7.2穢れた 血 と 幽かな 声 -MudbloodsandMurmurs
森 番 の 小屋 が 見えてきた 。
「もう すぐ よ 、ロン 。 すぐ 楽に なる から ......もう すぐ そこ だ から ......」
ハーマイオニー が ロン を 励ました 。
あと 五 、六 メートル と いう とき に 、小屋 の 戸 が 開いた 。
が 、中 から 出てきた の は ハグリッド では なかった 。 今日 は 薄い 藤色 の ローブ を 纏って 、ロックハート が さっそうと 現れた 。
「早く 、こっちに 隠れて 」
ハリーは そう ささやいて 、脇の 茂みに ロンを 引っ張り込んだ 。 ハーマイオニーは なんだか 渋々 従った 。
「やり方さえ わかっていれば 簡単な ことです よ 」
ロックハート が 声高に ハグリッド に 何か 言って いる 。
「助けて ほしい ことが あれば 、いつでも 私の ところに いらっしゃい !私の 著書 を 一冊 進呈 しましょう ――まだ 持って いない とは 驚きました ね 。 今夜 サイン を して 、こちらに 送ります よ 。 では 、お暇 しましょう !」ロックハート は 城の 方に さっそうと 歩き去った 。 ハリー は ロックハート の 姿 が 見え なる なる まで 待って 、それから ロン を 茂み の 中 から 引っ張り出し 、ハグリッド の 小屋 の 戸口 まで 連れて 行った 。 そして 慌しく 戸 を 叩いた 。
ハグリッド が すぐに 出て きた 。 不機嫌な 顔 だった が 、客 が 誰 だ か わかった 途端 、パッと 顔 が 輝いた 。
「いつ 来る んか 、いつ 来る んか と 待っとった ぞ ――さあ 入った 、入った ――実は ロックハート 先生 が まーた 来た か と 思った んで な 」ハリー と ハーマイオニー は ロン を 抱えて 敶居 を またがせ 、一 部屋 しか ない 小屋 に 入った 。 片隅 に は 巨大な ベッド が あり 、反対の 隅 に は 楽しげに 暖炉 の 火 が はぜていた 。
ハリー は ロン を 椅 す に 座ら せ ながら 、 手短 か に 事情 を 説明 した が 、 ハグリッド は ロン の ナメクジ 問題 に まった 動じ なかった 。
「出て こん より は 出た 方が ええ 」
ロン の 前 に 大きな 銅 の 洗面器 を ボン と 置き 、ハグリッド は 朗らかに 言った 。
「ロン 、みんな 吐いっちまえ 」
「止まる の を 待つ ほか 手 が ない と 思う わ 」
洗面器 の 上 に かがみ 込んで いる ロン を 心配 そうに 見ながら ハーマイオニー が 言った 。
「あの 呪い って 、ただ でさえ 難しい のよ 。 まして 杖 が 折れて たら ......」
ハグリッド は いそいそ と お茶 の 用意 に 飛び回った 。 ハグリッド の 犬 、 ボアハウンド の ファング は ハリー を 涎 で べとべと に して いた 。
「 ねえ 、 ハグリッド 、 ロックハート は なんの 用 だった の ?」
ファング の 耳 を カリカリ 指 で 撫で ながら ハリー が 聞いた 。
「井戸 の 中 から 水 魔 を 追っ払う 方法 を 俺 に 数えよう と して な 」唸る ように 答え ながら 、ハグリッド は しっかり 洗い込まれた テーブル から 、羽 を 半分 むしり かけ の 雄鶏 を 取りのけて 、ティーポット を そこ に 置いた 。 「まるで 俺 が 知らん と でも いう ように な 。 その 上 、自分 が 泣き 妖怪 とか なんとか を 追っ払った 話 を 、さんざ ぶち上げ とった 。 やっこ さん の 言っと る こと が 一 つ でも ほんと だったら 、 俺 は へそ で 茶 を 沸かして みせる わ い 」 ホグワーツ の 先生 を 批判 する なんて 、 まったく ハグリッド らしく なかった 。 ハリー は 驚いて ハグリッド を 見つめた 。
ハーマイオニー は いつも より ちょっと 上ずった 声 で 反論 した 。
「それって 、尐 し 偏見 じゃない かしら 。 ダンブルドア 先生 は 、あの 先生 が 一番 適任 だ と お考え に なった わけだ し ―― 」
「この 仕事 を 引き受ける と 言った の は あいつ だけ だった んだ 」
