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世界から猫が消えたなら (If Cats Disappeared from the World), 世界 から 猫... – Text to read

世界から猫が消えたなら (If Cats Disappeared from the World), 世界 から 猫 が 消えた なら:世界 から 時計 が 消えた なら:2

고급 1 일본어의 lesson to practice reading

지금 본 레슨 학습 시작

世界 から 猫 が 消えた なら : 世界 から 時計 が 消えた なら :2

外 は 快晴 で 、絶好 の 散歩 日和 だった 。

前 を 行く キャベツ の 足取り も 軽い 。

いつも 母さん は 、キャベツ と 一緒に 出かけて いた 。

そう 思う と 、自分 が 知らない 母さん の こと が 分かる ような 気 が して 、とにかく 今日 は 気長に 一日 キャベツ に 付き合う こと に した 。

そして よく 考える と 、キャベツ が なぜ 時代劇 風 の しゃべり方 な の か が 分かってきた 。

母さん だ 。

子猫 だった キャベツ が うち に 来た ばかり の 頃 だった 。

母さん は 突然 テレビ の 時代劇 に ハマり だした (うち の 母 も 世 の 母親 と 同じく 、突然 謎めいた マイブーム が 巻き起こり 、いつの間にか 終息 している という 習性 を もっていた )。

水戸 黄門 、暴れん坊 将軍 、遠山 の 金 さん 。

「日本 の 男 は こう じゃ なくちゃ ね 」

など と よく 分からない 日本 男児 論 を 語り ながら 、母さん は 僕 を その マイブーム に 巻き込もう と した 。

「申し訳ない けれど 母さん 、僕 は テレビ の 時代劇 より 映画 が 観たい よ 」

僕 は 丁重 に お 断り した 。

時代劇 仲間 が いない 母さん は 、朝 から 晩 まで キャベツ を 膝 に 乗せ ながら 時代劇 を 観て 過ごした 。

おそらく 、キャベツ は そこ で 「人間 の 言葉 」を 覚えた の だろう 。

果たして キャベツ の 言葉 は 、母さん の 言葉 と 時代劇 の 言葉 が 奇妙に ミックス された 不思議な 日本語 に なって しまった 。

ああ 可哀そう に 。 でも なんだか 可愛い から 直さないで おこう 。 テトテト と 歩く キャベツ の 後ろ姿 を 見 ながら 、僕 は そんな こと を 思って いた 。

キャベツ の 行く 道 に は 点々 と 雑草 が 生えて いる 。

電柱 の 下 に は タンポポ が 小さく 咲いて いた 。 そう か 、もう すぐ 春 な のだ 。 キャベツ は タンポポ に 近づいて 、くんくん と 匂い を 嗅ぐ 。

「タンポポ だ ね 」

僕 が 言う と キャベツ は 不思議 そうな 顔 を した 。

「これ は タンポポ と いう でござる か 」

「知らない の ?

」 「 さよう 」 「春 に なる と 咲く 花 だ よ 」

「そう でござる か ……」

それから キャベツ は 道ばた の 花 に 次 から 次 へ と 近付き 「これ は なんという でござる か ?

」と しつこく 聞いて きた 。

からす の えんどう 、なずな 、ハルジオン 、マーガレット 、ほとけのざ 。

道ばた の 雑草 たち は 、北風 の なか 、かすかな 太陽 の 暖かさ を 頼りに つつましく その 花 を 咲かせて いた 。

僕 は 記憶 を たどり ながら 、花 の 名前 を キャベツ に 教える 。 不思議な もの で すっかり 忘れて いた 幼い 頃 の 記憶 が 、次 から 次 へ と 呼び戻されて いく 。

そう いえば 幼い 頃 の 僕 も 、母親 と 散歩 する たび に 「あれ は なんて いう の ?

これ は なんて いう の ? 」と しつこく 聞いた という 。 きっと 今 の キャベツ みたいな 感じ だった のだろう 。 こんな こと に 母さん は 毎日 付き合って いた のだ と 気付く 。

「ちょっと 花 を 見つけて は 座り込んで 、また 見つけて は 座り込んで 。

なかなか 散歩 が 終わら なくて 大変 だった の よ 」

大人 に なった 僕 に 、母さん は よく その 話 を 聞かせた 。

「でも とっても 幸せな 時間 だった 」

懐かし そうに 遠く を 見て 、笑い ながら 母さん は 言った 。

たっぷり と 時間 を かけて 、僕 と キャベツ は 丘 の 上 の 公園 に たどりついた 。

高台 に ある 公園 。

眼下 に は 、坂 に 沿って 並んで 建つ 家々 と 、その 先 に 群青色 の 海 が 見える 。 こぢんまり と した その 公園 に は 、ブランコ に すべり台 、そして シーソー 。 小さな 子ども たち と 母親 たち が 、砂場 で 遊んでいる 。

