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Fairy Tales, 錦絵から出て来た女の人

錦絵から出て来た女の人

錦 絵 から 出て 来た 女 の 人

むかし むかし 、 ある ところ に 、 貧乏な おばあ さん と 息子 が 住んで い ました 。 息子 は やさしい おばあ さん に 頼り 切って 、 自分 は その 日 に 飲む 酒 代 分 しか 働き ませ ん 。 その おばあ さん が 、 ぽっ くり 死んで しまった のです 。 息子 は おばあ さん に 頼り 切って いた ので 、 自分 で は 食事 の 用意 も 洗濯 も 掃除 も 何一つ まともに 出来 ませ ん 。 お 嫁 さん を もらおう と 思って も 、 息子 は 貧乏な ので 誰 も お 嫁 に 来て くれ ませ ん 。 息子 は 一 人 、 不自由で さみしい 生活 を 送って い ました 。

ある 日 の 事 、 息子 は 仕事 に 行った 先 の 家 の 庭 で 、 きれいな 女 の 人 を 描いた 錦 絵 ( にしきえ ) を 拾い ました 。 錦 絵 と は 、 当時 人気 の あった 色 鮮やかな 絵 の 事 です 。 一 人 暮らし で さみしかった 息子 は 、 その 錦 絵 を 家 の 壁 に はる と 、 まるで 生きて いる 人間 に 話し かける 様 に 、 その 日 の 出来事 など を 錦 絵 の 女 の 人 に 話して 聞か せ ました 。

それ から しばらく した 、 ある 日 の 事 。 息子 が 仕事 を 終えて 家 に 帰って 来る と 、 いつも は 汚い 家 が きれいに 掃除 さ れて い ました 。 それ だけ で は なく 、 囲炉裏 ( いろり ) に は ちゃんと 火 が ついて いて 、 温かい 食事 の 仕度 も 出来て いる のです 。 「 はて ? 誰 が して くれた んだろう ? 」 息子 は 不思議に 思い ながら も 食事 を 食べる と 、 いつも の 様 に 壁 の にしき絵 に 語り かけ ました 。 「 お前 は 、 いつ 見て も きれいだ な 。 今日 な 、 誰 が やった か は 知ら ない が 、 家 の 中 が きれいに 掃除 さ れて いて 、 おまけに おいしい 晩 飯 が 用意 さ れて いた んだ 。 きれいな 家 で おいしい 晩 飯 を 食べる と 、 まるで お前 と 夫婦 に なった 様 な 気分 だ 。 こんな 事 が 、 毎日 毎日 続く と いい な 」 息子 は そう 言って 、 満足 そうに 寝 ました 。

それ から 次の 日 も 、 その 次の 日 も 、 不思議な 事 に 息子 が 仕事 を 終えて 家 に 帰って 来る と 、 家 の 中 が きれいに 掃除 さ れて いて 、 ご飯 の 仕度 が 出来て いる のです 。 ( これ は 、 どういう 事 だろう ? まさか 村 の 娘 の 誰 か が 、 やって くれて いる のだろう か ? 次の 日 、 気 に なった 息子 は 仕事 に 行く ふり を して 家 を 出る と 、 すぐ に 戻って 家 の 二 階 に 隠れ ました 。

お 昼 頃 、 息子 が ふと 気 が つく と 、 家 の 中 に は いつの間にか 一 人 の 美しい 女 の 人 が いて 、 家 の 中 を 掃除 したり 、 囲炉裏 の 鍋 に 湯 を わかしたり して いた のです 。 びっくり した 息子 は 、 思わず 二 階 から 声 を かけ ました 。 「 あの 、 あなた さま は 、 どこ の どなた です か ? 」 「 きゃ あっ ! 」 突然 声 を かけ られて びっくり した 女 の 人 は 、 足 を 滑ら せて 火 を たいて いる 囲炉裏 の 上 に 倒れて しまい ました 。 「 あっ 、 あぶ ねえ ! 」 息子 は あわてて 二 階 から 飛び降り ました が 、 女 の 人 は 囲炉裏 の 火 に 包ま れた か と 思う と 、 一瞬 の うち に 消えて しまい ました 。 「 どういう 事 だ ? それ に あの 女 、 どこ か で 見た 顔 だった が 」 息子 が 首 を 傾げて 何げなく 壁 を 見て みる と 、 壁 に はって ある 錦 絵 の 女 の 人 の ところ だけ が 、 真っ白に なって いた のです 。 「 これ は ! ・・・ そう か 、 そう だった の か 」 なんと 錦 絵 に 描か れた 女 の 人 が 、 お 嫁 の いない 息子 を ふびんに 思って 絵 から 抜け出して いた のでした 。

それ から 息子 は 何 年 も 何 年 も 錦 絵 の 女 の 人 が 現れる の を 待ち ました が 、 錦 絵 の 女 の 人 は 二度と 現れ ず 、 錦 絵 は 白い まま でした 。

おしまい


錦絵から出て来た女の人 にしきえ から でて きた おんな の じん Frau aus einem Brokat. A woman from a brocade picture Vrouw uit een brokaat.

