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この世界の片隅に, 昭和 8年 12月 22日 (1)

昭和 8年 12月 22日 (1)

昭和 8 年 12 月 22 日

体 の 半分 ほど も ある 大きな 風呂敷 包み を 背負い 、 すず が 海 沿い の 道 を 歩 い て いる 。

右手 に 広がる 干潟 の 手前 で 、 蟹 でも 見つけた のだろう か 、 二 羽 の サギ が 泥 を ついばんで いる 。

鏡 の ような 泥 の 海 は やがて 澄んだ 青い 海 へ と 変わる 。

凪いだ 海 を 滑る ように 進んで きた 小舟 が 、 ゆっくり 岸 へ と 近づいて くる 。

「 お ぉ ー い 。 どこ まで 行く んな ー ? 」 艪 を 漕ぎ ながら 年老いた 船頭 が すず に 声 を かけて きた 。 中島 本町 まで 行く の だ と 目的 地 を 告げる と 、 だったら 中洲 の 先 まで 乗せて くれる と いう ので 、 すず は ありがたく その 申し出 を 受ける こと に した 。

舟 に 乗る と 、 すず は ひざ を 折って 座り 、 指 を ついて 船頭 に 頭 を 下げた 。

行儀 の 良 さ に 船頭 の 口元 が ゆるむ 。

船頭 は すず に なん の 用事 な の か 訊ねた 。

「 中島 本町 の 『 ふたば 』 まで 海苔 を 届ける のです 。 本来 は 兄 の 役目 でした が 風邪 の ため わたくし が 代理 を ……」 そこ まで 言って 、 すず は 足 を もぞもぞ と 動かし はじめた 。

とうとう 我慢 が でき なく なった の か 、 左 足 を 上げ 、 すね を さする 。

「 そりゃ あ 感心 じゃ が …… は ぁ 、 やめ え やめ え 。 砂利 舟 の 戻り じゃけん 、 散らば っと ろう が ……」 立てた ひざ から パラパラ と 砂利 が 落ち た 。

すず は ホッと した ように 足 を くずす 。

「 ほ い で 海苔 を 届けたら 、 兄 と 妹 に お み や げ を 買う て 帰る のです 」 「 ほうほう 」 本川 に 入る と 舟 の 速度 も 増して きた 。

冷たい 風 が すず の 白い 頰 を 撫でる 。

手 を うしろ に つき 、 顔 を 上げた すず の 視線 の 先 を サギ が 飛び去って いく 。

おみやげ 、 何 が ええ じゃ ろ ……。

すず は ふところ から がま口 を とり出す と 、 中 の 小銭 を 手のひら に 落とした 。 十 銭 白 銅貨 が 二 枚 。 それ を 眺め ながら 、 考え る 。

チョコレート 、 あん ぱん 、 キャラメル …… いや 、 おもちゃ の ほう が ええ じゃ ろ か 。

すみ ちゃん 、 ヨーヨー ほしがって たし ……。

「 もう 着く で ー 」 船頭 の 声 に 、 すず は ハッと 顔 を 上げ た 。 前方 に 中 洲 に 広がる 街並み が 見える 。

船頭 は 艪 を 巧みに 操り 、 雁木 へ と 舟 を 寄せて いく 。

舟 から 雁木 に 移り 、 すず は 「 ありがとう ございます 」 と 船頭 に お辞儀 した 。

「 おう 、 気 ぃ つけ え な 」 船頭 は 竿 で 雁木 を 押す と 、 ゆっくり と 岸 を 離れて いった 。

中島 本町 は 本川 と 元 安川 に はさま れた 中 洲 の 北側 に 位置 する 、 広島 でも 有数 の 繁華街 である 。

西 の 本川 橋 と 東 の 元 安 橋 を 結ぶ 中 島本 通り は 左右 に 多く の 店 が 建ち 並び 、 大きな 商店 街 に なって いる 。

雁木 の 石段 を 上った すず は 、 大通り の 向こう から 流れて くる にぎやかな 音楽 に 誘わ れる か の ように 、 足 を 踏み出した 。

商店 街 は 人 で あふれて いた 。

あまり の 混雑 ぶり に 、 すず は 目 を パチクリ さ せる 。

その 中 に 真っ赤な 衣装 を つけた ひときわ 目 を 引く おじさん が いた 。

顔 を 覆う 白い ヒゲ で 、 サンタクロース の 扮装 を して いる の だ と わかった 。

右手 で 歳末 大 売出 し と 書 かれた 看板 を かかげ 、 左手 に 持った ベル を さかんに 鳴らして いる 。

クリスマス が どういう もの な の か 、 すず は まだ よく わかって は い なかった が 、 商店 街 の 雰囲気 から 何やら 楽しげな もの な の だろう と いう 気 は した 。

しかし 、 それ より も す ず の 心 を 躍ら せた の は 、 菓子 屋 の 店先 に 並んだ チョコレート や キャラメル 、 キャンディー の きれいな 箱 だ 。

