三 姉妹 探偵 団 4 Chapter 05
5 白銀 の 朝
カーテン を 開けた とたん 、まぶしい 光 が 溢れて 、夕里子 は 、思わず 声 を 上げ そうに なった 。
「 珠美 !
起き なさい よ ! と 、大声 で 呼ぶ 。
「 珠美 ──」
振り向いて 、夕里子 は 、珠美 の ベッド が 空 に なって いる の に 気付いた 。
「あれ ?
もう 起きた の か 」
珍しい な 、と 思い つつ 、やっと 目 が 少し 慣れて 来て 、もう 一つの 、綾子 の ベッド の 方 に も 目 が 向く と ──。
「 まさか !
夕 里子 は 目 を 疑った 。
──綾子 の ベッド も 空 な のだ 。
こんな こと 、ある わけ が ない !
何 か あった の かしら ?
夕 里子 は 、ゆうべ の 、あの 川西 みどり の 「予言 」を 思い出した 。
あれ は 、夕里子 自身 の こと を 言って いた の だ が ──。
国 友 さん ……。
そう だ わ 、国友 さん に 知らせ ない と !
綾子 と 珠美 、二人 とも 誘拐 された のだろうか ?
もし そう なら 、何 人 か で 、一斉に 襲って 来た のに 違いない 。
パジャマ 姿 の まま 、夕里子 は 、廊下 へ と 飛び出した 。
「 おっと !
「 キャッ !
夕 里子 は 、目の前 に 立って いた 国 友 に 抱きつく ような 格好 に なって 、そのまま 二人 とも 引っくり返って しまった 。
「 おい !
どうした ん だ ! 「国 友 さん !
二 人 と も い ない の ! お 姉ちゃん も 珠美 も ! きっと どこ か に 連れて 行か れ ──」
顔 を 上げる と 、分厚い セーター 姿 の 、綾子 と 珠美 が 、並んで 立って 、廊下 に 折り重なっている 国友 と 夕里子 を 見ていた 。
「──何も 廊下 で ラブシーン 、や ん なく たって いい じゃない 」
と 、珠美 が 言った 。
「ベッド に 行けば ? 「風邪 引く よ 」
と 、綾子 も 、冷やかす 。
「あ ──あの ──」
夕 里子 は 、起き上って 、「どうして 、お姉ちゃん 、そんなに 早く 起きた の ?
「早く って ……夕里子 、今 、午後 の 二時 よ 」
夕 里子 は 、ポカン と して 、
「二 時 ……」
と 、訊き 返した 。
「 そう 」
珠美 が 肯いて 、「早く 食べ ない と 、朝 も 昼 も 抜き だよ 」
と 言った 。
天然 の 木 の 色 が しっとり と した ムード を 作って いる ダイニングルーム へ 夕 里子 が 入って 行く と 、 石垣 園子 が 、
「あら 、よく 眠れた ?
と 、笑い かけた 。
「 ええ ……。
眠り 過ぎちゃ って 」
と 、夕里子 は 頭 を かいた 。
「すみません 、こんな 時間 に 」
「いい の よ 。
ゆうべ 、あんな 時間 に 着いた んです もの ね 」
でも ……。
大きな 、木 の テーブル に 一人 、ポツンと ついて 、夕里子 は 、いささか の ショック を かみしめて いた 。
学校 が 休み で 、気 が 緩んだ の かも しれない が 、それにしても ……。
「──何 を しょげて る んだ ?
国 友 が 入って 来た 。
「 別に 。
しょげて なんかいな いわ よ 。 こんな すてきな 所 で 、しかも 雪 景色 で 。 ──しょげる こと ない じゃ ない 」
夕 里子 も 、少し は 強がって みたかった のである 。
「そう か ?
