十三 匹 の ハエ
十三 匹 の ハエ
むかし むかし 、 小さな 村 に 機織り 職人 ( はたおり しょくにん ) がい ました 。
おかみ さん が 呼ぶ と 、 機織り 職人 の 夫 は いつも 寝ころんで いて 、 「 うーん 、 なんだ ?
」 と 、 ねぼけ 声 で 返事 を し ます 。
でも 不思議な 事 に 客 が 明日 まで に おり あげて くれ と 頼む と 、 夫 は いつの間にか きちんと おって 渡す のです 。
畑 の 事 も 、 おかみ さん に は 不思議で なり ませ ん 。
夫 は いつも 昼寝 を して いる のに 、 収穫 ( しゅうかく ) の 時 が 来る と 近所 の 家 より 十 倍 は 多く ブドウ でも 野菜 でも 持って 帰って 来る のです 。
「 あの 人 に は 、 何 か 秘密 が ある の かしら ?
そんな ある 日 、 夫 は よ その 町 へ 用事 で 出かける こと に なり ました 。
おかみ さん は 夫 の 秘密 を さぐろう と 、 そっと 夫 の あと を ついて 行き ました 。
森 の 道 に 来る と 夫 は 大きな 木 の 下 で 立ち止まり 、 ポケット から 何 か を 取り出して 木 の 根元 に 埋 ( う ) め て 行き ました 。
夫 の 姿 が 見え なく なる と 、 おかみ さん は そこ を 掘って み ました 。
する と 埋めて あった の は 、 大きな クルミ の 実 が 一 つ だけ です 。
「 なんだ 、 つまらない 」 おかみ さん は その クルミ を 捨てよう と し ました が 、 中 から 音 が した ので 耳元 に 近づけ ました 。
すると 中 から は ブンブン と 虫 の 羽 の 音 が して 、 こんな 声 も 聞こえ ます 。
『 仕事 は どこ だ 。
仕事 を おくれ 』 おかみ さん は 首 を かしげて 、 クルミ を 持って 帰り ました 。
そして 扉 ( とびら ) と 窓 を きっちり と 閉めて から 、 クルミ を 割って みた のです 。
すると 中 から ブンブンブンブン と 、 十三 匹 の ハエ が 元気 よく 飛び出して 来 ました 。
部屋 中 を 飛びまわる ハエ が あまりに うるさい ので 、 おかみ さん は 怒鳴り ました 。
「 ハエ よ 、 クルミ に 戻れ !
」 する と ハエ たち は すぐ に クルミ の 中 に 入った ので 、 おかみ さん は また 森 の 道 の 木 の 下 に 埋め に 行き ました 。
しばらく して 夫 が 町 から 帰る と 、 おかみ さん は 正直に 十三 匹 の ハエ の 事 を 話し ました 。
すると 夫 は ニコニコ 笑い ながら 、 こう 言い ました 。
「 いつか は 話そう と 、 思って いた んだ 。
実は おれ は いつも 、 機織り の 仕事 も 畑 仕事 も 十三 匹 の ハエ たち に やって もらって いる の さ 。
十三 匹 の ハエ の 力 は 、 人間 十三 人 分 の 力 で な 。
どんな 事 でも 、 あっという間 に やって くれる ぞ 。
お前 も 自分 の 仕事 を 、 十三 匹 の ハエ に やら せる と いい よ 」 おかみ さん は 夫 から クルミ を もらう と 、 次の 日 から さっそく 十三 匹 の ハエ に 掃除 ( そう じ ) や 洗濯 ( せんたく ) を さ せ 、 のんびり と 昼寝 を しよう と 思い ました 。
でも 十三 匹 の ハエ は ブンブン と 羽 を 鳴らし ながら 働く ので 、 のんびり と 昼寝 が 出来 ませ ん 。
おまけに 仕事 が すんで 、 クルミ の 中 に 入って も 、 『 ブンブンブン 、 ブンブンブン 。
仕事 は どこ だ 、 仕事 を おくれ 』 と 、 その うるさく 言う のです 。
おかみ さん は がまん 出来 ず に 、 夫 に 言い ました 。
「 どんなに 大変で も 、 あたし は 前 みたいに 暮らし たい よ 」 「 うむ 。
そう だ な 。
俺 も このまま じゃ 、 機織り の 仕事 を 忘れ ちまう よ 」 夫 は クルミ から 、 十三 匹 の ハエ を 出して 言い ました 。
「 さあ 、 どこ へ でも 、 好きな 土地 へ 行く が いい よ 」 すると 十三 匹 の ハエ は 、 声 を そろえて 言い ます 。
『 ブンブンブン 、 ブンブンブン 。
それ なら 、 これ まで 働いて きた 給料 ( きゅうりょう ) を おくれ 』 夫 は 、 窓 の 外 を 指差し ました 。
ちょうど そこ に は 、 森 へ 飛んで 行く 十三 羽 の 鳥 が 見え ます 。
『 ブンブンブン 、 ブンブンブン 。
給料 もらった 、 鳥 の 給料 』 十三 匹 の ハエ は ブンブン と 羽 を 鳴らして 窓 から 飛んで 行く と 一 羽 ずつ 鳥 を 捕まえて 、 そのまま どこ か へ 飛んで 行って しまい ました 。
おしまい
十三 匹 の ハエ
じゅうさん|ひき||
Thirteen Flies
十三 匹 の ハエ
じゅうさん|ひき||
むかし むかし 、 小さな 村 に 機織り 職人 ( はたおり しょくにん ) がい ました 。
||ちいさな|むら||はたおり|しょくにん||||
おかみ さん が 呼ぶ と 、 機織り 職人 の 夫 は いつも 寝ころんで いて 、 「 うーん 、 なんだ ?