ハグリッド は 糖蜜 ヌガー を 皿 に 入れて 三人 に すすめ ながら 言った 。
ロン が その 脇 で ゲボゲボ と 咳き込み ながら 洗面器 に 吐いて いた 。
「他 に は だれ も おらん かった 。 闇 の 魔術 の 先生 を する もん を 探す の が 難しく なっち ょる 。 だーれ も 進んで そんな こと を やろう と せん 。 な ?みんな こりゃ 縁起 が 悪い と 思い はじめた な 。 ここん とこ 、だーれ も 長続き した もん は おらん しな 。 それ で ?やっこ さん 、誰 に 呪い を かける つもり だった ん かい ?ハグリッド は ロン の 方 を 顎 で 指し ながら ハリー に 聞いた 。 「マルフォイ が ハーマイオニー の こと を なんとか って 呼んだ んだ 。 ものすごく ひどい 悪口 なんだ と 思う 。 だって 、みんな かんかん だった もの 」
「ほんとに ひどい 悪口 さ 」
テーブル の 下 から ロン の 汗 だらけ の 青い 顔 が ひょいっと 現れ 、しゃがれ 声 で 言った 。 「マルフォイ の やつ 、彼女 の こと 『穢れた 血 』って 言った んだ よ 、ハグリッド ――」ロン の 顔 が また ひょいと テーブル の 下 に 消えた 。 次の ナメクジ の 波 が 押し寄せて きた のだ 。
ハグリッド は 大 憤慨 して いた 。
「そんな こと 、ほんとうに 言う た の か ?」と ハーマイオニー の 方 を 見て 唸り 声 を あげた 。
「言った わ よ 。 でも 、どういう 意味 だ か わたし は 知らない 。 もちろん 、ものすごく 失礼な 言葉 だ という こと は わかった けど ......」
「あいつ の 思いつく かぎり 最悪 の 侮辱 の 言葉 だ 」ロン の 顔 が また 現れて 絶叫 した 。
「『穢れた 血 』って 、マグル から 生まれた って いう 意味 の ――つまり 両親 とも 魔法使い じゃない 者 を 指す 最低の 汚らわしい 呼び方 なんだ 。 魔法使い の 中 に は 、たとえば マルフォイ 一族 みたいに 、みんな が 『純血 』って 呼ぶ もの だ から 、自分たち が 誰 より も 偉い って 思っている 連中 が いるんだ 」ロン は 小さな ゲップ を した 。 ナメクジ が 一匹 だけ 飛び出し 、ロン の 伸ばした 手 の 中 に スポッ と 落ちた 。
ロン は それ を 洗面器 に 投げ込んで から 話 を 続けた 。
「もちろん 、そういう 連中 以外 は 、そんな こと まったく 関係ない って 知ってる よ 。 ネビル ・ロングボトム を 見て ごらん よ ――あいつ は 純血 だ けど 、鍋 を 逆さまに 火 に かけたり しかねない ぜ 」
「それに 、俺たち の ハーマイオニー が 使えねえ 呪文 は 、今までに ひとっつ も なかった ぞ 」ハグリッド が 誇らしげに 言った ので 、ハーマイオニー は パーッと 頬 を 紅潮 させた 。 「他人 の こと を そんなふうに ののしる なんて 、むかつく よ 」ロン は 震える 手 で 汗 びっしょり の 額 を 拭い ながら 話し 続けた 。
「『穢れた 血 』だ なんて 、まったく 。 卑しい 血 だ なんて 。 狂って る よ 。 どうせ 今どき 、魔法使い は ほとんど 混血 なんだ ぜ 。 もし マグル と 結婚 して なかったら 、僕たち とっくに 絶滅 し ちゃって たよ 」ゲーゲー が 始まり 、またまた ロン の 顔 が ひょいと 消えた 。 「ウーム 、そりゃ 、ロン 、やつ に 呪い を かけ たく なる の も 無理 は ねぇ 」
大量 の ナメクジ が 、ドサドサ と 洗面器 の 底 に 落ちる 音 を 、かき消す ような 大声 で ハグリッド が 言った 。
「だけ んど 、おまえ さん の 杖 が 逆 噴射 した の は かえって よかった かも しれん 。 ルシウス ・マルフォイ が 、学校 に 乗り込んで きおった かも しれん ぞ 、おまえさん が やつ の 息子 に 呪い を かけっちまってたら 。 尐 なく と も おまえ さん は 面倒に 巻き込ま れ ず に すんだ っちゅうもん だ 」ナメクジ が 次々 と 口 から 出て くる だけ でも 十分 面倒だ けど ――と ハリー は 言い そうに なった が 、言え なかった 。 ハグリッド の くれた 糖蜜 ヌガー が 上顎 と 下顎 を セメント の ように がっちり 接着 して しまって いた 。
