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2 - Harry Potter, 5.1 暴れ柳 - The Whomping Willow

5.1 暴れ柳 - The Whomping Willow

第 5 章 暴れ 柳 - The Whomping Willow

夏 休み は あまりに も あっけなく 終わった 。 ハリー は たしかに ホグワーツ に 戻る 日 を 楽しみに して は いた が 、「 隠れ 穴 」 で の 一 ヵ 月 ほど 幸せな 時間 は なかった 。 ダーズリー 一家 の こと や 、 この 次に プリベット 通り に 戻った とき 、 どんな 「 歓迎 」 を 受ける か など を 考える と 、 ロ ン が 妬ま し い ぐらい だった 。

最後 の 夜 、 ウィーズリー おばさん は 魔法 で 豪華な 夕食 を 作って くれた 。 ハリー の 大 好物 は 全 部 あった し 、 最後 は 、 よだれ の 出 そうな 糖 蜜 の かかった ケーキ だった 。 フレッド と ジョージ は 、 その 夜 の 締めくくり に 「 ドクター ・ フィリバスター の 長々 花火 」 を 仕掛け 、 台所 いっぱい に 埋めた 赤 や 青 の 星 が 、 少 なく と も 三十 分 は 天井 と 壁 の 間 を ボーンボーン と 跳ね 回った 。 そして 最後に 熱い ココア を マグカップ で たっぷり 飲み 、 みんな 眠り に ついた 。

翌朝 、 出かける まで に かなり の 時間 が かかった 。 鶏 の 時 の 声 で みんな 早起き した のに 、 なぜ か やる こと が たくさん あった 。 ウィーズリー おばさん は 、 ソックス や 羽 ペン が もっと たくさん あった はずだ と 、 あちこち 探し回って ご機嫌斜めだった し 、 みんな 手 に 食べ かけ の トースト を 持った まま 、 半分 パジャマ の まま 、 階段 の あちこち で 何度 も ぶつかり合って いた 。 ウィーズリー おじさん は 、 ジニー の トランク を 車 に 乗せる のに 、 庭 を 横切る 途中 、 鶏 に 躓 い て 、 危うく 首 の 骨 を 折る ところ だった 。 八 人 の 乗客 と 大きな トランク 六 個 、 ふくろう 二 羽 、 ねずみ 一 匹 を 全部 、 どう やって 小型の フォード ・ アングリア に 詰め込む の か 、 ハリー に は 見当 も つか なった 。 もっとも 、 ウィーズリー おじさん が 細工 した 、 特別の 仕掛け を しら なかった のだ が ――。

「 モリー に は 内緒 だ よ 」

おじさん は ハリー に そう ささやき ながら 、 車 の トランク を 開き 、 全部 の トランク が らくらく 入る ように 魔法 で 広げた ところ を 見せて くれた 。

やっと みんな が 車 に 乗り込む と 、 ウィーズリー おばさん は 後ろ の 席 を 振り返り 、 ハリー 、 ロ ン 、 フレッド 、 ジョージ 、 パーシー が 全員 並んで 心地よさ そうに 収まって いる の を 見て 、

「 マグルって 、 私 たち が 考えて いる より ずーっと いろんな こと を 知って る の ね 。 そう 思わ な い こと ?」 と 言った 。

おばさん と ジニー が 座って いる 前 の 席 は 、 公園 の ベンチ の ような 形 に 引き伸ばされて いた 。 「 だって 、 外 から 見た だけ じゃ 、 中 が こんなに 広い なんて わから ない もの 、 ねえ ?」

ウィーズリー おじさん が エンジン を かけた 。 車 は ゴロンゴロン と 庭 から 外 へ 出た 。 ハリー は 振り返って 、 最後に もう 一目 だけ 家 を 見る つり だった 。 また いつ 来 れる のだろう 。 と 思う 間 も なく 、 車 は 引き返した 。 ジョージ が フィリバスター 花火 の 箱 を 忘れた のだ 。 五 分 後 、 まだ 庭 から 出 ない うち に 車 は 急 停車 した 。 フレッド が 箒 を 取り に 走って 行った 。 やっと 高速 道路 に たどり着く ころ に ジニー が 金切り声 を あげた 。 日記 を 忘れた と 言う 。 ジニー が 戻って き て 、 車 に 這い 登った ころ に は 、 遅れ に 遅れて 、 みんな の イライラ が 高まって きた 。

ウィーズリー おじさん は 、 時計 を チラリ と 見て 、 それ から おばさん の 顔 を チラリ と 見た 。 「 モリー 母さん や ――」

「 アーサー 、 ダメ !」

「 誰 に も 見え ない から 。 この 小さな ボタン は 私 が 取りつけた 『 透明 ブースター 』 な んだ が ― ― 空 高く 上がる まで 、 車 は 透明で 見え なく なる ―― そう したら 、 雲 の 上 を 飛ぶ 。 十 分 も あれ ば 到着 だ し 、 だ ー れ に も わかりゃ し ない から ......」

「 ダメって 言った でしょ 、 アーサー 。 昼日中 は ダメ 」

キングズ ・ クロス 駅 に 着いた の は 十一 時 十五 分 前 だった 。 ウィーズリー おじさん は 飛び出し て 、 道路 の 向こう に ある カート を 数 台 持ってきた 。 トランク を 載せ 、 みんな 大急ぎで 駅 の 構内 に 入った 。

ハリー は 去年 も ホグワーツ 特急 に 乗った 。 難しかった の は 、 マグル の 目 に は 見え ない 9 と 4 分 の 3 番 線 の ホーム に どうやって 行く か だ 。 9 番 線 と 10 番 線 の 間 に ある 、 堅い 柵 を 通り ぬ け て 歩いて 行けば よかった のだ 。 痚 く は なかった が 、 消える ところ を マグル に 気づか れ ない ように 、 慎重に 通りぬけ なければ なら なかった 。

「 パーシー 、 先 に 」

おばさん が 心配 そうに 、 頭上 の 大 時計 を 見 ながら 言った 。 障壁 を 何気なく 通り抜けて 消える のに 、 あと 五 分 しか ない こと を 針 が 示して いた 。 パーシー は きびきび と 前進 し 、 消えた 。 ウィーズリー おじさん が 次 で 、 フレッド と ジョージ が それ に 続いた 。

「 私 が ジニー を 連れて 行きます から ね 。 二 人 で すぐに いらっしゃい よ 」

ジニー の 手 を 引っ張り ながら おばさん は ハリー と ロン に そう 言う と 、 行って しまった 。 瞬き する 間 に 二 人 と も 消えた 。

「 一緒に 行こう 。 一 分 しか ない 」 ロン が 言った 。

ハリー は ヘドウィグ の 籠 が トランク の 上 に 、 しっかり 括りつけられて いる こと を 確かめ 、 カート の 咆哮 を 買えて 柵 の 方 に 向けた 。 ハリー は 自信 たっぷり だった 。 暖炉 飛行 粉 を 使う と き の 気持ち の 悪 さ に 比べれば なんでもない 。 二 人 は カート の 取っ手 の 下 に かがみ 込み 、 柵 を めがけて 歩いた 。 スピード が 上がった 。 一 メートル 前 から は 駆け出した 。 そして ――

ガッツーン

二 つ の カート が 柵 に ぶつかり 、 後ろ に 跳ね返った 。 ロン の トランク が 大きな 音 を 立てて 転 が り 落ちた 。 ハリー は もんどり打って 転がり 、 ヘドウィグ の 籠 が ピカピカ の 床 の 上 で 跳ねた 。 ヘドウィグ は 転がり ながら 怒って ギャーギャー 鳴いた 。 周り の 人 は ジロジロ 見た し 、 近く に いた 駅員 は 「 君 たち 、 いったい全体 何 を やって る んだ ね ?」 と 叫んだ 。

「 カート が 言う こと を 聞か なくて 」

脇腹 を 押さえて 立ち上がり 、 ハリー が あえぎ ながら 答えた 。 ロン は ヘドウィグ を 拾い上げ に 走って 行った 。 ヘドウィグ が あんまり 大騒ぎ する ので 、 周り の 人垣 から 動物 虐待 だ と 、 ブツブツ 文句 を 言う 声 が 聞えて きた 。

「 なんで 通れ なかった んだろう ?」 ハリー が ヒソヒソ 声 で ロン に 聞いた 。

「 さあ ――」

ロン が あたり を キョロキョロ 見回す と 、 物見高い 見物 客 が まだ 十数 人 いた 。

「 僕たち 汽車 に 遅れる 。 どうして 入口 が 閉じちゃった の か わから ない よ 」 ロン が ささや い た 。 ハリー は 頭上 の 大 時計 を 見上げて 鳩尾 が 痚 く なった 。 十 秒 前 ...... 九 秒 前 ......。

ハリー は 慎重に カート を 前進 さ せ 、 柵 に くっつけ 、 全力 で 押して みた 。 鋏 柵 は 相変わらず 堅 かった 。

「 行っちゃった よ 」 ロン は 呆然と して いた 。 「 汽車 が 出ちゃった 。 パパ も ママ も こっち 側 に 戻って これ なかったら どう しよう ? マグル の お 金 、 少し 持って る ?」 ハリー は 力なく 笑った 。 「 ダーズリー から は 、 かれこれ 六 年間 、 お 小遣い なんか もらった こと が ない よ 」 ロン は 冷たい 柵 に 耳 を 押し当てた 。

「 な ー んに も 聞え ない 」 ロン は 緊張 して いた 。 「 どう する ? パパ と ママ が 戻って くる まで ど の ぐらい かかる か わから ない し 」 見回す と 、 まだ 見て いる 人 が いる 。 たぶん 、 ヘドウィグ が ギャーギャー 喚 き 続けて いる せい だ 。

「 ここ を 出た 方 が よ さ そうだ 。 車 の そば で 待とう 。 ここ は 人目 に つき 過ぎる し ――」 と ハリー が 言った 。

「 ハリー !」 ロン が 目 を 輝か せた 。 「 車 だ よ !」

「 車 が どうかした ?」

「 ホグワーツ まで 飛んで 行ける よ 」

「 でも 、 それ は ――」

「 僕たち 、 困って る 。 そうだ ろ ? それ に 、 学校 に 行か なくちゃ なら ない 。 そうだ ろ ? それ な ら 、 半 人前 の 魔法使い でも 、 ほんとうに 緊急 事態 だ から 魔法 を 使って も いい んだ よ 。 なんと か の 制限 に 関する 第 十九 条 と か なんとか ......」

