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コンビニ人間, 27.1

27.1

その 日 は 、私 の 初めて の 面接 だった 。 派遣 と は いえ 、36 歳 まで アルバイト を していた 私 が 面接 に こぎつける こと が できた の は 、奇跡 の ような こと だ と 白羽 さん は 得意気に 言った 。 コンビニ を 辞めて から 、一 ヵ月 近く 経って いた 。 ・・

私 は 十 年 以上 前 に クリーニング に 出した きり に なっていた パンツ スーツ を 着て 、髪 の 毛 を 整えていた 。 ・・

部屋 の 外 に 出る こと 自体 、久しぶり だった 。 バイト を しながら 僅かながら に 貯めていた お金 も 、だいぶ 減ってきていた 。 ・・

「さあ 古倉 さん 、行きます よ 」・・

白羽 さん は 私 の 面接先 まで 送る と いう 。 面接 が 終わる まで 外 で 待って いる と 意気込んで いた 。 ・・

外 に 出る と 、もう すっかり 夏 の 空気 だった 。 ・・

電車 に 乗って 面接 先 へ 向かう 。 電車 に 乗る のも 久しぶり だった 。 ・・

「少し 早く 着き 過ぎました ね 。 まだ 一 時間 以上 ある 」・・

「そう ですか 」・・

「あ 、僕 ちょっと トイレに 行ってきます 。 ここで 待っていてください 」・・

白羽 さん が そう 言い残して 歩き 出した 。 公衆 トイレ など ある だろう か と 思ったら 、白羽 さん が 向かって いった の は コンビニ だった 。 ・・

私 も トイレ に 行って おこう か と 、白羽 さん を 追いかけて コンビニ に 入った 。 自動 ドア が 開いた 瞬間 、懐かしい チャイム の 音 が 聞こえた 。 ・・

「いらっしゃいませ ! 」・・

私の 方を 見て 、レジの 中の 女の子が 声を 張り上げた 。 ・・

コンビニの 中には 行列が できていた 。 時計を 見ると 、もうすぐ 12時に なろうと いう ころだった 。 ちょうど 昼 ピーク が 始まる 時間 だ 。 ・・

レジ の 中 に は 、若い 女の子 が 二人 だけ しか おらず 、一人 は 「研修中 」の バッジ を つけている ようだった 。 レジ は 二 台 で 、二人 と も それぞれ の レジ の 操作 に 必死 だった 。 ・・

ここ は ビジネス 街 らしく 、客 の 殆ど は スーツ を 着た 男性 や 、OL風の 女性たち だった 。 ・・

その とき 、私 に コンビニ の 「声 」が 流れ込んで きた 。 ・・

コンビニ の 中 の 音 の 全て が 、意味 を 持って 震えて いた 。 その 振動 が 、私 の 細胞 へ 直接 語りかけ 、音楽 の ように 響いている のだった 。 ・・

この 店に 今 何が 必要か 、頭で 考える よりも 先に 、本能が 全て 理解して いた 。 ・・

はっと して オープン ケース を 見る と 、「今日 から パスタ 全 品 30 円 引き ! 」と いう ポスターが 貼って あった 。 それなのに パスタ が 焼きそば や お好み焼き と 混ざって 置いて あり 、ちっとも 目立って いない 。 ・・

これ は 大変だ と 、私 は パスタ を 冷麺 の 隣 の 目立つ 場所 へ 移動させた 。 女性 客 が 不可解な 目 で 私 を 見た が 、そちら を 見上げて 「いらっしゃいませ ! 」と 言う と 、社員 な のだろう と 納得 した 様子 で 、綺麗に 並べ 終えた ばかりの 明太子 パスタ を とって いった 。 ・・

よかった と 思う と 同時に 、今度 は チョコレート 売り場 が 目に 入った 。 慌てて 携帯 を 取り出し 今日の 日付 を 見る 。 今日は 火曜日 、新商品 の 日 だ 。 コンビニ 店員 にとって 一週間 で 一番 大切な この 日 の ことを 、どうして 忘れて いた のだろう 。 ・・

