三 姉妹 探偵 団 01chapter02(2)
「事件 に は いくつか 疑問点 が ある わ 。
書き出して みた の 」
夕 里子 は メモ を 広げた 。
「一つ 、なぜ 水口 淳子 の 死体 は うち の 押入れ に あった の か 。 どう やって 、いつ 運び入れた の か 」
「あの 晩 じゃ ない ?
「でも 、私 は 戸締り した の 。
鍵 を 壊して 入る に しても 、物音 が すれば 、私 、たいてい 目 が 覚める わ 。 特に パパ の いない とき は 神経 使ってる もの 」
「じゃ 、どういう こと に なる の ?
「犯人 は 鍵 を 開ける ベテラン か 。
──でも 、これ は ちょっと 変だ と 思う の 。 水口 淳子 は 普通の OL よ 。 それ が 関係 を 持った 相手 が 空巣 の ベテラン だった なんて 、ピンと 来ない じゃない 」
「それ は そう だ 」
と 、珠美 は 肯いて 、「じゃ 、どういう こと に なる の ?
「犯人 は うち の 鍵 を 持ってた んじゃ ない かしら 」
「でも 、鍵 は 私たち 三人 と パパ しか 持って ない わ よ 」
「合鍵 なら 作れる でしょ 。
──ね 、この 中 に 鍵 を どこか で 落とした こと の ある 人 、いない ? 夕 里子 は 、綾子 と 珠美 を 交互に 見て 、「誰 か が その 型 を 取って 、それ から 返して くれた か 、どこか へ 届けた の かも しれない わ 。
── どう ? 素直に 言った 方 が 身の ため よ 」
ひどい 探偵 である 。
「 お 姉さん は ?
「私 、そんな こと なかった ……と 思う けど 」
「はっきり し ない んだ から 、もう !
「だって 、あんまり 前 の こと なら 忘れちゃう わ よ 」
「そんなに 前 の はず な いわ 。
だって 、犯行 を 計画 した から こそ 合鍵 を 作った んだろう し 、犯行 を 思い立った の は 、水口 淳子 が 妊娠 した から でしょう から ね 」
「夕里子 、そんな 大きい 声 で ──」
「何 言って ん の 。
世間体 なんか 気 に してる 場合 じゃない でしょ 」
「私 は 落とした こと なんか ない よ 」
と 、珠美 が 言った 。
「ま 、それ は 保留 し とき ましょ 」
と 、夕里子 は メモ へ 目 を 落として 、「次 は 、犯人 は なぜ うち に 火 を つけた の か 。
水口 淳子 の 身許 が 分らない ように する ため なら 、別に うち を 燃やす 必要 は ない の よ 」
「うん うん 」
珠美 が 肯 く 。
「犯人 は 、私たち を 皆殺し に する つもり だった の か ?
綾子 が 青く なった 。
「 まさか !
「想像 よ 。
──私 ね 、もしかすると 犯人 は パパ が いない こと を 知らなかった んじゃないか と 思う の ね 」
「どういう 意味 ?
「つまり 、犯人 は パパ に 罪 を 着せよう と した 。
だから 当然 、パパ の こと を 知ってる 。 そして うち の 鍵 を 手に入れる 機会 も あった わけ ね 。 でも 、いつ パパ が 出張 で いなく なる か 、とか 、パパ の 部屋 が どこ か という こと は 知ら なかった 」
「何で そんな こと 分ん の ?
「想像 ──いえ 、推理 よ 。
つまり 、あの 水口 淳子 って 人 の 死体 を わざわざ うち へ 忍び込んで 隠し 、火 を つける ぐらい だ から 、当然 パパ に 殺人 の 罪 を かぶせる つもり だった わけ でしょう ? それ なら パパ の いない とき に そんな こと する はず が ない じゃない の 」
「つまり 犯人 は 、パパ が いる と 思った ……」
「他の 部屋 で 寝て いる と 思った の よ 、きっと 」
「でも 、一緒に パパ まで 焼け 死んじゃったら 、パパに 罪 を 着せられ ……る か 」
「それ こそ 絶好 の 条件 じゃ ない 。
愛人 を 殺して 、良心 の 呵責 に 堪えかね 、娘 三人 道連れ に 無理心中 なんて 」
「する と 犯人 も まずった わけ ね 、パパ が いなかった わけだ もの 」
「 そう 。
──その 先 が 問題 よ 。 パパ は どこ に いる の か 。 そして 、出張 してる と 言っていた 間 、どこ に いた の か ……」
「 ウーム 」
と 、珠美 が 一人前 に 考え込む 。
「で 、どう やって 調べる わけ ? 「一つ は ね 、水口 淳子 の 恋人 という の が 、本当 は 誰 だった の か 、って こと 。
家族 は 知ら なかった みたいだ けど 、そりゃ 当り前 よ 。 恋人 が 中年 の 男 で 、妊娠 してる なんて 、親 に 話す の は 最後 の 最後 よ ね 。 でも 、会社 の 同僚 で 親しかった 人 に 、絶対 打ち明けてる と 思う の 」
「それ を 聞き出す の ?
