カッパ |人 を 水中 に 引き込む カッパ
むかし むかし 、滝 の ある ふち (→川 の 深い ところ )に 、一匹 の カッパ が 住んで いました 。
この カッパ は 頭 の 上 の 皿 を どんな 物 に でも 変えられる と いう 、不思議な 力 を 持って います 。
ふち の そば で 美しい 花 を 咲かせたり 、大きな 魚 に して 、それ を 人 が 取ろう と した とたん 、腕 を つかんで 水中 深く 引っぱり込んで しまう のです 。
この カッパ の ため に 、これまで 何 人 の 人 が 命 を 落とした か しれません 。
この ふち の 近く の 村 に 、 上野 介 ( こうず の すけ ) と いう さむらい が 住んで いました 。
村 でも 評判 の 力持ち で 、 米 俵 ( こ めだ わら ) を 片手 で 軽く 持ち 上げ 、 ぬかるみ に 落ちた 荷物 いっぱい の 車 でも 楽々 と 引っ張り 上げる 事 が 出来ました 。
ある 日 の 事 です 。
町 から の 帰り道 に 、上野 介 が この ふち の そば に 来る と 、目の前 に きれいな 女 の かんざし が 浮いて います 。
よく 見る と 、お城 の お姫さま が さす ような 立派な かんざし で 、村 の 娘 の 手 に 入る ような 品物 では ありません 。
「これ は 、良い 物 を 見つけた ぞ 」
上野 介 は 思わず 手 を のばして 、この かんざし を 取ろう と しました 。
その とたん 、水 の 中 から 青白い 腕 が のびて 来て 、上野 介 の 手首 を つかみます 。
上野 介 は ビックリ して 手首 を 引っ込めよう と しました が 、その 力 の 強い 事 。
今にも 水 の 中 へ 、倒れ そうに なりました 。
しかし さすが は 、力持ち で 知られた 上野 介 です 。
逆に もう 一方 の 手 で 青白い 腕 を つかむ と 、上 へ 引っ張り上げよう と しました 。
どっち の 力 も 強くて 、引っ張ったり 、引っ張られたり 、なかなか 勝負 が つきません 。
それ でも 上野 介 が 思い切り 力 を 入れて ふんばる と 、一匹 の カッパ が 姿 を 現しました 。
(カッパ の 仕業 であった か )
上野 介 は そのまま カッパ を 上 に 引き上げる と 、後ろ へ 放り投げました 。
バコン と いう 音 が して 、カッパ は 後ろ の 岩 に たたきつけられます 。
上野介 は ホッ と して 、カッパ の そば へ かけよりました 。
「危ない ところ だった 。 考えて みれば 、かんざし が 水 に 浮く わけ は ない 」
言い ながら カッパ を 見る と 、気 を 失って いる だけ で 、どこ に も けが を して いません 。
(さすが は 、ふち の 主 だけ の 事 は ある )
上野 介 は 近く の 木 の つる を 取って カッパ を しばり あげる と 、肩 に かついで 家 に 連れて 帰りました 。
屋敷 の 者 たち は 、カッパ を 見て ビックリ 。
「なるほど 、これ が カッパ と いう もの か 」
「それにしても 、恐ろしい 顔 を している もの だ 。 こんな カッパ を 生けどり に する なんて 、 やっぱり 旦那 ( だんな ) さま は 大した もの よ 」
みんな が 感心 して いる と 、ふいに カッパ が 目 を 開けました 。
「おっ、気がついたぞ。 逃げられたら 大変だ 」
屋敷 の者 たち は 縄 ( なわ ) で カッパ を グルグル 巻き に して 、 庭 の 木 に しばり つけました 。
こう なって は さすが の カッパ も 、どう する 事 も 出来ません 。
カッパ は なさけない 顔 で うなだれた まま 、ジッと 地面 を にらんで いました 。
それ を 見て 、上野 介 が 言いました 。
「いい か 、どんな 事 が あって も 、水 を やる で ない ぞ 」
ところが 夜 に なる と 、カッパ は クエンクエン と ほえる ように 泣き出し 、うるさくて かないません 。
台所 で 仕事 を して いた 女 中 ( じょ ちゅう ) の 一人 が 、 水 び しゃく を 持った まま 庭 へ 飛び出し 、
「うるさい ねえ 、いいかげんに しろ ! 」
と 、その 水 びしゃく で カッパ の 頭 を コツン と たたいたら 、水 びしゃく の 中 に 残って いた 水 が カッパ の 頭 の 皿 に かかりました 。
すると カッパ は みるみる 元気に なり 、グルグル 巻きの 縄 を 引きちぎって そのまま 庭 の 外 へ 飛び出しました 。
「カッパ が 、逃げた ! 」
女中 の 叫び声 を 聞きつけて 、上野 介 や 屋敷 の 者 が かけつけました が 、すぐに 姿 は 見え なく なりました 。
しかし これ に こりた の か 、この カッパ は 二度と 人 を 水 の 中 へ 引き込む 事 は なかった と いう こと です 。
おしまい