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太宰治『人間失格』(No Longer Human by Osamu Dazai), 第三の手記 一 (2) – Text to read

太宰治『人間失格』(No Longer Human by Osamu Dazai), 第三の手記 一 (2)

고급2 일본어의 lesson to practice reading

지금 본 레슨 학습 시작

第 三 の 手記 一 (2 )

自分 は ヒラメ の 家 を 出て 、新宿 まで 歩き 、懐中 の 本 を 売り 、そうして 、やっぱり 途方 に くれて しまいました 。 自分 は 、 皆 に あいそ が いい かわり に 、「 友情 」 と いう もの を 、 いち ども 実感 した 事 が 無く 、 堀木 の ような 遊び 友達 は 別 と して 、 いっさい の 附 き 合い は 、 ただ 苦痛 を 覚える ばかりで 、 その 苦痛 を もみ ほぐそう と して 懸命に お 道化 を 演じて 、 かえって 、 へとへとに なり 、 わずかに 知合って いる ひと の 顔 を 、 それ に 似た 顔 を さえ 、 往来 など で 見掛けて も 、 ぎょっと して 、 一瞬 、 めまい する ほど の 不快な 戦慄 に 襲わ れる 有様 で 、 人 に 好か れる 事 は 知っていて も 、 人 を 愛する 能力 に 於 おいて は 欠けて いる ところ が ある ようでした 。 (もっとも 、自分 は 、世の中 の 人間 に だって 、果して 、「愛 」の 能力 が ある の か どうか 、たいへん 疑問 に 思って います )そのような 自分 に 、所謂 「親友 」など 出来る 筈 は 無く 、そのうえ 自分 に は 、「訪問 ヴィジット 」の 能力 さえ 無かった のです 。 他人 の 家 の 門 は 、自分 に とって 、あの 神曲 の 地獄 の 門 以上 に 薄気味わるく 、その 門 の 奥 に は 、おそろしい 竜 みたいな 生臭い 奇獣 が うごめいている 気配 を 、誇張 で なし に 、実感 せられていた のです 。

誰 とも 、附き合い が 無い 。 どこ へ も 、訪ねて 行けない 。

堀木 。

それ こそ 、冗談 から 駒 が 出た 形 でした 。 あの 置手紙 に 、書いた とおり に 、自分 は 浅草 の 堀木 を たずねて 行く 事 に した のです 。 自分 は これ まで 、 自分 の ほう から 堀木 の 家 を たずねて 行った 事 は 、 いち ども 無く 、たいてい 電報 で 堀木 を 自分 の ほう に 呼び寄せて いた の です が 、 いま は その 電報 料 さえ 心細く 、 それ に 落ちぶれた 身 の ひがみ から 、 電報 を 打った だけ で は 、 堀木 は 、 来て くれ ぬ かも 知れ ぬ と 考えて 、 何より も 自分 に 苦手の 「 訪問 」 を 決意 し 、 溜息 ためいき を ついて 市電 に 乗り 、 自分 に とって 、 この 世の中 で たった 一 つ の 頼みの綱 は 、 あの 堀木 な の か 、 と 思い知ったら 、 何 か 脊筋 せすじ の 寒く なる ような 凄 すさまじい 気配 に 襲わ れました 。

堀木 は 、在宅 でした 。 汚い 露 路 の 奥 の 、二階 家 で 、堀木 は 二階 の たった 一部屋 の 六畳 を 使い 、下 で は 、堀木 の 老父母 と 、それから 若い 職人 と 三人 、下駄 の 鼻緒 を 縫ったり 叩いたり して 製造している のでした 。

堀木 は 、その 日 、彼 の 都会 人 として の 新しい 一面 を 自分 に 見せて くれました 。 それ は 、俗に いう チャッカリ 性 でした 。 田舎者 の 自分 が 、 愕然 がくぜんと 眼 を みはった くらい の 、 冷たく 、 ずるい エゴイズム でした 。 自分 の よう に 、ただ 、とめどなく 流れる たち の 男 で は 無かった の です 。

「 お前 に は 、 全く 呆 あきれた 。 親 爺さん から 、お 許し が 出た か ね 。 まだ かい 」

逃げて 来た 、と は 、言えません でした 。

自分 は 、れい に 依って 、ごまかしました 。 いまに 、すぐ 、堀木 に 気 附 かれる に 違いない のに 、ごまかしました 。

「それ は 、どうにか なる さ 」

「おい 、笑いごと じゃ 無い ぜ 。 忠告 する けど 、馬鹿 も この へん で やめる んだ な 。 おれ は 、きょう は 、用事 が ある んだ が ね 。 この 頃 、ばかに いそがしい んだ 」

「用事 って 、どんな ?

