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電話 を 切る と 、風呂 を 出た 白羽 さん が 所在無げ に 佇んで いた 。 ・・
「ああ 、着替え が ない です よね 。 これ 、お 店 が オープン した ころ の 制服 で 、今 の 制服 に デザイン が 変わった とき に もらった もの なんです 。 男女 兼用 な ので 、入る んじゃないか と 思う んです が 」・・
白羽 さん は 少し 躊躇 した が 、緑色 の 制服 を 手 に 取って 素肌 に 羽織った 。 手足 が 長い ので 少し 窮屈 そうだ が 、なんとか チャック が 閉まった ようだ 。 下半身 に は タオル しか 巻いて なかった ので 、部屋着 に している ハーフパンツ を 渡した 。 ・・
白羽 さん は 何 日 お 風呂 に 入って いなかった の か わからない が 、脱ぎ捨てた 下着 と 洋服 から は 異臭 が した 。 とりあえず 洗濯機 に 突っ込んで 、「適当に 座って いい です よ 」と 声 を かける と 、白羽さん は おずおず と 部屋 に 座った 。 ・・
小さな 和室 で 、古い 造り な ので 風呂 と トイレ は 別に なっている 。 換気 が あまり よく ない ので 、白羽 さん の 入った 後 の 風呂場 の ドア から 、湿気 と 湯気 が むわりと 部屋 に たちこめていた 。 ・・
「ちょっと 部屋 が 暑い です ね 。 窓 あけます か ? 」・・
「あ 、いや ……」・・
白羽 さん は なんだか そわそわ と 、立ち上がり かけたり 、座り なおしたり して いた 。 ・・
「トイレ なら そっち です 。 少し 流れ が 悪い です が 、大 の ほう に めいっぱい レバー を 回して ください 」・・
「あの 、トイレ は 別に いい です 」・・
「とりあえず 、行く ところ が ない んです よね 。 ルーム シェア の 部屋 も 半分 追い出さ れ かかって る んです もんね 」・・
「は あ ……」・・
「私 、思った んです けど 、白羽 さん が 家 に いる と 都合 が いい かも しれません 。 今 、試しに 妹 に 電話 して みた んです けど 、勝手に 話 を 作って すごく 喜んで くれる んです よね 。 男女 が 同じ 部屋 に いる と 、事実 は どう あれ 、想像 を 広げて 納得 して くれる もの なんだ な と 思いました 」・・
「妹 さん に ……」・・
白羽 さん は 戸惑った 様子 で 言った 。 ・・
「あ 、缶 コーヒー 飲みます か ? サイダー も あります 。 ヘコ 缶 を 買って きた だけ なんで 、冷えて ないで すけど 」・・
「 ヘコ ……? 」・・
「ああ 、説明 した こと なかった です か ね 。 缶 が へこんで 売り物 に ならない 商品 を 、そう 呼ぶ んです 。 あと は 牛乳 と ポット の 白湯 しか ない んです けど 」・・
「は あ 、缶 コーヒー を もらいます 」・・
家 に は 折り 畳み 式 の 小さな テーブル が ある だけ だ 。 部屋 が 狭い ので 、敷きっぱなし だった 布団 は 丸まって 冷蔵庫 の 前 に 押しやられている 。 妹 や 母親 が 泊まり に くる こと が たまに ある ので 、押入れ の 中 に は もう 一組 布団 が ある 。 ・・
「布団 も ある ので 、行き場所 が ない なら 白羽 さん を 泊める こと は 一応 、できます 。 狭い です が 」・・
「 泊まる ……」・・
そわそわ と し だした 白羽 さん は 、「いや 、でも 僕 は 、けっこう 潔癖症 な ので ……きちんと 準備 しない と ちょっと ……」と 小さな 声 で 言った 。 ・・
「潔癖 症 なら 、布団 は つらい かも しれません ね 。 しばらく 使って ないし 、干して も いない し 。 この 部屋 、古い ので ゴキブリ も けっこう 出る んです 」・・
「いや 、それ は あの 、ルームシェア の 部屋 も 別に 綺麗じゃなかった し どうでもいい んですけど 、ほら 、あれ でしょ 、既成事実 みたいな の を 作られる のは ね 、ねえ 、男 としては 警戒しないといけない んで ……いきなり 妹さん に 電話する なんて 、古倉さん 、かなり 必死じゃないですか 」・・
「何 か いけなかった です か ? ちょっと 反応 が 見て みたくて 電話 した んです けど 」・・
「いや 、そういう のって 、けっこう 怖い です よ ね 。 ネット で そういう 話 よく 読んで た けど 、本当に いる んだ なあ 、そんなに 必死に 誘われて も 、引くって いう か …… 」・・
「は あ ……行く ところ が なくて 困って いる なら と 思った んです が 、迷惑な んだったら 、洗濯機 も まだ まわして ない し 、洋服 お返し する んで 帰って 大丈夫です よ 」・・
白羽 さん は 、「 いや 、 とはいえ ……」 と か 、「 でも 、 そこ まで 言わ れる と ……」 と よく わからない こと を も ご も ご 言って いて 、 話 が 少しも 進ま なかった 。 ・・
「あの 、悪い んです けど 、もう 夜 なんで 、寝て も いい ですか ? 帰りたい とき は 勝手に 帰って いい し 、眠りたい とき は 布団 を 自分 で 敷いて 適当に 寝て ください 。 明日 も 朝 から コンビニ な んです 。 時給 の 中 に は 、健康な 状態 で 店 に 向かう という 自己 管理 に 対する お金 も 含まれてる って 、16 年 前 、2 人 目 の 店長 に 習いました 。 寝不足 で 店 に 行く わけに は いかない んです が 」・・
「あ 、コンビニ ……は あ ……」・・
白羽 さん は 間抜けな 声 を だした が 、かまって いて は 朝 に なって しまう と 思った ので 、自分 の 布団 を 出して 敷いた 。 ・・
「疲れて る んで 、明日 の 朝 お風呂 に 入ります 。 な ので 早朝 少し うるさく する かも しれません が 、おやすみなさい 」・・
歯磨き を 済ませて 目覚まし を セット し 、私 は 布団 に 入って 目 を 閉じた 。 時折 、ごそり 、ごそり 、という 白羽さん の たてる 音 が 聞こえてきた が 、だんだん と 頭 の 中 に ある コンビニ の 音 の ほう が 強く なり 、いつのまにか 眠り の 中 に 吸い込まれていた 。