半年 である 。 最初の 内 は 、常連 の お 客 を 浮浪者 と 間違えて つまみ出そう と したり した こと も あった 。 まあ 、やっと 慣れて 来た 、と いう ところ か ……。 ここ が 一生 の 職場 と は 思って いない が 、差し当り は 悪い 仕事 じゃ なかった 。 「── ん ? 」十四 階 の 廊下 で 、太田 は 足 を 止めた 。 十六 、七 歳 と 見える 女の子 が 、左右 を キョロキョロ 見 ながら 、やって 来る 。 長い 髪 、小柄 だ が 、スタイル は 悪く なかった 。 割合 に 地味な 、セーター と スカート 。 リボン を かけた 箱 を 、大事 そうに 両手 で 、抱きしめる ように している 。 あれ は 、もしかすると ……。 「どうした の ? 」と 、太田 が 声 を かける と 、その 少女 は 、びっくり して 声 を 上げ そうに した 。 「あ ──あの ──」「いや 、びっくり させて ごめん 」太田 は 笑い かけた 。 ──色白 な 、可愛い 少女 だ 。 これ なら 、北山 に 言わ れ る まで も なく 、優しく 話して やり たく なる 。 「どうかした の ? 」と 、太田 は もう 一度 訊いた 。 「ええ と ……私 ……」少女 は 、言いにくそうに 顔 を 伏せた 。 「神 山田 タカシ の 部屋 を 捜して る の ? 」太田 の 言葉 に 、少女 は ハッと 顔 を 上げた 。 「そう なんです 。 ──この 階 か と思って 」「外れた ね 、残念 ながら 」と 太田 は 首 を 振った 。 「どこ だ か 教えて 下さい 」「悪い けど 、それ は だめな んだ 。 もし 、プレゼント が ある の なら 、預かる よ 。 明日 、必ず 渡す 。 約束 する よ 」少女 は 、ちょっと ためらった が 、「でも ──お 願い し ます 。 決して ご 迷惑 は お かけ しませ ん 。 どうしても 直接 手渡し たい んです 」「それ は ちょっと ねえ ……」「お 願いします 」少女 は 、床 に つく か と思う くらい 、オーバーに 頭 を 下げた 。 「困った なあ 」と 、太田 は 苦笑 した 。 「あなた から 聞いた こと 、誰 に も 言い ませ ん 。 それ に 、私 、タカシ と 握手 でも して もらえば 、もう 満足な んです 。 すぐ そのまま 、回れ 右 して 帰り ます 。 約束 し ます 。 何なら 、どこ か で 隠れて 見てて 下さい 」息 も つかず に しゃべり 続ける その 少女 を 見て 、太田 は 少々 哀れに なった 。 見る からに 真面目 そうな 女の子 だ 。 ああいう 歌手 を 追い回して いる 女の子 たち に よく ある 、虚ろ な 目つき と は 違って 、その 目 は 一途な 輝き を 見せて いた 。 もちろん 、ルームナンバー を 教える なんて 、とんでもない こと だ 。 この 少女 だって 、本当の こと を 言えば 、会った こと が ない から 、憧れて いられる のだ 。 ──実際 に 会ったら 、きっと がっかり する だろう 。 そう だ 。 このまま 帰して やら なくちゃ いけない 。 「二十 階 へ 行って ごらん 」と 、太田 は 言った 。 「二〇一四 号 室 かも しれない よ 。 ──たぶん 」少女 が 頰 を 紅潮 させた 。 「ありがとう ございます ! 」バネ 仕掛 の 人形 みたいに 、ピョコン と 頭 を 下げ 、廊下 を 駆け出して 行く 。 「エレベーター は 逆の 方 だ よ ! 」と 、太田 は 呼びかけた 。 「 いやだ ! すみません 」少女 は 、Uターンして、恥ずかしそうに太田の前を通り抜けて行った。 ── やれやれ 。 太田 は 肩 を すくめた 。 どうして 、ルームナンバー を 教え ちまったん だろう ? 何だか 、自分 でも よく 分らない 。 ただ 、あの 子 なら 大丈夫 の ような 気 が した のだ 。 あの 子 が 、色白 で 可愛かった から か ? そう かも しれ ない 。 