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2 - Harry Potter, 15.2 アラゴグ - Aragog

15.2 アラゴグ - Aragog

ロン は 何も 言わ なかった 。 身動き も し なかった 。 ハリー の すぐ 後ろ 、 地面 から 二 、 三 メート ル 上 の 一 点 に 、 目 が 釘付け に なって いる 。

顔 が 恐怖 で 土 気色 だ 。 振り返る 間 も なかった 。 カシャッカシャッ と 大きな 音 が した か と 思う と 、 何 か 長くて 毛 むくじゃ ら な もの が 、 ハリー の 体 を 鷲づかみ に して 持ち上げた 。

ハリー は 逆さまに 宙吊り に なっった 。 恐怖 に 囚 われ 、 もがき ながら も 、 ハリー は また 別の カシャッカシャッ と いう 音 を 聞いた 。

ロン の 足 が 宙 に 浮く の が 見え 、 ファング が クィンクィン 、 ワォンワオン 鳴き 喚 いて いる の が 聞こえた 。

―― 次の 瞬間 、 ハリー は 暗い 木立 の 中 に サーッ と 運び込ま れた 。

逆さ 吊 り の まま 、 ハリー は 自分 を 捕らえて いる もの を 見た 。

六 本 の 恐ろしく 長い 、 毛 むくじゃ ら の 脚 が 、 ザック ザック と 突き進み 、 その 前 の 二 本 の 脚 で ハリー を がっちり 挟み 、 その 上 に 黒 光り する 一 対 の 鋏 が あった 。 後ろ に 、 もう 一 匹 同じ 生物 の 気配 が する 。

ロン を 運んで いる に 違いない 。 森 の 奥 へ 奥 へ と 行進 して 行く 。 ファング が 三 匹 め の 怪物 から 逃れよう と 、 キャンキャン 鳴き ながら 、 ジタバタ もがいて いる の が 聞こえた 。 ハリー は 叫び たくて も 叫べ なかった 。 あの 空き地 の 、 車 の ところ に 声 を 置き忘れて きた らしい 。

どの ぐらい の 間 、 怪物 に 挟まれて いた のだろう か 、 真っ暗闇 が 突然 薄 明るく なり 、 地面 を 覆う 木 の 葉 の 上 に 、 クモ が うじゃうじゃ いる の が 見えた 。 首 を 捻って 見る と 、 だだっ広い 窪地 の ふち に たどり着いた の が 見える 。

木 を 切り払った 窪地 の 中 を 星 明り が 照らし出し 、 ハリー が これ まで に 目 に した こと が ない 、 世にも 恐ろしい 光景 が 飛び込んで きた 。

蜘妹 だ 。

木 の 勢 の 上 に うじゃうじゃ して いる 細かい クモ と は モノ が 違う 。

馬車 馬 の ような 、 八 つ 目 の 、 八 本 脚 の 、 黒々 と した 、 毛 むくじゃ ら の 、 巨大な 蜘味 が 数 匹 。 ハリー を 運んで きた 巨大 蜘味 の 見本 の ような の が 、 窪地 の ど真ん中 に ある 靄 の ような ドーム 型 の 蜘妹 の 巣 に 向かって 、 急な 傾斜 を 滑り 降りた 。

仲間 の 巨大 蜘妹 が 、 獲物 を 見て 興奮 し 、 鋏 を ガチャ つかせ ながら 、 その 周り に 集結 した 。

巨大 蜘味 が 鋏 を 放し 、 ハリー は 四 つ ん 違い に なって 地面 に 落ちた 。 ロン も ファング も 隣 に ド サッと 落ちて きた 。

ファング は もう 鳴く こと さえ でき ず 、 黙って その 場 に すくみ 上がって いた 。

ロン は ハリー の 気持ち を そっくり 顔 で 表現 して いた 。

声 に なら ない 悲鳴 を あげ 、 口 が 大きく 叫び声 の 形 に 開いて いる 。 目 は 飛び出して いた 。

ふと 気 が つく と 、 ハリー を 捕まえて いた 蜘妹 が 何 か 話して いる 。

一言 しゃべる たび に 鋏 を ガチャガチャ いわ せる ので 、 話して いる と いう こと に さえ 、 なか な か 気づか なかった 。

「 アラゴグ !」 と 呼んで いる 。

「 アラゴグ !」

靄 の ような 蜘株 の 巣 の ドーム の 真ん中 から 、 小型の 象 ほど も ある 蜘味 が ゆらり と 現れた 。

胴体 と 脚 を 覆う 黒い 毛 に 白い もの が 混じり 、 鋏 の ついた 醜い 頭 に 、 八 つ の 自 濁した 目 が あった 。 ―― 盲いて いる 。

