KinonoTabi:TheBeautifulWorld(Kino'sJourney)Episode3
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(虫 の 鳴き声 )
(キノ )くじら の ため 息
夢みる 流れ星
(エルメス )何 ?それ
(キノ )そう 歌って る 気 が し た
すべて が さ 変わって いく 中 で ―
この 虫 が 鳴らし て いる 音 が 空 に 向かって 響い て いく
それ を 僕 は 今 聞い て いる
それ だけ が 確か な こと だ ね
(エルメス )どう した の さ キノ
フッ …
旅人 は 時々 詩人 に なる もの なの さ エルメス
(キノ )は ?世界 が 終わる ん です か ?
(入国 審査 官 )世界 は 終わる ん です
(エルメス )何だか 国 じゅう 喪中 みたい だ ね
海 の ほう ばかり 見ている 人 も 多い
(エルメス )町並み は すてき な のに …
でも それ も あさって に は 終わる 予言 だ から
(キノ )予言 ねえ …
(入国 審査 官 )3 日間 の 滞在 です と ―
この 国 で 世界 の 終わり を 迎える こと に なり ます が ―
よろしい です か ?
(エルメス )よろしい です か って 言わ れ て も ね …
どう して 世界 が 終わって しまう ん です か ?
予言 です
(支配人 )あさって まで ?
ああ …この 国 で 最期 を 迎え に 来た んだ ね
ここ は それ に ふさわしい 国 だ よ
あの …宿 代 は …
いら ない よ
世界 が 終わる のに お金 なんて …
(女性 )お 代 は 結構 です よ 旅人 さん
は あ …
(キノ )液体 火薬 1 袋 と 44 口径 の 弾薬 を
お いくら です ?
(店主 )ああ もちろん タダ で いい よ
あと 22 口径 LR 弾 も 1 箱
(エルメス )どう だった ?
(キノ )タダ だった (エルメス )予言 の せい ?
みんな 世界 が 終わる と 信じてる らしい
(南 の 司祭 )宣告 の 日 から 19 の 冷たい 月 が 空 を 渡って 夜 を 過ぎて ―
日の出 と 共に 世界 は 終わる
(エルメス )何 ?
(女性 )予言 の 書 を 解読 し た 南 の 塔 の 司祭 様 です よ
予言 の 書 …です か ?
はい 大昔 どこ か 遠く の 国 で 出版 さ れ
この 国 に 伝わった もの だ と いい ます
どう して それ が 予言書 だ と ?
今 の 一節 が あの 本 に 書かれ て い た から です よ
( エルメス ) で も それ だけ じゃ その 予言 が 当たる か どう か 分からない じゃ ない
だいいち なぜ あした な の ?
それ を 解き明かし た の が 南 の 司祭 様 なんです よ
(南 の 司祭 )青い ともしび が さまよう 夜 の 宝石 に 隠れる とき
偽り の 王国 が 水 に 没する
この 一節 を 発見 し た とき 私 の 心 は 震え まし た
知って いる でしょ う か ?44 年 前 の 大雨 の とき ―
南天 の 青い 星 が 惑星 に 隠れ て い た こと を
星 です そう すべて 星 の 配列 の 暗喩 だった の です
世界 の 終わり は いつか ?
塔 の 研究者 は 長年 それ を 議論 し て きました が
ついに 終止符 が 打たれる の です
惑星 の 配列 が 宣告 を 表す 記号 の 並ぶ 日
そこ から 数え て 19 夜
すなわち 明日 の 朝 な の です
この 国 で は 代々 この 日 の ため に 備え て きまし た
うろたえ ず 真摯 ( しんし ) な 気持ち で 最後 の お 祈り を し ま しょ う
旅人 さん も どう です か ?ご 一緒 に
(キノ )いえ 遠慮 し て おきます
で は 旅人 さん は 何 を し て 過ごす お つもり ?
そう です ね …
買い物 でも
(キノ )おもしろい な (エルメス )何 が ?
(キノ )誰 か が 何 か を 表現 し て 誰 か が それ を 解釈 する って こと が
世界 は その 連続 かも しれ ない
(エルメス )で も それ も あした で 終わる ね
こんな 静か な 夜 に 世界 が 突然 終わる なんて こと が ある と 思う ?
(キノ )世界 が どう し て 始まった か 誰 も 知ら ない んだ から ―
数 秒 後 に 突然 理由 も なく ―
世界 が 終わる こと が ありえない なんて ―
誰 に も 言えない さ
(エルメス )ホント に あした 世界 が 滅ぶ と したら どう する ?キノ
うーん …
それ でも 今日 は もう 寝る よ
今日 も 始まった
(男性 )どう いう こと だ ?みんな 生きている
(男性 )何 も 起きてない じゃないか 予言 は どう したんだ ?
