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三姉妹探偵団 3 珠美・初恋篇, 三姉妹探偵団 3 Chapter 03

三 姉妹 探偵 団 3 Chapter 03

3 危 い 出会い

「 せっかく 休み だって いう のに 」

と 、 珠美 が 欠 伸 を して から 、 グチった 。 「 これ じゃ 、 学校 に 行って る 方 が 楽だった 」

マンション で 、 珠美 は 一 人 のんびり 寝そべって TV を 見て いる ── つもりだった 。

しかし 、 いくら 「 無実 」 と は いえ 、 停学 処分 の 身 である 。

夕 里子 から 、

「 心配 かけ た分 、 ちゃんと 働いて よ !

と 言われて 、 仕方なく 、 掃除 、 洗濯 を して いる ところ である 。 もっとも 、 絶対 に タダ じゃ いやだ 、 と 言い張って 、 五百 円 払わ せる こと に 成功 した のだ が ……。

「 パート の 主婦 だって 、 時給 何 百 円 か 取る のに ね 」

と 、 掃除 機 を 動かし ながら 、 まだ ブツブツ 言って いる 。

「 大体 中学生 を 酷使 する なんて 、 法律 違反 よ 」

掃除 、 洗濯 ぐらい 、 普段 だって 、 適当に 交替 で やって いる のだ が 、 ただ で さえ 「 不当な 処分 を 受けた 」 と いう 精神 的 疲労 (!

) が ある のだ 。 加えて 労働 も 、 と いう の は ひどい 、 と いう の が 、 珠美 の 論法 だった 。

「 ああ くたびれた !

一仕事 終って 、 ソファ で 引っくり返って いる 。

ちょっと 他人 に は 見せられ ない 格好だった が 、 まあ 中学 三 年生 と いえば まだ 子供 で ……。 「 ん ?

玄関 で チャイム が 鳴る 。

── 誰 だろう ? 時間 は 午後 の 一 時 。 まだ 綾子 も 夕 里子 も 帰る はず が ない 。

セールスマン か 何 か か な 。

面白い から 、 ヒマ つぶし に 相手 して やって も いい んだ けど 。

「── はい 」

と 、 インタホン で 、「 どなた です か ?

「 現金 書留 です 。

印鑑 お 願い します 」 と 、 いやに 若い 男 の 声 だ 。 現金 ?

── この 言葉 に は 、 大いに 敏感に 反応 する 珠美 である 。

「 は いはい 」

と 返事 し ながら 、 もう 足 の 方 は 玄関 へ ──。

「 おっと 、 印鑑 ね 」

台所 の 引出し から 、 三 文 判 を 出して 、 玄関 へ と 急ぐ 。

「 はい 、 ご 苦労 さん 」

と 、 ドア を 開けて ……。

目の前 に 立って いた の は 、 どう 見て も 「 郵便 屋 さん 」 で は なかった 。

── 年齢 は せいぜい 十五 、 六 。 珠美 と 大して 変ら ない 少年 である 。

しかし 、 全然 見覚え は なかった 。

「 あんた 、 誰 ?

と 珠美 が 言った 。

返事 は 、 言葉 で は 来 なかった 。

代り に 、 白く 光る ナイフ が 、 ぐ いと 珠美 の 鼻先 に 突きつけられた のだった 。 「── な 、 何 よ !

まるで 安っぽい TV ドラマ だ わ 、 など と 呑気 な こと を 考え ながら 、 珠美 は 、 後 ず さって 、 玄関 の 上り口 に ドタッ と 座り込んで しまった 。 「 大声 出す な よ 」

と 、 その 少年 は 言った 。

「 出し たく たって 出 ない わ よ 」

「 上れ 」

少年 は 、 あまり 上等 と は 言え ない ジャンパー に 、 ジーパン と いう スタイル だった 。

珠美 は 、 もちろん 恐ろしい こと も ない で は なかった が 、 しかし 、 相手 が 大人 なら ともかく 、 同じ くらい の 年齢 で 、 それ に そう 大柄で も ない と 分 る と 、 少し 落ちついて 来た 。

