いしゃ ちがい
いしゃ ちがい
むかし 、 一 人 の 医者 が 旅 を して い ました 。 ある 田舎 道 を 、 歩いて いる と 、 「 もし 、 もし 、 医者 どの 」 と 、 誰 から 呼び止め られ ました が 、 辺り を 見回して も 誰 も いま せ ん 。 「 はて 、 不思議な 」 しばらく キョロキョロ して い ました が 、 再び 歩き 出そう と する と 、 「 医者 どの 。 わし じゃ 、 わし じゃ 」 と 、 近く から 声 が し ます 。 「 はて 、 近く に は お 地蔵 さま しか おら ん な 」 医者 が 再び 歩き 出そう と する と 、 その 石 の お 地蔵 さん が 小さな 口 を 開いて しゃべった のです 。 「 医者 どの 。 わし じゃ 。 石 の 地蔵 じゃ 」 医者 は びっくり し ながら も 、 お 地蔵 さん に 尋ね ました 。 「 はい 、 地蔵 さま 。 なに か 、 ご用 で ? 」 「 うむ 、 まことに すま ん が 、 この 通り わし の 鼻 が かけて おる だろう 。 どうか 、 直して くださら ぬ か 」 そう 言わ れて 見る と 、 確かに 地蔵 さん の 鼻 が かけて い ます 。 「 なるほど 。 これ は また 、 ひどい かけ ようで ございます な 。 ですが とても 、 わたくし の 手 に は おえ ませ ぬ 」 「 お 主 は 、 医者 だろう ? そう 言わ ず に 、 直して くだされ 」 「 いやいや 、 たしかに わたくし は 医者 です が 、 なおす 専門 が 違い ます 。 この 鼻 は 、 わたくし の 様 な 小さい 『 ゃ 』 より も 、 大きい 『 や 』 の お 人 に なおして もらった 方 が よろしい か と 」 「・・・? その 、 大きい 『 や 』 と は ? 」 「 あなた さま は 石 です ので 、『 いしゃ ( 医者 )』 より も 、『 いし や ( 石屋 )』 で ございます 」
おしまい