カッパ | カッパ の ねんぐ
むかし むかし 、 船頭 ( せんどう → 船 で人 や 荷物 を 運ぶ人 ) さん が 、 いい 気持ち で 舟 を こいで 川 を くだって いる と 。
すると 、
「 船頭 さん 、 船頭 さん 」
と 、岸 の ほう から 、声 が かかりました 。
見てみる と 、かみしも すがた の 、りっぱな 男 が 岸 に 立って いました 。
「船頭 さん 。 どちら まで おいで です か 」
「 へえ 。 清 河 橋 ( きよ かわ ば し ) まで いく ん です が 、 なに か 、 ご用 です かい ? 」
「それ は ありがたい 。 じつは 、 この タル を 河 橋 の たもと に ある 問屋 ( とんや ) まで 、 と どけて いただけません か 。 受け 人 は 、この 手紙 に 書いて あります 。 お たのみ します 」
「 へえ 。 どうせ ついで で すわい 。 ひきうけ や しょう 」
舟 を 岸 に つける と 、その 男 は 手紙 を 船頭 さん に わたして 、
「では 、この タル を 」
と 、そば に ある 大きな タル を 指さしました 。
そして 船頭 さん に 、お金 を わたして い いました 。
「ただ 、くれぐれも いう て おきます が 、この タル は 、けっして あけ ん ように して ください 」
「 へえ 」
「どんな こと が あっても 、あけん ように です ぞ 。 よろしい です な 」
「 へえ 。 しょうち しや した 」
船頭 さん は 、思いがけない 大金 を もらった ので 、上きげん です 。
大きな タル を 舟 に つむ と 、また 川 を くだって いきました 。
ところが 、しばらく いく うち に 船頭 さん は 、
「あの お方 は 、この タル を あける な あける な と 、いやに ねん を おし とった が 」
と 、タル の こと が 気に なって きました 。
「まさか 、死体 でも 入って いる ので は ある まい な 」
どうにも 気 に なって 、
「ええ 、くそっ 。 まま よ 」
船頭 さん は 、思いきって タル の ふた を あけて みました 。
「? ? ? ・・・こりゃ あ 、きみょうな もん じゃ 」
タル の 中 に は 、いままで 見たこともない 、どす黒い もの が 、いっぱい に つまって います 。
「なんじゃ ろう ? 」
さわって みたり 、におい を かいで みたり しました が 、いっこうに けんとう が つきません 。
「おお 、そう そう 」
船頭 さん は 、タル と いっしょに わたされた 手紙 の こと を 思いだして 、さっそく よんで みました 。
そこ に は 、
《 カッパ (→ 詳細 ) の 王さま へ 。 いつも いつも 、 われわれ 臣下 ( しんか → けらい ) の もの を おまもり ください まして 、 みな みな 、 心から 感謝 いたして おります 。 さっそく ながら 、ことし の ねんぐ を おおさめ もうします 。 なお 、ひとこと もう し そえます が 、ことし は 人間 ども が われわれ を 用心 する こと 、いま までに なく きびしく 、その ために きも が 九十九 しか とれません でした 。 まことに もうしわけない こと です が 、のこる 一 つ は 、この 船頭 の もの を さしあげます 。 どうぞ 、 ご えんりょ なく おとり くださる よう 、 つつしんで お ねがい もうしあげます 》
これ を よんだ 船頭 さん は 、カンカン に おこって 、
「人間 さま の きも を ねんぐ に とる と は 、なんちゅう こっちゃ 。 えー いっ ! 」
その 大 タル を かかえ あげる と 、川 の 中 へ ドボーン と 、ほうりこんで しまいました 。
そして また 、何事 も なかった かのように 、舟 を こいで いきました 。
おしまい