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LibriVOX 04 - Japanese, (5) Nakunatta Ningyo - なくなった人形 (Mimei Ogawa - 小川未明)

(5) Nakunatta Ningyo - なく なった人形 ( Mimei Ogawa - 小川 未明 )

冬 で ありました けれど 、 その 日 は 、 風 も なく 穏やかで 、 日 の 光 が 暖かに 、 門口 に 当たって いました ので 、 お みよ は 学校 から 帰ります と 、 ござ を 敷いて 、 その 上 で 、 人形 や 、 おもちゃ など を 出して きて 遊んで いました 。 すこし 前 まで 、 近所 の お 友だち が きて 、 いっしょに 遊んで いた のです が 、 お 友だち は ちょっと 用 が できて 家 へ いった ので 、 後 に は 、 まったく お みよ 一 人 と なった のでした 。 けれども 、 彼女 は すこしも さびしい と は 思いません 。 かわいい 人形 が そば に あります から 、 それ を 抱いたり 、 下 に すわら せたり 、 また それ に もの を いったり 、 おもちゃ の お 膳 や 、 茶わん や 、 さら など に 、 こしらえた ごちそう を 入れて 、 供えて やったり して います と 、 けっして さびしく も なんとも なかった のであります 。 その 人形 は 、 今年 の 春 、 田舎 から 叔父さん が 出て こられた とき に 、 叔父さん と いっしょに 、 町 へ いって 買って もらった 、 好きな 、たいせつに して いる 人形 で ありました 。 日 は 、 だんだん 西 の 方 へ まわりました けれど 、 まだ そこ に は 、 暖かな 日 が 当たって いました 。 「 さあ 、 こんど は なに を おまえ に こしらえて あげよう か ね 。」 と 、 お みよ は 人形 に 向かって 、 独り言 を もらした のです 。 その とき 、 あちら の さびしい 路 の ほう から 、 こちら に やってきた 、 哀れな ふう を した 、 七 つ か 八 つ に なった くらい の 乞食 の 女の子 が ありました 。 どこ へ ゆく のでしょう か 、 ふと 、 この 家 の 前 を 通りかかりました が 、 乞食 の 子 は 、 お みよ が 、 いま 人形 に ごちそう を こしらえて やろう と して 、 菊 の 花 や 、 山茶花 の 花弁 を 、 小さな 刃物 で 、 小さな まないた の 上 に 載せて 刻んで いる の を 見て 、 思わず 歩み を 止めて 、 しばらく 我 を 忘れて じっと ながめて いました 。 乞食 の 子 は 、 まだ 産まれて から 一 度 も 、 そんな 美しい 人形 や 、 おもちゃ 道具 を 手 に 持って 、 遊んだ こと が なかった のです 。 乞食 の 子 は 、 お みよ の 幸福な 身の上 を うらやみました 。 なんで 自分 も 、 あの 方 の ように 生まれて こ なかった のだろう 。 自分 は いつ に なったら 、 あんな かわいらしい 人形 や 、 おもちゃ を 持つ こと が できる だろう と 、 真に お みよ の 身の上 を うらやましく 思って ながめて いた のです 。 乞食 の 子 は 、 いつしか 自分 と いう もの を 忘れて しまって 、 その かわいい 人形 の 顔 や 、 姿 に 見とれて しまった のです 。 なんという かわいい かわいい 人形 だろう 。 まあ 、 あの 人形 は 私 の 顔 を 見て 、 笑って いる のじゃ ない か しら ん 。 あれ 、 ほんとうに 私 の 顔 を 見て 笑って いる 。 私 は ちょっと の まで いい から 、 お嬢さん に お 願い して 、 あの 人形 を 抱か して もらおう か しら ん 。 ほんの ちょっと の まで いい から 、 あの かわいい 人形 を 手 に 取って 、 よく 顔 を 見たい もの だ 、 ただ 一 度 で いい から 顔 を 見たい もの だ 。 それ で 、 もう 私 は たくさんだ から …… そう いって お嬢さん に お 願い して みよう か しら ん と 、 乞食 の 子 は 一 人 胸 の うち で 想い 煩って いました が 、 いやいや 、 なんで こんな 汚い ふう を して 、 ほか の 人々 から 平常 乞食 の 子 ! 乞食 の 子 ! と 、 呼ばれて いる いる もの を 、 なんで 、 この 家 の お嬢さん が 私 に 人形 を 抱か して くださる もの か 、 かえって 、 そんな こと を いって いやな 顔 を さ れる より 、 黙って 、 こうして ここ で 見て いた ほう が いい と 、 小さな 胸 で 想い 返しました 。 そして 、 乞食 の 子 は 、 いつまでも 垣根 の きわ に 立って 、 こちら を 見て いた のです 。 お みよ は 、 人形 に なに か 別の ごちそう を こしらえて やろう と 思って 、 外 へ 青い 葉 か 、 色 の 変わった 菊 の 花 を 探して こよう と 思って 、 ござ から 立ち上がります と 、 そこ の 垣根 の そば に 、 哀れな 乞食 の 子 が たたずんで こちら を 見て いました 。 まだ 年 も ゆか ない のに 、 そして 、 こんな 寒空 な のに 、 身 に は 汚れた 薄い 着物 を 着て 、 どんなに 寒かろう と 思いました 。 お みよ は 乞食 の 子 より 二 つ 三 つ 年 上 であった のです 。 