恨ま れる 筋合 の もの で も ない し 、 お 金 が 欲しい なら 、 くれて やりゃ いい し ……。

いくら 珠美 が ケチ でも 、 ナイフ で 刺さ れる より は 、 お 金 を 奪られた 方 が いい と 判断 した のだ 。 もっとも 、 今 、 ここ に は 大して 現金 は 置いて い なかった のだ が 。

「── よし 、 座れ 」

少年 は 、 珠美 を リビング の ソファ に 座ら せる と 、 自分 は テーブル に 腰 を かけて 、 ナイフ を 珠美 の 目の前 で 弄んだ 。

「 何 よ 。

お 金 なら 、 台所 の 引出し に 財布 が ある わ 。 預金 通帳 は ある けど 、 印鑑 は お 姉ちゃん が 持って る から 引出せ ない よ 」

「 金 が ほしくて 来た んじゃ ねえ よ 」

と 、 少年 は 小 馬鹿に した ような 口調 で 言った 。

「 お前 、 佐々 本 珠美 だ な 」

珠美 は 、 ちょっと 目 を 見開いた 。

「 そう だ けど ……。

あんた 、 誰 よ ? 「 俺 は 有田 勇一 だ 」

と 、 少年 は 言った 。

有田 ?

── どこ か で 聞いた こと の ある 名前 だ な 、 と 珠美 は 思った 。 でも 、 良く 知っている 人 と か 、 そんな 名 で ない こと は 確かだ 。

「 分 る か ?

珠美 は 、 黙って 首 を 振った 。

── 有田 。 有田 。 誰 だったろう ?

「 俺 の お袋 は 、 三 日 前 に 殺さ れた んだ 」

有田 勇一 は 、 平坦な 口調 で 言った 。

「 ああ ……」

珠美 も 、 やっと 思い当った 。

「 思い出した わ 。 うち の 中学 で ──」

「 そう さ 」

と 、 有田 勇一 は 肯 いた 。

「 俺 が どうして ここ へ 来た か 、 分 る だろう な 」

「 私 に ?

── 分 んな いわ よ 」

「 そんな はず は ない と 思う けど な 」

ナイフ の 刃 が 、 珠美 の 顔 へ 接近 して 来た 。

「 お 金 」 なら ぬ 「 金物 」 で は 、 接近 して 来て も 、 あまり 嬉しく ない 。

「 ちょっと ── 危 い じゃ ない よ 」

さすが に 珠美 も ゾッと した 。

── こういう 役 は 夕 里子 姉ちゃん 向き な のに ! 私 は ちっとも 冒険 好きじゃ ない んだ から ね !

「 しゃべら ない と 、 顔 に 落ち ない 落書 して やる ぜ 」

「 しゃべるって ── 何 を よ ? 珠美 は 、 ソファ の 背 に 思い切り 体 を 押しつけて 、 後退 した が 、 せいぜい 数 センチ の こと で しか ない 。

「 お袋 を 殺した の は 誰 な んだ 」

これ に は 珠美 も 面食らった 。

「 知ら ない わ よ !

何で 私 が 知って る わけ ? 「 とぼける 気 か 。

── 本気じゃ ない と 思って んだ な 。 そっち が その つもり なら ……」

「 だって ── と ぼける も 何も ──」

「 俺 は 本気だ ぜ 。

分って ねえ らしい な 」 勇一 が 、 ぐ い と 乗り出して 来る 。 珠美 は 、 じっと 勇一 の 目 を 見返した 。

── 相手 が 本気 だって こと は 、 よく 分った 。 冷静 さ を 装って いた 顔 に も 、 今 は 赤味 が さして 、 目 は ギラギラ して いる 。

真剣な のだ 。

でも 、 そう 分った ところ で 、 珠美 と して は どうにも 返事 の しようがない 。 「 さあ 言えよ !