私は チョコレート の 新商品 が 、一番 下 の 棚 に 一列 しか 並んで ない のを 見て 、悲鳴 を あげそうだった 。 半年 前 に 大 ヒット して 売り切れ 続出 で 話題 に なった チョコレート 菓子 の 期間限定 の ホワイトチョコ 味 が こんな 場所 に 、地味に 並べられて いる なんて 、あり得ない こと だ 。 私 は 手早く 売り場 を 直し 、大して 売れる もの で は ない のに 幅 を とって いる 菓子 を 一 列 に して 、新 商品 を 一番 上 の 段 に 三 列 に して 並べ 、他の 菓子 に つけっぱなし に なって いた 「新 商品 ! 」と いう POPをつけた。 ・・

レジ を 打って いる 女の子 が 、怪訝 な 顔 で こちら を 見て いる 。 私 の 動き に 気 が 付いている が 、行列 が できている ので 動き が 取れない ようだ 。 私 は 胸 の バッジ を 見せる ような 仕草 を し ながら 、「おはよう ございます ! 」と お客様 の じゃまに ならない 程度 の 声 で 呼びかけ 、会釈 を した 。 ・・

ほっと 安心した ような 表情 に なり 、女の子 は ふかく 会釈 を 返して 、レジ に 集中 し 始めた 。 スーツ 姿 の 私 を 、本社 の 社員 だ と でも 思った の だろう 。 こんなに 簡単に 騙されて しまう なんて 、安全 管理 が なって いない と 思う 。 私 が もしも 悪い 人間 で 、バックルーム の 金庫 を あけたり レジ の お金 を 盗んだり したら どうする つもりな のだろう 。 ・・

後 で 注意 しない と 、 と 思って 視線 を 戻す と 、「 あ 、 みて みて 、 この お 菓子 、 ホワイトチョコ が 出た ん だ ー ! 」と 女性 客 二人 組 が 、私 が 並べた 新 商品 を 手に 盛り上がっている 。 ・・

「これ 、CM で 今日 見た よ ー 。 食べて みよう かな ー 」・・

コンビニ は お客 様 に とって 、ただ 事務 的に 必要な もの を 買う 場所 で は なく 、好きな もの を 発見 する 楽しさ や 喜び が ある 場所 で なくては いけない 。 私は 満足して 頷きながら 、店内を 早足で 歩き回った 。 ・・

今日は 暑い 日 なのに 、ミネラルウオーターが ちゃんと 補充されて いない 。 パック の 2 リットル の 麦茶 も よく 売れる のに 、 目立たない 場所 に 一 本 しか 置いて いない 。 ・・

私 には コンビニ の 「声 」が 聞こえて いた 。 コンビニ が 何 を 求めて いる か 、どう なりたがって いる か 、手に 取る ように わかる のだった 。 ・・

行列 が 途切れ 、レジ に いた 女の子 が 私 の ほう へ 駆け寄って きた 。 ・・

「 わ あ 、すごい 、魔法 みたい 」・・

私 が 整えた ポテトチップス の 売り場 を 見て 呟く 。 ・・

「今日 、一人 バイト が 来れ なく なって 、店長 に 連絡 した けれど 繋がら なくて 、困って たんです 。 新人 さん と 二人 で …… 」・・

「そう ですか 。 でも 、レジ の 様子 を 見て いました が 、礼儀正しくて とても よかった です よ 。 ピーク が 落ち着いたら 、冷たい 飲み物 の 補充 を して あげて ください 。 アイス も 、暑く なって きたら さっぱり した 棒 アイス の ほう が 売れる ので 、売り場 を 直して あげる と いい です ね 。 それと 、雑貨 の 棚 が 少し 埃っぽい です ね 。 一度 、商品 を 下げて 棚 清掃 を 行って ください 」・・

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