乞食 の 子 は 、 いま 、 お嬢さん が どこ へ か いかれて 、 見え なく なった この ま に 、 ちょっと その かわいい 人形 を 抱いて みよう と 思って 、 おそるおそる 近づいて 、 なん の 深い 考え も なし に 、 人形 を 手 に 取りあげて つくづく ながめます と 、 それ は かわいい 人形 で ありました から 、 「 私 は いつも いつも お 友だち も なくて 、 ただ 一 人 で さびしくて なら ない の 。 私 と いっしょに 遊んで くれ ない の 。 そして 、 私 の 仲 の よい お 友だち に なって くれ ない の 。」 と いって 、 乞食 の 子 は 人形 の 顔 を のぞきました 。 すると 、 人形 は 優しく 微笑んで 、 「 私 は お 友だち に なって あげます 。」 と いった ように 、 乞食 の 子 に は 思わ れました 。 乞食 の 子 は 喜んで 、 かわいい 人形 の ほお に 接吻 いたしました 。 やがて そこ へ 、 お みよ は 白い 菊 の 花 を 摘んで 帰って きます と 、 もう 垣根 の そば に は 、 乞食 の 子 の 影 が 見えません でした 。 そして ござ の ところ へ きて 、 これ から ごちそう を こしらえて 人形 に やろう と 思います と 、 大切 の 大切 の 人形 の 姿 が 、 どこ へ いって しまった か 見え なかった のです 。 お みよ は 大騒ぎ を しました 。 そして 、 どこ へ いったろう と あっちこっち 探して います と 、 そこ へ 近所 の おばあ さん が 通りかかって 、 なに を そんなに 、 探して いる の か と 聞きました から 、 人形 が 見え なく なった のだ と いいました 。 「 あ 、 そん なら 、 いま あちら へ 、 乞食 の 子 が 人形 を 抱いて 、 頭 を なでたり 、 もの を いったり して 、 夢中に なって いった から 、 それ じゃ ない か 。」 と 、 おばあ さん は 教えました 。 お みよ は 、 自分 も それ に 相違 ない と 思いました から 、 急いで その後 を 追いました けれど 、 もはや その 姿 は 見え なかった のであります 。 お みよ は 、 どうしても その 人形 の こと を 忘れる こと が できません でした 。 そして 、 あの 哀れな 乞食 の 子 を うらめしく 思いました 。 すると 、 お みよ は その 晩 、 不思議な 夢 を 見た のであります 。 なんでも 、 そこ は 河辺 の ような 木 の しげった 間 に 、 板 や 、 竹 を 結びつけて 、 その 上 を 草 や 、 わら で ふいた 哀れな 小屋 の 中 に 、 七 つ か 八 つ に なった 女の子 が 、 すみ の 方 に ぼろ に くるまって 、 あの 人形 をたいせつに 、 しっかり と 抱いて 眠って います と 、 寒い 寒い 星 の 光 が 、 小屋 の すきま を もれて さしこんで いる ので ありました 。 目 が 覚める と 、 お みよ は その 乞食 の 子 が かわいそうで なりません でした 。 けれど 、 まだ 彼女 は 、 人形 の こと を 思いきる こと が できません でした 。 明くる 日 、 お みよ は 学校 へ いって 先生 に 問うた のであります 。 「 先生 、 どんな 場合 に でも 、 もの を 盗む と いう こと は 悪い こと です か 。」 「 もの を 盗む と いう こと は 、 いちばん 悪い こと です 。」 と 、 先生 は 目 を 丸く して い いました 。 「 先生 、 もしたいせつな もの を 盗ま れた とき は どう します 。」 と 、 お みよ は 聞きました 。 「 それ は 学校 で です か 、 家 で です か 。」 と 、 先生 は 問い返しました 。 「 家 で です 。」 「 巡査 さん に 届けて 、 その 悪い こと を した 奴 を 縛って もらう んです 。 あなた は 、 なに か 盗ま れた んです か 。」 「たいせつな 人形 を 盗ま れました 。」 「 人形 を ? だれ が 盗んだ んです 。」 と 、 先生 は お みよ の 顔 を 見守りました 。 「 七 つ か 八 つ に なる 乞食 の 女の子 です 。」 と 、 お みよ は 答えました 。 「 乞食 の 子 ! 」 と 、 先生 は いって 、 しばらく 考えて いました が 、 「 あなた は 、 巡査 さん に いって 縛った ほう が いい か 、 また 堪忍 して やった ほう が いい か 、 どちら が いい と 思います か 。」 と 、 先生 は 、 今度 は 反対に お みよ に 問い返しました 。 「 私 は 堪忍 して やった ほう が いい と 思います 。」 と 、 お みよ は 勇んで い いました 。 「 あなた は 人情 の ある よい 子 だ 。 そう です 、 そうして おや ん なさい 。」 と 、 先生 は いって 、 お みよ の 頭 を なでました 。 不思議に も お みよ は 、 また その 晩 、 同じ ような 夢 を 見ました 。 哀れな 小屋 の 中 に 、 七 つ か 八 つ ばかり の 乞食 の 子 が ぼろ に くるまって 、 しっかり と 人形 を 抱いて 眠って いる ところ へ 、 寒い 大空 の 星 の 光 が さしこんで いる ので ありました 。

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