鬼 |一人 に なった 鬼 の 親分
むかし むかし 、 鬼 神山 ( お にがみ やま ) と いう 山 に 二 匹 の 鬼 の 親分 が 住んで いて 、 それぞれ が 大勢 ( おおぜい ) の 子分 ( こぶん ) を ひきつれて いました 。
親分 同士 の 仲 が よく 、これ まで けんか を した 事 が ありません 。
ところが ある 日 、二 匹 の 親分 が 一緒に 酒 を 飲んでいる 時 に 片方 の 親分 が 、
「お前 の 子分 より も 、わし の 子分 の 方 が ずっと 元気 が ええ 」
と 、言いました 。
それ を 聞いた もう 一人 の 鬼 の 親分 が 、顔 を 真っ赤に して 言い返しました 。
「何 を 言う か ! わし の 子分 の 方 が 、お前 の 子分 より も ずっと 元気 が ええ わ い ! 」
「なんだ と ! 」
「なんだ と は 、なんだ ! 」
「やる 気 か ! 」
「ああ 、やって やる ぞ ! 」
二 匹 の 鬼 の 親分 が 、同時に 立ち上がりました 。
でも 、二 匹 の 鬼 の 親分 の 力 は 同じ です 。
けんか を すれば 、両方 と も 無事 で は すみません 。
そこ で 片方 の 鬼 の 親分 が 、もう 片方 の 鬼 の 親分 に 言いました 。
「おれたち が けんか を すれば 、両方 とも 死んで しまう かも しれん 。
そう なれば 、子分 たち の めんどう を 見る やつ が い なく なる 。
ここ は けんか で なく 、他の 事 で 勝負 を つけ ない か ? 」
「 なるほど 、 お前 さん の 言う 通り だ 。 それ なら 、あの けわしい 谷 の 上 に 石 の 橋 を かける と いう の は どう じゃ ? 」
「それ は 、おもしろい 。
よし 、日 が くれたら 仕事 の 開始 じゃ 。
朝 まで に 石 の 橋 を かけ 、どっち の 橋 が よく 出来て いる か 、わし と お前 で 見て まわろう 」
「 わかった 。
もし 、 わし の 方 が 負けたら 、 お前 の 弟 分 ( おとうと ぶん ) に なる と しよう 。
その 反対 に わし の 方 が 勝ったら 、お前 が 弟分 に なる んだ 」
「いい と も 。 決まり だ 」
二 匹 の 鬼 の 親分 は 、さっそく 子分 たち の ところ へ 行って 、この 事 を 話しました 。
さて 、日 が 暮れる と 同時に 、どっち の 鬼 たち も 石 の 橋 を つくり はじめました 。
「しっかり と がんばれ 。 負ければ 、あっち の 親分 の 家来 に されて しまう ぞ 」
二 匹 の 鬼 の 親分 は 、 必死 ( ひっし ) で 子分 たち を 追いたてます 。
静かだった 鬼 神山 は 、 まるで 戦 ( いくさ ) の 様 な 騒ぎ です 。
ところが 片方 の 橋 は どんどん 出来上がって いく のに 、もう 片方 の 橋 は なかなか 仕事 が はかどりません 。
東 の 空 が 白く なる 頃 、谷 の 上 に 一つ の 見事な 橋 が 出来上がりました 。
でも もう 一 つ の 橋 は 、まだ 半分 と いう ところ です 。
負けた 鬼 の 親分 が 、勝った 鬼 の 親分 に 言いました 。
「どうやら 、わし ら の 負け の ようだ 。 約束 通り 、今日 から わし は お前 の 弟分 に なろう 」
それ から という もの 鬼 神山 の 鬼 の 親分 は 一人 に なり 、その 下 に 大勢 の 子分 を したがえる よう に なった のです 。
おしまい