ハリー の 心 の 中 で 、 パニック が 興奮 に 変わった 。

「 君 、 車 を 飛ば せる の ?」

「 任せ と けって 」 出口 に 向かって カート を 押し ながら ロン が 言った 。

「 さあ 、 出かけよう 。 急げば ホグワーツ 特急 に 追いつく かも しれ ない 」

二 人 は 物見高い マグル の 中 を 突き抜け 、 駅 の 外 に 出て 、 脇道 に 停めて ある 中古 の フォード ・ アングリア の ところ まで 戻った 。

ロン は 、 洞穴 の ような 車 の トランク を 、 杖 で いろいろ 叩いて 鍵 を 開け 、 フーフー 言い ながら 荷物 を 押し入れ 、 ヘドウィグ を 後ろ の 席 に 乗せ 、 自分 は 運転 席 に 乗り込んだ 。

「 誰 も みて ない か どう か 、 確かめて 」

杖 で エンジン を かけ ながら ロン が 言った 。

ハリー は ウィンドウ から 首 を 突き出した 。 前方 の 表通り は 車 が ゴーゴー と 走って いた が 、 こちら の 路地 に は 誰 も い なかった 。

「 オッケー 」 ハリー が 合図 した 。

ロン は 計器 番 の 小さな 銀色 の ボタン を 押した 。 載って いる 車 が 消えた ―― 自分 たち も 消え た 。 ハリー は 体 の 下 で シート が 震動 して いる の を 感じた し 、 エンジン の 音 も 聞えた し 、 手 を 膝 の 上 に 置いて いる こと も 、 メガネ が 鼻 の 上 に 乗っかって いる こと も 感じて いた が 、 見える 物 は は 、 車 が びっしり と パーキング して いる ゴミゴミ した 道路 だけ で 、 その 地上 一 メートル あたり に 、 自分 の 二 つ の 目玉 だけ が 浮かんで いる か の ようだった 。

「 行こう ぜ 」

右 の 方 から ロン の 声 だけ が 聞えた 。

車 は 上昇 し 、 地面 や 車 の 両側 の 汚れた ビル が 見る見る 下 に 落ちて いく ようだった 。 数 秒 後 、 ロンドン 全体 が 、 煙り 輝き ながら 眼下 に 広がった 。

その とき 、 ポン と 音 が して 車 と ハリー と ロン が 再び 現れた 。 「 ウ 、 ヮ 」 ロン が 透明の ブースター を 叩いた 。 「 いかれて る ――」 二 人 して ボタン を ドンドン 叩いた 。 車 が 消えた 。 と 、 また ボワーッ と 現れた 。

「 つかまって ろ !」

ロン は そう 叫ぶ と アクセル を 強く 踏んだ 。 車 は まっすぐに 、 低く かかった 綿雲 の 中 に 突っ込 み 、 あたり 一面 が 霧 に 包ま れた 。

「 さて 、 どう する ん だい ?」

ハリー は 回り 中 から 濃い 霧 の 塊 が 押し寄せて くる ので 目 を パチパチ さ せ ながら 聞いた 。

「 どっち の 方向 に 進んだら いい の か 、 汽車 を みつけ ない と わから ない 」 ロン が 言った 。

「 もう 一 度 、 ちょっと だけ 降りよう ―― 急いで ――」

二 人 は また 雲 の 下 に 降りて 、 座席 に 座った まま 体 を よじり 、 目 を 凝らして 地上 の 方 を 見た 。

「 見つけた !」 ハリー が 叫んだ 。 「 まっすぐ 前方 ―― あそこ !」

ホグワーツ 特急 は 紅 の ヘビ の ように くねくね と 二 人 の 眼下 を 走って いた 。

「 進路 は 北 だ 」 ロン が 計器 盤 の コンパス で 確認 した 。

「 オーケー だ 。 これ から は 三十 分 ごと ぐらい に チェック すれば いい 。 つかまって ......」

車 は また 雲 の 波 を 突き抜けて 上昇 した 。 一 分 後 、 二 人 は 灼ける ような 太陽 の 光 の 中 に 飛び出した 。

別 世界 だった 。 車 の タイヤ は ふわふわ した 雲 の 海 を 掻き 、 眩い 白熱 の 太陽 の 下 に 、 どこ まで も 明るい ブルー の 空 が 広がって いた 。

「 あと は 飛行機 だけ 気 に して りゃ いい な 」 と ロン が 言った 。

二 人 は 顔 を 見合わせて 笑った 。 しばらく の 間 、 笑い が 止まら なかった 。

まるで す すばらしい 夢 の 中 に 飛び込んだ ようだった 。 旅 を する なら この 方法 以外 に あり え な いよ 、 と ハリー は 思った 。

―― 白雪 の ような 雲 の 渦 や 塔 を 抜け 、 車 いっぱい の 明るい 暖かい 陽 の 光 、 計器 盤 の 下 の 小物 入れ に は ヌガー が いっぱい 。 それ に 、 ホグワーツ の 城 の 広広 と した 芝生 に 、 はなばなしく スイーッ と 着陸 した とき の フレッド や ジョージ の 羨まし そうな 顔 が 見える ようだ 。

北 へ 北 へ と 飛び ながら 、 二 人 は 定期 的に 汽車 の 位置 を チェック した 。 雲 の 下 に 潜る たび に 違った 景色 が 見えた 。 ロンドン は あっという間 に 過ぎ去り 、 すっきり と した 緑 の 畑 が 広 が り 、 それ も 広大な 紫 が かかった 荒野 に 変わり 、 おもちゃ の ような 小さな 教会 を 囲んだ 村 々 が 見え 、 色とりどりの 蟻 の ような 車 が 、 忙しく 走り回って いる 大きな 都市 も 見えた 。

何事 も なく 数 時間 が 過ぎる と 、 さすが に ハリー も 飽きて きた 。 ヌガー の おかげ で 喉 が カラカラ に なって きた のに 、 飲む 物 が なかった 。 ロン も ハリー も セーター を 脱ぎ捨てた が 、 ハリー の T シャツ は 座席 の 背 に べったり 張りつき 、 メガネ は 汗 で 鼻 から ずり落ちて ばかり いた 。 おもしろい と 思って いた 雲 の 形 も 、 もう どうでも よく なり 、 ハリー は ずーっと 下 を 走って いる 汽車 の 中 を 懐かしく 思い出して いた 。 小 太り の 魔女 の おばさん が 押して くる カート に は 、 ひんやり と 冷たい 魔女 かぼちゃ ジュース が ある のに ......。 いったい どうして 、9 と 4 分 の 3 番 線 に 行け なかった んだろう ?

「 まさか 、 もう そんなに 遠く ない よ な ?」

それ から 何 時間 も たち 、 太陽 が 雲海 を 茜色 に 染め 、 その かなた に 沈み はじめた とき 、 ロン が かすれ 声 で 言った 。

「 そろそろ また 汽車 を チェック しよう か ?」

汽車 は 雪 を かぶった 山間 を くねり ながら 、 まだ 真 下 を 走って いた 。 雲 の 傘 で 覆わ れた 下 の 世界 は ずっと 暗く なって いた 。

ロン は アクセル を 踏み込み 、 また 上昇 しよう と した 。 その とき 、 エンジン が 甲高い 音 を 出し はじめた 。

二 人 は 不安 げ に 顔 を 見合わせた 。

「 きっと 疲れた だけ だ 。 こんなに 遠く まで 来た の は 初めて だし ......」 ロン が 言った 。

空 が 確実に だんだん 暗く なり 、 車 の カンカン 音 が だんだん 大きく なって も 、 二 人 と も 気 が つ か ない ふり を した 。 漆黒 の 中 に 星 が ポツリポツリ と きらめき はじめた 。 ワイパー が 恨めし げ に ふらふら し はじめた の を 無視 し ながら 、 ハリー は また セーター を 着込んだ 。

「 もう 遠く は ない 」 ロン は ハリー に と いう より 車 に 向かって そう 言った 。 「 もう 、 そう 遠く は ない から 」 ロン は 心配 そうに 計器 盤 を 軽く 叩いた 。

しばらく して もう 一 度 雲 の 下 に 出た とき 、 何 か 見覚え の ある 目印 は ない か と 、 二 人 は 暗闇 の 中 で 目 を 凝らした 。

「 あそこ だ !」 ハリー の 大声 で ロン も ヘドウィグ も 跳び上がった 。 「 真 正面 だ !」

湖 の むこう 、 暗い 地平 線 に 浮かぶ 影 は 、 崖 の 上 に 聳え立つ ホグワーツ 城 の 大小 さまざまな 尖塔 だ 。

しかし 、 車 は 震え 、 失速 し だした 。

「 がんばれ 」 ロン が ハンドル を 揺すり ながら 、 なだめる ように 言った 。

「 もう すぐだ から 、 がんばれよ ――」

エンジン が うめいた 。 ボンネット から 蒸気 が いく 筋 も シュー シュー 噴き出して いる 。 車 が 湖 の 方 に 流されて 行き 、 ハリー は 思わず 座席 の 端 を しっかり 握りしめて いた 。 車 が グラグッ と 嫌な 揺れ 方 を した 。 ハリー が 窓 の 外 を ちらっと 見る と 、 一 、 二 キロ 下 に 黒々 と 鏡 の ように 滑らかな 湖面 が 見えた 。 ロン は 指 の 節 が 白く なる ほど ギュッと ハンドル を 握り しめて いた 。 車 が また グラッ と 揺れた 。

「 がんばれったら 」 ロン が 歯 を 食いしばった 。 湖 の 上 に 来た ...... 城 は 目の前 だ 。 ...... ロン が 足 を 踏ん張った 。

ガタン 、 ブスブスッ と 大きな 音 を たてて 、 エンジン が 完全に 死んだ 。

「 ウ 、 ヮ 」 シンと した 中 で ロン の 声 だけ が 聞えた 。 車 が 鼻 から 突っ込んだ 。 スピード を 上げ ながら 落ちて 行く 。 城 の 堅い 壁 に まっすぐ 向かって 行く 。

「 ダメェェェェェェ !」

ハンドル を 左右 に 揺すり ながら ロン が 叫んだ 。 車 が 弓なり に カーブ を 描いて 、 ほんの 数 センチ の ところ で 黒い 石 壁 から 逸れ 、 黒い 温室 の 上 に 舞い上がり 、 野菜 畑 を 越え 、 黒い 芝生 の 上 へ と 、 刻々 と 高度 を 失い つつ 向かって 行った 。

ロン は 完全に ハンドル を 放し 、 尻 ポケット から 杖 を 出した 。

「 止まれ ! 止まれ !」

ロン は 計器 盤 や ウィンドウ を バンバン 叩き ながら 叫んだ が 、 車 は 落下 し 続け 、 地面 が 見る 見 る 近づいて きた ......。