また 、 ぐ いと 勇一 が 前 へ 乗り出して 来る 。

「 あ ── 危 いよ 」

と 、 珠美 が 口ごもった 。

「 ああ 。

本当に 危 い ぜ 。 だけど な 、 お袋 は 殺さ れた んだ 。 お前 一 人 、 少々 けがさ せる ぐらい 、 何でもない んだ ぜ 」

早口 に なって いる 。

興奮 して いる のだ 。

「 危 いって ……」

「 言えよ 」

「 そう じゃ なくて ── 危 い ──」

勇一 が 、 さらに 身 を 乗り出して ── テーブル の 端に 、 腰 を かける 格好に なった 。

この テーブル 、 上板 は 分厚い ガラス で 、 ただ のせて ある だけ だった ……。

「 ワッ !

勇一 が 声 を 上げた 。

ガラス 板 が 、 ぐっと 持ち上り 、 当然 、 勇一 の 体重 が かかって いた 側 は ぐっと 下った 。

勇一 の 体 は もの の みごとに 床 へ 落下 して しまった 。

ドシン 、 と 尻もち を つく 、 その 上 に 、 一 回転 した ガラス 板 が ── ゴオン 、 と いう 音 と 共に 、 勇一 の 頭 を 直撃 した !

「 イテテ ……」

勇一 が 目 を 回し そうに なって 、 ガラス 板 を 押しのけよう と もがく 。

網 に かかった チンパンジー みたいである 。

珠美 の 方 は 、 ナイフ が 自分 の 足 の 、 ほんの 二 、 三 センチ の 所 を かすめて 、 ソファ を 切り裂いて いる の を 見て 、 ゾッと した まま 、 動け なかった 。

と ── 玄関 の チャイム が 、 また 鳴った 。

「 は 、 はい !

助かった !

珠美 は 、 ソファ から 飛び上る ように して 、 立ち上った 。

「 待て !

畜生 ! 勇一 が 、 やっとこ 、 重い ガラス 板 を 押しのけて 、 立ち上った とき に は 、 珠美 は もう 玄関 へ 駆けつけて いた 。

「── や あ 」

立って いた の は ── 国友 刑事 だった 。

「 国友 さん !

珠美 は 、 ちょっと 目 を 疑って しまった 。

だって ── こんな とき に 刑事 が 来て くれる なんて ……。 あんまり 話 が うま すぎる じゃ ない の 、 と 思った のだ 。

「 どう だい 、 停学 中 の 身 に ふさわしく 、 謹慎 して る かね ?

「 え ?

── ええ 、 まあ 」

「 まだ 姉さん たち 、 戻って ない んだ ろ ?

「 まだ です 。

── ええ 、 まだ 」

「 いや 、 実は 君 に 話したい こと が あって ね 。 今 、 一 人 ? 珠美 は 、 ちょっと の 間 、 ポカッ と して 立って いた ……。

「 ええ 。

── 一 人 よ 」

しばらく して から 、 珠美 は 言った 。

「 そう か 。

上って も いい か な 」

「 どうぞ 」

珠美 は 、 リビンク へ 国友 を 案内 した 。

テーブル は 、 元 の 通り に なって いた 、

「 お茶 、 淹 れる わ 。

コーヒー が いい ? 「 じゃ 、 インスタントで いい から 、 コーヒー に して もらおう か な 」

「 うん 、 分った 」 珠美 は 、 台所 へ 行った 。 幸い 、 お 湯 は さっき 沸かして ある 。

コーヒー を 作って 運んで 行く と 、 国友 は ソファ に 座って 、 新聞 を 広げて いる 。

「 いや 、 刑事 なんて 、 却って 忙しくて 新聞 を 見る 暇 が ない んだ よ 。

自分 が 担当 して る 事件 の 記事 読んで 、 へえ 、 ここ まで 進んで る の か 、 なんて こと だって ある んだ 。 ── や 、 悪い ね 」

国友 は 、 コーヒー を ゆっくり と 飲んで 、

「 実は ね 、 話って の は 、 例 の 、 三 日 前 に 起きた 殺人 事件 の こと な んだ 」 珠美 は 、 ちょっと ギクリと した 。 「 あの ── 教室 で 殺されて いたって いう ……」 「 うん 。 被害 者 は 有田 信子 と いって ね 。 あの 中学 の 生徒 の 母親 だった 」

「 うち の 中学 の ?