「おい 、おい 、座蒲団 の 糸 を 切らないで くれよ 」

自分 は 話 を し ながら 、 自分 の 敷いて いる 座 蒲 団 の 綴 糸 と じい と と いう の か 、 くくり 紐 ひも と いう の か 、 あの 総 ふさ の ような 四隅 の 糸 の 一 つ を 無意識に 指先 で もてあそび 、 ぐ いと 引っぱったり など して いた のでした 。 堀木 は 、堀木 の 家 の 品物 なら 、座蒲団 の 糸 一 本 でも 惜しい らしく 、恥じる 色 も 無く 、それこそ 、眼 に 角かど を 立てて 、自分 を とがめる のでした 。 考えて みる と 、堀木 は 、これ まで 自分 と の 附合い に 於いて 何一つ 失って は いなかった のです 。

堀木 の 老母 が 、おしるこ を 二 つ お盆 に 載せて 持って 来ました 。

「あ 、これ は 」

と 堀木 は 、しん から の 孝行 息子 の ように 、老母 に 向って 恐縮 し 、言葉づかい も 不自然な くらい 丁寧に 、

「すみません 、お しるこ です か 。 豪 気 だ なあ 。 こんな 心配 は 、要ら なかった んです よ 。 用事 で 、 すぐ 外出 し なけ れ ゃ いけない ん です から 。 いいえ 、でも 、せっかく の 御自慢 の おしるこ を 、もったいない 。 いただきます 。 お前 も 一つ 、どう だい 。 おふくろ が 、わざわざ 作って くれた んだ 。 ああ 、こいつ あ 、うめえ や 。 豪 気 だ なあ 」

と 、まんざら 芝居 で も 無い みたいに 、ひどく 喜び 、おいしそうに 食べる のです 。 自分 も それ を 啜 すすりました が 、 お 湯 の に おい が して 、 そうして 、 お 餅 を たべたら 、 それ は お 餅 で なく 、 自分 に は わからない もの でした 。 決して 、その 貧しさ を 軽蔑 した の では ありません 。 ( 自分 は 、 その 時 それ を 、 不 味 まずい と は 思いません でした し 、 また 、 老母 の 心づくし も 身 に しみました 。 自分 に は 、 貧し さ へ の 恐怖 感 は あって も 、 軽蔑 感 は 、 無い つもり で います ) あの お しるこ と 、 それ から 、 その お しるこ を 喜ぶ 堀木 に 依って 、 自分 は 、 都会人 の つましい 本性 、 また 、 内 と 外 を ちゃんと 区別 して いとなんで いる 東京 の人 の 家庭 の 実体 を 見せつけられ 、 内 も 外 も 変り なく 、 ただ のべつ 幕 無し に人間 の 生活 から 逃げ 廻って ばかり いる 薄 馬鹿 の 自分 ひと り だけ 完全に 取残さ れ 、 堀木 に さえ 見捨てられた ような 気配 に 、 狼狽 ろうばい し 、 お しるこ の はげた 塗 箸 ぬり ば し を あつかい ながら 、 たまらなく 侘 わびしい 思い を した と いう 事 を 、 記して 置きたい だけ な の です 。

「 わるい けど 、 おれ は 、 きょう は 用事 が ある ん で ね 」

堀木 は 立って 、上 衣 を 着 ながら そう 言い 、

「失敬 する ぜ 、わるい けど 」

その 時 、堀木 に 女 の 訪問者 が あり 、自分 の 身の上 も 急転 しました 。

堀木 は 、にわかに 活気づいて 、

「や 、すみません 。 いま ね 、あなた の ほう へ お伺い しよう と 思って いた のです が ね 、この ひと が 突然 やって 来て 、いや 、かまわない んです 。 さあ 、どうぞ 」