「 あの 木 に 気 を つけて !」

ハリー は 叫び ながら ハンドル に 飛びつこう と した が 、 遅 過ぎた 。

グワッシャン

金属 と 木 が ぶつかる 耳 を つんざく ような 音 ともに 、 車 は 太い 木 の 幹 に 衝突 し 、 地面 に 落下 し て 激しく 揺れた 。 ひしゃ げた 車 の ボンネット の 中 から 、 蒸気 が うねる ように 噴出 して いる 。 ヘドウィグ は 怖がって ギャーギャー 鳴き 、 ハリー は 額 を フロント ガラス に ぶつけて ゴルフ ボール 大 の こぶ が ズキズキ うずいた 。 右 の 方 で ロン が 絶望 した ような 低い うめき声 を あげ た 。

「 大丈夫 かい ?」 ハリー が 慌てて 聞いた 。

「 杖 が 」 ロン の 声 が 震えて いる 。 「 僕 の 杖 見て 」

ほとんど 真っ二つ に 折れて いた 。 杖 の 先端 が 、 裂けた 木片 に すがって かろうじて ダラリ と ぶ ら 下がって いる 。

ハリー は 、 学校 に 行けば きっと 直して くれる よ 、 と 言い かけた が 、 一言 も 言わ ず に 口 を つぐ ま なければ なら なかった 。 しゃべり かけた 途端 、 ハリー の 座って いる 側 の 車 の 脇腹 に 、 闘牛 の 牛 が 突っ込んで きた ような パンチ が 飛んで きた のだ 。 ハリー は ロン の 方 に 横 ざま に 突き 飛 ば さ れた 。 同時に 、 車 の 屋根 に 同じ ぐらい の 強力な ヘビーブロー が かかった 。

「 何事 だ ?――」

ウィンドウ から 外 を 覗いた ロン が 息 を 呑 んだ 。 ハリー が 振り返る と 、 ちょうど 、 大 ニシキヘ ビ の ような 太い 枝 が 、 窓 めがけて 一撃 を 食らわ せる ところ だった 。 ぶつかった 木 が 二 人 を 襲って いる 。 幹 を 「 く 」 の 字 に 曲げ 、 節くれだった 大枝 で 、 ところ かまわ ず 車 に 殴り か かって きた 。 「 ウヮヮァ !」

ねじれた 枝 の パンチ で ドア が 凹み 、 ロン が 叫んだ 。 小枝 の こぶし が 雤 あられ と パンチ を 浴び せ 、 ウィンドウ は ビリビリ 震え 、 巨大 ハンマー の ような 太い 大枝 が 、 狂暴に 屋根 を 打ち 、 凹 ませて いる ――。

「 逃げろ !」 ロン が 叫び ながら 体 ごと ドア に ぶつかって 行った が 、 次の 瞬間 、 枝 の 猛烈な アッパーカット を 位 、 吹っ飛ば されて ハリー の 膝 に 逆戻り して きた 。 「 もう ダメだ !」

屋根 が 落ち込んで きて 、 ロン が うめいた 。 すると 、 急に 車 の フロア が 揺れ はじめた ―― エン ジン が 生き返った 。

「 バック だ !」 ハリー が 叫んだ 。

車 は シュッ と バック した 。 木 は 攻撃 を やめ ない 。 車 が 急いで 木 の そば から 離れよう と する と 、 根元 が 軋み 、 根こそぎ 地面 を 離れ そうに 伸び上がって 追い 討ち を かけて きた 。

「 まったく 」 ロン が あえぎ ながら 行った 。 「 や ばかった ぜ 。 車 よ 、 よく やった 」

しかし 、 車 の 方 は これ 以上 たくさんだ と ばかり 、 ガチャ 、 ガチャ と 二 回 短い 音 を たてて 、 ド ア が パカッ と 開いた 。 ハリー は 座席 が 横 に 傾く の を 感じた 。 気づいた とき に は 、 ハリー は 湿った 地面 の 上 に 無 様 に 伸びて いた 。 ドサッ と いう 大きな 音 は 、 車 の トランク から 荷物 が 吐 き 出さ れた 音 らしい 。 ヘドウィグ の 籠 が 宙 に 舞い 、 戸 が パッと 開いた 。 ヘドウィグ は 籠 から 飛び出し 、 ギーギー と 怒った ように 大声 で 鳴き ながら 、 城 を 目指して 、 振り返り も せ ず に 飛 んで いって しまった 。 凸凹 車 は 、 傷 だらけ で 湯気 を シュー シュー 噴き ながら 、 暗闇 の 中 に ゴ ロゴロ と 走り去って しまった 。 テールランプ が 怒った ように ギラ ついて いた 。

「 戻って くれ !」 折れた 杖 を 振り回し 、 ロン が 車 の 後ろ から 叫んだ 。 「 パパ に 殺さ れちゃ うよ !」 しかし 、 車 は 最後に プッ と 排気 ガス を 噴いて 、 見え なく なって しまった 。 「 僕たちって 信じられ ない ぐらい ついて ない ぜ 」 かがんで 、 ねずみ の スキャバーズ を 拾い上げ ながら 、 ロン が 情けな さ そうに 言った 。 「 より に よって 、 おお 当たり だ よ 。 当たり 返し を する 木 に 当たる なんて さ 」 ロン は ちらり と 振り返って 巨木 を 見た 。 まだ 枝 を 振り回して 威嚇 して いる 。 「 行こう 。 学校 に たどり着か なくちゃ 」 ハリー が 疲れ果てた 声 で 言った 。

想 僕 して いた ような 凱旋 と は 大 違い だった 。 痚 い やら 、 寒い やら 、 傷 だらけ の 二 人 は トラン ク の 端 を つかんで 引きずり ながら 、 城 の 正面 の がっしり した 樫 の 扉 を 目指し 、 草 の 茂った 斜 面 を 登り はじめた 。

「 もう 新 学期 の 歓迎 会 は 始まって る と 思う な 」

扉 の 前 の 階段 下 で 、 トランク を ドサッ と 下ろし 、 ロン は そう 言い ながら 、 こっそり 横 の 方 に 移動 し 、 明るく 輝く 窓 を 覗き込んだ 。

「 あっ、 ハリー 、 来て 。 見て ごらん よ ―― 組 分け 帽子 だ !」

ハリー が 駆け寄り 、 二 人 で 大広間 を 覗き込んだ 。

四 つ の 長 テーブル の 周り に びっしり と みんな が 座り 、 その 上 に 数え 切れ ない ほど の 蝋燭 が 宙 に 浮かんで 、 金 の 皿 や 杯 を キラキラ 輝か せて いた 。 天井 は いつも の ように 魔法 で 本物 の 空 を 映し 、 星 が 瞬いて いた 。

5.1 暴れ柳 - The Whomping Willow あばれ やなぎ|the|whomping|willow 5.1 Zornige Weide - Die stampfende Weide 5.1 The Whomping Willow 5.1 Sauce rampante - El sauce fustigador 5.1 Razende wilg - de stampende wilg 5.1 Szalejąca wierzba - The Whomping Willow 5.1 Rampande sälg - Den piskande sälgen 5.1 打人柳 5.1 打人柳

第 5 章 暴れ 柳 - The Whomping Willow だい|しょう|あばれ|やなぎ|the|whomping|willow Chapter 5 Rampage Willow --The Whomping Willow

夏 休み は あまりに も あっけなく 終わった 。 なつ|やすみ|||||おわった The summer vacation was over too easily. ハリー は たしかに ホグワーツ に 戻る 日 を 楽しみに して は いた が 、「 隠れ 穴 」 で の 一 ヵ 月 ほど 幸せな 時間 は なかった 。 |||||もどる|ひ||たのしみに|||||かくれ|あな|||ひと||つき||しあわせな|じかん|| Harry was certainly looking forward to the day he returned to Hogwarts, but he hadn't had the happiest time of a month in The Burrow. ダーズリー 一家 の こと や 、 この 次に プリベット 通り に 戻った とき 、 どんな 「 歓迎 」 を 受ける か など を 考える と 、 ロ ン が 妬ま し い ぐらい だった 。 |いっか|||||つぎに||とおり||もどった|||かんげい||うける||||かんがえる|||||ねたま|||| Ron was jealous of the Dursley family and what kind of "welcome" they would receive the next time they returned to Privet Street.

最後 の 夜 、 ウィーズリー おばさん は 魔法 で 豪華な 夕食 を 作って くれた 。 さいご||よ||||まほう||ごうかな|ゆうしょく||つくって| On the last night, Aunt Weasley magically prepared a sumptuous dinner for us. ハリー の 大 好物 は 全 部 あった し 、 最後 は 、 よだれ の 出 そうな 糖 蜜 の かかった ケーキ だった 。 ||だい|こうぶつ||ぜん|ぶ|||さいご||||だ|そう な|とう|みつ|||けーき| Harry's favorite food was all, and the last was a cake with molasses that was likely to drool. フレッド と ジョージ は 、 その 夜 の 締めくくり に 「 ドクター ・ フィリバスター の 長々 花火 」 を 仕掛け 、 台所 いっぱい に 埋めた 赤 や 青 の 星 が 、 少 なく と も 三十 分 は 天井 と 壁 の 間 を ボーンボーン と 跳ね 回った 。 ||じょーじ|||よ||しめくくり||どくたー|||ながなが|はなび||しかけ|だいどころ|||うずめた|あか||あお||ほし||しょう||||さんじゅう|ぶん||てんじょう||かべ||あいだ||||はね|まわった Fred and George capped off the evening with "Dr. Filibuster's Long Fireworks," a show in which red and blue stars filled the kitchen and bounced around between the ceiling and walls for at least 30 minutes. そして 最後に 熱い ココア を マグカップ で たっぷり 飲み 、 みんな 眠り に ついた 。 |さいごに|あつい|ここあ|||||のみ||ねむり||

翌朝 、 出かける まで に かなり の 時間 が かかった 。 よくあさ|でかける|||||じかん|| The next morning, it took me a long time to go out. 鶏 の 時 の 声 で みんな 早起き した のに 、 なぜ か やる こと が たくさん あった 。 にわとり||じ||こえ|||はやおき||||||||| Everyone got up early with the voice of the chicken, but for some reason there was a lot of work to do. ウィーズリー おばさん は 、 ソックス や 羽 ペン が もっと たくさん あった はずだ と 、 あちこち 探し回って ご機嫌斜めだった し 、 みんな 手 に 食べ かけ の トースト を 持った まま 、 半分 パジャマ の まま 、 階段 の あちこち で 何度 も ぶつかり合って いた 。 |||そっくす||はね|ぺん||||||||さがしまわって|ごきげんななめだった|||て||たべ|||とーすと||もった||はんぶん|ぱじゃま|||かいだん||||なんど||ぶつかりあって| Aunt Weasley was in a good mood looking around for more socks and quill pens, and everyone was in their hands, half-pajama, and stairs. They collided with each other many times. ウィーズリー おじさん は 、 ジニー の トランク を 車 に 乗せる のに 、 庭 を 横切る 途中 、 鶏 に 躓 い て 、 危うく 首 の 骨 を 折る ところ だった 。 |||||とらんく||くるま||のせる||にわ||よこぎる|とちゅう|にわとり||つまず|||あやうく|くび||こつ||おる|| Onkel Weasley brachte Ginnys Stiefel über den Hof zum Auto, als er über ein Huhn stolperte und sich fast das Genick brach. Uncle Weasley was about to break his neck when he stumbled on a chicken on his way across the yard to get Genie's trunk into his car. 八 人 の 乗客 と 大きな トランク 六 個 、 ふくろう 二 羽 、 ねずみ 一 匹 を 全部 、 どう やって 小型の フォード ・ アングリア に 詰め込む の か 、 ハリー に は 見当 も つか なった 。 やっ|じん||じょうきゃく||おおきな|とらんく|むっ|こ||ふた|はね||ひと|ひき||ぜんぶ|||こがたの|ふぉーど|||つめこむ||||||けんとう||| Harry had no idea how to pack eight passengers, six large trunks, two owls, and a mouse all into a small Ford Anglia. もっとも 、 ウィーズリー おじさん が 細工 した 、 特別の 仕掛け を しら なかった のだ が ――。 ||||さいく||とくべつの|しかけ||||| However, Uncle Weasely did not have any special gimmicks.

