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家 に 帰る と 白羽 さん が 私 を 待ち構えて いた 。 ・・
いつも なら 、明日 の 勤務 に 向けて 、餌 を 食べて 睡眠 を とって 、自分 の 肉体 を 整える ところ だ 。 働いて いない 時間 も 、私 の 身体 は コンビニ の もの だった 。 そこ から 解放 されて 、どう すれば いい の か わから なく なって いた 。 ・・
白羽 さん は 部屋 で 、意気揚々 と ネット で 求人 の チェック を している 。 テーブル の 上 に は 履歴書 が 散らばっていた 。 ・・
「年 齢 制限 が ある 仕事 が 多い んです けど ね 、うまく 探せば 全然 ないって わけで もない ! 僕 は ね 、求人 なんて 見る の 大嫌い だった んです けど 、自分 が 働く わけじゃない って いう と 、面白くて 仕方ない もの なんです ね ! 」 ・・
私 は 気 が 重かった 。 時計 を 見る と 、夜 の 7時だった 。 いつも は 、仕事 を して いない とき でも 、私 の 身体 は コンビニエンスストア と 繋がって いた 。 今 は 夕方 の パック 飲料 の 補充 の 時間 、今 は 夜 の 雑貨 が 届いて 夜勤 が 検品 を 始めた 時間 、今 は 床 清掃 の 時間 、いつも 、時計 を 見れば 店 の 光景 が 浮かんで いた 。 ・・
今 は ちょうど 、夕勤 の 沢口さん が 来週 の 新商品 の POPを 書いて 、牧村くん が カップラーメン の 補充 を している 時間 だろう 。 それなのに 、自分 は もう その 時間 の 流れ から 取り残されて しまった のだ と 思った 。 ・・
部屋 の 中 に は 白羽 さん の 声 や 冷蔵庫 の 音 、様々な 音 が 浮かんでいる のに 、私 の 耳 は 静寂 しか 聴いて なかった 。 私 を 満たして いた コンビニ の 音 が 、身体 から 消えて いた 。 私 は 世界 から 切断 されて いた 。 ・・
「やっぱり コンビニ バイト じゃ 僕 を 養う に は 不安定 だ から なあ 。 無職 と バイト だ と 、無職 の 僕 の 方 が 責められちゃう し 。 縄文 時代 から 抜け出せない 連中 は 、すぐに 男 に 文句 を 言う ん だ 。 でも 古倉 さん さえ 定職 に つけば 、僕 は そういう 被害 を もう 受けなくて 済みます し 、古倉 さん の ため に も なる し 、一石 二鳥 です よ ね ! 」・・
「あの 、今日 は 食欲 が ない んで 、白羽 さん 、何か 勝手に 食べて いて くれませんか 」・・
「ええ ? まあ 、いい です けど 」・・
自分 で 買い に いく の が 億劫 な の か 、白羽 さん は 少し 不満 げ だった が 、千 円 札 を 渡す と 静かに なった 。 ・・
その 夜 、私 は 布団 に 入って も 眠る こと が できず 、起き上がって 部屋着 の まま ベランダ に 出た 。 ・・
今 まで なら 、明日 の 為 に 寝て いなければ いけない 時間 だ 。 コンビニ の ため に 身体 を 整えよう と 思う と すぐ 寝る こと が できた のに 、今 の 私 は 何の ため に 眠れば いい のか すら わからなかった 。 ・・
洗濯物 は 部屋 干し が ほとんど なので 、ベランダ は 汚れて いて 、窓 も カビていた 。 私 は 部屋着 が 汚れる の も かまわず 、ベランダ に 座り込んだ 。 ・・
ふと 窓 ガラス 越しに 部屋 の 中 の 時計 を 見る と 、夜中 の 3 時 だった 。 ・・
今 は 夜勤 の 休憩 が まわっている 時間 だろう か 。 ダット くん と 、先週 から 入った 、経験者 の 大学生 の 篠崎 くん が 、休憩 を しながら 、ウォークイン の 補充 を 始めている ころ だろう 。 ・・
こんな 時間に 眠らずに いるのは 久しぶりの ことだった 。 ・・
私は 自分の 身体を 撫でた 。 コンビニの 決まり通りに 爪は 短く 整えられ 、髪は 染めることも せず 清潔感を 大切にして あり 、手の甲に は 三日前に コロッケを 揚げた ときの 火傷の あとが 微かに 残っている 。 ・・
夏 が 近づいて いる とはいえ 、ベランダ は まだ 少し 肌寒かった 。 それ でも 部屋 に 入る 気 には なれず 、私 は いつまでも 藍色 の 空 を ぼんやり 見上げて いた 。 ・・