「ハリー ――」ふいに 思い出した ように ハグリッド が 言った 。
「おまえ さんに もちい と 小言 を 言う ぞ 。 サイン 入り の 写真 を 配っとる そう じゃないか 。 なんで 俺に 1枚 くれん のか い ?」
ハリー は 怒りに まかせて 、くっついた 歯 を ぐいと こじ開けた 。
「サイン 入り の 写真 なんて 、僕 、配って ない 。 もし ロック ハート が まだ そんな こと 言いふらして ...... 」
ハリー は むき に なった 。 ふと ハグリッド を 見る と 、笑って いる 。
「からかった だけ だ 」
ハグリッド は 、ハリー の 背中 を 優しく ボンボン 叩いた 。
おかげで ハリー は テーブル の 上 に 鼻 から 先に つんのめった 。
「 おまえ さん が そんな こと を せ ん の は わかっと る 。 ロック ハート に 言って やった わ 。 なん に も せん でも 、 おまえ さん はやっこ さん より 有名 だって 」「 ロック ハート は 気に入らない って 顔 した でしょう 」ハリー は 顎 を さすり ながら 体 を 立て直した 。 「ああ 、 気 に 入らん だろ 」ハグリッド の 目 が いたずらっぽく キラキラ した 。 「 それ から へ 俺 は あんた の 本 など ひとっつ も 読んどらん と 言って やった 。 そしたら 帰って 行きおった 。 ほい 、ロン 、糖蜜 ヌガー 、どうだ ?」
ロン の 顔 が また 現れた ので 、ハグリッド が すすめた 。
「いらない 。 気分 が 悪い から 」ロン が 弱々しく 答えた 。
「俺 が 育ててる モン 、ちょいと 見に こい や 」
ハリー と ハーマイオニー が お茶 を 飲み 終わった の を 見て 、ハグリッド が 誘った 。
ハグリッド の 小屋 の 裏 に ある 小さな 野菜 畑 に は 、ハリー が 見た ことも ない ような 大きい かぼちゃ が 十 数 個 あった 。 一つ 一つ が 大岩 の ようだった 。
「よーく 育っとろう ?ハロウィーン の 祭 用 だ ......そのころ まで に は いい 大きさ に なる ぞ 」ハグリッド は 幸せ そうだった 。 「肥料 は 何 を やってる の ?」と ハリー が 聞いた 。
ハグリッド は 肩 越し に チラッ と 振り返り 、誰 も いない こと を 確かめた 。 「その 、やっとる もんは ――ほれ ――ちーっと 手助け して やっとる 」ハリーは 、小屋の 裏の 壁に 、ハグリッドの ピンクの 花模様の 傘が 立てかけて ある のに 気づいた 。 ハリーは 以前に 、ある ことから 、この 傘が 見かけ とは かなり 違う ものだと 思った ことが あった 。 実は 、ハグリッドの 学生 時代 の 杖が 中に 隠されて いる ような 気が して ならなかった 。 ハグリッドは 魔法を 使って は いけない ことに なっている 。 三年生 の とき に ホグワーツ を 退学 に なった のだ 。
なぜ なのか 、ハリー には いまだに わからなかった ――ちょっと でも その こと に 触れる と 、ハグリッド は 大きく 咳払い を して 、なぜか 急に 耳が 聞こえなく なって 、話題が 変わる まで だま で 黙りこくって しまう のだ 。
「『肥らせ 魔法 』じゃない ?とにかく 、ハグリッド ったら 、とっても 上手に やった わよね 」ハーマイオニー は 半分 非難 している ような 、半分 楽しんでいる ような 言い方 を した 。 「おまえ さん の 妹 も そう 言い おった よ 」ハグリッド は ロン に 向かって 領いた 。
「つい 昨日 会った ぞい 」ハグリッド は 髭 を ピクビク させながら ハリー を 横目 で 見た 。
「ぶらぶら 歩いて いる だけ だって 言っとった が な 、俺 が 思う に 、あり や 、この 家 で 誰かさん と ばったり 会える かも しれん って 思っとった な 」ハグリッド は ハリー に ウィンク した 。 「俺 が 思う に 、あの 子 は 欲しがる ぞ 、おまえさん の サイン 入り の ――」「やめて くれよ 」ハリー が そう 言う と 、ロン は ブーッ と 吹き出し 、そこら中 に ナメクジ を 撒き散らした 。 「気 ー つけろ !」
