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Aozora Bunko Readings (4-5mins), 104. 鷹を貰い損なった話 - 寺田寅彦

104. 鷹を貰い損なった話 - 寺田寅彦

鷹 を 貰い 損なった 話 -寺田 寅 彦

小学 時代 の 先生 方 から 学校 教育 を 受けた 外 に 同学 の 友達 から は 色々の 大切な 人間 教育 を 受けた 。 そういう 友達 の 中 に も 硬派 と 軟派 と 二種類 あって 、その 硬派 の 首領 株 から は だいぶ いじめられた 。 板垣 退助 を 戴いた 自由党 が 全盛 の 時代 であった ので 、軍人 の 子供 である 自分 は 、「官権 党 の 子 」だ という 理由 で いじめられた 。 東京 訛 が 抜け なかった ために 「他国 もん の べろ しゃ /\」だ と 云って いじめられた 。 そうして 、墨 を よこさ なければ 帰り に 待伏せ する と 威かさ れ 、小刀 を くれない と しでる ぞ (ひどい 目 に 合わせる )と 云って は 脅かさ れた 。 その頃 の 硬派 の 首領 株 の 一人 は その後 人力車 夫 に なった と 聞いた が 、それから どうなったか 一度も 巡り合わず それきり 消息 を 知る こと が 出来ない 。 ・・

そういう 怖い 仲間 と は まるで 感じ の ちがう × という のが 居た 。 うち は 何 商売 だった か 分らない が 、その 家 の 店先 に 小鳥 の 籠 が いくつか 並べて あった 。 梟 が 撞木 に 止まって まじまじ 尤も らしい 顔 を していた こと も あった 。 しかし 小鳥 屋 専門 の 店 で は なかった ような 気 が する 。 ・・

その ×は 色 の 白い 女 の ように 優しい 子 であった が 、それ が 自分 に 対して 特別に 優し 味 と 柔らか味 の ある 一風 変った 友達 として 接近して いた 。 外 の 事 は 覚えて いない が ただ 一事 はっきり 覚えている の は 、この 子 が 自分 に ときどき 梟 を やろう と か 時鳥 を やろう と か また 鷹 を やろう と か いう 申し出 し を した こと である 。 但し それ に は 交換 条件 が あって 、おまえ の もっている 墨 とか ナイフ とか を 呉れたら 、という のであった 。 自分 は どういう 訳 か その 鷹 が ひどく 欲しかった ので 、彼 の 申込み に 応じて 品 は 忘れた が 彼 の 要求 する もの を 引渡した 。 そうして いよいよ 鷹 が 貰える と 思って 夜 が 寝られない ほど 嬉しがった もの である 。 鷹 を 貰って から の こと を 色々 空中 に 画 いて は エクスタシー に 耽った もの と 見えて 、 今 でも なんだか 本当に 一 度 鷹 を 飼った こと が ある ような 気持 が する こと が ある 、 もちろん 事実 は 鷹 など かつて 飼った 経験 は ない のである 。 ・・

明日 は いよいよ 鷹 が 貰える と 思って さんざん に 待ちかねて 、やっと その 日 に なって みる と 鷹 は 今 ちょうど トヤ に 入って いる から もう 二 、三 日 待って くれ と いう のである 。 ひどく がっかり して 、しかし 結局 あきらめて 辛抱 して 待って 、さて もう いい か と 思って 催促 する と 、今度 は 何とか が どう とかして 何とか で 工合 が 悪い から もう 二 、三 日 待て と いう 、その 何とか が 実に 尤 千万 な 何とか で 疑う 余地 など は 鷹 の 睫毛 ほど も ない のだ から 全く 納得 させられる 外 は なかった 。 それ から ……。 そういう 風 に して 結局 とうとう 鷹 の 夢 を 存分に 享楽 させて もらった だけ で 、生きている 実在 の 鷹 は とうとう 自分 の もの に ならないで おしまい に なった 。 はじめ に 交換 条件 で 渡した 品 を 返して もらった か もらわなかった か 、それ は 思い出せない 。 ・・

これ など は 幼年 時代 に 受けた 教育 の 中 でも かなり ため に なる 種類 の もの であった と 思う 。 多分 十 歳 くらい の こと であった か 、あるいは 七 、八 歳 だった かも しれない 。 ・・

×の 消息 は その後 全く 分らない 。 ・・

尤も 、この 頃 でも やはり ときどき は 「鷹 を 貰い損なう 」こと が ある ような 気 が する のである 。 ・・

(昭和 九 年 八 月 『行動 』)

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