「 モリー に は 内緒 だ よ 」 |||ないしょ|| "It's a secret to Molly."

おじさん は ハリー に そう ささやき ながら 、 車 の トランク を 開き 、 全部 の トランク が らくらく 入る ように 魔法 で 広げた ところ を 見せて くれた 。 |||||||くるま||とらんく||あき|ぜんぶ||とらんく|||はいる||まほう||ひろげた|||みせて| He opened the trunk of the car and showed Harry how it had been magically opened so that all the trunks could easily fit.

やっと みんな が 車 に 乗り込む と 、 ウィーズリー おばさん は 後ろ の 席 を 振り返り 、 ハリー 、 ロ ン 、 フレッド 、 ジョージ 、 パーシー が 全員 並んで 心地よさ そうに 収まって いる の を 見て 、 |||くるま||のりこむ|||||うしろ||せき||ふりかえり|||||じょーじ|||ぜんいん|ならんで|ここちよ さ|そう に|おさまって||||みて When they finally got into the car, Aunt Weasley looked back and saw Harry, Ron, Fred, George, and Percy all sitting comfortably side by side,

「 マグルって 、 私 たち が 考えて いる より ずーっと いろんな こと を 知って る の ね 。 マグル って|わたくし|||かんがえて|||||||しって||| "Muggles know a lot more than we think. そう 思わ な い こと ?」 と 言った 。 |おもわ|||||いった I don't think so? "

おばさん と ジニー が 座って いる 前 の 席 は 、 公園 の ベンチ の ような 形 に 引き伸ばされて いた 。 ||||すわって||ぜん||せき||こうえん||べんち|||かた||ひきのばさ れて| The seat in front of the one where Auntie and Ginny were sitting was stretched out to resemble a park bench. 「 だって 、 外 から 見た だけ じゃ 、 中 が こんなに 広い なんて わから ない もの 、 ねえ ?」 |がい||みた|||なか|||ひろい||||| "Because you can't tell that the inside is so wide just by looking at it from the outside, hey?"

ウィーズリー おじさん が エンジン を かけた 。 |||えんじん|| Uncle Weasley started the engine. 車 は ゴロンゴロン と 庭 から 外 へ 出た 。 くるま||||にわ||がい||でた The car went out of the garden with Gorongoron. ハリー は 振り返って 、 最後に もう 一目 だけ 家 を 見る つり だった 。 ||ふりかえって|さいごに||いちもく||いえ||みる|| また いつ 来 れる のだろう 。 ||らい|| When will I be able to come again? と 思う 間 も なく 、 車 は 引き返した 。 |おもう|あいだ|||くるま||ひきかえした Before I knew it, the car turned back. ジョージ が フィリバスター 花火 の 箱 を 忘れた のだ 。 じょーじ|||はなび||はこ||わすれた| George forgot the box of filibuster fireworks. 五 分 後 、 まだ 庭 から 出 ない うち に 車 は 急 停車 した 。 いつ|ぶん|あと||にわ||だ||||くるま||きゅう|ていしゃ| Five minutes later, the car stopped suddenly before I left the garden. フレッド が 箒 を 取り に 走って 行った 。 ||そう||とり||はしって|おこなった Fred ran to get his broom. やっと 高速 道路 に たどり着く ころ に ジニー が 金切り声 を あげた 。 |こうそく|どうろ||たどりつく|||||かなきりごえ|| When they finally reached the highway, Ginny screamed. 日記 を 忘れた と 言う 。 にっき||わすれた||いう ジニー が 戻って き て 、 車 に 這い 登った ころ に は 、 遅れ に 遅れて 、 みんな の イライラ が 高まって きた 。 ||もどって|||くるま||はい|のぼった||||おくれ||おくれて|||いらいら||たかまって| By the time Ginny returned and climbed into the car, she was running late and everyone's frustration was mounting.

ウィーズリー おじさん は 、 時計 を チラリ と 見て 、 それ から おばさん の 顔 を チラリ と 見た 。 |||とけい||ちらり||みて|||||かお||ちらり||みた Uncle Weasley glanced at the watch, and then glanced at her aunt's face. 「 モリー 母さん や ――」 |かあさん| "Molly, Mom, or--"

「 アーサー 、 ダメ !」 |だめ "Arthur, no!"

「 誰 に も 見え ない から 。 だれ|||みえ|| "Because no one can see it. この 小さな ボタン は 私 が 取りつけた 『 透明 ブースター 』 な んだ が ― ― 空 高く 上がる まで 、 車 は 透明で 見え なく なる ―― そう したら 、 雲 の 上 を 飛ぶ 。 |ちいさな|ぼたん||わたくし||とりつけた|とうめい|||||から|たかく|あがる||くるま||とうめいで|みえ|||||くも||うえ||とぶ This little button is the "invisibility booster" I installed - the car is transparent and invisible until it goes up high in the sky - then it flies above the clouds. 十 分 も あれ ば 到着 だ し 、 だ ー れ に も わかりゃ し ない から ......」 じゅう|ぶん||||とうちゃく||||-||||||| If it's ten minutes, it's arrived, but I don't know ... "

「 ダメって 言った でしょ 、 アーサー 。 だめ って|いった|| "I told you no, Arthur. 昼日中 は ダメ 」 ひるひなか||だめ No during the daytime "

キングズ ・ クロス 駅 に 着いた の は 十一 時 十五 分 前 だった 。 |くろす|えき||ついた|||じゅういち|じ|じゅうご|ぶん|ぜん| I arrived at King's Cross station before 11:15. ウィーズリー おじさん は 飛び出し て 、 道路 の 向こう に ある カート を 数 台 持ってきた 。 |||とびだし||どうろ||むこう|||||すう|だい|もってきた Uncle Weasley ran out and brought some carts across the road. トランク を 載せ 、 みんな 大急ぎで 駅 の 構内 に 入った 。 とらんく||のせ||おおいそぎで|えき||こうない||はいった With the trunk on, everyone rushed into the station yard.

ハリー は 去年 も ホグワーツ 特急 に 乗った 。 ||きょねん|||とっきゅう||のった Harry rode the Hogwarts Express last year as well. 難しかった の は 、 マグル の 目 に は 見え ない 9 と 4 分 の 3 番 線 の ホーム に どうやって 行く か だ 。 むずかしかった|||||め|||みえ|||ぶん||ばん|せん||ほーむ||どう やって|いく|| The difficulty was how to get to the Muggle's invisible 9 and 4 minute home on line 3. 9 番 線 と 10 番 線 の 間 に ある 、 堅い 柵 を 通り ぬ け て 歩いて 行けば よかった のだ 。 ばん|せん||ばん|せん||あいだ|||かたい|さく||とおり||||あるいて|いけば|| I should have walked through the hard fence between lines 9 and 10. 痚 く は なかった が 、 消える ところ を マグル に 気づか れ ない ように 、 慎重に 通りぬけ なければ なら なかった 。 |||||きえる|||||きづか||||しんちょうに|とおりぬけ||| It wasn't itchy, but I had to go through it carefully so that the Muggles wouldn't notice where it disappeared.

「 パーシー 、 先 に 」 |さき|

おばさん が 心配 そうに 、 頭上 の 大 時計 を 見 ながら 言った 。 ||しんぱい|そう に|ずじょう||だい|とけい||み||いった The aunt worriedly said, looking at the big clock overhead. 障壁 を 何気なく 通り抜けて 消える のに 、 あと 五 分 しか ない こと を 針 が 示して いた 。 しょうへき||なにげなく|とおりぬけて|きえる|||いつ|ぶん|||||はり||しめして| The needle showed that there was only five minutes left to casually pass through the barrier and disappear. パーシー は きびきび と 前進 し 、 消えた 。 ||||ぜんしん||きえた Percy moved forward and disappeared. ウィーズリー おじさん が 次 で 、 フレッド と ジョージ が それ に 続いた 。 |||つぎ||||じょーじ||||つづいた Uncle Weasley was next, followed by Fred and George.

「 私 が ジニー を 連れて 行きます から ね 。 わたくし||||つれて|いき ます|| I'll take Ginny with me. 二 人 で すぐに いらっしゃい よ 」 ふた|じん||||

ジニー の 手 を 引っ張り ながら おばさん は ハリー と ロン に そう 言う と 、 行って しまった 。 ||て||ひっぱり|||||||||いう||おこなって| She tugged on Ginny's hand, said something to Harry and Ron, and left. 瞬き する 間 に 二 人 と も 消えた 。 まばたき||あいだ||ふた|じん|||きえた In the blink of an eye, they both disappeared.

「 一緒に 行こう 。 いっしょに|いこう " Let's go together . 一 分 しか ない 」 ロン が 言った 。 ひと|ぶん|||||いった I only have a minute," Ron said.