ハグリッド は 大声 を 出し 、ロン を 大切な かぼちゃ から 引き離した 。
そろそろ 昼食 の 時間 だった 。
ハリー は 夜明け から 今 まで 、糖蜜 ヌガー を ひと かけら 口 に した だけ だったので 、早く 学校 に 戻って 食事 を したかった 。
ハグリッド に さよなら を 言い 、 三人 は 城 へ と 歩いた 。 ロン は 時々 しゃっくり を した が 、小さな ナメクジ が 二 匹 出てきた だけ だった 。 ひんやり した 玄関 ホール に 足 を 踏み入れた 途端 、 声 が 響いた 。 「ポッター 、ウィーズリー 、 そこ に いました か 」マクゴナガル 先生 が 厳しい 表情 で こちら に 歩いてきた 。 「 二人 とも 、 処罰 は 今夜 に なります 」「先生 、僕たち 、 何 を する んでしょうか ?」 ロン が なんとか ゲップ を 押し殺し ながら 聞いた 。 「あなた は 、フィルチ さん と 一緒に トロフィー ・ルーム で 銀 磨き です 。 ウィーズリー 、魔法 は ダメ です よ 。 自分 の 力 で 磨く のです 」
ロン は 絶句 した 。 管理人 の アーガス ・フィルチ は 学校 中 の 生徒 から ひどく 嫌われて いる 。 「ポッター 。 あなた は ロックハート 先生 が ファンレター に 返事 を 書く の を 手伝い なさい 」
「えーっ 、そんな ......僕も トロフィー ・ルーム の 方 では いけませんか ?」ハリーが 絶望的な 声で 頼んだ 。 「もちろん いけません 」マクゴナガル 先生 は 眉 を 吊り上げた 。 「ロック ハート 先生 は あなた を 特に ご指名 です 。 二人 とも 、八時 きっかりに 」
ハリー と ロン は がっくりと 肩を 落とし 、うつむきながら 大広間に 入って行った 。
ハーマイオニー は 「だって 校則 を 破った んでしょ 」という 顔 を して 後ろ から ついてきた 。
ハリー は シェパード ・パイ を 見て も 思った ほど 食欲 が わか なかった 。
二 人 とも 自分 の 方 が 最悪の 貧乏くじ を 引いて しまった と 感じて いた 。
「フィルチ は 僕 を 一晩 中 放して くれ ない よ 」ロン は 滅入って いた 。
「魔法 なし だ なんて !あそこ に は 銀杯 が 百 個 は ある ぜ 。 僕 、マグル 式 の 磨き方 は 苦手 なんだ よ 」
「いつでも 代わって やる よ 。 ダーズリー の ところ で さんざん 訓練 されてる から 」ハリー も うつろな 声 を 出した 。 「ロックハート に 来た ファンレター に 返事 を 書く なんて ......最低 だよ ......」
土曜日 の 午後 は まるで 溶けて 消え去った ように 過ぎ 、あっという間 に 八時 は あと 五分 後に 迫っていた 。
ハリー は 重い 足 を 引きずり 、三階 の 廊下 を 歩いて ロックハート の 部屋 に 着いた 。
ハリー は 歯 を 食いしばり 、ドア を ノックした 。
ドア は すぐに パッと 開かれ 、ロックハート が ニッコリと ハリー を 見下ろした 。
「おや 、いたずら 坊主 の お出ましだ !入りなさい 。 ハリー 、さあ 中へ 」
壁 には 額入り の ロックハート の 写真 が 数え切れない ほど 飾って あり 、たくさんの 蝋燭 に 照らされて 明るく 輝いて いた 。 サイン 入り の もの も いくつか あった 。 机 の 上 に は 、写真 が もう 一山 、積み上げられて いた 。 「封筒 に 宛名 を 書かせて あげましょう !」まるで 、こんな すばらしい もてなし は ないだろう 、と 言わんばかり だ 。 「この 最初の は 、グラディス ・ガージョン 。 幸いなる かな ――私 の 大 ファン で ね 」
時間 は のろのろと 過ぎた 。 ハリー は 時々 「うー 」とか 「えー 」とか 「はー 」とか 言いながら 、ロックハート の 声 を 聞き流して いた 。
時々 耳 に 入って きた 台詞 は 、「ハリー 、評判 なんて 気まぐれな もの だよ 」とか 「有名人 らしい 行為 を する から 有名人 なのだよ 。 覚えて おきなさい 」など だった 。
