三 姉妹 探偵 団 01chapter03(2)
「佐々本 じゃ 気 が 付く 人 が いる かも しれない から 、佐々木 って 名 に しといた から ね 」
そんな こと 言わ れた って ……。
大体 、いつも ボンヤリ している のが 綾子 の いい ところ (? )なんだ から 、まさか スパイ じゃ ある まい し 、そうそう 神経 を 張りつめちゃ いらん ない もの ね ……。
え ?
── と いう こと は 、 私 が 〈 佐々木 〉 なんだ 。
「は 、はい !
たっぷり 三十 秒 も たって から 返事 を した 。
声 を かけて くれた 女性 は クスクス 笑って 、
「ずいぶん 熱心に 働く の ね 。
うち の バイト 料 なら 午前 中 で 充分 って 感じ よ 。 もっと 気楽に や ん なさい よ 」
「 すみません 」
「謝る こと ない けど 。
──お 昼 、食べ に 行きましょう よ 」
「 はい 」
言わ れて 、綾子 も 急に お腹 が 空いて 来た 。
「私 、神田 初江 って いう の 。
よろしく ね 」
「 佐々 ──」
本 、と 言いかけて 、あわてて 「佐々木 綾子 です 」
エレベーター で 一 階 へ 降りる と 、近く の スパゲッティ の 店 に 入る 。
幸い スパゲッティ なら 綾子 も 好物 であった 。
「 大学生 ?
いい わ ね 。 私 も 大学 時代 は 楽しかった 」
神田 初江 は 、まだ 二十四 、五 に 見え 、そう 昔 の こと で も なさそうな のだが 、何となく 、懐しげ な 口調 であった 。
「──仕事 、どう ?
「何だか よく 分りません 」
綾子 は 正直に 答えた 。
「でも コピー の 機械 って 面白い です 」
「最初の 一 日 だけ よ 、明日 から は もう 退屈で 死に そうに なる わ 」
「そんな もん でしょう か 」
「 そう 。
でも ね 、コピー 室 って の は 結構 面白い の よ 。 みんな 入れかわり立ちかわり やって 来る でしょ 。 そして 上役 の人 は まず めったに 来ない わけ 。 だから 、いくら でも 悪口 言える し 、噂 話 も できる し ね 」
綾子 に も 何となく 分った 。
神田 初江 は 続けて 、
「そんな こと でも し なきゃ 、やって らんない わ よ 、あんな 所 。
大体 男 に ろくな の が い ない でしょ 」
「は あ 」
「だ から 新しい 子 来て も 、すぐ やめて っちゃう わけ 。
無理 ない の よ ね 」
「あの ──神田 さん は 、ご 結婚 なさってる んです か ?
「売約 済 って とこ ね 」
「は あ ……」
「大学 の とき から の 恋人 で ね 、ずっと 前 に 初 体験 は 済ませて んだ けど 、彼 の 方 が 転勤 で 二 年間 名古屋 なの 。
私 、東京 離れ ん の いやだ し ね 。 二 年間 待つ こと に したって わけ 」
「は あ 」
「週末 ごと に 帰って来る わ 。
他の 男 に 盗られる んじゃないか って 気 が 気じゃない の よね 」
と 笑い ながら 、「でも 、こっち も 適当に やって る けど 」
「適当 に ……」
「月曜 から 金曜 まで 放っとかれちゃ 寂しい じゃない 。
だから ディスコ で 知り合った 男の子 と 時々 ホテル に 行ってる の 」
「は あ ……」
綾子 は 、ただただ 啞然 と する ばかり だった 。
「そんな こと と は 知らないで 。
彼 も 哀れな もん よ ね 」
「は あ 」
「あなた 、もう 体験 済 ?
「は あ 。
──いえ 、全然 ! 綾子 は あわてて 首 を 振った 。
「そう でしょう ね 。
おぼこい もの 。 ──でも 、中年 の 男 に は 気 を 付け なさい 。 この 間 ね 、うち に いた 水口 さん って 女性 が 殺さ れた の よ 」
綾子 は 、やっと 、何の ため に 名前 を 偽って アルバイト に 来て いた の か を 思い出した 。
水口 淳子 の こと を 聞き出す のだった !