ハリー は ヘドウィグ の 籠 が トランク の 上 に 、 しっかり 括りつけられて いる こと を 確かめ 、 カート の 咆哮 を 買えて 柵 の 方 に 向けた 。 ||||かご||とらんく||うえ|||くくりつけ られて||||たしかめ|||ほうこう||かえて|さく||かた||むけた Harry made sure that the Hedwig cage was tightly tied to the top of the trunk, and bought a cart roar and turned it towards the fence. ハリー は 自信 たっぷり だった 。 ||じしん|| 暖炉 飛行 粉 を 使う と き の 気持ち の 悪 さ に 比べれば なんでもない 。 だんろ|ひこう|こな||つかう||||きもち||あく|||くらべれば| It's nothing compared to how uncomfortable it is to use fireplace dust. 二 人 は カート の 取っ手 の 下 に かがみ 込み 、 柵 を めがけて 歩いた 。 ふた|じん||||とって||した|||こみ|さく|||あるいた スピード が 上がった 。 すぴーど||あがった 一 メートル 前 から は 駆け出した 。 ひと|めーとる|ぜん|||かけだした そして ――

ガッツーン

二 つ の カート が 柵 に ぶつかり 、 後ろ に 跳ね返った 。 ふた|||||さく|||うしろ||はねかえった ロン の トランク が 大きな 音 を 立てて 転 が り 落ちた 。 ||とらんく||おおきな|おと||たてて|てん|||おちた Ron's trunk rolled down with a loud noise. ハリー は もんどり打って 転がり 、 ヘドウィグ の 籠 が ピカピカ の 床 の 上 で 跳ねた 。 ||もんどりうって|ころがり|||かご||ぴかぴか||とこ||うえ||はねた Harry rolled over, Hedwig's basket bouncing on the shiny floor. ヘドウィグ は 転がり ながら 怒って ギャーギャー 鳴いた 。 ||ころがり||いかって||ないた 周り の 人 は ジロジロ 見た し 、 近く に いた 駅員 は 「 君 たち 、 いったい全体 何 を やって る んだ ね ?」 と 叫んだ 。 まわり||じん||じろじろ|みた||ちかく|||えきいん||きみ||いったいぜんたい|なん|||||||さけんだ

「 カート が 言う こと を 聞か なくて 」 ||いう|||きか| "Kurt didn't listen to me."

脇腹 を 押さえて 立ち上がり 、 ハリー が あえぎ ながら 答えた 。 わきばら||おさえて|たちあがり|||||こたえた Harry stood up, holding his side, and answered in a gasp. ロン は ヘドウィグ を 拾い上げ に 走って 行った 。 ||||ひろいあげ||はしって|おこなった Ron ran to pick up Hedwig. ヘドウィグ が あんまり 大騒ぎ する ので 、 周り の 人垣 から 動物 虐待 だ と 、 ブツブツ 文句 を 言う 声 が 聞えて きた 。 |||おおさわぎ|||まわり||ひとがき||どうぶつ|ぎゃくたい|||ぶつぶつ|もんく||いう|こえ||きこえて| Hedwig was making so much noise that I could hear the crowd around her complaining about animal cruelty.

「 なんで 通れ なかった んだろう ?」 ハリー が ヒソヒソ 声 で ロン に 聞いた 。 |とおれ|||||ひそひそ|こえ||||きいた

「 さあ ――」

ロン が あたり を キョロキョロ 見回す と 、 物見高い 見物 客 が まだ 十数 人 いた 。 |||||みまわす||ものみだかい|けんぶつ|きゃく|||じゅう すう|じん| When Ron looked around, there were still more than a dozen high-sighted spectators.

「 僕たち 汽車 に 遅れる 。 ぼくたち|きしゃ||おくれる We're going to be late for the train. どうして 入口 が 閉じちゃった の か わから ない よ 」 ロン が ささや い た 。 |いりぐち||とじちゃ った|||||||||| I don't know why the entrance is closed," Ron whispered. ハリー は 頭上 の 大 時計 を 見上げて 鳩尾 が 痚 く なった 。 ||ずじょう||だい|とけい||みあげて|みぞおち|||| Harry looked up at the big clock overhead, and his pigeon tail wagged. 十 秒 前 ...... 九 秒 前 ......。 じゅう|びょう|ぜん|ここの|びょう|ぜん

ハリー は 慎重に カート を 前進 さ せ 、 柵 に くっつけ 、 全力 で 押して みた 。 ||しんちょうに|||ぜんしん|||さく|||ぜんりょく||おして| Harry carefully moved the cart forward, attached it to the fence, and pushed it as hard as he could. 鋏 柵 は 相変わらず 堅 かった 。 やっとこ|さく||あいかわらず|かた| The scissors fence was still stiff.

「 行っちゃった よ 」 ロン は 呆然と して いた 。 おこなっちゃ った||||ぼうぜんと|| "I went." Ron was stunned. 「 汽車 が 出ちゃった 。 きしゃ||でちゃ った パパ も ママ も こっち 側 に 戻って これ なかったら どう しよう ? マグル の お 金 、 少し 持って る ?」 ぱぱ||まま|||がわ||もどって||||||||きむ|すこし|もって| What if Mom and Dad don't come back this way? Do you have some of the Muggle money?" ハリー は 力なく 笑った 。 ||ちからなく|わらった 「 ダーズリー から は 、 かれこれ 六 年間 、 お 小遣い なんか もらった こと が ない よ 」 ロン は 冷たい 柵 に 耳 を 押し当てた 。 ||||むっ|ねんかん||こづかい|||||||||つめたい|さく||みみ||おしあてた I haven't had an allowance from the Dursleys for six years now," he said, pressing his ear against the cold fence.

「 な ー んに も 聞え ない 」 ロン は 緊張 して いた 。 |-|||きこえ||||きんちょう|| 「 どう する ? パパ と ママ が 戻って くる まで ど の ぐらい かかる か わから ない し 」 ||ぱぱ||まま||もどって|||||||||| "What do we do? We don't know how long it will be before Mom and Dad come back." 見回す と 、 まだ 見て いる 人 が いる 。 みまわす|||みて||じん|| Looking around, some people are still looking. たぶん 、 ヘドウィグ が ギャーギャー 喚 き 続けて いる せい だ 。 ||||かん||つづけて||| Maybe it's because Hedwig keeps screaming.

「 ここ を 出た 方 が よ さ そうだ 。 ||でた|かた||||そう だ "It looks better to leave here. 車 の そば で 待とう 。 くるま||||まとう Let's wait by the car. ここ は 人目 に つき 過ぎる し ――」 と ハリー が 言った 。 ||ひとめ|||すぎる|||||いった It's too public," Harry said.

「 ハリー !」 ロン が 目 を 輝か せた 。 |||め||かがやか| 「 車 だ よ !」 くるま||

「 車 が どうかした ?」 くるま||

「 ホグワーツ まで 飛んで 行ける よ 」 ||とんで|いける|

「 でも 、 それ は ――」

「 僕たち 、 困って る 。 ぼくたち|こまって| We're in trouble. そうだ ろ ? それ に 、 学校 に 行か なくちゃ なら ない 。 そう だ||||がっこう||いか||| Right? Besides, I have to go to school. そうだ ろ ? それ な ら 、 半 人前 の 魔法使い でも 、 ほんとうに 緊急 事態 だ から 魔法 を 使って も いい んだ よ 。 そう だ|||||はん|ひとまえ||まほうつかい|||きんきゅう|じたい|||まほう||つかって|||| Right? Then, even a half-useless wizard can use magic in a real emergency. なんと か の 制限 に 関する 第 十九 条 と か なんとか ......」 |||せいげん||かんする|だい|じゅうきゅう|じょう||| Article 19 regarding somehow restrictions or something ... "

ハリー の 心 の 中 で 、 パニック が 興奮 に 変わった 。 ||こころ||なか||ぱにっく||こうふん||かわった Panic turned to excitement in Harry's mind.

「 君 、 車 を 飛ば せる の ?」 きみ|くるま||とば|| "You can fly the car?"

「 任せ と けって 」 出口 に 向かって カート を 押し ながら ロン が 言った 。 まかせ|||でぐち||むかって|||おし||||いった "Leave it to me," Ron said, pushing the cart toward the exit.

「 さあ 、 出かけよう 。 |でかけよう 急げば ホグワーツ 特急 に 追いつく かも しれ ない 」 いそげば||とっきゅう||おいつく|||

二 人 は 物見高い マグル の 中 を 突き抜け 、 駅 の 外 に 出て 、 脇道 に 停めて ある 中古 の フォード ・ アングリア の ところ まで 戻った 。 ふた|じん||ものみだかい|||なか||つきぬけ|えき||がい||でて|わきみち||とめて||ちゅうこ||ふぉーど|||||もどった They walked through the crowd of ostentatious Muggles, out of the station, and back to the used Ford Anglia parked on a side street.

ロン は 、 洞穴 の ような 車 の トランク を 、 杖 で いろいろ 叩いて 鍵 を 開け 、 フーフー 言い ながら 荷物 を 押し入れ 、 ヘドウィグ を 後ろ の 席 に 乗せ 、 自分 は 運転 席 に 乗り込んだ 。 ||ほらあな|||くるま||とらんく||つえ|||たたいて|かぎ||あけ||いい||にもつ||おしいれ|||うしろ||せき||のせ|じぶん||うんてん|せき||のりこんだ Ron slammed the trunk of a car like a cave with a cane to unlock it, squeezed in his luggage, and put Hedwig in the back seat, and he got into the driver's seat.

「 誰 も みて ない か どう か 、 確かめて 」 だれ|||||||たしかめて "Make sure no one is watching."

杖 で エンジン を かけ ながら ロン が 言った 。 つえ||えんじん||||||いった Ron said, as he started the engine with his cane.

ハリー は ウィンドウ から 首 を 突き出した 。 ||||くび||つきだした Harry sticks his neck out of the window. 前方 の 表通り は 車 が ゴーゴー と 走って いた が 、 こちら の 路地 に は 誰 も い なかった 。 ぜんぽう||おもてどおり||くるま||||はしって|||||ろじ|||だれ||| Cars were driving along the main street in front of us, but there was no one in this alley.

「 オッケー 」 ハリー が 合図 した 。 |||あいず|

ロン は 計器 番 の 小さな 銀色 の ボタン を 押した 。 ||けいき|ばん||ちいさな|ぎんいろ||ぼたん||おした Ron pressed the small silver button on the instrument number. 載って いる 車 が 消えた ―― 自分 たち も 消え た 。 のって||くるま||きえた|じぶん|||きえ| The car disappeared - we disappeared too. ハリー は 体 の 下 で シート が 震動 して いる の を 感じた し 、 エンジン の 音 も 聞えた し 、 手 を 膝 の 上 に 置いて いる こと も 、 メガネ が 鼻 の 上 に 乗っかって いる こと も 感じて いた が 、 見える 物 は は 、 車 が びっしり と パーキング して いる ゴミゴミ した 道路 だけ で 、 その 地上 一 メートル あたり に 、 自分 の 二 つ の 目玉 だけ が 浮かんで いる か の ようだった 。 ||からだ||した||しーと||しんどう|||||かんじた||えんじん||おと||きこえた||て||ひざ||うえ||おいて||||めがね||はな||うえ||のっかって||||かんじて|||みえる|ぶつ|||くるま||||ぱーきんぐ|||ごみ ごみ||どうろ||||ちじょう|ひと|めーとる|||じぶん||ふた|||めだま|||うかんで|||| Harry could feel the seat shaking under him, hear the engine, feel his hands on his knees, and feel his glasses on his nose, but all he could see was the trashy road where all the cars were parked, and within a meter of it, it was as if his two eyeballs were the only things floating there. It was as if my two eyeballs were the only things floating a meter above the ground.

