三 姉妹 探偵 団 01chapter05(2)
「──夕 里子 」
「 うん ?
「ずっと 友だち で いて ね 」
「何 言って ん の 。
当り前 じゃ ない 」
夕里子 は 、敦子 の 、そう 言い たい 気持 が 良く 分った 。
「── ママ !
家 の 手前 に 来て 、敦子 は 足 を 止めた 。
敦子 の 母 が 、小さな バッグ を 手 に 、家 から 出て 来た のだ 。
「どこ に 行く の ?
「 敦子 ……。
ごめんなさい 。 ママ 、出て 行か なくちゃ ならない から 」
「いや よ !
どうして ──」
「ともかく 、しばらく は ……。
夕里子 さん 、すみません けど 、後 は お 願い し ます 。 あなた は しっかり して らっしゃる から 」
夕 里子 は 、何とも 言え なかった 。
「どこ に 行く の ?
「 さあ ……。
お 友だち の 所 に でも 行って みる わ 」
敦子 の 母 は 寂しく 笑った 。
「じゃ 、連絡 する から 」
と 、歩き 出す 。
「 ママ !
待って よ 。 パパ と 話し合って ──」
「もう いい の よ 。
自分 で やった こと の 始末 は つけ なきゃ ね 」
と 、敦子 の 母 は 言って 、そのまま 足早に 歩いて 行った 。
敦子 は 家 の 中 へ 駆け込んで 行った 。
夕 里子 も 急いで 後 を 追って 中 へ 入った 。
「 パパ !
ママ が 行っちゃ う よ ! と 敦子 が 言った 。
「紀子 が そう 決めた んだ 。
行か せて やれ 」
と 、片瀬 が 言った 。
夕里子 は 、初めて 、敦子 の 母親 の 名前 を 聞いた 。
電話 が 鳴って 、夕里子 が 出た 。
「はい 、片瀬 です 」
「佐々本 夕里子 さん は い ます か ?
「私 です 」
「あ 、珠美 さん が 学校 で けがし まして ね 」
「 けが ?
夕 里子 は 青く なった 。
珠美 が 、目 の 周り を 青く して 、唇 から 血 を 流し 、頰 が はれ上って 、お化 みたいな 顔 で 座っていた のだ 。
「 お 姉ちゃん ……」
珠美 が ニヤッ と 笑って 、夕里子 は ゾッと した 。
「 あんた !
── 大丈夫 ? 「不良 に 殴られた んだ よ 」
と 、珠美 を 助けた 事務室 の 男性 が 言った 。
「 お腹 も 殴られてる し 、 ひざ も すりむいてる し ……。 でも 、骨 は 大丈夫 らしい けど ね 。 一応 、レントゲン 撮って もらった 方が いい と 思う よ 」
「すみません 、どうも 」
と 、夕里子 は 頭 を 下げた 。
「──一体 どうして 殴られた の ? 「この ……お 金 」
と 、珠美 は 鞄 を 叩いて 、「よこせ 、って 」
「知って た の ?
「 らしい 。
どうして か 分 ん ない けど 」
「で 、お金 は ?
珠美 が 、誇らしげに 、
「やら なかった !
と 言った 。
「あんた 、馬鹿 ねえ 。
治療 費 の 方が 、よっぽど かかる じゃない の 」
「でも ね 、一 度 やったら 、これ から だって 狙われる もん 。
──先々 の 被害 まで 考えたら 、この 方 が 得だ よ 」
夕里子 は 、呆れて 珠美 の 顔 を 眺めて いた 。
それ から 、思い切った 様子 で 、十 円 玉 を 投入 口 へ 三 枚 落とす と 、プッシュホン の ボタン を 押した 。
腕時計 を 見た 。 夜 の 十一 時 を 少し 過ぎて いた 。
受話器 を 持つ 手 は 、小刻みに 震えて いた 。
──向う の 受話器 が 上った 。
「 もしもし 」
男 の 声 が した 。
「私 です 」
と 、片瀬 紀子 は 言った 。
「 どなた ?
「片瀬 紀子 です 。
お 忘れ で は ない でしょう ね 」
やや 間 が あって 、当惑 げ な 声 が 、
「どちら へ お かけ です か ?