|||よぶ||はたおり|しょくにん||おっと|||ねころんで|||
」 と 、 ねぼけ 声 で 返事 を し ます 。
||こえ||へんじ|||
でも 不思議な 事 に 客 が 明日 まで に おり あげて くれ と 頼む と 、 夫 は いつの間にか きちんと おって 渡す のです 。
|ふしぎな|こと||きゃく||あした|||||||たのむ||おっと||いつのまにか|||わたす|
畑 の 事 も 、 おかみ さん に は 不思議で なり ませ ん 。
はたけ||こと||||||ふしぎで|||
夫 は いつも 昼寝 を して いる のに 、 収穫 ( しゅうかく ) の 時 が 来る と 近所 の 家 より 十 倍 は 多く ブドウ でも 野菜 でも 持って 帰って 来る のです 。
おっと|||ひるね|||||しゅうかく|||じ||くる||きんじょ||いえ||じゅう|ばい||おおく|ぶどう||やさい||もって|かえって|くる|
「 あの 人 に は 、 何 か 秘密 が ある の かしら ?
|じん|||なん||ひみつ||||
そんな ある 日 、 夫 は よ その 町 へ 用事 で 出かける こと に なり ました 。
||ひ|おっと||||まち||ようじ||でかける||||
おかみ さん は 夫 の 秘密 を さぐろう と 、 そっと 夫 の あと を ついて 行き ました 。
|||おっと||ひみつ|||||おっと|||||いき|
森 の 道 に 来る と 夫 は 大きな 木 の 下 で 立ち止まり 、 ポケット から 何 か を 取り出して 木 の 根元 に 埋 ( う ) め て 行き ました 。
しげる||どう||くる||おっと||おおきな|き||した||たちどまり|ぽけっと||なん|||とりだして|き||ねもと||うずま||||いき|
夫 の 姿 が 見え なく なる と 、 おかみ さん は そこ を 掘って み ました 。
おっと||すがた||みえ|||||||||ほって||
する と 埋めて あった の は 、 大きな クルミ の 実 が 一 つ だけ です 。
||うずめて||||おおきな|くるみ||み||ひと|||
「 なんだ 、 つまらない 」 おかみ さん は その クルミ を 捨てよう と し ました が 、 中 から 音 が した ので 耳元 に 近づけ ました 。
||||||くるみ||すてよう|||||なか||おと||||みみもと||ちかづけ|
すると 中 から は ブンブン と 虫 の 羽 の 音 が して 、 こんな 声 も 聞こえ ます 。
|なか|||||ちゅう||はね||おと||||こえ||きこえ|
『 仕事 は どこ だ 。
しごと|||
仕事 を おくれ 』 おかみ さん は 首 を かしげて 、 クルミ を 持って 帰り ました 。
しごと||||||くび|||くるみ||もって|かえり|
そして 扉 ( とびら ) と 窓 を きっちり と 閉めて から 、 クルミ を 割って みた のです 。
|とびら|||まど||||しめて||くるみ||わって||
すると 中 から ブンブンブンブン と 、 十三 匹 の ハエ が 元気 よく 飛び出して 来 ました 。
|なか||||じゅうさん|ひき||||げんき||とびだして|らい|
部屋 中 を 飛びまわる ハエ が あまりに うるさい ので 、 おかみ さん は 怒鳴り ました 。
へや|なか||とびまわる|||||||||どなり|
「 ハエ よ 、 クルミ に 戻れ !
