124. 生まれ変った赤坂離宮 - 中井正一
生まれ 変った 赤坂 離宮 -中井 正一
二つ の 足 で 立つ ように なる ために 、人間 は 二十万 年 も ころんで は 立ち 、ころんで は 立ち した んだろう 。 そして 、手 が 自由に なった とき 、どんな 気持ち が した だろう 。 ・・
もの を つかんで 、土 の 上 に 立った 人間 の すがた 。 今 は あたりまえ の こと だが 、この あたりまえの こと を 、何 十万 年 も 努力 した 人間 の 勝利 の 記録 である こと を 思って みる 人 が 、今 地球 上 で 何 人 いる だろう 。 ・・
言葉 だって 同じ こと だ 。 ・・
手 が 自由に なり 言葉 を 発見した から 、数字 も でき 、物ごと の 中に 法則 が ある こと を 見つけだし 、人間 の 関係 の 中に も 、法則らしい もの が ある こと を さぐりだした こと は 、実は 大変な こと な のだ 。 ・・
五千 年 前 から 奴隷制 や 封建制 が 、つぎつぎに できて 、人間 が すこし まがぬけて 、とんでもなく おこりっぽく なったり 、おくびょうに なった からって 、人間を 馬鹿 と ばかり 思いこむ のは 早すぎる 。 ・・
人間 は すばらしい 宇宙 の ただ 一 つ の 存在 だ 。 その 証拠 に 、言葉 を 語りあって いる 。 そして 、法則 を さがし もとめて いる 。 ・・
人間 が 人間 の 間 の 法則 を 、たがいに さぐり あえたら 、人間 と 人間 と の 争い は なく なる 。 ・・
人間 が けんか を する とき 、人々 は 声 を あげて 言葉 で 争う 。 それ が つきて 、手 が でる のだ 。 ・・
戦争 も 同じ だ 。 何 カ年 も つづいた 大 戦争 も 、いずれ 、数 ページ の 講和 条約 で おわる 。 もし 、この 数 ページ の 条約 の 言葉 を 、戦い の 前 に 、おたがいに あみだす こと が できたら 、どんなに たくさんの 戦争 が おこら ずに すんだ かも しれない 。 ・・
言葉 は いつも 、戦争 と 戦争 している 。 ・・
アレクサンダー が 戦争 して いる 間 に も 、言葉 は 、彼 の 名前 を つけた アレクサンドリア 図書館 と なって 、彼 の 三十年 の 生涯 の 百倍 も の 間 、今 、なお 戦い を つづけて いる 。 ・・
赤坂 離宮 に できた 国立 国会 図書館 も 、遠い 遠い 、人間 の 血汐 の なか に そだって きた 、言葉 の もつ 大きな つとめ を せおって 、日本 の 戦い へ の かぎりない 悔い の しるし として 立ちあがった のである 。 ・・
この 図書 館 は 、 日本 民族 が 、 戦争 の はて に 立ち あがって ゆく に あたって 、 その 新しい 生き かた の 法則 を さぐり もとめる ため に 、 あらゆる 材料 を のがす まい と 、 ここ に あつめた 一 つ の 巨大な 新しい 夢 の 殿堂 である 。 ・・
これ まで は 、法律 は 官庁 で つくられて いた 。 これ から は 、国会 の 手 で 、法律 を つくろう と して 、その 材料 を あつめて 、整理 を し 、その 材料 から 要求 された 法律 の 下ごしらえ の 調査 を する のが 、この 図書館 の 任務 である 。 ・・
法律 が 、人民 の ため に 、人民 自身 が つくる もの だ と いう こと を 、目の前 に みせよう と して 、この 図書館 は できあがった 。 ・・
その ため に は 、行政 、司法 各省 に 支部 図書館 を おいて 、おたがいに 材料 を 見せあい 、利用しあって 、分裂しない ように する こと と なっている 。 また 、一般 人民 から の 問い合わせ に は 、葉書 でも 、電話 でも 、すぐに まにあう ように 準備 しなければならない 。 だから 本 を 読ま せる だけ で なく 、調査 が 大切な のである 。 新聞 も 雑誌 も 、その ため に 全部 きりぬき 、整理 保存 される のである 。 ・・
ちょうど 、中央 気象 台 へ 直結 する 気象 電話 の ように 、毎日 の 新聞 雑誌 は この 図書館 に 集まって くる 。 館 は それ を 連絡 整理 する 。 そして 一 つ の 表 が できあがって みる と 、毎日 の 天気図 の ように 、日本 の 政治 経済 の 低気圧 が 、どこ に ある か が わかる 。 時 を うつさ ず 議員 、行政 各 官庁 、一般 国民 の ため に 、適切な 警報 を 用意 する 。 これ が この 美しい 殿堂 の 中 に 動いている 新しい 組織 な のである 。 この 組織 は 、目 に みえない が 、豪華な この 殿堂 より も 幾 十 倍 も 美しい もの である と いえる 。 ・・
それ は 両足 で 立ち 、言葉 を つくり 、そして 人間 の 法則 を 自分 で 発見 できる こと を 、二十万 年 の 歴史 の はて に 今 、実証 し 、きらめく 星 も が 持たない 新しい 秩序 を 自分 の 手 で たしかめ 、完成 しよう と している のである 。