058 .一年生たちとひよめ -新美南吉
一 年生 たち と ひよめ -新美 南吉
学校 へ いく とちゅう に 、 大きな 池 いけ が ありました 。 一 年生 たち が 、朝 そこ を 通りかかりました 。 池 の 中 に は ひよめ が 五六っぱ 、黒く うかんで おりました 。 それ を みる と 一 年生 たち は 、いつも の ように 声 を そろえて 、
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ひ イ よめ 、
ひよ め 、
だんご や ア る に
く ウ ぐ ウ れ ッ 、
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と うたいました 。 する と ひよめ は 頭 から ぷくり と 水 の なか に もぐりました 。 だんご が もらえる の を よろこんでいる ように みえました 。 けれど 一年生 たち は 、ひよめ に だんご を やりませんでした 。 学校 へ ゆく のに だんご など もっている 子 は ありません 。 一年生 たち は 、それから 学校 に きました 。 学校 で は 先生 が 教えました 。 「みなさん 、うそ を ついて は なりません 。 うそ を つく の は たいへん わるい こと です 。 むかし の人 は 、 うそ を つく と 死んで から 赤 鬼 あか おに に 、 舌 した べろ を 釘 くぎ ぬきで ひっこぬか れる と いった もの です 。 うそ を ついて は なりません 。 さあ 、わかった 人 は 手 を あげて 。」
みんな が 手 を あげました 。 みんな よく わかった から であります 。 さて 学校 が おわる と 、一 年生 たち は また 池 の ふち を 通りかかった ので ありました 。 ひよ め は やはり おりました 。 一年生 たち の かえり を 待って いた か のように 、水 の 上 から こちら を みて いました 。 --
ひ イ よめ 、
ひよ め 、
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と 一年生 たち は 、いつも の くせ で うたいはじめました 。 しかし 、その あと を つづけて うたう もの は ありませんでした 。 「だんご やる に 、くぐれ 」と うたったら 、それ は うそ を いった こと に なります 。 うそ を いって は ならない 、 と 今日 きょう 学校 で おそわった ばかり では ありません か 。 さて 、どうした もの でしょう 。
この まま いって しまう の も ざんねんです 。 そ したら ひよ め の ほう でも 、さみしい と 思う に ちがい ありません 。 そこ で みんな は 、こう 歌いました 。 --
ひ イ よめ 、
ひよ め 、
だんご 、やら ない けれど 、
く ウ ぐ ウ れ ッ
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する と ひよめ は 、やはり いせい よく 、くるり と 水 を くぐった のであります 。 これ で 、わかりました 。 ひよ め は いま まで 、だんご が ほしい から 、くぐった のでは ありません 。 一 年生 たち に よびかけられる のが うれしい から くぐった ので あります 。