こちら は ──」
「とぼけ ないで 下さい 。
私 が あなた に 気付いて ない と お 思い なんでしょう 。 でも あなた は 、あの とき 、落として 行った もの が ある んです 。 私 、それ を 拾い ました 。 その とき は 、何だか よく 分らなかった けど 、後で 、たまたま 同じ 物 を 見る 機会 が あったんです 。 その とき に 気 が 付きました ! 「何の お 話 か 分りません ね 」
「お 気付き で ない はず は ない と 思い ます けども 。
──あなた は 悪魔 の ような 方 だ わ 。 私 の 家庭 を めちゃくちゃに して 」
しばらく 、沈黙 が あった 。
「──聞いて いらっしゃる んです か ?
と 、紀子 は 言った 。
「どっち で も いい わ 。 ともかく 、私 は 、あなた の 首 を 絞める ロープ を 握ってる んです よ 」
荒い 息遣い が 、伝わって 来た 。
「そんな こと が できる と 思ってる の かい 、奥さん 」
あの 声 に なって いた 。
紀子 の 口元 に 、勝ち誇った 笑み が 浮んだ 。
「でき なくて どう する の ?
と 、紀子 は 言った 。
「あなた は 総て を 失う わ 。 私 は もう 失って しまった 。 何も 怖い もの は ない わ 」
「 そうかい 」
「覚悟 して 待って いる こと ね 。
それとも 、自殺 する 方 が 、まだ 救わ れ る かも しれない けども 」
紀子 は 一 つ 息 を ついた 。
「それ じゃ 、私 は これ から 警察 へ 行って ──」
「待て よ 」
「何 か ?
「家族 が どう なって も いい の か 」
「どういう 意味 ?
「教えて やろう 」
男 の 声 は 、笑い を 含んで いた 。
「俺 は な 、あの 女 も 殺した んだ 」
「あの 女 ?
「 そう 。
佐々 本 の 奴 の 家 で 見付かった 女 さ 」
「あなた が ?
紀子 は 目 を 見開いた 。
「そう とも 。
死体 を 押入れ に 放り込んで 、火 を つけて やった 。 娘 っ子 共 は 生きのび やがった が 」
「何て ひどい こと を ……」
紀子 は 青ざめた 。
「お前 の 亭主 や 娘 が そう なって も いい の かい 」
「何で すって ?
「お前 が 警察 へ 行く の は 勝手 だ 。
俺 に は 止め られ ない 。 お前 が どこ から 電話 を かけてる かも 分らねえ んだ から な 。 だが 、俺 も そう なりゃ 、やけ だ 。 その 間 に 、お前 の 家族 を 皆殺し に して 火 を つけて やる 」
「そんな こと が ──」
「でき ねえ と 思う の か ?
俺 は そういう 男 だ 。 死刑 に なる なら 一人 も 三人 も 同じだ から な 」
紀子 の 額 に 汗 が 浮いた 。
唇 を なめて 、
「はったり よ 。
すぐに 警官 が 行く わ 」
「何分 か は かかる 。
俺 が お前 の 家 へ 行く 方 が 早い ぜ 」
紀子 は 唇 を かんだ 。
「──どう する 、奥さん ?
「できっこない わ !
電話 が 切れた 。
紀子 は 一瞬 ためらった が 、すぐに 受話器 を 戻し 、もう 一 度 取り上げた 。
十 円 玉 を 入れる 。
敦子 が 、受話器 を 上げた 。
「片瀬 です 。
── もしもし ? 誰 も 出 ない 。
「 もしもし ? ──どなた です か ? 向 うに 誰 か が いる こと は 分 る 。
だが 、何も しゃべろう と し ない のだ 。
片瀬 が 、顔 を 出した 。
「──おい 、誰 だ ?
「分 ん ない 。
何も 言わ ない の 」
「貸して みろ 。
── もしもし ! ──誰 だ ね ? 紀子 は 、お 話し中 の 信号音 を 聞いて 、しまった 、と 思った 。
すぐに 切って 、もう 一 度 かけ 直す 。 やはり お 話し 中 である 。
紀子 は 、電話 ボックス を 飛び出して 、走った 。