錦 絵 から 出て 来た 女 の 人 にしき|え||でて|きた|おんな||じん

むかし むかし 、 ある ところ に 、 貧乏な おばあ さん と 息子 が 住んで い ました 。 |||||びんぼうな||||むすこ||すんで|| 息子 は やさしい おばあ さん に 頼り 切って 、 自分 は その 日 に 飲む 酒 代 分 しか 働き ませ ん 。 むすこ||||||たより|きって|じぶん|||ひ||のむ|さけ|だい|ぶん||はたらき|| The son is completely dependent on the kind old woman, and he only works for the alcohol he drinks that day. その おばあ さん が 、 ぽっ くり 死んで しまった のです 。 ||||||しんで|| The old woman died suddenly. 息子 は おばあ さん に 頼り 切って いた ので 、 自分 で は 食事 の 用意 も 洗濯 も 掃除 も 何一つ まともに 出来 ませ ん 。 むすこ|||||たより|きって|||じぶん|||しょくじ||ようい||せんたく||そうじ||なにひとつ||でき|| My son was completely dependent on his grandmother, so he can't prepare meals, do the laundry, or clean anything by himself. お 嫁 さん を もらおう と 思って も 、 息子 は 貧乏な ので 誰 も お 嫁 に 来て くれ ませ ん 。 |よめ|||||おもって||むすこ||びんぼうな||だれ|||よめ||きて||| Even if I wanted to marry my son, no one would marry him because he is poor. 息子 は 一 人 、 不自由で さみしい 生活 を 送って い ました 。 むすこ||ひと|じん|ふじゆうで||せいかつ||おくって|| My only son was living a lonely and crippled life.

ある 日 の 事 、 息子 は 仕事 に 行った 先 の 家 の 庭 で 、 きれいな 女 の 人 を 描いた 錦 絵 ( にしきえ ) を 拾い ました 。 |ひ||こと|むすこ||しごと||おこなった|さき||いえ||にわ|||おんな||じん||えがいた|にしき|え|||ひろい| One day, when my son went to work, he found a nishikie (color woodblock print) depicting a beautiful woman in the garden of his house. 錦 絵 と は 、 当時 人気 の あった 色 鮮やかな 絵 の 事 です 。 にしき|え|||とうじ|にんき|||いろ|あざやかな|え||こと| Nishiki-e refers to colorful paintings that were popular at the time. 一 人 暮らし で さみしかった 息子 は 、 その 錦 絵 を 家 の 壁 に はる と 、 まるで 生きて いる 人間 に 話し かける 様 に 、 その 日 の 出来事 など を 錦 絵 の 女 の 人 に 話して 聞か せ ました 。 ひと|じん|くらし|||むすこ|||にしき|え||いえ||かべ|||||いきて||にんげん||はなし||さま|||ひ||できごと|||にしき|え||おんな||じん||はなして|きか|| My son, who lived alone and was lonely, hung the nishiki-e on the wall of his house and told the woman in the nishiki-e about the events of the day, as if he were talking to a living human being. rice field .

それ から しばらく した 、 ある 日 の 事 。 |||||ひ||こと 息子 が 仕事 を 終えて 家 に 帰って 来る と 、 いつも は 汚い 家 が きれいに 掃除 さ れて い ました 。 むすこ||しごと||おえて|いえ||かえって|くる||||きたない|いえ|||そうじ|||| それ だけ で は なく 、 囲炉裏 ( いろり ) に は ちゃんと 火 が ついて いて 、 温かい 食事 の 仕度 も 出来て いる のです 。 |||||かこ ろ うら|||||ひ||||あたたかい|しょくじ||したく||できて|| Not only that, but the hearth is properly lit and a hot meal is ready. 「 はて ? 誰 が して くれた んだろう ? だれ|||| 」   息子 は 不思議に 思い ながら も 食事 を 食べる と 、 いつも の 様 に 壁 の にしき絵 に 語り かけ ました 。 むすこ||ふしぎに|おもい|||しょくじ||たべる||||さま||かべ||にしきえ||かたり|| My son wondered, but when he ate his meal, he spoke to the picture on the wall as usual. 「 お前 は 、 いつ 見て も きれいだ な 。 おまえ|||みて||| "You are beautiful no matter how I look at you. 今日 な 、 誰 が やった か は 知ら ない が 、 家 の 中 が きれいに 掃除 さ れて いて 、 おまけに おいしい 晩 飯 が 用意 さ れて いた んだ 。 きょう||だれ|||||しら|||いえ||なか|||そうじ||||||ばん|めし||ようい|||| きれいな 家 で おいしい 晩 飯 を 食べる と 、 まるで お前 と 夫婦 に なった 様 な 気分 だ 。 |いえ|||ばん|めし||たべる|||おまえ||ふうふ|||さま||きぶん| Eating a delicious dinner in a beautiful house makes me feel like I'm married to you. こんな 事 が 、 毎日 毎日 続く と いい な 」   息子 は そう 言って 、 満足 そうに 寝 ました 。 |こと||まいにち|まいにち|つづく||||むすこ|||いって|まんぞく|そう に|ね|