珠美 は 眉 を 寄せて 、「 有田 ……。

何 年生 の 子 かしら ? 「 本来 なら 、 君 と 同じ 三 年生 だ 」

「 どういう こと ?

と 、 珠美 は 訊 いた 。

「 息子 は 有田 勇一 と いう んだ 。

二 年生 の とき 、 よそ から 転校 して 来た んだ が 、 どうにも 不良で 手 が つけられ なかった らしい 。 ほとんど 学校 に も 来 ない 内 に 、 仲間内 の 喧嘩 で 、 相手 を 死な せ ち まった 」

珠美 も 、 そう 言われて みる と 、 何となく 、 そんな 事 が あった な 、 と 思った 。 しかし 、 名前 まで は 全 然憶 えて いない 。 「 結局 、 少年院 へ 送られて 、 それ から 、 今 は 施設 に 移されて いる 」 今 は ここ に いる わ よ 、 と 珠美 は 心 の 中 で 呟いた 。 「 犯人 は 、 分った の ? と 珠美 は 訊 いた 。

「 いや 、 まだ だ 」

国友 は 首 を 振った 。

「 目撃 者 も いない し 、 手がかり らしい もの も なくて ね 。 ── ただ 、 一 つ だけ ……」

「 何 か あった の ?

「 これ だ 」

国友 が 、 折りたたんだ 紙 を 出して 、 広げた 。

「 これ は コピー だ が ね 」

「 テスト の 問題 ね 。

── 先生 が 作った もと の 原稿 じゃ ない かしら 」

「 その コピー が 、 殺さ れた 有田 信子 の ハンドバッグ に 入って いた んだ 。

クシャクシャ に なって ね 」

「 これ は 、 その また コピーって わけ ? 「 その 通り 。

本物 は 証拠 品 だ から な 。 しかし 、 それ から も 指紋 なんか は 採れ なかった 」

「 私 の 鞄 に 入れて あった の と 同じ ような もん ね 」

と 、 珠美 は 、 その 問題 の コピー を 見 ながら 肯 いた 。

「 でも 中 は 違う わ 。 これ は 応用 問題 ばっかり だ けど 、 私 の 鞄 に 入れて あった の は 、 半分 は 計算 問題 だった 」

「 そう か 。

── いや 、 それ を 確かめ たかった んだ 」

「 じゃ ── 国友 さん 、 これ が 殺人 事件 と 関係 ある と 思って る わけ ?

「 それ は 何とも 言え ない 。

しかし 、 なぜ これ が 有田 信子 の バッグ に 入れて あった の か 、 そこ が 不思議だ 」

「 あ 、 そう ね 。

子供 は もう 中学 へ 来て ない わけだ し 」

「 そう な んだ 。

── どうも 妙だ よ 」

国友 は 首 を 振った 。

「 いやに クシャクシャ に して 入れて あった の も 気 に なる 。 自分 が 入れた ように 見え ない んだ 」

「 じゃ 、 犯人 が 何 か 目的 が あって ──」

「 だ と して も 、 なぜ 犯人 が 、 問題 の コピー を 持って いた の か 、 謎 だ けど ね 」

「 何 か ── 手がかり は ない の ?

と 言って から 、 珠美 は 、「 何だか 、 夕 里子 姉ちゃん の 探偵 ごっこ 好き が 伝染 した みたいだ 」

「 もう 君 ら を 危 い こと に 引 張り込む の は こりごりだ よ 」

と 、 国友 は 苦笑 した 。

「 大丈夫 。

夕 里子 姉ちゃん と 違って 、 私 、 お 金 に なら ない こと は やら ない もん 」

と 言って 、「── 別に 、 賞金 かかって ない んでしょ ?