キャベツ は 公園 を ぐるっと 一周 して 、子ども たち と たしなみ 程度 に 戯れ 、ベンチ に 座って 将棋 を 指していた 老人たち に 向かって 「どいて 欲しい でござる 」と 言う 。

突然 現れた 〝 しゃべる 猫 〟 を 見て パニック に なる ので は ない か と ヒヤヒヤ した が 、 老人 たち は 困り 顔 で 笑い 合って いる 。 どうやら 僕 以外 の 人間 に は 、キャベツ の 言葉 は 聞こえない ようだ 。

「だめ だ よ 、キャベツ 。

ここ は いま 、この 人たち が 使って いる んだ 」と 僕 は 言う 。

それでも キャベツ は 「この 場所 が いい の でござる 」と 諦めない 。

そして ついに 我慢 でき なく なった の か 、将棋盤 の 上 に 飛び乗り 、がちゃがち と 駒 を 蹴散らして しまった 。 老人 たち は さすが に 呆れ顔 で 、でも 毎度 の こと だ と いう ように 苦笑い を しながら 、ベンチ を 譲って くれた 。

僕 が 老人 たち に 頭 を 下げて いる の を 横目 で 見 ながら 、 キャベツ は 青い ペンキ が はがれ かかった その 木製 の ベンチ の 上 に どっかり と 座りこみ 、 手足 を なめ はじめる 。

しばらく は 動き そうに ない ので 、僕 は キャベツ の 隣 に 座って 、ただ ぼうっと 遠く に 広がる 海 を 見つめて いた 。

無限に 続く ような 平和な 世界 。 僕 は いつも の 癖 で 公園 の 時計塔 を 見やる 。 やはり 時計 は 見当たらない 。 この 平和 が 、時間 と いう 決まり事 が なくなった こと に より もたらされている の か 、普段 から ここ に ある もの なのか は 僕 に は 判断 できなかった 。 ただ 時計 が なくなった 世界 を 自分 の なか で 受け入れられる ように なる と 、なんだか とても 穏やか で 解放 された 気持ち に なってきた 。

「しかし まことに 人間 は 不思議な 生き物 でござる な 」

毛づくろい が 終わった の か 、キャベツ が 僕 の 方 を 向いて 語り だす 。

「そう か ?

」「どうして 、花 なんか に 名前 を 付ける の でござる か ? 」「それ は 、いろいろ と 種類 が ある から だよ 。 区別 を つけ なくちゃ ならない だろ 」

「種類 が ある からって 、なんで 全部 に 名前 を 付け なくてはならない の でござる か ?

花 は 全部 〝 花 〟 で よい ので は ない か ? 」 確かに 。 人 は なぜ 花 に 名前 を 付ける のだろう 。 花 だけ で は ない 。 物 に も 色 に も 形 に も 、そして 人 に も 。 どうして 名前 が 必要 な のだろう か 。

時間 という もの も そう だ 。

太陽 が 昇り 、そして 沈む 。 そういった 自然 現象 に 対して 人間 が 勝手に 年月日 や 時 分 秒 と いう 「名前 」を 与えて いる だけ なのだ 。

キャベツ の 世界 に は 時間 が ない 。

当然 時計 も ない 。 定刻 や 遅刻 も ない 。 一年生 、二年生 、三年生 も ない し 、夏休み も 冬休み も 春休み も ない 。 ただ そこ に 、自然 現象 を 中心 と した 状況 の 変化 と 、お腹 が 空いた 、眠く なった 、と いう ような 体 の 反応 が ある だけ だ 。

時計 が なくなった 世界 で 、ゆっくり と 考えて みる 。

すると 、いろいろな 人間 の ルール が 自分 の なか で 瓦解 して いく 。 時間 と 同じ ように 、色 や 温度 という 尺度 も 存在 しない こと に 気付く 。 いずれ も 人間 の 体感 に 「名前 」を つけた だけ な のだ 。

「人間 以外 の すべて の 世界 」から 見る の ならば 、時 分 秒 も 存在 せず 、青 も 赤 も 黄 も 、体温 も 気温 も 存在 しない 。

でも 黄 や 赤 が ない のだ と したら 、キャベツ は そもそも 、タンポポ を 可愛い と も バラ を 美しい と も 思わない のだろうか 。

「しかし キャベツ さ 、君 の こんな 散歩 に 毎日 付き合って いた 母さん は 偉い な 」

「どういう こと でござる か ?