忘れて いて も 相手 が 話して くれる 。
こいつ は ツイ てる 、と 思った 。
「あ ──新聞 で 見 ました 」
「 でしょ ?
中年 男 って 怖い の よ 。 誘う の だけ は 巧く て さ 。 でも 、いざ 妊娠 って なる と 僕 には 妻子 が ある 、とか 言っちゃ って 。 まあ 若い の に 比べる と 遊び の コツ は よく 心得てる から ね 。 面白い けど さ 、のめり込ま ない ように しない と 」
綾子 として も 、多少 は 話 を 進める べく 努力 し なくては 、という 気 に なった 。
「でも ……犯人 は 奥さん いない 人 だった んでしょう ?
「それ な の よ 」
と 、神田 初江 は ぐいと 身 を 乗り出して 来た 。
「私 ね 、水口 さん と 親しかった の 。 よく 一緒に お酒 飲んだり して ね 。 そんな とき に 、彼女 色々 言う わけ 。 ──で 、はっきり 言った の よ 。 『向う は 奥さん が いる し ね 』って 」
綾子 も さすが に 胸 が ときめいた 。
いくら のんびり 屋 でも 、 その 意味 は 分 る 。
「それ を どうして 警察 に 言わ なかった んです か ?
「訊 かれ ない もん 」
と 、神田 初江 は 肩 を すくめて 、「訊かれ も しない のに 、こっち から 言う こと ない じゃない ?
大体 警察 なんて 、関り 合う の ごめん よ 。 ねえ ? 「そ 、そう です ね 」
「それ に 、彼女 が そう 言った の 、もう 大分 前 だった から ね 。
もしかすると 、他の 男 の こと だった の かも しれない し …… 。 ねえ 、何か 甘い もの どう ? チョコレートパフェ なんか 」
「え 、ええ 」
「チョコパフェ 二 つ !
神田 初江 は 声 を 張り上げて から 、「──他 に も いた の よ 。
中年 男性 と もめた の が 。 三 年 前 に 辞めた 人 なんだ けど さ 、うち の 社内 の 課長 と できちゃって ね ── 」
話 は 水口 淳 子 から 離れて 行った 。
いじめ られて 山手 線 に 飛び込み 自殺 と か 」
「山手 線 なんか 使わ ない じゃ ない の 」
「 すぐ めげちゃ う じゃない 、 綾子 姉ちゃん は 」
──昨日 、あれこれ と 打ち合わせ を した 喫茶店 。
そろそろ 六 時 で 、綾子 が 順調に 五 時 まで 働いて 帰れば 、もう 着いて いい 時間 だった 。
「いくら 何でも 大学生 よ 。
大丈夫 でしょ 」
と 言った ものの 、夕里子 とて 心配で ない わけで は ない 。
綾子 が 、あの まま 受付 で 回れ 右 して 帰っちゃった んじゃないか 、と 心配であった 。
「──あ 、来た !
と 、珠美 が 言った 。
「ごめん 、遅く なって !
と 、綾子 は 言った 。
「どうした の ?
「これ 、おみやげ 」
と 、ケーキ の 箱 を 置く 。
「 いくら ?
会計 に 断って くん なきゃ 」
「あら 、バイト 料 で 買った の よ 」
と 、綾子 は 、バッグ から 、封筒 を 取り出し 、
「これ 、残り ね 。
珠美 の 方 で 管理 して ちょうだい 」
夕 里子 と 珠美 は 、少々 呆気 に 取られて いた 。
いやに 活き活きして 、元気 が いい で は ない か 。
「お姉さん ……大丈夫 だった の ?
と 、夕里子 は 訊いた 。
「何 が ?
「お 仕事 、できた ?
「当り前 よ 。
結構 楽しい もん ね 、 OL 業 って 。 それ に さ 、ちゃんと 話 を 聞いて 来ちゃった 」
「 話 ?
「パパ の こと 。
水口 淳子 は ね 、仲 の 良かった 同僚 に 、付き合ってる 相手 は 奥さん が いる って 話してた そう よ 」
夕 里子 と 珠美 は 顔 を 見合わせ 、それ から まじまじ と 綾子 を 眺めた 。
「ねえ ……あなた 、本当に お姉さん ?
と 夕 里子 は 言った 。