「 残念 ながら ね 」

と 、 国友 は 笑った 。

「 でも ……」

珠美 は 、 ちょっと ためらって 、「 その ── 有田 勇一って 子 、 母親 を 亡くした わけ ね 」 「 うん 。 父親 が ずっと 前 に 家 を 出て しまった らしくて ね 。 それ が もと で ぐれた らしい んだ が 、 母親 の こと は 好きだった ようだ な 」

「 じゃ 、 ショック でしょう ね 」

「 母親 の 葬儀 の ため に 、 一旦 戻って 来て いる んだ が 、 ついて 来た 施設 の 所長 の 目 を 盗んで 姿 を くらまし ち まった らしい 。

そっち も 捜して る んだ よ 」

「 また 何 か やり そうだ から ?

「 いや ……」

国友 は 、 ちょっと 間 を 置いて 、 言った 。

「 その 所長 の 話 で は 、 その 勇一って 子 、 人 を 傷つけたり は し ない だろう と いう こと だった 」 「 じゃあ ……」 「 むしろ 、 自殺 する かも しれ ないって 、 そっち を 気 に して る ようだった よ 」 と 、 国友 は 言った 。 ── 国友 が 帰って 行く と 、 珠美 は リビング の コーヒー カップ を 台所 へ 運んで 洗った 。

それ から リビング に 戻る と 、

「 どこ に 隠れて る の よ 」

と 、 声 を かけた 。

「 出て 来たら ? もう 刑事 さん は 帰った わ 」

返事 は ない 。

珠美 は もう 一 度 、

「 ねえ 、 ちょっと 」

と 声 を 上げた 。

玄関 の 方 で ドア が 閉る 音 が した 。

行って みる と 、 上り口 の 所 に 、 新聞 の 折り込み 広告 が 一 枚 、 裏 の 白い 所 に 、〈 ありがとう 〉 と 、 ボールペン の 走り書き が あった 。

珠美 は 、 ちょっと 肩 を すくめた 。

どうして 国友 に 、 あの 勇一 の こと を 言わ なかった んだろう ? ── 珠美 自身 、 よく 分 ら なかった のだ 。

その 広告 の チラシ を 拾い上げて 、

「 キザ な 奴 」

と 、 珠美 は 呟いた 。

「 クビ に ?

夕 里子 は 、 フライドポテト を つまむ 手 を 止めて 、 国友 の 顔 を 見た 。

「 国友 さん 、 何 か やった んです か ?

と 、 愉快 そうに 訊 いた の は 、 夕 里子 の 親友 で 、 前 に 事件 の とき 、 国友 と も 顔見知り に なった 片瀬 敦子 である 。

二 人 と も 、 下校 途中 の 制服 姿 、 ハンバーガー の 店 で 、 ちょっと 息抜き して いる ところ に 、 国友 が 姿 を 見せた のだった 。

お嬢さん タイプ で 美人 の 敦子 、 可愛くて ちょっと 小生 意気 ながら 憎め ない ( と は 本人 の 言 だ が ) 夕 里子 。

── いい 取り合せ の 二 人 である 。

「 やった 、って ほど の こと は ない けど ね 」 と 国友 は 言った 。 「 じゃ 、 どうして クビ だ なんて ──」

と 、 夕 里子 は 心配 そうだ 。

「 未 成年 の 女の子 に 手出し たん でしょ 」

と 敦子 が 言う と 、 夕 里子 が プーッ と ふくれて 、

「 敦子ったら 、 冗談 に も 程度って もん が ある わ よ ! 「 は いはい 。

お ー 、 こわい 」

「 いや 、 実は そう な んだ 」

と 国友 が 言った ので 、 夕 里子 の 顔色 が 変った 。

「 国友 さん 、 まさか ──」

「 しかし ね 、 手 を 出した 、 と いって も 、 文字通り ── 手 が 出て 、 ひっぱたい ち まったん だ 」 夕 里子 が 目 を 丸く した 。 国友 が 、 殺人 現場 の 中学校 で 、 杉下 ルミ と いう 娘 を 、 つい ひっぱたいて しまった こと を 話す と 、 夕 里子 は ホッと 息 を ついて 、 「 何 だ 。 国友 さん が 、 てっきり 何 か いやらしい こと を した の か と 思った 」