」「君 の 気まぐれな 時間 に 付き合う の は なかなか 大変 だろう から さ 。 母さん は 本当に 君 の こと を 可愛がって いた んだ と 思う よ 」

「 母さん ?

」「ああ 、僕 の 母さん だ 。 君 の 母さん でも ある な 」

「母さん と は ……いったい 誰 の こと でござる か ?

」言葉 を 失った 。 キャベツ が 母さん の こと を 忘れて いる 。

そんな こと は あり得なかった 。

いや 、あって は ならない こと だった 。

あの 日 、キャベツ を 拾って きた 母さん の 顔 が よみがえる 。

悲しい ような 、切ない ような 。 でも 希望 に 満ちた 顔 を していた 母さん 。 いつも キャベツ と 一緒に テレビ を 見ていた 母さん 。 膝 の 上 で 眠る まで キャベツ を 撫でて いた 母さん 。 しまい に は 自分 も 一緒に 眠って しまい 、ソファ で キャベツ と ふたり で 丸く なって いた 母さん 。 その 穏やかな 顔 。 胸 が 苦しく なる 。

「母さん を 、本当に 覚えて ない の か ?

」「それ は 誰 でござる か ? 」この 人 は 何 を 言って いる の だろうか ? と 言わんばかり の 表情 で 、キャベツ は きょとんと している 。 やはり 覚えて いない の だ 。 悲しい 、という より は 苦しかった 。 キャベツ の 、その 無邪気 さ が 、この 残酷な 状況 を 際立たせる 。

『ハチ公 物語 』の ように 動物 が 飼い主 の こと を いつまでも 忘れない と いう 物語 を 、どこか 心 の 奥底 で 信じて いた 。

けれども 、あれ は 動物 に 対する 人間 の 幻想 だった の だろう か 。 キャベツ は やがて 、僕 の こと も 忘れて しまう のだろう か 。 キャベツ の 世界 から 、僕 が 消えて しまう 日 が くる のだろうか 。

僕 が 何気なく 過ごして きた 時間 が 、とてつもなく 大切な もの に 思えて くる 。

僕 は あと 何回 キャベツ と 一緒に 朝 を 迎える こと が できる のだろうか 。 残り の 人生 、大好き な あの 曲 を 、あと 何回 聴く こと が できる のだろうか 。 あと 何回 コーヒー が 飲める の か 。 ごはん は 何回 、おはよう 何回 、くしゃみ 何回 、笑う の は あと 何回 だ ?

そんな こと 考え も しなかった 。

母さん と 会う とき だって そう だった 。 それ が 分かって いたら 、その 一回 一回 を どれ だけ 大切に 考えた こと だろう 。 母さん は 、僕 が そんな あたりまえ の こと に も 気付かない うち に この 世界 から 消えて しまった 。

僕 が 生きて きた この 三十 年間 、果たして 本当に 大切な こと を やってきた の か 。

本当に 会いたい 人 に 会い 、大切な 人 に 大切な 言葉 を 伝えて きた の か 。

僕 は 母さん に かける 一本 の 電話 より も 、目の前 の 着信 履歴 に かけ直す こと で 目いっぱい に なっていた 。

本当に 大切な こと を 後回し に して 、目の前 に ある さほど 重要 ではない こと を 優先 して 日々 生きて きた のだ 。

目の前 の こと に 追われれば 追われる ほど 、本当に 大切な こと を する 時間 は 失われて いく 。

そして 恐ろしい こと に 、その 大切な 時間 が 失われている こと に まったく 気付かない のだ 。 ちょっと 時間 の 流れ から 離れて 立ち止まって みれば 、どちら の 電話 の 方 が 自分 の 人生 にとって 重要な の か は すぐ 分かる こと だった のに 。

僕 は キャベツ を 見やる 。

いつの間にか 、キャベツ は ベンチ の 上 で 丸まって 寝て いた 。

真っ白な 美しい 四 肢 を 、白 と 黒 と グレー の アンサンブル が 見事な 体 の なか に 折りたたむ ように して 丸く なっている 。

僕 は その 体 に 触れる 。 トクトク と 心臓 が 拍動 して いる 。 眠って いる その 姿 から は 想像 できない ような 力強い 拍動 だ 。

哺乳類 は 、どの 動物 も 一生 の 間 に 心臓 が 二十億 回 拍動 する という 。

象 は 五十 年 生きる 。

馬 は 二十 年 。 猫 は 十 年 。 ネズミ は 二 年 。 でも みんな 平等 に 心臓 は 二十億 回 打って 死ぬ 。 人間 は 七十 年 。 果たして 僕 の 心臓 は 二十億 回 分 拍動 した のだろう か 。