「 行こう ぜ 」 いこう| "Let's go, let's go, let's go."

右 の 方 から ロン の 声 だけ が 聞えた 。 みぎ||かた||||こえ|||きこえた

車 は 上昇 し 、 地面 や 車 の 両側 の 汚れた ビル が 見る見る 下 に 落ちて いく ようだった 。 くるま||じょうしょう||じめん||くるま||りょうがわ||けがれた|びる||みるみる|した||おちて|| The car went up and the dirty buildings on the ground and on both sides of the car seemed to fall down. 数 秒 後 、 ロンドン 全体 が 、 煙り 輝き ながら 眼下 に 広がった 。 すう|びょう|あと|ろんどん|ぜんたい||けむり|かがやき||がんか||ひろがった After a few seconds, the whole of London spread under my eyes, shining with smoke.

その とき 、 ポン と 音 が して 車 と ハリー と ロン が 再び 現れた 。 ||||おと|||くるま||||||ふたたび|あらわれた Just then, with a bang, the car, Harry and Ron reappeared. 「 ウ 、 ヮ 」 ロン が 透明の ブースター を 叩いた 。 ||||とうめいの|||たたいた 「 いかれて る ――」 いか れて| "You're crazy..." 二 人 して ボタン を ドンドン 叩いた 。 ふた|じん||ぼたん||どんどん|たたいた 車 が 消えた 。 くるま||きえた と 、 また ボワーッ と 現れた 。 ||||あらわれた

「 つかまって ろ !」 Hold on!

ロン は そう 叫ぶ と アクセル を 強く 踏んだ 。 |||さけぶ||あくせる||つよく|ふんだ 車 は まっすぐに 、 低く かかった 綿雲 の 中 に 突っ込 み 、 あたり 一面 が 霧 に 包ま れた 。 くるま|||ひくく||わたぐも||なか||つっこ|||いちめん||きり||つつま| The car plunged straight into the low hanging cotton clouds, and the whole area was enveloped in fog.

「 さて 、 どう する ん だい ?」 "Well, what are you going to do?"

ハリー は 回り 中 から 濃い 霧 の 塊 が 押し寄せて くる ので 目 を パチパチ さ せ ながら 聞いた 。 ||まわり|なか||こい|きり||かたまり||おしよせて|||め||||||きいた Harry's eyes fluttered as he listened to the thick fog roll in from all around him.

「 どっち の 方向 に 進んだら いい の か 、 汽車 を みつけ ない と わから ない 」 ロン が 言った 。 ||ほうこう||すすんだら||||きしゃ|||||||||いった I don't know which way to go unless I find a train," Ron said.

「 もう 一 度 、 ちょっと だけ 降りよう ―― 急いで ――」 |ひと|たび|||おりよう|いそいで "Let's just go down one more time, just for a little bit-- hurry up--"

二 人 は また 雲 の 下 に 降りて 、 座席 に 座った まま 体 を よじり 、 目 を 凝らして 地上 の 方 を 見た 。 ふた|じん|||くも||した||おりて|ざせき||すわった||からだ|||め||こらして|ちじょう||かた||みた They climbed back down below the clouds, twisted around in their seats, and stared intently at the ground.

「 見つけた !」 ハリー が 叫んだ 。 みつけた|||さけんだ 「 まっすぐ 前方 ―― あそこ !」 |ぜんぽう| "Straight ahead-- there!"

ホグワーツ 特急 は 紅 の ヘビ の ように くねくね と 二 人 の 眼下 を 走って いた 。 |とっきゅう||くれない||へび|||||ふた|じん||がんか||はしって|

「 進路 は 北 だ 」 ロン が 計器 盤 の コンパス で 確認 した 。 しんろ||きた||||けいき|ばん||こんぱす||かくにん|

「 オーケー だ 。 おーけー| これ から は 三十 分 ごと ぐらい に チェック すれば いい 。 |||さんじゅう|ぶん||||ちぇっく|| つかまって ......」

車 は また 雲 の 波 を 突き抜けて 上昇 した 。 くるま|||くも||なみ||つきぬけて|じょうしょう| 一 分 後 、 二 人 は 灼ける ような 太陽 の 光 の 中 に 飛び出した 。 ひと|ぶん|あと|ふた|じん||しゃく ける||たいよう||ひかり||なか||とびだした A minute later, the two of them burst out into the scorching sunlight.

別 世界 だった 。 べつ|せかい| 車 の タイヤ は ふわふわ した 雲 の 海 を 掻き 、 眩い 白熱 の 太陽 の 下 に 、 どこ まで も 明るい ブルー の 空 が 広がって いた 。 くるま||たいや||||くも||うみ||かき|くら い|はくねつ||たいよう||した|||||あかるい|ぶるー||から||ひろがって| The car's tires were scraping through a sea of fluffy clouds, and the sky was an endless bright blue under a blinding incandescent sun.

「 あと は 飛行機 だけ 気 に して りゃ いい な 」 と ロン が 言った 。 ||ひこうき||き|||||||||いった "All we have to worry about now is the plane." Ron said.

二 人 は 顔 を 見合わせて 笑った 。 ふた|じん||かお||みあわせて|わらった They looked at each other and laughed. しばらく の 間 、 笑い が 止まら なかった 。 ||あいだ|わらい||とまら|

まるで す すばらしい 夢 の 中 に 飛び込んだ ようだった 。 |||ゆめ||なか||とびこんだ| It was as if I had jumped into a wonderful dream. 旅 を する なら この 方法 以外 に あり え な いよ 、 と ハリー は 思った 。 たび|||||ほうほう|いがい|||||||||おもった There's no other way to travel, Harry thought.

―― 白雪 の ような 雲 の 渦 や 塔 を 抜け 、 車 いっぱい の 明るい 暖かい 陽 の 光 、 計器 盤 の 下 の 小物 入れ に は ヌガー が いっぱい 。 はくせつ|||くも||うず||とう||ぬけ|くるま|||あかるい|あたたかい|よう||ひかり|けいき|ばん||した||こもの|いれ||||| ――Through the vortices of clouds and towers like white snow, the bright warm sunlight of the car, and the nougat in the accessory case under the instrument panel. それ に 、 ホグワーツ の 城 の 広広 と した 芝生 に 、 はなばなしく スイーッ と 着陸 した とき の フレッド や ジョージ の 羨まし そうな 顔 が 見える ようだ 。 ||||しろ||ひろびろ|||しばふ|||||ちゃくりく||||||じょーじ||うらやま し|そう な|かお||みえる| I could also see the envious looks on Fred and George's faces when they landed on the spacious lawn of Hogwarts Castle with a splash.

北 へ 北 へ と 飛び ながら 、 二 人 は 定期 的に 汽車 の 位置 を チェック した 。 きた||きた|||とび||ふた|じん||ていき|てきに|きしゃ||いち||ちぇっく| 雲 の 下 に 潜る たび に 違った 景色 が 見えた 。 くも||した||くぐる|||ちがった|けしき||みえた Every time I went under a cloud, I saw a different view. ロンドン は あっという間 に 過ぎ去り 、 すっきり と した 緑 の 畑 が 広 が り 、 それ も 広大な 紫 が かかった 荒野 に 変わり 、 おもちゃ の ような 小さな 教会 を 囲んだ 村 々 が 見え 、 色とりどりの 蟻 の ような 車 が 、 忙しく 走り回って いる 大きな 都市 も 見えた 。 ろんどん||あっというま||すぎさり||||みどり||はたけ||ひろ|||||こうだいな|むらさき|||こうや||かわり||||ちいさな|きょうかい||かこんだ|むら|||みえ|いろとりどりの|あり|||くるま||いそがしく|はしりまわって||おおきな|とし||みえた London was gone in the blink of an eye, replaced by fields of clear green, then a vast purple wilderness, villages with small toy-like churches around them, and large cities with colorful, ant-like cars busily driving around.

何事 も なく 数 時間 が 過ぎる と 、 さすが に ハリー も 飽きて きた 。 なにごと|||すう|じかん||すぎる||||||あきて| After a few hours passed without incident, Harry was getting bored. ヌガー の おかげ で 喉 が カラカラ に なって きた のに 、 飲む 物 が なかった 。 ||||のど|||||||のむ|ぶつ|| Thanks to Nougat, my throat became calaca, but I had nothing to drink. ロン も ハリー も セーター を 脱ぎ捨てた が 、 ハリー の T シャツ は 座席 の 背 に べったり 張りつき 、 メガネ は 汗 で 鼻 から ずり落ちて ばかり いた 。 ||||せーたー||ぬぎすてた||||t|しゃつ||ざせき||せ|||はりつき|めがね||あせ||はな||ずりおちて|| Ron and Harry both took off their sweaters, but Harry's T-shirt was sticking to the back of the seat and his glasses kept slipping off his nose due to sweat. おもしろい と 思って いた 雲 の 形 も 、 もう どうでも よく なり 、 ハリー は ずーっと 下 を 走って いる 汽車 の 中 を 懐かしく 思い出して いた 。 ||おもって||くも||かた|||||||||した||はしって||きしゃ||なか||なつかしく|おもいだして| The cloud formations he had thought were interesting no longer mattered, and he fondly remembered the train running all the way down below. 小 太り の 魔女 の おばさん が 押して くる カート に は 、 ひんやり と 冷たい 魔女 かぼちゃ ジュース が ある のに ......。 しょう|ふとり||まじょ||||おして|||||||つめたい|まじょ||じゅーす||| A fat witch aunt pushes a cart filled with chilly witch pumpkin juice. ...... いったい どうして 、9 と 4 分 の 3 番 線 に 行け なかった んだろう ? |||ぶん||ばん|せん||いけ||

「 まさか 、 もう そんなに 遠く ない よ な ?」 |||とおく||| "No way, isn't it so far?"

それ から 何 時間 も たち 、 太陽 が 雲海 を 茜色 に 染め 、 その かなた に 沈み はじめた とき 、 ロン が かすれ 声 で 言った 。 ||なん|じかん|||たいよう||うんかい||あかねいろ||しめ||||しずみ||||||こえ||いった Hours later, when the sun dyed the sea of clouds in madder red and began to set in the distance, Ron said in a faint voice.

「 そろそろ また 汽車 を チェック しよう か ?」 ||きしゃ||ちぇっく|| "Maybe it's time to check on the train again?"