「そう よ 」
夕 里子 は 、国友 を 見て 、それ から 、ちょっと 笑った 。
石垣 園子 が 、朝食 兼 昼食 を 運んで 来て くれる と 、夕 里子 は 、最初 、多少 遠慮がちに 、それから 、凄い 勢いで 食べ 始めた 。
かなり 、お腹 も 空いて いる のである 。
「──突っ張る こと ない よ 」
と 、国 友 は 、それ を 見て ニヤニヤ しながら 言った 。
「 うん ……」
夕 里子 は 、グーッ と コーヒー を 飲みほして 、
「ああ 、おいしかった !
「少し 外 に 出て みたら ?
いい 気持 だ よ 」
「そう ね 。
でも 、これ 、片付け ない と 」
夕 里子 が 、皿 を 重ねて (それほど の 枚数 だった わけで は ない 。
念のため )、運んで 行こう と する と 、園子 が すぐに 姿 を 見せて 、
「あら 、いい んです よ 。
私 の 仕事 です から ね 」
と 、皿 を 受け取る 。
「 でも ──」
「いい の 。
ゆっくり して ちょうだい 」
その 笑顔 は 、ちょっと ぐらい なら 、甘えて も いい か な 、と 思わ せる 優しさ を 湛えて いた ……。
「── まぶしい 」
一面 の 雪 景色 の 中 へ 出て 行く と 、夕里子 は 、目 を 細く した 。
それ でも 、少し 目 が 痛い くらい だ 。
「ほら 、サングラス が ある 」
と 、国 友 の 貸して くれた の を かけて 、やっと ホッ と する 。
青空 は 、まるで 凍り ついた 海 の 表面 の ように 、深い 奥行 を 思わせる 色 を していた 。
雪 は その 光 を 反射 して 、まるで それ 自体 が 光って いる ようだ 。
「── わっ」
夕里子 は 、雪 の 中 へ 踏み出して 、ズボッ と 膝 まで 埋って しまった ので 、びっくり して 、声 を 上げた 。
もちろん 、この 辺り で は 、これ ぐらい 、大した 雪 で は ない のだろう 。
「久しぶり だ わ 、こんな 雪 。
──踏み つけ られて ない 雪 の 中 を 歩く なんて 」
と 、夕里子 は 言った 。
吐く 息 が 白く なる 。
空気 は 冷たい けど 、でも 陽射し は 強く 、暖かかった 。
「少し のんびり する と いい よ 」
と 、国 友 は 言った 。
「すばらしい 眺め ね 」
と 、思わず 声 が 大きく なる 。
今 の 夕里子 ぐらい の 年齢 の 女の子 たち は 、あんまり 、感動 を 素直に 表わさ ない 。
ワーッ、とか、キャーッとか、びっくりしたり感心したりしてしまうのは、あんまりカッコイイことじゃなくって、
「こんな もん よ 」
と 、 分った ような 顔 で 肩 を すくめる 、 と いう の が まともな 反応 だ 、 と されて いる 。
でも 、やっぱり 、いい もの は いい し 、きれいな もの は きれいな のだ 。
夕里子 は 、こんな 所 に 来て まで 、感情 に 素直に なれない 女の子 で は なかった 。
「こんな 所 まで 上って 来て たんだ な 」
と 、国 友 が 首 を 振って 、「夜道 で 、そんな こと 、全く 気付か なかった 」
この 山荘 は 、山 の 中腹 に ある 。
上って 来る 道 は 、細い し 、ガード レール も ない が 、一応 ちゃんと 舗装 され 、ゆうべ 、国友 も 、それほど 緊張 せず に 運転 して 来る こと が できた 。
「──ずっと 、山腹 を 横切って る の が 、ゆうべ 私 たち の 上って 来た 道 ?
「そう だ よ 。
──そっち の 方 は 崖 に なってる らしい な 」
「かなり ある わ よ 」
と 、夕里子 は 、下 を こわごわ 覗き込んで 、
「落ちたら イチコロ ね 」
切り立った 、五十 メートル 近い 絶壁 であった 。
近づく の を 防止 する 柵 も ロープ も ない 。 危ない なあ 、と 夕里子 は 思った 。
「あんまり そっち へ 行く と 、危ない よ !