眺めて いる だけ で 幸せな 気持ち に なり 、 笑み と ともに 口元 の ほくろ が 上がる 。

チョコレート 十 銭 、 キャラメル 大箱 十 銭 、 小 箱 五 銭 ……。

菓子 屋 の 隣 は おもちゃ 屋 で 、 店先 で は すず と 同い年 くらい の 子 が ヨーヨー で 遊 んで いる 。

クリスマス 用 に ディスプレイ さ れた ショーウインドウ で は 大きな クリスマス ツリー が 赤 や 青 の 電飾 を 輝か せて いる 。 ヨーヨー は 十 銭 ……。

自分 ひと り で 買い物 など した こと が ない すず に とって 、 みんな に おみやげ を 買って 帰る と いう の は 、 ワクワク する と 同時に お つかい と 同じ くらい むずかしい こと でも あっ た 。

どう しよう …… と 歩き ながら 頭 を 悩ま せて いる うち に 、 すず は 自分 が どこ に いる の か わから なく なって しまった 。

目的 の 料理 屋 、『 ふたば 』 は 商店 街 の 中ほど に ある はずな のだ が 、 いつの間に か 東 の 端 まで 来て しまって いた のだ 。

あわて て 引き返した が 、 なぜ か それ らしき 店 は 見当たら ない 。 途方 に 暮れた すず は 、 追い越して いこう と した 黒 ずくめ の 大 男 の マント の すそ を 思わず つかんで しまった 。

フード を 目深に かぶった 男 が 振り返った 。

「 あの ー 、 すいません 。 『 ふたば 』 と いう 料理 屋 さん は どこ です か ? 「 さあ …… 知ら ん ねえ ……」 ひどく しゃが れた 声 で 男 は 言う と 、「 これ で 探して みたら ええ 」 と 小さな 望遠 鏡 を すず に 差し出した 。

毛 むくじゃ ら の 手 から すず が 望遠 鏡 を とる と 、「 高い とこ なら 見つかる じゃ ろ 」 と 男 は ひょいと すず を 肩 に 担ぎ 上げた 。

「 ありゃ ! すみません 」 さっそく すず は 望遠 鏡 を 左 目 に 当てて みた 。

右 に 左 に 動かす が 、 ぼやけて うまく 見え ない 。 筒 を 回し ながら ピント を 調節 する と 、 瓦屋根 の 連なり の 向こう に ようやく 何 か が 見えて きた 。

屋根 の 上 に 帽子 の ような 丸い ドーム …… あれ は 産業 奨励 館 だ 。

「 わ ぁ ──、 よう 見える ねぇ !!」 まるで 目の前 に ある みたいだ 。

興奮 した すず は 今度 は 右 の ほう に 望遠 鏡 を 振った 。

遠く に 大きな 建物 の ぼんやり と した 輪郭 を 発見 し 、 ふたたび ピント を 合わせる 。

不意に 丸い 視界 の 中 に 現れた の は なんと 広島 城 だった !

瞳 を 輝か せ 前 のめり に なった すず は バランス を くずし 、 男 の 肩 から 転げ 落ちた 。

「 あっ ……!!」 幸運な こと に 、 すず が 落ちた の は 男 が 背負って いた 籠 の 中 だった 。

「 あっ 」 ふたたび 声 を 上げた の は 、 籠 の 中 に ひざ を 抱えた 男の子 が 座って いた から だ 。

学生 帽 を かぶり 、 半 ズボン から 伸びた 足 に は タイツ を はいて いる 。

自分 より は 三 、 四 つ 上 、 尋常 小学校 の 五 、 六 年 くらい だろう 。

ぶしつけに ジロジロ と 眺める すず に 少年 は 言った 。

「 あいつ は 人さらい 。 わし ら は さらわ れた 人 たち じゃ 」

「 え !?」 と すず は 驚いた 。

が 、 すぐに 自分 の 仕事 を 思い出し 、 顔 を しかめる 。

「 弱った ねぇ 。 夕方 に は 鶏 の エサ やり に 帰ら ん と いけ ん のに 」

「 わし も じゃ 。 父さん と 汽車 で 帰ら ん と いけ ん のに 」

「 わし も わし も 」 と 人さらい が しゃが れ 声 で 言った 。

「 夜 が くる 前 に 帰ら ん と えらい こと に なる 」

「 えらい こと ? どんな ? すず は 籠 から 身 を 乗り出し 、 人さらい の 大きな 背中 に 向かって 訊 ねた 。

「 うるさい ! 」 と 人さらい が 振り返った 。 はら り と フード が 落ち 、 ヒヒ の ような 毛 むくじゃ ら の 顔 が すず の 目 に 飛びこんで きた 。

ぎょ ろ り と 見開か れた 目 の 玉 の 真ん中 に 小さ な 瞳 が あやしく 光り 、 大きな 口 に は と がった 歯 が ジグザグ と 並んで いる 。

「 いら ん こと きく なあ ! 」 一喝 さ れ 、 すず は すごすご と 籠 の 隅 へ と 引っこむ 。

「 おいおい 、 むやみに 怒ら す なや 。 おやつ に 食わ れる で 」 「 どう なる ん か ねえ ……」 人さらい は ず ん ず ん 歩き 、 中 洲 と 市街 を つなぐ 相生 橋 を 渡ろう と して いる 。