い …いや これ は 何 か の 間違い …
ハッ !そう だ
先週 月食 が あった でしょ う ?
ひょっとしたら あれ を 計算 から 除く ん じゃ ?
だから 明日 の 朝 に は …
(男性 )ホント です か ?司祭 様 絶対 に ?
(南 の 司祭 )いや 絶対 と は …かも しれない か な と …
(男性 )ああ !世界 が 終わら ない なんて !
我々 は いったい どう 暮らし て いけ ば いい ん だ ?
( 女性 ) あの ー 旅人 さん
昨日 売った もの の こと だ けど …
はい 大切 に 使わ せて いただいて ます
あ そう … そう ね …
(北 の 司祭 )皆さん 落ち着い て ください
(男性 )司祭 様 ?
(男性 )北 の 塔 の 司祭 様 だ
皆さん 南 の 司祭 の 解読 法 は 完全 に 間違って いまし た
私 の 解読 法 こそ 正しかった の です
私 の 解読 法 に よる と 世界 の 終わり は 30 年 後 の …
そろそろ 行こう か
(エルメス )うん 今日 も 走ろう
(キノ )見え て きた よ
(エルメス )キノ 心 の 準備 は いい ?
うん 何 が 来て も 驚かない よ
( ノック )
(番兵 )は あい
(キノ )旅 の 者 です が 入国 手続き を …
おお !旅人 さん です か ?何 か月 ぶり だろう ?
いえ この ごろ 旅人 さん が めっきり 少なく なって きて ―
国 外 で 妙 な 評判 でも 立ってる ん じゃない か と 心配 で
ご 存じない ? それ なら い い ん です が
あ !入国 許可 ね
はい とりあえず これ に 記入 し て おい て ください
(鐘 の 音 )
ハハッ 驚か せ ちゃ い まし た ?
めったに いらっしゃら ない お 客様 の ご 到着 を
国 じゅう に 知らせている ん です
歓迎 の 準備 の ため なんです ハハ ハハッ
(エルメス )う わ あ …
いらっしゃい 旅人 さん
伝統 ある わが国 に ようこそ !
あ …ご …ご 丁寧 に …
さあ 旅人 さん こちら に どうぞ
( 音楽 )
(女の子 )旅人 さん ごちそう も ご 自由に どうぞ
あ …どう も
この 国 で は 昔 “猫耳党 ”と いう 義賊 の 一団 が おって のう
クーデター を 起こし て 悪い 国王 を 追放 し た の じゃ
猫 耳 党 の 栄誉 を たたえる ため この 伝統 が 生まれた ん じゃ よ
旅人 さん も わが国 の 伝統 に 触れ て みん か ?
旅人 さん も 一緒に 踊り ましょう
いや 僕 は 踊り の センス が ない って よく 言わ れ ます
皆さん の 足 を 踏んで しまう と いけない ので
それにしても すてき な 踊り です ね
感激 し まし た 来て よかった と 思います ええ
(キノ )大変 な 歓迎 ありがとう ござい ました
とても 楽しかった です
では
(女の子 )旅人 さん また 来て ね
( ため息 )
ダメ だった か …
(番兵 )状況 終了 の 鐘 を (男性 )了解
(回収 係 )はい 皆さん いらなく なった 耳 は こちら へ
(男性 )この 伝統 も ダメ か
また 別 の 伝統 を 考え なくちゃ
(男性 )今度 は どんな 伝統 に する かな …
(学者 )ほう 今度 は 猫 の 耳飾り で し た か
はい
私 は あの 国 の 伝統 を 研究 し て いる 学者 です
これ まで に も …
亀 の 甲羅 を 背負う
ライオン の 尻尾 を 着ける
歌い ながら 食事 を する など など
もう お 分かり だ と 思い ます が
彼ら の 伝統 と は 旅人 が 来る たび に
“これ が 自分 たち の 伝統 だ ”と 言って
マネ を させる という もの な の です
それ が 成功 し なければ 次 の 伝統 を 仕掛ける わけです
(エルメス )キノ も 着け て あげれ ば よかった のに
“郷 に 入ら ず んば トラ に 従え ”って 言う じゃん
あの 国 の こと は 旅人 の 間 で は すっかり 評判 に なって い ます
彼ら は 立派 な 伝統 が 欲しい の です
あの 国 は 国王 を 森 に 追放 し て 以後 ―
古い 伝統 は すべて 否定 し て しまった
そして 気 が 付い た とき に は
他 の 国 に 自慢 できる ような 伝統 が 何も なかった
(エルメス )それ で 自分たち の 伝統 を
旅人 に 決めて もらおう と 考えた って わけ ?