国 友 が 、夕里子 の 腕 を 取って 、引き戻し ながら 、言った 。
「大丈夫 よ 」
「雪 が 、崖 から せり出してる 。
崩れたら 、一緒に 下 へ 落ちて しまう ぞ 」
「心配 して くれる ?
「当り前 だ 」
「綾子 姉さん じゃ なくて も ?
「 おい ──」
「冗談 よ 」
と 、夕里子 は 笑った 。
そして 、大きく 、思いっ切り 、冷たく 冴え わたった 空気 を 吸い 込む と 、
「 うーん 、 気持 いい !
と 、大声 を 上げた 。
「僕 も だ 。
──あの 殺伐 と した 都会 から 来た なんて こと を 、忘れて しまい そうだ よ 」
国 友 も 、まぶしげ に 目 を 細く し ながら 、遠く に 重なり 合う 山並み を 眺めて いた 。
今 は 、そこ も 白く 化粧 を して いる 。
「モンブラン の ケーキ みたい 」
と 、夕里子 が 、素直な 感想 を 述べた 。
「でも ──参った なあ 」
「何 が ?
「珠美 は ともかく 、お姉さん まで 私 より 早く 起きちゃう なんて !
立つ 瀬 が ない 」
「オーバー だ よ 」
「いえ 、本当 。
だって ね ……」
夕 里子 は 、軽く 目 を 伏せて 、「ママ が 死んで から 、私 が いつも ママ の 代り を してた でしょ 。
いつも 時間 通り に 起きて 、他の 二 人 を 起こして やる 。 夕 ご飯 も 作った し 、掃除 、洗濯 も 、二人 に も やらせる けど 、私 が 、順番 や 手順 を きちんと 決め ない と 、二人 とも ボケッ と してる だけ 。 ──時々 、考えた わ 」
「何 を ?
「私 が もし 死んだら 、二人 で 、どう する んだろう って 」
「 おいおい ──」
「もしも 、の 話 よ 」
と 、夕里子 は 、ちょっと 照れた ように 笑って 、「こんな 話 、私 が する の 、変 か なあ 」
「そんな こと は ない さ 」
国 友 は 、夕 里子 の 肩 を 抱いた 。
「君 は ね 、何もかも 、一人 で 引き受け 過ぎる んだ 」
「そう ……かも ね 」
「もう 少し 気楽に やれ よ 。
君 が い なくて も 、あの 二人 は 、ちゃんと 起きて 来た じゃないか 。 ──そうだ ろ ? 「 うん 」
夕 里子 は 肯 いた 。
分 って る 。
でも ──正直な ところ 、夕里子 は ちょっと 寂しい 気分 に も なって いた 。
私 が いなきゃ 、何も でき ない んだ から !
そう 文句 は 言い つつ も 、いつの間にか 、夕里子 に とっても 、その 思い が 、支え に なって しまった 。
いや ね !
夕 里子 は 、ちょっと 顔 を しかめた 。
──まだ 十八 な のに 、これ じゃ まるきり 「お母さん 」じゃない の !
「国 友 さん 」
夕里子 は サングラス を 外す と 、「まぶしい から 、目 を つぶってる 」
「──それ で ?
夕 里子 は 、目 を つぶった まま 、国 友 の 方 に 、少し 顔 を 上げた 。
──ま 、これ で 、キス して ほしい のだ と 分らない ので は 、男 と して 少々 鈍すぎる と 言われても 仕方 ある まい 。
が 、国 友 は 、少々 迷った ものの 、然るべき 結論 に は 、無事に 辿りついた 。
夕里子 は 、国友 の 腕 が 、自分 を 抱き寄せる の を 感じ 、国友 の 胸 に 自分 の 胸 が 押しつけられる の を 感じた 。
──心臓 が 高鳴って ──そして 、国友 の 熱い 息 が 、顔 に かかる の を 感じた ……。
そこ へ ──ボカン !