どう やって ? 「それ は 、同じ 所 に 勤める 他 ない わ ね 」
「勤める って ……会社 に ?
「 そう 。
昼 休み の おしゃべり と か 何か の とき 、必ず 水口 淳子 の 話 が 出る と 思う の 。 それ を 聞いて 来る の よ 」
「そりゃ いい けど さ ……」
「何 か 異議 あん の ?
「夕里子 姉ちゃん 、勤め られる ?
まだ 十七 よ 」
「私 が 勤める 、って 誰 が 言った ?
珠美 は 目 を パチクリ させて 、
「私 、まだ 義務 教育 中 」
「分 って る わ よ 。
勤める の は お姉さん よ 」
綾子 は 啞然 、呆然 ……。
「 そんな !
無理 よ ! 「お姉さん しか いない の 。
OL に なって おかしく ない 年齢 の 人 は 」
「 でも ……」
「でも も スト も なし !
パパ の 罪 を 晴らし たく ない の ? 「そりゃ ……私 だって ……」
「じゃ 、決定 」
綾子 は 今にも 泣き出し そうな 顔 で 、
「だけど ……急に 行った って 、雇って くれ ない わ よ 」
「ご 心配 なく 。
その 会社 、今 アルバイト 募集 してる の 。 電話 し といた から 、明日 から 出勤 できる の よ 」
綾子 は 、この世 は 鬼 しか いない の か 、と ため息 を ついた 。
「でも さ 、お姉ちゃん 。
お 金 ある の ? 少し は 軍資金 ない と 大変だ よ 」
「ここ に 二万 円 ある わ 」
と 、夕里子 は 、中岡 から 、無利子 無期限 無担保 で 借りて 来た ──つまり は もらった ような もん だ ──三万 円 の 中 の 二万 円 を 出した のである 。
「わ っ !
お姉ちゃん 、ずるい ! ヘソクリ して た ! と 、珠美 が 目 の 色 を 変える 。
「何 言って ん の 。
焼け 出さ れ て 、どう やって へそくる の よ 」
「じゃ 、どうした の ?
珠美 は 急に 声 を ひそめて 、前 へ 乗り出し 、「身体 を 売った の ?
夕 里子 は 拳 を かためて 、珠美 の 頭 を ゴツン と やった 。
「先生 から 借りて 来た の よ !
「 イテテ ……。
それ なら そう と 早く 言って よ 」
「これ を 大事に 使う の よ 。
経費 は 極力 切りつめて 」
「あ 、それ なら 、私 が 出納係 やる !
と 、珠美 が 素早く 一万 円 札 二 枚 を わしづかみ に する と 、「必要な 分 は その 都度 渡す 。
そう すりゃ むだ が ない わ 」
「OK。
あんた ケチ だ から ちょうど いい でしょ 」
「ケチケチ で 行か なきゃ ね 。
何せ みなし児 なんだ から 」
「ねえ 、夕里子 」
綾子 は 情ない 顔 で 、「どうしても やら なきゃ だめ ?
「お姉さん は パパ の 無実 を ──」
「 分った わ !
やる わ よ 、やる わ よ 」
綾子 は あわてて 言った 。
「明日 の 九時 から 出勤 よ 」
「そんなに 早く ?
私 、朝 弱い の よ 」
「大丈夫 、私 が 叩き起こして あげる 」
と 、珠美 。
「私 が 会社 の 前 まで ついて行く から 、心配 な いわよ 」
と 、夕里子 が 微笑んだ 。
綾子 は 断崖 絶壁 から 、切れ かけた ロープ で ぶら下がっている 気分 であった ……。