八つ 化け ずきん
むかし むかし 、 ある ところ に 、 いたずら者 の 和尚 ( おしょう ) さん が いました 。
ある 日 、和尚 さん が 村 はずれ の 道 を 歩いている と 、道 はずれ の やぶ の 中 で 一 匹 の キツネ が 古びた 手ぬぐい を 前 にして 、化け方 の 練習 を している のです 。
「これ は 、おもしろい 」
和尚 さん が のぞいて いる と も 知らず 、キツネ は 手ぬぐい を 頭 に 乗せ 、クルリンパ ! と 若い 娘 に なりました 。
「ははーん 、あの 手ぬぐい が 化け道具 な ん じゃ な 。
何とか だまくらかして 、ちょうだいする か 」
和尚 さん は 、わざと 知らん顔 で 歩き出しました 。
すると キツネ が 化けた 娘 が 、しゃなりしゃなり と やってきます 。
和尚 さん は 、キツネ が 化けた 娘 に 向かって 言いました 。
「これ は 、美しい 姉 さま じゃ のう 。
だが 、化け方 が なっとらん 。
上 の 方 は よい が 、足元 が まだまだ だ な 」
正体 を 見破られた キツネ は 、ビックリして 元 の 姿 に 戻りました 。
「 どこ の 和尚 さま か ぞんじ ませ ぬ が 、 わたし の 化け 方 は そんなに 駄目 です か ? 」
「駄目 、駄目 。 まだまだ 未熟 じゃ 。 そこ へ いく と 、この わし は どう だ ? キツネ に は 見え ん だろう ? 」
「えっ ? キツネ なんですか ? わたし は てっきり 、本物 の 和尚 さま か と 思いました 」
「そう じゃ ろう 。 何しろ わし の 化け 道具 は 、 有名な 『 八 つ 化け 頭巾 ( ずきん )』 だ から な 」
そう 言って 和尚さん は 、かぶっていた 頭巾 を 見せびらかしました 。
もちろん 、この 頭巾 は 普通 の 頭巾 です 。
でも 、和尚 さん の 言葉 を 信じた キツネ は 、うらやまし そうに 言いました 。
「へえ 、これ が あの 八つ 化け 頭巾 か 。 ・・・いい な 」
「どう だ 、何なら お前 の 手ぬぐい と 、取りかえて やろう か ? 」
「ほっ 、本当 です か ! それ は もう 、是非 とも 」
こうして 和尚 さん は 、キツネ の 化け 手ぬぐい を 手 に 入れた のです 。
「よし よし 、うまく いった ぞ 」
和尚 さん が 寺 へ 帰る と 、寺 から 寺 へ と 見回り 役 を つとめる 僧正 (そうじょう →一番 偉い お 坊さん )さま が 、お 供 の 小坊主 を 連れて やって来ました 。
二 人 を 迎えた 和尚 さん は 、こんな 事 を 言いました 。
「お 務め 、ご 苦労さま です 。 この 廊下 の 先 に 二つ の 部屋 が ございます から 、どちら でも お気にめす 部屋 で お休みくださりませ 。 わし は 、お 茶 の 仕度 を して まいります 」
「ほう 、それ は ありがたい 」
僧正 さま は そう 言う と 、廊下 の 先 の 片方 の 部屋 の ふすま を 開けました 。
すると そこ に は 、若くて きれいな 娘 が ニッコリ 笑って 座って いました 。
僧正 さま は 、顔 を まっ赤 に し ながら 、
「ああ 、いや 、わし は おなご に は 興味 は ない んじゃ よ 」
小坊主 の 手前 、僧正 さま は そう 言って ふすま を 閉める と 、もう 片方 の 部屋 の ふすま を 開けました 。
すると そこ に は 、ありがたい 仏像 が まつって ありました 。
「おお 、これ こそ が 、わし に ふさわしい 。 なん まい だ 、なん まい だ 」
僧正 さま は 、まじめ な 顔 して お経 を 唱えた ものの 、やはり さっき の きれい な 娘 が 気 に かかります 。
その うち に 小坊主 が いねむり を 始めた ので 、僧正 さま は こっそり と 隣 の 部屋 へ 行って みました 。
すると 娘 が ニッコリ して 、
「まあ 、お 坊さま 、お 酒 を 一杯 。 さ さ 、えんりょなさらずに 」
と 、上等 の 酒 を ついで きました 。
憎正 さま は 、たらふく 飲んで 上機嫌 です 。
そして 下心 を 出して 、娘 の 肩 に 手 を 置こう と した その 時 、娘 が 突然 、カッ ! と 目 を 見開いて 、 不動 明 王 ( ふどう みょう おう ) さま に なった の です 。
「この 生臭 坊主 め ! 仏 に 仕える 身 で あり ながら 、酒 を 飲んだ 上に おなご に 手 を 出した な ! 」
「ひゃあ 、お 許し ください ませ ! 」
僧正 さま は 、裸足 の まま 外 へ と 逃げ出して しまいました 。
実 は 、娘 も 仏像 も 不動明王 も 、みんな 和尚さん の いたずら だった のです 。
おしまい