汽車 は 雪 を かぶった 山間 を くねり ながら 、 まだ 真 下 を 走って いた 。 きしゃ||ゆき|||さんかん|||||まこと|した||はしって| The train was still running beneath, winding through the snow-capped mountains. 雲 の 傘 で 覆わ れた 下 の 世界 は ずっと 暗く なって いた 。 くも||かさ||おおわ||した||せかい|||くらく|| The world underneath, covered with a cloud umbrella, was much darker.

ロン は アクセル を 踏み込み 、 また 上昇 しよう と した 。 ||あくせる||ふみこみ||じょうしょう||| その とき 、 エンジン が 甲高い 音 を 出し はじめた 。 ||えんじん||かんだかい|おと||だし| At that time, the engine began to make a high-pitched sound.

二 人 は 不安 げ に 顔 を 見合わせた 。 ふた|じん||ふあん|||かお||みあわせた

「 きっと 疲れた だけ だ 。 |つかれた|| "I'm sure I'm just tired. こんなに 遠く まで 来た の は 初めて だし ......」 ロン が 言った 。 |とおく||きた|||はじめて||||いった It's the first time I've come this far ... "Ron said.

空 が 確実に だんだん 暗く なり 、 車 の カンカン 音 が だんだん 大きく なって も 、 二 人 と も 気 が つ か ない ふり を した 。 から||かくじつに||くらく||くるま||かんかん|おと|||おおきく|||ふた|じん|||き||||||| Even though the sky was definitely getting darker and the car was getting louder and louder, they both pretended to be unaware. 漆黒 の 中 に 星 が ポツリポツリ と きらめき はじめた 。 しっこく||なか||ほし||ぽつりぽつり||| Stars began to twinkle in the blackness. ワイパー が 恨めし げ に ふらふら し はじめた の を 無視 し ながら 、 ハリー は また セーター を 着込んだ 。 ||うらめし||||||||むし||||||せーたー||きこんだ Harry wore a sweater again, ignoring the wiper's beginning to flutter in a grudge.

「 もう 遠く は ない 」 ロン は ハリー に と いう より 車 に 向かって そう 言った 。 |とおく||||||||||くるま||むかって||いった It's not far now," Ron said, more to the car than to Harry. 「 もう 、 そう 遠く は ない から 」 ロン は 心配 そうに 計器 盤 を 軽く 叩いた 。 ||とおく||||||しんぱい|そう に|けいき|ばん||かるく|たたいた

しばらく して もう 一 度 雲 の 下 に 出た とき 、 何 か 見覚え の ある 目印 は ない か と 、 二 人 は 暗闇 の 中 で 目 を 凝らした 。 |||ひと|たび|くも||した||でた||なん||みおぼえ|||めじるし|||||ふた|じん||くらやみ||なか||め||こらした After a while, when they were under the clouds once more, they looked around in the darkness for any familiar landmarks.

「 あそこ だ !」 ハリー の 大声 で ロン も ヘドウィグ も 跳び上がった 。 ||||おおごえ||||||とびあがった There it is! Harry shouted, and both Ron and Hedwig jumped up. 「 真 正面 だ !」 まこと|しょうめん|

湖 の むこう 、 暗い 地平 線 に 浮かぶ 影 は 、 崖 の 上 に 聳え立つ ホグワーツ 城 の 大小 さまざまな 尖塔 だ 。 こ|||くらい|ちへい|せん||うかぶ|かげ||がけ||うえ||しょう え たつ||しろ||だいしょう||せんとう| Out beyond the lake, on the dark horizon, the shadows are the various large and small spires of Hogwarts Castle rising above the cliffs.

しかし 、 車 は 震え 、 失速 し だした 。 |くるま||ふるえ|しっそく||

「 がんばれ 」 ロン が ハンドル を 揺すり ながら 、 なだめる ように 言った 。 |||はんどる||ゆすり||||いった Ron shook the steering wheel and said soothingly, "Hang in there.

「 もう すぐだ から 、 がんばれよ ――」

エンジン が うめいた 。 えんじん|| The engine groaned. ボンネット から 蒸気 が いく 筋 も シュー シュー 噴き出して いる 。 ぼんねっと||じょうき|||すじ||しゅー|しゅー|ふきだして| Several streaks of steam are spewing from the hood. 車 が 湖 の 方 に 流されて 行き 、 ハリー は 思わず 座席 の 端 を しっかり 握りしめて いた 。 くるま||こ||かた||ながさ れて|いき|||おもわず|ざせき||はし|||にぎりしめて| Harry gripped the edge of his seat as the car drifted toward the lake. 車 が グラグッ と 嫌な 揺れ 方 を した 。 くるま||||いやな|ゆれ|かた|| The car shook unpleasantly. ハリー が 窓 の 外 を ちらっと 見る と 、 一 、 二 キロ 下 に 黒々 と 鏡 の ように 滑らかな 湖面 が 見えた 。 ||まど||がい|||みる||ひと|ふた|きろ|した||くろぐろ||きよう|||なめらかな|こめん||みえた ロン は 指 の 節 が 白く なる ほど ギュッと ハンドル を 握り しめて いた 。 ||ゆび||せつ||しろく|||ぎゅっと|はんどる||にぎり|| Ron squeezed the steering wheel so hard that his knuckles turned white. 車 が また グラッ と 揺れた 。 くるま|||||ゆれた

「 がんばれったら 」 ロン が 歯 を 食いしばった 。 がんばれ ったら|||は||くいしばった 湖 の 上 に 来た ...... 城 は 目の前 だ 。 こ||うえ||きた|しろ||めのまえ| ...... ロン が 足 を 踏ん張った 。 ||あし||ふんばった

ガタン 、 ブスブスッ と 大きな 音 を たてて 、 エンジン が 完全に 死んだ 。 |||おおきな|おと|||えんじん||かんぜんに|しんだ

「 ウ 、 ヮ 」 シンと した 中 で ロン の 声 だけ が 聞えた 。 ||しんと||なか||||こえ|||きこえた "U, U, U Ron's voice was the only sound in the silence. 車 が 鼻 から 突っ込んだ 。 くるま||はな||つっこんだ A car ran into the nose of the car. スピード を 上げ ながら 落ちて 行く 。 すぴーど||あげ||おちて|いく The speed is increasing as it falls. 城 の 堅い 壁 に まっすぐ 向かって 行く 。 しろ||かたい|かべ|||むかって|いく

「 ダメェェェェェェ !」

ハンドル を 左右 に 揺すり ながら ロン が 叫んだ 。 はんどる||さゆう||ゆすり||||さけんだ 車 が 弓なり に カーブ を 描いて 、 ほんの 数 センチ の ところ で 黒い 石 壁 から 逸れ 、 黒い 温室 の 上 に 舞い上がり 、 野菜 畑 を 越え 、 黒い 芝生 の 上 へ と 、 刻々 と 高度 を 失い つつ 向かって 行った 。 くるま||ゆみなり||かーぶ||えがいて||すう|せんち||||くろい|いし|かべ||それ|くろい|おんしつ||うえ||まいあがり|やさい|はたけ||こえ|くろい|しばふ||うえ|||こくこく||こうど||うしない||むかって|おこなった The car arched around the black stone wall, veered off a few centimeters, soared over the black greenhouse, crossed the vegetable patch, and onto the black lawn, losing altitude by the second.

ロン は 完全に ハンドル を 放し 、 尻 ポケット から 杖 を 出した 。 ||かんぜんに|はんどる||はなし|しり|ぽけっと||つえ||だした Ron let go of the handle completely and pulled his cane out of his hip pocket.

「 止まれ ! 止まれ !」 とどまれ|とどまれ

ロン は 計器 盤 や ウィンドウ を バンバン 叩き ながら 叫んだ が 、 車 は 落下 し 続け 、 地面 が 見る 見 る 近づいて きた ......。 ||けいき|ばん||||ばんばん|たたき||さけんだ||くるま||らっか||つづけ|じめん||みる|み||ちかづいて|

「 あの 木 に 気 を つけて !」 |き||き||

ハリー は 叫び ながら ハンドル に 飛びつこう と した が 、 遅 過ぎた 。 ||さけび||はんどる||とびつこう||||おそ|すぎた

グワッシャン gwashan

金属 と 木 が ぶつかる 耳 を つんざく ような 音 ともに 、 車 は 太い 木 の 幹 に 衝突 し 、 地面 に 落下 し て 激しく 揺れた 。 きんぞく||き|||みみ||||おと||くるま||ふとい|き||みき||しょうとつ||じめん||らっか|||はげしく|ゆれた With a deafening sound of metal and wood colliding, the car hit a thick tree trunk and fell to the ground, shaking violently. ひしゃ げた 車 の ボンネット の 中 から 、 蒸気 が うねる ように 噴出 して いる 。 ||くるま||ぼんねっと||なか||じょうき||||ふんしゅつ|| ヘドウィグ は 怖がって ギャーギャー 鳴き 、 ハリー は 額 を フロント ガラス に ぶつけて ゴルフ ボール 大 の こぶ が ズキズキ うずいた 。 ||こわがって||なき|||がく||ふろんと|がらす|||ごるふ|ぼーる|だい||||| Hedwig squealed in horror and Harry bumped his forehead on the windshield, causing a golf ball-sized bump to throb. 右 の 方 で ロン が 絶望 した ような 低い うめき声 を あげ た 。 みぎ||かた||||ぜつぼう|||ひくい|うめきごえ|||

「 大丈夫 かい ?」 ハリー が 慌てて 聞いた 。 だいじょうぶ||||あわてて|きいた

「 杖 が 」 ロン の 声 が 震えて いる 。 つえ||||こえ||ふるえて| 「 僕 の 杖 見て 」 ぼく||つえ|みて

ほとんど 真っ二つ に 折れて いた 。 |まっぷたつ||おれて| It was almost broken in half. 杖 の 先端 が 、 裂けた 木片 に すがって かろうじて ダラリ と ぶ ら 下がって いる 。 つえ||せんたん||さけた|もくへん||||||||さがって| The tip of the cane barely hangs down, resting on a splintered piece of wood.