よほど 、あわてて いる らしく 、自分 が 自分 の 敷いて いる 座 蒲団 を はずして 裏がえし に して 差し出した の を 引ったくって 、また 裏がえし に して 、その 女 の ひと に すすめました 。 部屋 に は 、堀木 の 座蒲団 の 他 に は 、客 座蒲団 が たった 一枚 しか 無かった のです 。

女 の ひと は 痩やせて 、脊 の 高い ひと でした 。 その 座 蒲団 は 傍 に のけて 、入口 ちかく の 片隅 に 坐りました 。

自分 は 、ぼんやり 二人 の 会話 を 聞いて いました 。 女 は 雑誌 社 の ひと の ようで 、 堀木 に カット だ か 、 何だか を かねて 頼んで いた らしく 、 それ を 受取り に 来た みたいな 具 合い でした 。

「いそぎます ので 」

「出来て います 。 もう とっくに 出来て います 。 これ です 、どうぞ 」

電報 が 来ました 。

堀木 が 、それ を 読み 、上機嫌 の その 顔 が みるみる 険悪 に なり 、

「ち ぇ っ ! お前 、こりゃ 、どうしたんだい 」

ヒラメ から の 電報 でした 。

「とにかく 、すぐに 帰って くれ 。 おれ が 、お前 を 送りとどける と いい んだろう が 、おれ に は いま 、そんな ひま は 、無え や 。 家出 して いながら 、その 、のんき そうな 面 つらったら 」

「お宅 は 、どちら な の です か ?

「大久保 です 」

ふい と 答えて しまいました 。

「そん なら 、社 の 近く です から 」

女 は 、甲州 の 生れ で 二十八 歳 でした 。 五つ に なる 女児 と 、高円寺 の アパート に 住んで いました 。 夫 と 死別 して 、三 年 に なる と 言っていました 。

「あなた は 、ずいぶん 苦労 して 育って 来た みたいな ひと ね 。 よく 気 が きく わ 。 可哀そう に 」

はじめて 、男 め かけ みたいな 生活 を しました 。 シヅ子 (と いう の が 、その 女 記者 の 名前 でした )が 新宿 の 雑誌社 に 勤め に 出た あと は 、自分 と それから シゲ子 と いう 五つ の 女児 と 二人 、おとなしく お留守番 と いう 事 に なりました 。 それ まで は 、母 の 留守 に は 、シゲ子 は アパート の 管理人 の 部屋 で 遊んでいた ようでした が 、「気のきく 」おじさん が 遊び相手 として 現われた ので 、大いに 御機嫌 が いい 様子 でした 。

一週間 ほど 、ぼんやり 、自分 は そこ に いました 。 アパート の 窓 の すぐ 近く の 電線 に 、 奴 凧 やっこ だ こ が 一 つ ひっから まって いて 、 春 の ほこり 風 に 吹か れ 、 破ら れ 、 それ でも なかなか 、 しつっこ く 電線 に からみついて 離れ ず 、 何やら 首肯 うなずいたり なんか して いる ので 、 自分 は それ を 見る 度 毎 に 苦笑 し 、 赤面 し 、 夢 に さえ 見て 、 うなされました 。

「お金 が 、ほしい な 」

「……いくら 位 ?

「 たくさん 。 ……金 の 切れ目 が 、縁 の 切れ目 、って 、本当 の 事 だ よ 」

「 ばからしい 。 そんな 、古くさい 、……」

「 そう ? しかし 、君 に は 、わから ない んだ 。 このまま で は 、僕 は 、逃げる 事 に なる かも 知れない 」

「いったい 、どっち が 貧乏 な の よ 。 そうして 、どっち が 逃げる の よ 。 へん ねえ 」

「自分 で かせいで 、その お金 で 、お酒 、いや 、煙草 を 買いたい 。 絵 だって 僕 は 、堀木 なんか より 、ずっと 上手な つもり なんだ 」

このような 時 、自分 の 脳裡 に おのずから 浮びあがって来る もの は 、あの 中学 時代 に 画いた 竹一 の 所謂 「お化け 」の 、数枚 の 自画像 でした 。 失わ れた 傑作 。 それ は 、たびたび の 引越し の 間 に 、失われて しまっていた のです が 、あれ だけ は 、たしかに 優れている 絵 だった ような 気 が する のです 。 その後 、さまざま 画 いて みて も 、その 思い出 の 中 の 逸品 に は 、遠く 遠く 及ばず 、自分 は いつも 、胸 が からっぽに なる ような 、だるい 喪失感 に なやまされ 続けて 来た のでした 。