||くるみ||もどれ
」 する と ハエ たち は すぐ に クルミ の 中 に 入った ので 、 おかみ さん は また 森 の 道 の 木 の 下 に 埋め に 行き ました 。
|||||||くるみ||なか||はいった||||||しげる||どう||き||した||うずめ||いき|
しばらく して 夫 が 町 から 帰る と 、 おかみ さん は 正直に 十三 匹 の ハエ の 事 を 話し ました 。
||おっと||まち||かえる|||||しょうじきに|じゅうさん|ひき||||こと||はなし|
すると 夫 は ニコニコ 笑い ながら 、 こう 言い ました 。
|おっと||にこにこ|わらい|||いい|
「 いつか は 話そう と 、 思って いた んだ 。
||はなそう||おもって||
実は おれ は いつも 、 機織り の 仕事 も 畑 仕事 も 十三 匹 の ハエ たち に やって もらって いる の さ 。
じつは||||はたおり||しごと||はたけ|しごと||じゅうさん|ひき|||||||||
十三 匹 の ハエ の 力 は 、 人間 十三 人 分 の 力 で な 。
じゅうさん|ひき||||ちから||にんげん|じゅうさん|じん|ぶん||ちから||
どんな 事 でも 、 あっという間 に やって くれる ぞ 。
|こと||あっというま||||
お前 も 自分 の 仕事 を 、 十三 匹 の ハエ に やら せる と いい よ 」 おかみ さん は 夫 から クルミ を もらう と 、 次の 日 から さっそく 十三 匹 の ハエ に 掃除 ( そう じ ) や 洗濯 ( せんたく ) を さ せ 、 のんびり と 昼寝 を しよう と 思い ました 。
おまえ||じぶん||しごと||じゅうさん|ひき||||||||||||おっと||くるみ||||つぎの|ひ|||じゅうさん|ひき||||そうじ||||せんたく|||||||ひるね||||おもい|
でも 十三 匹 の ハエ は ブンブン と 羽 を 鳴らし ながら 働く ので 、 のんびり と 昼寝 が 出来 ませ ん 。
|じゅうさん|ひき||||||はね||ならし||はたらく||||ひるね||でき||
おまけに 仕事 が すんで 、 クルミ の 中 に 入って も 、 『 ブンブンブン 、 ブンブンブン 。
|しごと|||くるみ||なか||はいって|||
仕事 は どこ だ 、 仕事 を おくれ 』 と 、 その うるさく 言う のです 。
しごと||||しごと||||||いう|
おかみ さん は がまん 出来 ず に 、 夫 に 言い ました 。
||||でき|||おっと||いい|
「 どんなに 大変で も 、 あたし は 前 みたいに 暮らし たい よ 」 「 うむ 。
|たいへんで||||ぜん||くらし|||
そう だ な 。
俺 も このまま じゃ 、 機織り の 仕事 を 忘れ ちまう よ 」 夫 は クルミ から 、 十三 匹 の ハエ を 出して 言い ました 。
おれ||||はたおり||しごと||わすれ|ち まう||おっと||くるみ||じゅうさん|ひき||||だして|いい|
「 さあ 、 どこ へ でも 、 好きな 土地 へ 行く が いい よ 」 すると 十三 匹 の ハエ は 、 声 を そろえて 言い ます 。
||||すきな|とち||いく|||||じゅうさん|ひき||||こえ|||いい|
『 ブンブンブン 、 ブンブンブン 。
それ なら 、 これ まで 働いて きた 給料 ( きゅうりょう ) を おくれ 』 夫 は 、 窓 の 外 を 指差し ました 。
||||はたらいて||きゅうりょう||||おっと||まど||がい||ゆびさし|
ちょうど そこ に は 、 森 へ 飛んで 行く 十三 羽 の 鳥 が 見え ます 。
||||しげる||とんで|いく|じゅうさん|はね||ちょう||みえ|
『 ブンブンブン 、 ブンブンブン 。
給料 もらった 、 鳥 の 給料 』 十三 匹 の ハエ は ブンブン と 羽 を 鳴らして 窓 から 飛んで 行く と 一 羽 ずつ 鳥 を 捕まえて 、 そのまま どこ か へ 飛んで 行って しまい ました 。
きゅうりょう||ちょう||きゅうりょう|じゅうさん|ひき||||||はね||ならして|まど||とんで|いく||ひと|はね||ちょう||つかまえて|||||とんで|おこなって||
おしまい
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