さっき の 人さらい の 様子 から する と 、 それ が 何 か は わから ない が 、 夜 まで に 帰ら ない と とても 困った こと に なる のだろう 。

人さらい の 困った こと は 、 うち ら に とって は 都合 の いい こと で は なかろう か 。

すず は うまい 考え を 思いついた 。

さっそく 首 に 結わえて いた 風呂敷 を とき 、 海苔 缶 の フタ を 開ける 。 大事な 商品 だ が 背 に 腹 は かえ られ ない 。 一 枚 くらい 許して もらおう 。

海苔 の 束 から 一 枚 抜く と 、 半纏 の ポケット を 探る 。

しかし 、 中 に は 何も 入って い なかった 。 すず は 少年 に 訊 ねた 。

「 小 刀 持 っと りん さる ? 「 あ 、 うん 」 と 少年 は 外套 の ポケット から 小 刀 を とり出し 、 すず に 渡した 。

すず は 器用に 小 刀 を 使い 、 海苔 に 切りこみ を 入れて いく 。

何 を して いる の か と 少年 は すず の 手 の 動き を じっと 見つめて いる 。

「 できた ! 」 すず は 少年 に 微笑んだ 。 口元 の ほくろ が 揺れる 。

すず は 切りこみ を 入れた 海苔 を 望遠 鏡 の レンズ の 部分 に フタ を する ように 貼り つけ 、 それ で 人さらい の 頭 を コンコン と 叩く 。

「 お っ さん 、 お っ さん 」

「 あた あた あた 」

「 こりゃ 、 な んじゃ ろか ? の ぞ 覗いて 見て ぇ 」

「 ふ ~ ん 。 どれ どれ 」 と 人さらい は 望遠 鏡 を 覗く 。

真っ黒な 中 に 月 と 星 が 見えた 。

すず が 海苔 を 月 と 星 の 形 に 切りとった のだ 。

「……」

グラッ と 籠 が 揺れた と 思ったら 、 すず は 橋 の 上 へ と 投げ出さ れた 。

立ち上がり 、 振り返る と 人さらい が 地べた に 倒れ 、 「 ぐ ぉ ー 、 ぐ ぉ ー 」 と 大きな いびき を かいて い る 。

「 なん じゃあ 、 夜 んなる と 寝て しまう いう こと か 」

おそるおそる 人さらい が 眠って いる の を 確認 し 、 少年 も 籠 から 出た 。 バンザイ す る ように 地べた に 伸びた 大きな 手 に は 獣 の ような 鋭い 爪 が 生えて いる 。

人さらい の その 手 に 、 少年 は キャラメル の 箱 を 握ら せた 。

「 こいつ も 晩 ごはん が の うなって 気の毒 じゃ 」 少年 は そう 言って 、 すず を 振り返った 。

「 あん が と な 、 浦野 すず 」 別れ を 告げる と 、 少年 は 橋 の 向こう へ と 駆け 去った 。

「 ありゃ 、 いつの間に うち の 名前 を ……」 首 を 捻る すず の ももひき の すそ に は 〝 浦野 すず 〟 と 名前 が 書か れて いた 。

すず が 初めて の お つかい で 遭遇 した 不思議 な 体験 を 包装 紙 の 裏 に クレヨン で 描いて いる と 、 妹 の すみ が 寄って きた 。

「 なん ね 、 それ ? 」 「 ばけ もん ……」

「 え ? と すみ は 身 を 乗り出して 、 覗きこむ 。 黒い マント を 羽織った 毛 むくじゃ ら の ばけもの の 肩 の 上 に 望遠 鏡 を 手 に した すず が 乗って いる 。

次に すず が 描いた の は 籠 の 中 に 落ちた すず と 驚いて いる 少年 だ 。

すず は 漫画 の ように 次 から 次 へ と あの 出来事 を 描いて いく 。

「 夜 に なったら 、 どう えらい こと に なる ん じゃ ろ ? ばけもの の セリフ を 読んだ すみ が すず に 訊 ねる 。

「 まあ 、 見とり ん さい 」 と すず は 続き を 描く 。 望遠 鏡 へ の 海苔 の 仕かけ 、 そして バタン と 倒れた ばけもの 。

「 夜 に なる と 寝て しまう と いう こと じゃ った ん じゃ 」 完成 した 絵 物語 を もらう と 、 すみ は 寝 転がって 最初 から 読み はじめた 。

「『 あん が と な 、 うら の すず 』」

少年 の 最後 の セリフ を 読み 、 すみ は 畳 の 上 で 足 を バタバタ さ せ ながら 大笑い す る 。

その 声 を 聞きつけた 兄 の 要一 が 、「 こりゃ ー っ ! うるさい っ !!」 と 隣 の 部屋 から 怒鳴りつけた 。

すみ は 身 を 縮め 、 それ で も 「 くく くっ …… くく っ 」 と まだ 笑って いる 。

すず は 机 代わり に して いた 母 の 裁縫 用 の 裁ち 台 に 向き直り 、 その 上 に あった キャラメル の 空き箱 を 手 に とった 。

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