飲み 残した 一杯の アブサン 。

自分 は 、その 永遠に 償い 難い ような 喪失感 を 、こっそり そう 形容 して いました 。 絵 の 話 が 出る と 、 自分 の 眼前 に 、 その 飲み 残した 一杯の アブサン が ちらついて 来て 、 ああ 、 あの 絵 を この ひと に 見せて やりたい 、 そうして 、 自分 の 画 才 を 信じ させたい 、 と いう 焦燥 しょうそう に もだえる のでした 。

「ふふ 、どう だ か 。 あなた は 、まじめな 顔 を して 冗談 を 言う から 可愛い 」

冗談 で は ない のだ 、 本当 なんだ 、 ああ 、 あの 絵 を 見せて やりたい 、 と 空転 の 煩 悶 はんもん を して 、 ふい と 気 を かえ 、 あきらめて 、

「漫画 さ 。 すくなくとも 、漫画 なら 、堀木 より は 、うまい つもりだ 」

その 、ごまかし の 道化 の 言葉 の ほうが 、かえって まじめに 信ぜられました 。

「そう ね 。 私 も 、実は 感心 して いた の 。 シゲ子 に いつも かいて やって いる 漫画 、つい 私 まで 噴き出して しまう 。 やって みたら 、どう ? 私 の 社 の 編 輯 長へん しゅうちょう に 、 たのんで みて あげて も いい わ 」

その 社 で は 、子供 相手 の あまり 名前 を 知られて いない 月刊 の 雑誌 を 発行して いた のでした 。

……あなた を 見る と 、たいてい の 女 の ひと は 、何か して あげたくて 、たまらなく なる 。 ……いつも 、おどおど して いて 、それでいて 、滑稽 家 なんだ もの 。 ……時たま 、ひとり で 、ひどく 沈んでいる けれども 、その さま が 、いっそう 女のひと の 心 を 、かゆがらせる 。

シヅ子 に 、 そのほか さまざまの 事 を 言われて 、 おだてられて も 、 それ が 即 すなわち 男 め かけ の けがらわしい 特質 な のだ 、 と 思えば 、 それ こそ いよいよ 「 沈む 」 ばかり で 、 一向に 元気 が 出 ず 、 女 より は 金 、 とにかく シヅ子 から のがれて 自活 したい と ひそかに 念じ 、 工夫 して いる もの の 、 かえって だんだん シヅ子 に たよら なければ なら ぬ 破 目 に なって 、 家出 の 後 仕末 やら 何やら 、 ほとんど 全部 、 この 男 まさり の 甲州 女 の 世話 を 受け 、 いっそう 自分 は 、 シヅ子 に 対し 、 所 謂 「 おどおど 」 しなければ なら ぬ 結果 に なった のでした 。

シヅ子 の 取計らい で 、 ヒラメ 、 堀木 、 それ に シヅ子 、 三人 の 会談 が 成立 して 、 自分 は 、 故郷 から 全く 絶縁 せられ 、 そうして シヅ子 と 「 天下 晴れて 」 同棲 どうせい と いう 事 に なり 、 これ また 、 シヅ子 の 奔走 の おかげ で 自分 の 漫画 も 案外 お 金 に なって 、 自分 は その お 金 で 、 お 酒 も 、 煙草 も 買いました が 、 自分 の 心細 さ 、 うっとうし さ は 、 いよいよ つのる ばかりな のでした 。 それ こそ 「沈み 」に 「沈み」切って、シヅ子の雑誌の毎月の連載漫画「キンタさんとオタさんの冒険」を画いていると、ふいと故郷の家が思い出され、あまりの侘びしさに、ペンが動かなくなり、うつむいて涙をこぼした事もありました。

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