はだか の 王さま 3
街 は その めずらしい 布 の うわさ で もちきり でした 。 うわさ が どんどん もり上がって いく うち に 、王さま も 自分 で 見て みたく なって きました 。 日に日に その 思い は 強く なる の です が 、 いっこうに 布 は 完成 かんせい しません でした 。 王さま は いて も たって も いられなく なって 、たくさんの 役人 を つれて 、二人 の ずるがしこい さぎ師 の 仕事場 に 向かいました 。 つれて いった 役人 の 中 に は 、前 に 布 を 見 に 行った 二人 も ふくまれて いました 。 さぎ 師 の 仕事場 に つく と 、二人 は いっしょうけんめい に 働いて いる ふり を していました 。 糸 を 一 本 も 使わ ないで 、まじめに 仕事 を して いる ふり を していました 。 「さぁ どう です 、王さま に ぴったりな 、たいそう りっぱな 布 でしょう ? 」前 に 来た こと の ある 二人 の 役人 が みんな に 向かって 言いました 。 「 王さま 、 王さま なら この 布 の 色合い 、 柄 がら を お 気 に めします でしょう ? 」そして 、二人 は から の はた織り機 を ゆびさしました 。 二 人 は 他の みんな に は 布 が 見える と 思っていた から です 。 でも ……「なんだ これ は ? 何も ない じゃ ない か 。」 と 、王さま は 思いました 。 王さま は 自分 が バカ かも しれ ない と 思う と 、だんだん こわく なって きました 。 また 、王さま に ふさわしく ない か と 考える と 、おそろしく も なって きました 。 王さま の いちばん おそれて いた こと でした 。 王さま が 王さま で なく なる なんて 、たえられ なかった のです 。 だから 、王さま は さぎ 師 たち を 見て 言いました 。 「まさしく そう である な 。 この 布 が すばらしい の は 、わたし も みとめる ところ である ぞ 。」 王さま は まんぞく そうに うなずいて 、からっぽの はた織り 機 に 目 を 向けました 。 何も 見え ない と いう こと を 知られ たく なかった ので 、からっぽで も 、布 が ある かの ように 王さま は 見つめました 。 同じ ように 、王さま が つれて きた 役人 たち も 見つめました 。 王さま が 見て いる より も もっと 見よう と しました 。 でも やっぱり 、何も 見えて は いま せん でした 。 「これ は 美しい 、美しい 。」 役人 たち は 口々に 言いました 。 「王さま 、この 布 で 作った りっぱな 服 を 、ちかぢか 行わ れる 行進 パレード の とき に おめし に なって は どう でしょう 。」 と 、誰 か が 王さま に 言いました 。 その あと 、みんな が 「これ は 王さま に ふさわしい 美しさ だ ! 」と ほめる もの です から 、王さま も 役人たち もうれしく なって 、大 さんせい でした 。 そして 王さま は 、二人 の さぎ 師 を 『王国 とくべつ はた織り 士 』と 呼ばせる こと に しました 。 パレード の 行わ れる 前日 の 晩 の こと 、さぎ 師 たち は 働いて いる ように 見せかけよう と 、十六 本 もの ロウソク を ともして いました 。 人々 は 家 の 外 から その ようす を 見て 、王さま の 新しい 服 を 仕上げる のに いそがしい んだ 、と 思わず に は いられません でした 。 さぎ 師 は まず 布 を はた織り 機 から はずす ふり を しました 。 そして ハサミ で 切る ま ね を して 、 糸 のない 針 はり で ぬい 、 服 を 完成 かんせい さ せました 。 「たった今 、王さま の 新しい 服 が できあがった ぞ ! 」王さま と 大臣 全員 が 大広間 に 集まりました 。 さぎ 師 は あたかも 手 の 中 に 服 が ある ように 、両手 を 挙げて ひとつひとつ 見せびらかせました 。 「まず ズボン です ! 」「そして 上着 に ! 」「最後 に マント です ! 」さぎ 師 は 言葉 を まくしたてました 。 