「 よせ やい 」

と 国友 は 苦笑 した 。

「── しかし 、 あの 父親 、 かなり 大物 らしい から な 。 当然 、 上 の 方 に は 抗議 が 来て る と 思う ね 。 たぶん 、 三崎 さん が ストップ して くれて る んだ と 思う けど 」

「 苦労 する わ ね 。

私 だって 、 珠美 を いい加減 もて余す くらい だ もの 」

と 夕 里子 が 言う と 、

「 そう だ 、 珠美 君 と いえば ──」

国友 が 、 そう 言い かけて 、 ためらった 。

「 珠美 が どうかした ?

夕 里子 が 不思議 そうに 訊 く 。

「 いや ── 別に 大した こと じゃ ない 」

国友 は 、 ちょっと 咳払い を した 。

「 さっき 、 マンション へ 寄って 、 珠美 君 と 会って 来た んだ よ 」

「 まあ 、 どうして ?

「 うん 、 実は ね ……」

国友 が 、 殺さ れた 有田 信子 の バッグ に 入って いた 、 試験 問題 の コピー の 話 を する と 、 夕 里子 は 眉 を ひそめた 。

「 じゃ 、 それ が 殺人 の 動機 に なったって いう の ? 「 いや 、 そこ は まだ 分 ら ない 。

ただ 、 有田 信子 の 子供 は 、 退学 処分 に なって る わけだ から ね 。 テスト の 問題 を 知ったって 、 意味 ない はずな んだ が 」 「 じゃ 、 コピー を バッグ に 入れた の が 犯人 だった と して …… 目的 は 何 だった の かしら ? 「 今 の ところ は 見当 も つか ない よ 」

「 珠美 の 鞄 に も コピー が 入って いた 。

── どうも 、 問題 を 事前 に コピー して 誰 か に 売りつける 人間 が いる みたい ね 。 意外に 組織 的に やって る の かも しれ ない わ 。 だって 、 問題 の コピー なんて 、 そう 簡単に 取れ ない でしょ 」

「 その辺 、 担当 の 教師 に 当って みよう と 思って る んだ が ね 」

「 コピー を 取った こと が 先生 に 知れちゃったら 、 何にも なら ない わけ ね 。 他の 問題 に 変えれば いい んだ から 。 ── たとえば 、 学校 の コピー の 機械 を 使える 人間 と か を 当って みたら どう かしら ? 夕 里子 が しゃべって いる と 、 傍 で 敦子 が クスクス 笑い 出した 。

「── 何 よ 、 敦子 ? 「 だって 、 そういう 話 、 して る とき の 夕 里子って 本当に 楽し そう なんだ もん 。 授業 中 と は 目 の 輝き が 違う わ ね ! 「 人 を からかって !

と 、 夕 里子 が むくれる 。

国友 は 笑い 出して しまった 。

「 いや 、 夕 里子 君 の 推理 は 大いに 参考 に なって あり がたい けど ね 、 願 わく は 、 また 物騒な こと に 首 を 突っ込ま ない ように して ほしい もん だ な 」

「 あら 、 いつ 私 が 首 を 突っ込んだ ?

と 、 夕 里子 は 澄まして 訊 き 返した 。

── 敦子 が 本 を 買って 行く と いう ので 、 店 の 前 で 別れ 、 夕 里子 と 国友 は ぶらぶら 歩き 出した 。

風 が 大分 冷たい が 、 よく 晴れて いた 。

「 国友 さん 。

さっき 、 珠美 の こと で 、 何 か 言い かけた でしょ 」

と 、 歩き ながら 夕 里子 が 言った 。

「 君 の 目 は ごまかせ ない な 。

── 実は 、 そう だ 」

「 何 な の ?

また 珠美 が 無理な 頼み ごと でも した の かしら ? 「 いや 、 そんな こと じゃ ない よ 」

と 、 国友 は 首 を 振った 。

「 じゃあ ……」

「 さっき マンション に 行った とき に ね 、 気 が 付いた んだ 」

「 何 に ?