ハリー は 、 学校 に 行けば きっと 直して くれる よ 、 と 言い かけた が 、 一言 も 言わ ず に 口 を つぐ ま なければ なら なかった 。 ||がっこう||いけば||なおして||||いい|||いちげん||いわ|||くち|||||| Harry was about to say, "I'm sure they will fix it at school," but had to hold his tongue without saying a word. しゃべり かけた 途端 、 ハリー の 座って いる 側 の 車 の 脇腹 に 、 闘牛 の 牛 が 突っ込んで きた ような パンチ が 飛んで きた のだ 。 ||とたん|||すわって||がわ||くるま||わきばら||とうぎゅう||うし||つっこんで|||ぱんち||とんで|| As soon as I started talking, a punch like a bullfighting cow rushed into the flank of the car on the side where Harry was sitting. ハリー は ロン の 方 に 横 ざま に 突き 飛 ば さ れた 。 ||||かた||よこ|||つき|と||| Harry was pushed sideways toward Ron. 同時に 、 車 の 屋根 に 同じ ぐらい の 強力な ヘビーブロー が かかった 。 どうじに|くるま||やね||おなじ|||きょうりょくな|||

「 何事 だ ?――」 なにごと|

ウィンドウ から 外 を 覗いた ロン が 息 を 呑 んだ 。 ||がい||のぞいた|||いき||どん| ハリー が 振り返る と 、 ちょうど 、 大 ニシキヘ ビ の ような 太い 枝 が 、 窓 めがけて 一撃 を 食らわ せる ところ だった 。 ||ふりかえる|||だい|||||ふとい|えだ||まど||いちげき||くらわ||| ぶつかった 木 が 二 人 を 襲って いる 。 |き||ふた|じん||おそって| 幹 を 「 く 」 の 字 に 曲げ 、 節くれだった 大枝 で 、 ところ かまわ ず 車 に 殴り か かって きた 。 みき||||あざ||まげ|ふしくれだった|おおえだ|||||くるま||なぐり||| The trunk was bent into a "U" shape and large, splintered branches were used to hit cars all over the place. 「 ウヮヮァ !」

ねじれた 枝 の パンチ で ドア が 凹み 、 ロン が 叫んだ 。 |えだ||ぱんち||どあ||くぼみ|||さけんだ The door was dented by the punch of a twisted branch, and Ron shouted. 小枝 の こぶし が 雤 あられ と パンチ を 浴び せ 、 ウィンドウ は ビリビリ 震え 、 巨大 ハンマー の ような 太い 大枝 が 、 狂暴に 屋根 を 打ち 、 凹 ませて いる ――。 こえだ|||||あら れ||ぱんち||あび||||びりびり|ふるえ|きょだい|はんまー|||ふとい|おおえだ||きょうぼうに|やね||うち|おう|| Fists of twigs hurl hail and punch, windows shudder, and thick branches like giant hammers hammer madly at the roof and dent it.

「 逃げろ !」 にげろ ロン が 叫び ながら 体 ごと ドア に ぶつかって 行った が 、 次の 瞬間 、 枝 の 猛烈な アッパーカット を 位 、 吹っ飛ば されて ハリー の 膝 に 逆戻り して きた 。 ||さけび||からだ||どあ|||おこなった||つぎの|しゅんかん|えだ||もうれつな|||くらい|ふっとば|さ れて|||ひざ||ぎゃくもどり|| Ron screamed and bumped into the door with his body, but at the next moment, he was blown away by the fierce uppercut of the branch and returned to Harry's knee. 「 もう ダメだ !」 |だめだ " I can not continue !"

屋根 が 落ち込んで きて 、 ロン が うめいた 。 やね||おちこんで|||| Ron groaned as the roof fell in. すると 、 急に 車 の フロア が 揺れ はじめた ―― エン ジン が 生き返った 。 |きゅうに|くるま||ふろあ||ゆれ||えん|||いきかえった Then, suddenly, the floor of the car began to shake-the engine came back to life.

「 バック だ !」 ハリー が 叫んだ 。 ばっく||||さけんだ "It's back!" Harry shouted.

車 は シュッ と バック した 。 くるま||||ばっく| The car reversed. 木 は 攻撃 を やめ ない 。 き||こうげき||| Trees do not stop attacking. 車 が 急いで 木 の そば から 離れよう と する と 、 根元 が 軋み 、 根こそぎ 地面 を 離れ そうに 伸び上がって 追い 討ち を かけて きた 。 くるま||いそいで|き||||はなれよう||||ねもと||きしみ|ねこそぎ|じめん||はなれ|そう に|のびあがって|おい|うち||| When the car hurriedly tried to get away from the side of the tree, the roots squeaked, and the roots stretched out to leave the ground and chased.

「 まったく 」 ロン が あえぎ ながら 行った 。 |||||おこなった "Not at all," Ron quipped. 「 や ばかった ぜ 。 |ばか った| "It was ridiculous. 車 よ 、 よく やった 」 くるま||| "Well done, car.

しかし 、 車 の 方 は これ 以上 たくさんだ と ばかり 、 ガチャ 、 ガチャ と 二 回 短い 音 を たてて 、 ド ア が パカッ と 開いた 。 |くるま||かた|||いじょう|||||||ふた|かい|みじかい|おと||||||||あいた The car, however, had had enough, and the door slammed open with two short, shuddering sounds. ハリー は 座席 が 横 に 傾く の を 感じた 。 ||ざせき||よこ||かたむく|||かんじた Harry felt the seat tilted sideways. 気づいた とき に は 、 ハリー は 湿った 地面 の 上 に 無 様 に 伸びて いた 。 きづいた||||||しめった|じめん||うえ||む|さま||のびて| By the time he noticed, Harry had grown awkwardly on the moist ground. ドサッ と いう 大きな 音 は 、 車 の トランク から 荷物 が 吐 き 出さ れた 音 らしい 。 |||おおきな|おと||くるま||とらんく||にもつ||は||ださ||おと| ヘドウィグ の 籠 が 宙 に 舞い 、 戸 が パッと 開いた 。 ||かご||ちゅう||まい|と||ぱっと|あいた A basket of Hedwig flew in the air, and the door popped open. ヘドウィグ は 籠 から 飛び出し 、 ギーギー と 怒った ように 大声 で 鳴き ながら 、 城 を 目指して 、 振り返り も せ ず に 飛 んで いって しまった 。 ||かご||とびだし|||いかった||おおごえ||なき||しろ||めざして|ふりかえり|||||と||| 凸凹 車 は 、 傷 だらけ で 湯気 を シュー シュー 噴き ながら 、 暗闇 の 中 に ゴ ロゴロ と 走り去って しまった 。 でこぼこ|くるま||きず|||ゆげ||しゅー|しゅー|ふき||くらやみ||なか|||||はしりさって| The bumpy car, covered in scratches and spewing steam, rumbled off into the darkness. テールランプ が 怒った ように ギラ ついて いた 。 ||いかった||||

「 戻って くれ !」 折れた 杖 を 振り回し 、 ロン が 車 の 後ろ から 叫んだ 。 もどって||おれた|つえ||ふりまわし|||くるま||うしろ||さけんだ "Come back!" Swinging around the broken wand, Ron shouted from behind the car. 「 パパ に 殺さ れちゃ うよ !」 しかし 、 車 は 最後に プッ と 排気 ガス を 噴いて 、 見え なく なって しまった 。 ぱぱ||ころさ||||くるま||さいごに|ぷっ||はいき|がす||ふいて|みえ||| "I'll be killed by my dad!" However, the car finally blew out exhaust gas and disappeared. 「 僕たちって 信じられ ない ぐらい ついて ない ぜ 」 かがんで 、 ねずみ の スキャバーズ を 拾い上げ ながら 、 ロン が 情けな さ そうに 言った 。 ぼくたち って|しんじ られ|||||||||||ひろいあげ||||なさけな||そう に|いった "We can't believe it," he bent over, picking up the mouse scabbards, and Ron said mercilessly. 「 より に よって 、 おお 当たり だ よ 。 ||||あたり|| "It's a good idea. 当たり 返し を する 木 に 当たる なんて さ 」 ロン は ちらり と 振り返って 巨木 を 見た 。 あたり|かえし|||き||あたる|||||||ふりかえって|きょぼく||みた I can't believe I hit a tree that was going to hit back," Ron glanced back and looked at the giant tree. まだ 枝 を 振り回して 威嚇 して いる 。 |えだ||ふりまわして|いかく|| He is still waving branches around in a threatening manner. 「 行こう 。 いこう 学校 に たどり着か なくちゃ 」 ハリー が 疲れ果てた 声 で 言った 。 がっこう||たどりつか||||つかれはてた|こえ||いった We have to get back to school," Harry said in an exhausted voice.

想 僕 して いた ような 凱旋 と は 大 違い だった 。 おも|ぼく||||がいせん|||だい|ちがい| It was a far cry from the triumph I had imagined. 痚 い やら 、 寒い やら 、 傷 だらけ の 二 人 は トラン ク の 端 を つかんで 引きずり ながら 、 城 の 正面 の がっしり した 樫 の 扉 を 目指し 、 草 の 茂った 斜 面 を 登り はじめた 。 |||さむい||きず|||ふた|じん|||||はし|||ひきずり||しろ||しょうめん||||かし||とびら||まなざし|くさ||しげった|しゃ|おもて||のぼり| Cold and wounded, they grabbed the ends of their trunks and dragged themselves up the grassy slope toward the front door of the castle, a solid oak doorway.

「 もう 新 学期 の 歓迎 会 は 始まって る と 思う な 」 |しん|がっき||かんげい|かい||はじまって|||おもう| "I think the welcome party for the new semester has already begun."

扉 の 前 の 階段 下 で 、 トランク を ドサッ と 下ろし 、 ロン は そう 言い ながら 、 こっそり 横 の 方 に 移動 し 、 明るく 輝く 窓 を 覗き込んだ 。 とびら||ぜん||かいだん|した||とらんく||||おろし||||いい|||よこ||かた||いどう||あかるく|かがやく|まど||のぞきこんだ At the bottom of the stairs in front of the door, Ron slammed the trunk down and, with that, stealthily moved to the side to look into the brightly lit window.

「 あっ、 ハリー 、 来て 。 ||きて 見て ごらん よ ―― 組 分け 帽子 だ !」 みて|||くみ|わけ|ぼうし| Look at that - a split hat!"

ハリー が 駆け寄り 、 二 人 で 大広間 を 覗き込んだ 。 ||かけより|ふた|じん||おおひろま||のぞきこんだ Harry rushed over and they both looked into the hall.

四 つ の 長 テーブル の 周り に びっしり と みんな が 座り 、 その 上 に 数え 切れ ない ほど の 蝋燭 が 宙 に 浮かんで 、 金 の 皿 や 杯 を キラキラ 輝か せて いた 。 よっ|||ちょう|てーぶる||まわり||||||すわり||うえ||かぞえ|きれ||||ろうそく||ちゅう||うかんで|きむ||さら||さかずき||きらきら|かがやか|| Everyone sat crowded around four long tables with countless candles floating in the air, glinting off the gold plates and cups. 天井 は いつも の ように 魔法 で 本物 の 空 を 映し 、 星 が 瞬いて いた 。 てんじょう|||||まほう||ほんもの||から||うつし|ほし||またたいて|