蝋燭 が 燃えて 、炎 が だんだん 低く なり 、ハリー を 見つめている ロックハート の 写真 の 顔 の 上 で 光 が 踊った 。
もう 千 枚 目 の 封筒 じゃない だろう か と 思い ながら 、 ハリー は 痚 む 手 を 動かし 、 ベロニカ ・ ス メスリー の 住所 を 書いて いた ―― もう そろそろ 帰って も いい 時間 の はずだ ―― どうぞ 、 そろ そろ 時間 に な ?ます よう ...... ハリー は 惨めな 気持 で そんな こと を 考えて いた 。 その とき 、何か が 聞こえた ――消えかかった 蝋燭 が 吐き出す 音 で は なく 、ロックハート が ファン 自慢 を ペチャクチャ しゃべる 声 で も ない 。
それ は 声 だった ――骨 の 髄 まで 凍らせる ような 声 。 息 が 止まる ような 、氷 の ように 冷たい 毒 の 声 。
「来る んだ ......俺様 の ところ へ ......引き裂いて やる ......八つ裂き に して やる ......殺して やる ......」
ハリー は 飛び上がった 。 ベロニカ ・スメスリー の 住所 の 丁目 の ところ に ライラック 色 の 滲み が できた 。
「なん だって ?」ハリー が 大声 で 言った 。 「驚いたろう ?六 ヶ月 連続 ベストセラー 入り !新 記録 です !」ロックハート が 答えた 。 「そう じゃ なくて 、あの 声 ?」ハリー は 我 を 忘れて 叫んだ 。 「えっ ?」ロックハート は 不審 そうに 聞いた 。 「どの 声 ?」
「あれ です ――今 の あの 声 です ――聞こえ なかった んです か ?」ロックハート は 唖然 と して ハリー を 見た 。
「ハリー 、いったい なんの こと かね ?尐し トロトロ してきた んじゃないのかい ?おやまあ 、こんな 時間 だ !四 時間 近く ここ に いた のか ?信じられません ね ――矢 のように 時間が たちました ね ?」ハリー は 答え なかった 。 じっと 耳を すませて もう 一度 あの 声を 聞こう と していた 。 しかし 、もう なんの 音も しなかった 。
ロックハートが 「処罰を 受ける 時 いつも こんなに いい 目に 遭う と 期待 してはいけない よ 」と ハリーに 言っている だけだった 。
ハリーは ぼーっとした まま 部屋を 出た 。 もう 夜 も ふけて いた ので 、グリフィンドール の 談話室 は がらんと していた 。
ハリー は まっすぐ 自分 の 部屋 に 戻った 。 ロン は まだ 戻って い なかった 。 ハリー は パジャマ に 着替え 、ベッド に 入って ロン を 待った 。
三十 分 も たったろう か 、 右腕 を さすり さ すり 、 暗い 部屋 に 銀 磨き 粉 の 強れつな 臭い を 漂わせ ながら 、 ロン が 戻って きた 。
「体中 の 筋肉 が 硬直 しちゃった よ 」ベッド に ドサリ と 身 を 横たえ ながら ロン が 捻った 。 「あの クィディッチ 杯 を 十四 回 も 麿 かせられた んだ ぜ 。 やつ が もう いい って 言う まで 。 そしたら 今度は ナメクジ の 発作 さ 。 『学校 に 対する 特別 功労 賞 』の 上に べっとり だよ 。 あの ネトネト を 拭き取る のに 時間 の かかった こと ......ロックハート は どうだった ?」
ネビル 、ディーン 、シューマス を 起こさない ように 低い 声で 、ハリー は 自分が 聞いた 声 の ことを 、その 通りに ロンに 話した 。
「 それ で 、 ロックハート は その 声 が 聞こえない って 言った の かい ?」 月明り の 中 で ロン の 顔 が 曇った の が ハリー に は わかった 。 「 ロック ハート が 嘘 を ついて いた と 思う ?でも わからない なあ ―― 姿 の 見えない 誰 か だっと して も 、 ドア を 開けない と 声 が 聞こえない はずだ し 」と ロン が 言った 。 「 そうだ よ ね 」 四 本 柱 の ベッド に 仰向け に なり 、 ベッド の 天蓋 を 見つめ ながら 、 ハリー が つぶやいた 。 「 僕 に も わから ない 」