「 キャッ !
夕 里子 は 悲鳴 を 上げた 。
雪 の 玉 が 、みごと 、二人 の 顔 の 接着点 (?
)に ぶつかった のである 。
「 冷たい !
「誰 だ !
国 友 の 方 も 、口 の 中 に 雪 が 入って しまって 、ブルブルッ と 頭 を 振り ながら 、怒鳴った 。
「──や あ 、ごめん 」
と 、男の子 の 声 が した 。
夕 里子 は 振り向いた 。
紺 の ジャンパー を 着た 少年 が 、毛糸 の 手袋 を はめて 、立って いた 。
「ぶつける 気 じゃ なかった んだ よ 」
と 、少年 は 言った 。
「本当 だ よ 」
可愛い 顔立ち だ 。
「君 ──秀 哉 君 ?
と 、夕里子 は 訊いた 。
「 うん 。
──三 姉妹 の 真中 の 夕里子 さん でしょ ? 「知って る の ?
「 聞いた 。
──そっち が 国 友 さん だ ね 」
「やっと 会えた ね 」
と 、国 友 は 肯いて 見せた 。
「なかなか 会え ない んで 、どうした の か と 思って いた んだ よ 」
「色々 、忙しい んだ よ 」
いやに 大人びた 口 の きき方 を する 子 だった 。
何だか 、冷めて いる 、という 印象 。
「──秀 哉 」
と 、園子 が 、雪 の 中 を やって 来た 。
「 ママ 」
「どこ に いた の ?
せっかく 家庭 教師 の 先生 が いらした のに 」
と 、園子 は 、苦労 して 歩いて 来る 。
「──ワァ 、凄え 雪 !
珠美 の 声 だ 。
夕 里子 は 、少々 恥ずかしく なって 、サングラス を かけ 直した 。
「待って よ 。
──歩け ない よ 」
と 、心細い 声 を 出している の は 、もちろん 綾子 である 。
「 お 姉ちゃん 。
── 大丈夫 ? と 、夕里子 が 雪 を はね飛ばし ながら 駆けて 行く 。
「 うん 。
──ああ 、くたびれた ! 綾子 は 、ハアハア 息 を 切らしている 。
「まぶしくて 何も 見え ない ! 「文句 、多い の 」
夕里子 は 、サングラス を 、綾子 に かけて やった 。
「残って 待って ろ 、って 言った じゃない 」
と 、珠美 は 、雪 を すくって 、雪玉 を 作ったり している 。
「だって ──こんなに 凄い なんて 、思わなかった んだ もん 」
と 、綾子 は 、深呼吸 して 、「でも 、気持 いい わ ね !
園子 が 、秀哉 を 連れて 、戻って きた 。
「お 待たせ して 。
──これ が 秀哉 です 」
珠美 が 、気軽に 、
「 オス 」
と 言って 、ポン と 雪 の 玉 を 秀哉 の 方 へ 投げた 。
秀 哉 は 、片手 で 器用に 受け止めた 。
「── あら 」
と 言った の は 、綾子 である 。
「あなた は ……」
「また 会う よ 、って 言った だ ろ 」
秀 哉 が 、微笑んだ 。
「秀哉 、この 先生 に 会った こと ある の ?
と 、園子 が 不思議 そうな 顔 で 訊く 。
「そんな 気 が する だけ かも ね 」
と 言って 、秀哉 は 、さっさと 山荘 の 方 へ 歩いて 行った 。
「秀 哉 !
ちゃんと ご 挨拶 ぐらい し なくちゃ ──」
と 、園子 が 追い かけて 行く 。
後 に 残った 夕里子 たち 、何となく 妙な 気分 で 、それ を 見送って いた が ……。
「お姉ちゃん 、知ってる の 、あの 子 ?