まあ ──どう って こと ない さ 、と 太田 は 思った 。 たまたま あの 子 が 捜し当てた 、って こと も ある んだ から ……。 ──十四 階 か 。 どうして ここ に いた の か な ? そう か 。 きっと 〈 二〇一四 号 室 〉 の 〈 一四 〉 の ところ だけ 、 どこ か で 耳 に した のだ 。 それ で 十四 階 か と 思った んだろう 。 それにしても 、あんな 可愛い 娘 が 、こんな 時間 に わざわざ 、プレゼント 一つ 、手渡す ために やって来る なんて 。 「 俺 の 所 に ゃ 、 バレンタイン の チョコレート だって 来ない のに 」 また 巡回 を 続け ながら 、 太田 は グチ を 言った 。 ──保安 センター に 戻る と 、北山 が 大 欠伸 を していた 。 「何 か あった か ? 」「いえ 別に 」と 、太田 は 首 を 振った 。 「コーヒー でも 飲めよ 。 ──ファン らしい の は いなかった か ? 」「ええ 」太田 は 、ポット の コーヒー を 紙 コップ に 注いだ 。 「そう か 。 さっき 裏口 の 方 に 、それ らしい の が 二 、三 人 見えてた けど 、いつの間にか 見えなくなった よ 。 外 は 雨 らしい 。 この 分 じゃ 、来た 子 が いて も 、みんな 帰っちまう だろう 」「雨 です か 」ホテル の 中 に いる と 、雨 が 降ろう と 雪 が 降ろう と 、一向に 分らない 。 ──退屈な 時間 が 過ぎた 。 夜中 の 十二時 の 後 、一時 、二時 、と 巡回 が ある 。 後 は 明け方 五 時 の 交替 前 に もう 一度 回る だけ だ 。 「 そろそろ 一 時 だ な 」 と 、 北山 は 言った 。 「悪い けど 、もう 一 度 回って くれる か ? 俺 は 二 時 に 回る 」「いい です よ 」太田 は 肯いた 。 座って いて も 眠く なる ばかりだ から 、歩いた 方 が いい 。 それ に ──ちょっと 気 に なった こと が あった 。 さっき の 女の子 が 出て 行く の が 、どの モニター に も 映ら なかった のである 。 もちろん 、あれ で 二十 階 へ 直行 して 、神山田 タカシ に プレゼント を 手渡し 、すぐに 帰って 行った の なら 、太田 が 保安 センター に 戻る 前 に 、ホテル を 出て いて 不思議 は ない 。 ただ 、それ なら 、北山 の 目 に 止って い そうな 気 も する が ……。 しかし 、いくら ガードマン だって 、モニター テレビ の 画面 から 、一瞬 たり と 目 を 離さ ない と いう わけで は ない し 、トイレ に だって 立つ こと が ある 。 まあ 、どう って こと は ない だろう ……。 二十 階 に 上った 太田 は 、ゆっくり と 廊下 を 歩き出した 。 ──さっき は 、いくつか の 部屋 から 、シャワー の 音 や 、TVの声らしいものが聞こえていたが、今はすっかり静かである。 二〇一四 号 室 の 前 に 来る と 、太田 は つい 足取り を 緩めて 、中 の 様子 に 注意 を 向けた 。 しかし 、物音 一つ 、聞こえて 来ない 。 とっくに 眠って しまった の かも しれ ない 。 太田 は 、ヒョイ と 肩 を すくめて 、普通の 足取り で 歩き 始めた 。 五 、六 メートル 進んだ とき 、背後 で 、急に ガチャッ と 音 が して 、太田 は 振り向いた 。 二〇一四 号 室 の ドア が 開いた 。 そして 、中 から 、髪 を 振り乱した 少女 が 、よろける ように 飛び出して 来る 。 太田 は 目 を 見張った 。 ──あの 女の子 だ ! 駆け出そう と して 、その 少女 は 太田 に 気付く と 、ハッと した 様子 で 、目 を 見張った 。 太田 の 方 も 、愕然 と していた 。

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