「 玄関 に 男の子 の 靴 が あった 」

「 男の子 の ?

夕 里子 は 、 面食らった 。

「── 父 の 、 じゃ ない の ? 「 いや 、 若い 子 のだ よ 。

たぶん 、 あれ は 珠美 君 と せいぜい 同じ くらい の 年齢 の 男の子 だろう な 」

「 へえ 」

夕 里子 に は 一向に ピンと 来 ない 。

「 珠美 に ボーイフレンド が いる なんて 、 初耳 だ わ 。 いつも お 金 が 恋人 だって 言って る のに 」

「 まあ 、 もう 珠美 君 も 十五 歳 だ から ね 。

ボーイフレンド の 一 人 や 二 人 いて も おかしく ない けど ……」

「 で 、 会った の 、 その 男の子 に ?

「 いや 。

どこ か に 隠れて た んじゃ ない か な 。 出て 来 なかった よ 」

「 へえ 。

── 珠美 らしく ない な 。 私 に も 、 そんな こと 一言 も 言わ ない し ……」

「 そう だ ねえ 。

ま 、 あんまり 色々 問い詰めて も 、 却って 良く ない かも しれ ない けど 、 まあ 万一 あれ する と なんだ から ……」

夕 里子 は 国友 を 見る と 、

「 何 よ 。

奥歯 に もの の はさまった ような 言い 方 して 。 ── 何 な の 、 一体 ? 「 うん ……。

まあ 、 もちろん その ── 断定 は でき ない と 思う んだ けど ──」

「 何 を ?

「 いや 、 実は ね 、 珠美 君 が 出て 来た とき の 様子 が 変だった から さ 」

と 、 国友 は 息 を ついて 、 言った 。

「 どんな 風 に ?

「 うん 。

── 何だか こう 、 ポカン と して 、 上の空って 感じ で ね 。 あわてて る んだ 、 いやに 」

「 あわてて ?

「 走って 来た みたいに ハアハア いって て ね 。

それ に ソファ が 何だか 少し 曲って て 、 少し 破れた ところ が あったり して ──」

「 ちょっと 待って よ 」

夕 里子 は 足 を 止めた 。

「 それ は つまり …… 珠美 が 、 その 男の子 と ……」

「 いや 、 まさか 、 と は 思う けど ね 。

今 は 中学生 ぐらい でも 、 妊娠 した と か いう の も 珍しく ない みたいだ し ── いや 、 珠美 君 が そう だ と 言って る わけじゃ ない よ ! 国友 は あわてて そう 言った 。

しかし 、 夕 里子 に とって は 大 ショック である 。

「 珠美 が ── 男の子 と 。

驚いた わ ! 「 まあ 、 僕 の 考え違いって こと も ない じゃ ない から ……」 「 ありがとう 、 気 を つかって くれて 」 夕 里子 は 、 キュッ と 表情 を 引き締める と 、 「 買物 して 帰る から 、 ここ で 」 「 そう ? じゃ 、 気 を 付けて 」

「 事件 の こと 、 何 か 分ったら 教えて ね 」 夕 里子 は 、 ちょっと 無理 を して 笑顔 を 見せる と 、 急ぎ足 で 歩いて 行って しまった 。 国友 は 、 息 を ついた 。

「 言わ ない 方 が 良かった か なあ ……」

もちろん 、 まさか と は 思った のだ 。

しかし 、 国友 から 、 そんな こと を 訊 くわけ に も いか ない ……。

さて 、 これ から 、 また あの 中学 へ 行って みる か 、 と 国友 が 歩き かける と 、

「 刑事 さん 」

と 呼ぶ 声 が した 。

振り向いて 、 一瞬 、 誰 だった か な と 考えた 。

それ から 、 ちょっと 青く なった 。

「 こんにちは 」 と 、 歩いて 来た の は ── 国友 が ひっぱたいた 生意気な 少女 、 杉下 ルミ だった のだ 。

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