それ から 次の 日 も 、 その 次の 日 も 、 不思議な 事 に 息子 が 仕事 を 終えて 家 に 帰って 来る と 、 家 の 中 が きれいに 掃除 さ れて いて 、 ご飯 の 仕度 が 出来て いる のです 。 ||つぎの|ひ|||つぎの|ひ||ふしぎな|こと||むすこ||しごと||おえて|いえ||かえって|くる||いえ||なか|||そうじ||||ごはん||したく||できて|| Then, the next day, and the day after that, strangely enough, when my son finished his work and came home, the inside of the house was cleaned up and the meal was ready. . ( これ は 、 どういう 事 だろう ? |||こと| まさか 村 の 娘 の 誰 か が 、 やって くれて いる のだろう か ? |むら||むすめ||だれ||||||| Could it be that one of the village girls is doing it? 次の 日 、 気 に なった 息子 は 仕事 に 行く ふり を して 家 を 出る と 、 すぐ に 戻って 家 の 二 階 に 隠れ ました 。 つぎの|ひ|き|||むすこ||しごと||いく||||いえ||でる||||もどって|いえ||ふた|かい||かくれ|

お 昼 頃 、 息子 が ふと 気 が つく と 、 家 の 中 に は いつの間にか 一 人 の 美しい 女 の 人 が いて 、 家 の 中 を 掃除 したり 、 囲炉裏 の 鍋 に 湯 を わかしたり して いた のです 。 |ひる|ころ|むすこ|||き||||いえ||なか|||いつのまにか|ひと|じん||うつくしい|おんな||じん|||いえ||なか||そうじ||かこ ろ うら||なべ||ゆ||||| びっくり した 息子 は 、 思わず 二 階 から 声 を かけ ました 。 ||むすこ||おもわず|ふた|かい||こえ||| 「 あの 、 あなた さま は 、 どこ の どなた です か ? "Where are you from? 」 「 きゃ あっ ! き ゃ| 」   突然 声 を かけ られて びっくり した 女 の 人 は 、 足 を 滑ら せて 火 を たいて いる 囲炉裏 の 上 に 倒れて しまい ました 。 とつぜん|こえ||||||おんな||じん||あし||すべら||ひ||||かこ ろ うら||うえ||たおれて|| 「 あっ 、 あぶ ねえ ! 」   息子 は あわてて 二 階 から 飛び降り ました が 、 女 の 人 は 囲炉裏 の 火 に 包ま れた か と 思う と 、 一瞬 の うち に 消えて しまい ました 。 むすこ|||ふた|かい||とびおり|||おんな||じん||かこ ろ うら||ひ||つつま||||おもう||いっしゅん||||きえて|| My son hurriedly jumped down from the second floor, but the woman seemed to be engulfed in fire in the hearth and disappeared in an instant. 「 どういう 事 だ ? |こと| それ に あの 女 、 どこ か で 見た 顔 だった が 」   息子 が 首 を 傾げて 何げなく 壁 を 見て みる と 、 壁 に はって ある 錦 絵 の 女 の 人 の ところ だけ が 、 真っ白に なって いた のです 。 |||おんな||||みた|かお|||むすこ||くび||かしげて|なにげなく|かべ||みて|||かべ||||にしき|え||おんな||じん|||||まっしろに||| And that woman's face was something I've seen somewhere before." My son tilted his head and casually looked at the wall, only the woman in the nishiki-e painting on the wall was pure white. It had become. 「 これ は ! ・・・ そう か 、 そう だった の か 」   なんと 錦 絵 に 描か れた 女 の 人 が 、 お 嫁 の いない 息子 を ふびんに 思って 絵 から 抜け出して いた のでした 。 |||||||にしき|え||えがか||おんな||じん|||よめ|||むすこ|||おもって|え||ぬけだして||

それ から 息子 は 何 年 も 何 年 も 錦 絵 の 女 の 人 が 現れる の を 待ち ました が 、 錦 絵 の 女 の 人 は 二度と 現れ ず 、 錦 絵 は 白い まま でした 。 ||むすこ||なん|とし||なん|とし||にしき|え||おんな||じん||あらわれる|||まち|||にしき|え||おんな||じん||にどと|あらわれ||にしき|え||しろい|| After that, the son waited for years and years for the nishiki-e woman to appear, but the nishiki-e woman never appeared again, and the nishiki-e remained white.

おしまい