いま まで 僕 の 人生 は 過去 から 現在 を 経て 、無限の 未来 へ と 進んでいた 。

でも 僕 の 未来 が 有限 だと 判明 した とき から 、未来 が 僕 へ と 向かって くる ような 気 が していた 。 もう すでに 定められた 未来 を 僕 が 歩いて いく 。 そういう 感覚 だ 。

皮肉な もの だ 。

余命 わずか だ と 宣告 され 、時間 が ない 世界 に 放り込まれた 僕 は 、はじめて 自分 の 意思 で 未来 を 見つめよう と している 。

頭 の 右 は じが また ジリジリ と 痛み 始める 。

息 が 苦しく なる 。

僕 は まだ 死に たくない 。

まだ 生きて い たい 。

そして 明日 また 僕 は 、この 世界 から 何か を 消す のだ 。

自分 の 命 の ため に 、自分 の 未来 から 何か を 奪って 。

キャベツ は その あと も 延々と 眠り 続けた 。

公園 から 子ども たち が いなく なり 、太陽 が 西 に 傾き 始めた 頃 、キャベツ は ようやく 目 を 覚ました 。

ベンチ の 上 で 、これ 以上 伸びない から やめた ほうがいい ので は ない か と 心配する ぐらい の 伸び を し 、大きな あくび を ずいぶん 時間 を かけて 消化して 、キャベツ は 僕 の 方 を ゆっくり と 見た 。

「お 代官 様 、行く でござる ぞ 」

寝起き の キャベツ は ちょっと 偉そうな 口調 で ひと言 告げる と 、ベンチ を すたっと 降りて テトテト と 坂 を 下って いく 。

キャベツ が 向かった の は 、駅 に 向かう 道 に ある 商店街 だった 。

商店街 に 入って すぐ の ところ に ある 蕎麦屋 の 前 で 、にゃあ (おい ! )と 鳴く 。 すると 、かつおぶし を 手 に 主人 が 出てきた 。 キャベツ は かつおぶし を せしめる と 、また にゃあ (よし ! )と 鳴いて 歩き 始める 。 これ で は どちら が 飼いならされて いる の か 分からない 。

キャベツ は 商店街 の 人気者 らしく 、行く 先々 で 声をかけられる 。

まるで 僕 が お 付き の 家来 の ようだ 。 本当 は お 代官 様 なのに 。 でも ひとつ だけ 良かった の は 、この キャベツ 人気 の おかげ で 、野菜 も 魚 も 惣菜 も すべて サービス 価格 で 買えた こと だ 。 まさか の 猫 割 。

「こんど から 買い物 だけ は キャベツ と 行く こと に する よ 」

たくさんの 買い物 袋 を 両手 に 持ち ながら 僕 は キャベツ に 言った 。

「それ は いい でござる が 、拙者 が 好きな ごはん を きちんと 作って くだされ よ 」

「いつも 出してる じゃ ない 。

猫 まん ま 」

すると 先 を テトテト 歩いて いた キャベツ が ぴたっと 止まる 。

「 どうした ?

」どうやら 怒り で 震えて いる ようだ 。 「その こと でござる が ……ずっと 言わせて もらいたい こと が あった の でござる 」

「 何 ?

なんでも 言って よ 」

「猫まんま って 、あれ は なん でござる か !?」

「 え ?

」「あれ は 人間 の 食べ残し に 無理やり 名前 を 付けた だけ でござる 」 怒り で 感情 が 高ぶった の か 、キャベツ は フギャー と 吠え ながら そば に あった 電柱 に 激しく 爪 を がりがり させる 。

そんなに 猫まんま が 嫌だった の か 、と またしても 人間 の 身勝手な 決まり事 に ついて 深く 考えさせられた 頃 、僕ら の 住む 小さな アパート が 坂 の 先 に 見えてきた 。

部屋 に 入った 僕 と キャベツ は (猫まんま で は なく )一緒に 焼き魚 を 食べ 、また 静か で のんびり と した 時 の 流れ に 戻ってきた 。

「なあ キャベツ 」

「どうした でござる か ?

」「本当に 母さん の こと 、覚えて ない の か ? 」「覚えて ない でござる 」 「そう か ……やっぱり 悲しい な 」

「どうして 悲しい の でござる か ?

」僕 は キャベツ に 「どうして 悲しい か 」を 説明 できなかった 。 キャベツ が 忘れて いる こと を 責める こと も できなかった 。 でも 、キャベツ と 母さん の あいだ に 確かに 存在 した 「時間 」を 伝えたかった 。

僕 は 立ち上がり 、クローゼット の 奥 から 段ボール箱 を 取り出した 。

埃 を かぶった 段ボール箱 の 中 に は 、エンジ色 の アルバム が あった 。 僕 は その アルバム を キャベツ に 見せる こと に した 。

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