「これら の 服 は クモ の 巣 と 同じ くらい かるく できあがって おります 。 何も 身 に つけて いない ように 感じる 方 も おられる でしょう が 、それ が この 服 が とくべつで 、かち が ある と いう いわれ な のです 。」 「まさしく その 通り だ ! 」大臣 は みんな 声 を そろえました 。 でも みんな 何も 見えません でした 。 もともと そこ に は 何も ない んです から 。 「どうか 王さま 、ただいま おめし に なって いる 服 を おぬぎ に なって 下さいませんか ? 」さぎ 師 は 言いました 。 「よろしければ 、大きな かがみ の 前 で 王さま の お着がえ を お手伝い したい のです 。」 王さま は さっそく 服 を ぬぎました 。 二 人 の さぎ 師 は あれ や これ や と 新しい 服 を 着つける ふり を しました 。 着つけ おわる と 、王さま は あちこち から かがみ に うつる 自分 を 見ました 。 「何 と 美しい ! ……よく お にあい です ! 」その 場 に いた だれ も が そう 言いました 。 「この世 の もの と は 思え なく 美しい 柄 がら 、言いあらわし よう の ない 色合い 、すばらしい 、りっぱな 服 だ ! 」と 、みんな ほめたたえる のでした 。 その とき 、パレード の 進行 役 が やって 来て 、王さま に 言いました 。 「 行進 パレード に 使う てん が い ( 王さま せんよう の 大きな 日がさ ) が 準備 じゅんび できました 。 かつぐ 者 たち も 外 で いまや いまや と 待って おります 。」 「うむ 、わたし も したく は 終わった ぞ 。」 と 、王さま は 進行 役 に 答えました 。 「どう だ 、この 服 は わたし に にあってる かね ? 」王さま は かがみ の 前 で くるっと 回って みせました 。 なぜなら 王さま は 自分 の 服 に 見とれて いる ふり を しなければ ならなかった のです から 。 お 付き の めしつかい は あり も し ない 服 の すそ を 持た なければ なりません でした 。 地面 に 両手 を のばして 、何か を かかえて いる ような ふり を しました 。 やはり めしつかい も 何も 見えて いない こと を 知ら れ たく なかった ので 、すそ を 持ち上げて いる ような まね を している のでした 。 王さま は きらびやかな てんがい の 下 、どうどうと 行進 して いました 。 人々 は 通り や まど から 王さま を 見て いて 、みんな こんなふうに さけんで いました 。 「ひゃぁ 、新しい 王さま の 服 は なんて めずらしい んでしょう ! それ に あの 長い すそ と 言ったら ! 本当に よく お にあい だ こと ! 」だれ も 自分 が 見え ない と 言う こと を 気づかれ ない ように して いました 。 自分 は 今 の 仕事 に ふさわしく ないだ と か 、 バカだ と か いう こと を 知ら れ たく なかった の です 。 ですから 、今 まで これほど ひょうばん の いい 服 は ありません でした 。 「でも 、王さま 、はだか だ よ 。」 とつぜん 、小さな 子ども が 王さま に 向かって 言いました 。 「王さま 、はだか だ よ 。」 「……なんて こった ! ちょっと 聞いて おくれ 、むじゃきな 子ども の 言う こと なんだ 。」 横 に いた その この 父親 が 、子ども の 言う こと を 聞いて さけびました 。 そして 人 づたい に 子ども の 言った 言葉 が どんどん 、ひそひそ と つたわって いきました 。 「王さま は はだか だ ぞ ! 」ついに 一 人 残らず 、こう さけぶ ように なって しまいました 。 王さま は 大 弱り でした 。 王さま だって みんな の 言う こと が 正しい と 思った から です 。 でも 、「いまさら 行進 パレード を やめる わけに は いかない 。」 と 思った ので 、そのまま 、今 まで 以上 に もったいぶって 歩きました 。 めしつかい は しかたなく 、あり も し ない すそ を 持ち つづけて 王さま の あと を 歩いて いきました と さ 。