それ が 城壁 の 外 から 見 て どんなに 無為 な もの でも ね
でも もう 彼ら に は 立派 な 伝統 が あり ます ね
ええ
ただ 彼ら は その こと に まだ 気付い て いない
いや 気付 い て しまったら
この 伝統 も 終わる の かも しれ ませ ん ね
(キノ )おもしろい お話 ありがとう ございました
(学者 )いえいえ こちら こそ
あの も しか して
あなた は …
(学者 )はい
私 は あの 国 を 追放 さ れた 王 の 末 えい です
代々 この いおり に 住み あの 国 の 伝統 を 見守って きた の です
そして これ から も
(女の子 )欠落 し た 7 月 の 閉ざさ れた 塀 の 中
言葉 を 壊し た 泣く こと も ない 過去
(エルメス )何だか もの悲しい 声 だ ね
(キノ )うん 胸 が 締めつけ られる よう だ
(エルメス )で も 言葉 の 意味 が よく 分から ない ね
( 船頭 ) 「 悲しみ の 詩 ( うた ) 」 です ( キノ ) え ?
この 国 は 悲しみ を 伝え 続ける 悲しい 国 な ん です
悲しい 国 です か …
はい
遠い 昔 この 国 に 一人 の 詩人 が いまし た
その 詩人 は この世 の 美しさ すばらしさ ―
楽しさ を 詠わせたら 世界 で 一番 と 評さ れて いまし た
妻子 と 幸せ に 暮らし て い た 詩人 の 口 から は ―
自然 と 生きる こと の 喜び が あふれ出てくる の で した
ところが ―
その ウワサ を 耳 に し た 当時 の 王 が ―
ふとした 意地悪 心から その 詩人 を 呼びつけ ―
“悲しみ の 詩 を 作って みせよ ”と 命じた の です
詩人 は 悩み まし た
彼 に とって 言葉 は 心 の 奥 から 自然 に 湧き出て くる もの で ―
悲しみ を 知らない 彼 に は ―
とても 悲しい 言葉 を つづる こと は でき なかった の です
与え られ た 期限 まで 19 夜
もし でき なかったら 王 は 彼 の 首 を はねる と 言った の です
そして とうとう 最後 の 夜 が やって きました
思い悩む 夫 の こと を 見かねた 妻 は ―
なんと ナイフ で 自分 の 首 を 突き ―
自殺 し て みせ た の です
悲しみ を 知らない 夫 に 悲しみ を 教える ため に
心 の 底 から 悲しみ の 言葉 が 湧き出る ように …
消え て いく 記憶 の 果て
遠い 凍った 届か ない 命
誰 も つか め ない 鏡 の ひび割れ に
壊れ た 人形 が 聞こえない 泥 の 涙 を 歌う
帰ら ぬ 日々 に ウジ 虫 の 血 を 流せ
7 日 の 内 に 朽ち果て た 時計 の いばら を 目 に 穿 ( う が ) て
(船頭 )詩人 の 言葉 は ほとんど 意味 不明 で し た が ―
彼 の 深い 悲しみ は 伝わって き まし た
王 は あまり の 悲しみ に 詩人 を 城 から 追いやって ―
王宮 の 奥 に 引っ込んで しまいました
(詩人 )…人形 を 乗せ ―
冷酷 な 審判者 は 色あせた 文字 を 記録する
羽 の 折れた 鳥 だけ が 真実 を 歌う
(船頭 )詩人 の 言葉 は この 国 を 悲しみ で 包んだ の です
遠く から 聞こえ て くる 悲しみ の 声 に ―
王 は とうとう 病気 に なって ―
死 ん で しまい ました
沈黙 だけ が 光 で …
(船頭 )それ も 詩人 の 詩 は やみ ませ ん で し た
毎日 日 が 沈む まで 彼 の 言葉 は 続きます
それ から 何 年 も この 国 は ―
詩人 の 悲しい 言葉 で 覆わ れ 続け た の です
分子 の 果て まで 死 は 凍り
夜 は 永遠 を 恋し ながら 頭上 の 欲望 を 石 斧 ( いし お の ) で 割る
張り裂ける 脳 ずい の 痛み を 飲み干せ
(船頭 )そして 10 年 後
詠い 続け た 詩人 は ついに 死に まし た
人々 は これ で やっと 悲しみ から 解放 さ れる と 思った の です
ところが 彼 の 葬儀 の 日 から ―
また あの 詩 が 聞こえ て きた の です
(女の子 )消え て いく 記憶 の 果て
遠い 凍った 届か ない 命