と 、夕里子 が 訊いた 。
「 うん 。
──あの 子 よ 。 オレンジ色 の タクシー に 乗る な 、って 言った の 」
「ええ ?
夕 里子 は 、目 を 丸く した 。
「何 だい 、それ は ?
訳 の 分 ら ない 国 友 に 、夕里子 は 、命拾い した いきさつ を 話して やった 。
「──へえ 、超能力 か 。
そんな 顔 してる よ 、あの 子 」
と 、国 友 は 言った 。
「 うん 。
ただ ね 、私 が 気 に なって いる の は 、別の こと な の 」
「と いう と ?
夕里子 は 、目 を 細め 、手 を かざして 、しばらく 雪 の 上 を 眺めて いた 。
「──じゃ 、行こう 」
と 、綾子 が 歩き 出す 。
「こちら は 家庭 教師 な んだ から 。 仕事 を し なくちゃ 」
「そう だ !
さっき 、クッキー 焼く 匂い が してた 。 食べよ っと 」
珠美 が 、身軽 に 走って 行く 。
「──行こう か 」
「 ええ 」
夕 里子 は 、山荘 の 方 へ と 歩き ながら 、「どうして 、昨日 、あの 子 は 東京 に いた の かしら ?
と 言った 。
「 え ?
「う うん 、何でもない 」
夕 里子 は 首 を 振った 。
そう 。
あの 子 が 東京 に いて も 、それ は 別に 構わない が 、しかし 、園子 は 、一言 も そんな こと は 言っていない 。
と する と 、秀哉 は 、父親 の 方 と 一緒 だった の だろう か ?
「──ねえ 、国友 さん 」
「何 だい ?
「ここ の ご主人 に 会った ?
「いや 、まだ だ 」
と 、首 を 振って 、「何だか 、昼間 は 寝てる こと が 多い ん だって さ 。
何やら 研究 して る らしい 」
「 へえ 。
── 学者 ? 「詳しく は 知ら ない けど 、あの 奥さん の 話 じゃ 、そんな こと だった よ 」
「 そう 」
夕里子 は 、それ きり 、何も 言わ なかった 。
もう 一 つ 、気 に なっている こと が あった のだ 。
でも ──それ は 、何だか 、あまりに 馬鹿らしい こと で …… 。
夕 里子 たち が 歩いて いる の は 、山荘 の 裏手 である 。
玄関 は この ちょうど 反対 側 。
裏庭 の ように なった この 場所 は 、今 、雪 に 埋もれて 、白 一色 だった 。
そこ に 、夕里子 たち の 足跡 が ……。
建物 へ 入る ところ で 、夕里子 が 、ふと 振り返った 。
「──どうした ん だ ?
と 、国 友 が 訊く 。
「う うん 。
別に ──」
上り口 で 、みんな 長靴 を 脱いで 、スリッパ に はき かえて いる 。
あの 少年 ──秀 哉 の 靴 も 、もちろん あった 。
夕里子 は 、国友 が 上って 行った 後 、一人 で かがみ込む と 、秀哉 の 長靴 を 手に 取り 、底 の 模様 を 見た 。
そして 、少し 雪 の 方 へ 戻って みる 。
「── やっぱり 」
と 、夕里子 は 呟いた 。
当然の こと だ が 、夕里子 たち 、みんな 、足跡 が 、出て行った とき と 戻った とき 、二通り 、雪 の 上 に 残っている 。
ただ ──秀 哉 の もの は 、戻った 足跡 しか ない のだ 。
ここ から 出て 行った 跡 が 、どこ に も ない 。
どういう こと だろう ?
いや 、大した こと じゃ ない の かも ……。
どこ か 、建物 の わき を 回って 出る 道 が ある の かも しれない 。
ただ ──何となく 、夕里子 に は 気 に なった のだった 。
「──お姉ちゃん 、何 してん の !
珠美 の 声 に 、夕里子 は 、
「今 行く わ よ !
と 返事 を して 、急いで 長靴 を 脱いだ 。