誰 も つか め ない 鏡 の ひび割れ に ―
7 体 の 壊れた 人形 が 聞こえない 泥 の 涙 を 歌う
返ら ぬ 日々 に ウジ 虫 の …
(船頭 )それ は 14 歳 に なった ―
彼 の 娘 の 口 から あふれ 出し て い た の です
驚い た こと に 少女 は 父 の 言葉 を ―
一言 一 句 間違え ず に 記憶 し て い まし た
そして 彼女 は その 日 から 10 年 間 父 の 詩 を 詠い 続けた の です
人々 は それ から 10 年 ごと に 1人―
この 国 で 最も 声 の よい 14 歳 の 少女 を 選んで ―
この 詩 を 毎日 詠わ せる こと に し た の です
悲しみ を 忘れ ない ため に
(女の子 )流れ 着 い た 12 の 冬 の …
(船頭 )今 の あの 子 が 何 代目 な の か 私 は 知りません
私 たち が 悲しみ から 解放 される の は ―
毎日 日 が 沈んで から の 夜 の 間 だけ な のです
(女の子 )紙 の 上 の しんきろう ついえ 去った ガラス 細工 の 国
涙 の 連なる 首飾り を 胸 に むくろ は 歌う
光 の 途絶えた 死 の 淵 の おしどり の 影 を ―
罪 なき 旅人 は それ を 伝える だろう か
(審査官 )どう だい ?あまり 来て 楽しい 国 じゃ なかった ろう ?
俺 なんか 他 の 国 で 生まれ たかった よ
(キノ )それ は それぞれ だ と 思い ます よ
それ じゃ 失礼 します
ああ こいつ は 前 に 通りかかった 旅人 に 聞い た ん だ が
ずいぶん 前 に あの 詩人 の 言葉 を 書き 取った 本 が ―
どこ か 遠い 国 に 伝わって ―
そこ じゃあ “予言 の 書 ”って 言わ れ て ―
あり がた がら れ て いる らしい って 話 だ
予言 の 書 …です か
(女の子 )宣告 の 日 から 19 の 冷たい 月 が 空 を 渡った 夜 を 過ぎて
日の出 と 共に 世界 は 終わる
緑 の 皿 を 割る 以外 ―
我々 に 何 が できよ う
( 物音 )
(エルメス )な …何 ?
あの 国 に 向かって いる らしい ね
(キノ )うん 何 だろう ?
(兵士 )旅人 さん です か ?
ええ
(兵士 )あの 国 から いらした ん です ね ?
(キノ )はい (兵士 )ああ 失礼
よかった 我々 も 無関係 な 方 を 巻き込ま ずに 済んだ
(キノ )いったい 何の 騒ぎ です ?
明日 の 日の出 の 直前 ―
我々 は あの 国 を 徹底的 に 攻撃 し て 滅ぼす の です
(エルメス )何で 何で 何で ?もし かして 予言 ?
あ いえ …何となく です
我々 の 国 に 一 冊 の 予言書 が 伝わって いまし た
そこ に は 世界 の 終わり と ―
それ を 回避 する 方法 が 書かれ て い た の です
わが国 の 研究 家 は その 日 を 解読 し まし た
(キノ )それ が あした の 朝 だ と ?
(兵士 )はい
予言 に は こう 書かれています
“19 の 冷たい 月 が 空 を 渡った 夜 を 過ぎて ―”
“日の出 と 共に 世界 は 終わる ”
“緑 の 皿 を 割る 以外 我々 に 何 が できよ う ”
“緑 の 皿 ”それ が …
あの 国 …です か
旅人 さん も 見 た でしょ う ?あの 国 の 湾曲 し た まあ るい 国土
まさに 緑 の 皿 じゃ ない です か !
(エルメス )でも さ 全滅 は やり すぎ なん じゃ ない ?
え ?とんでもない !
どこ まで が 皿 を 割る こと に なる の か はっきり 書かれ て いない 以上 ―
徹底 的 に やる しか あり ませ ん
世界 を 救う に は それ しか ない ん です !
おっと もう 行か なくっちゃ
旅人 さん も お 元気 で で は
(虫 の 鳴き声 )
(エルメス )ねえ キノ
(エルメス )いったい どっち ?(キノ )何 が ?
(エルメス )予言 は 当たった の か 当たら なかった の か
さあ ね
星 に でも 聞い て み よっ か
(虫 の 鳴き声 )
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