「 なんの 用 だ !」 鋏 を 激しく 鳴らし ながら 、 盲目の 蜘妹 が 言った 。

「 人間 です 」 ハリー を 捕まえた 巨大 蜘妹 が 答えた 。 「 ハグリッド か !」 アラゴグ が 近づいて きた 。

八 つ の 濁った 目 が 虚 ろ に 動いて いる 。 「 知ら ない 人間 です 」 ロン を 運んだ 蜘味 が 、 カシャカシャ 言った 。 「 殺せ 」 アラゴグ は イライラ と 鋏 を 鳴らした 。

「 眠って いた のに ......」

「 僕たち 、 ハグリッド の 友達 です 」 ハリー が 叫んだ 。 心臓 が 胸 から 飛び上がって 、 喉元 で 脈 を 打って いる ようだった 。 カシャッカシャッカシャッ 一 窪地 の 中 の 巨大 蜘味 の 鋏 が いっせいに 鳴った 。 アラゴグ が 立ち止まった 。 「 ハグリッド は 一 度 も この 窪地 に 人 を 寄こした こと は ない 」 ゆっくり と アラゴグ が 言った 。 「 ハグリッド が 大変な んです 」 息 を 切らし ながら ハリー が 言った 。 「 それ で 、 僕たち が 来た んです 」

「 大変 !」

年老いた 巨大 蜘味 の 鋏 の 音 が 気 遣わし げ な の を 、 ハリー は 聞き取った ように 思った 。

「 しかし 、 なぜ おまえ を 寄こした !」 ハリー は 立ち上がろう と した が 、 やめ に した 。

とうてい 足 が 立た ない 。 そこ で 、 地べた に 這った まま 、 できる だけ 落ち着いて 話した 。

「 学校 の みんな は 、 ハグリッド が けしかけて ―― か 、 怪 ―― 何物 か に 、 学生 を 襲わ せた と 思って いる んです 。 ハグリッド を 逮捕 して 、 アズカバン に 送りました 」 アラゴグ は 怒り狂って 鋏 を 鳴らした 。 蜘妹 の 群れ が それ に 従い 、 窪地 中 に 音 が こだま した 。

ちょうど 拍手 喝采 の ようだった が 、 普通の 拍手 なら 、 ハリー も 恐怖 で 吐き気 を 催す こと は な かったろう 。

「 しかし 、 それ は 昔 の 話 だ 」 アラゴグ は 苛立った 。

「 何 年 も 何 年 も 前 の こと だ 。 よく 覚えて いる 。 それ で ハグリッド は 退学 さ せられた 。 みんな が わし の こと を 、 いわゆる 『 秘密の 部屋 』 に 住む 怪物 だ と 信じ込んだ 。 ハグリッド が 『 部 屋 』 を 開けて 、 わし を 自由に した のだ と 考えた 」

「 それ じゃ 、 あなた は ...... あなた が 『 秘密の 部屋 』 から 出て きた ので は ない のです か ?」 ハリー は 、 額 に 冷 汗 が 流れる の が わかった 。 「 わし が !」 アラゴグ は 怒り で 鋏 を 打ち鳴らした 。

「 わし は この 城 で 生まれた ので は ない 。 遠い ところ から やってきた 。 まだ 卵 だった とき に 、 旅人 が わし を ハグリッド に 与えた 。 ハグリッド は まだ 尐年 だった が 、 わし の 面倒 を 見て くれ た 。 城 の 物置 に 隠し 、 食事 の 残り物 を 集めて 食べ させて くれた 。 ハグリッド は わし の 親友 だ 。 いい やつ だ 。 わし が 見つかって しまい 、 女の子 を 殺した 罪 を 着せられた とき 、 ハグリッ ド は わし を 護って くれた 。 その とき 以来 、 わし は この 森 に 住み 続けた 。 ハグリッド は 今 でも 時々 訪ねて きて くれる 。 妻 も 探して きて くれた 。 モサグ を 。 見ろ 。 わし ら の 家族 は こんなに 大きく なった 。 みんな ハグリッド の おかげ だ ......」

ハリー は ありったけ の 勇気 を 搾り 出した 。

「 それ じゃ 、 一 度 も ―― 誰 も 襲った こと は ない のです か ?」

「 一 度 も ない 」 年老いた 蜘妹 は しわがれ 声 を 出した 。

「 襲う の は わし の 本能 だ 。 しかし 、 ハグリッド の 名誉 の ため に 、 わし は 決して 人間 を 傷つけ は し なかった 。 殺さ れた 女の子 の 死体 は 、 トイレ で 発見 さ れた 。 わし は 自分 の 育った 物置 の 中 以外 、 城 の 他 の 場所 は どこ も 見た こと が ない 。 わし ら の 仲間 は 、 暗くて 静かな ところ を 好む ......」

「 それ なら ...... いったい 何 が 女の子 を 殺した の か 知りません か ? 何者 であれ 、 そいつ は 今 戻って きて 、 また みんな を 襲って ――」 カシャカシャ と いう 大きな 音 と 、 何 本もの 長い 脚 が 怒り で 擦れ 合う 、 ザワザワ と いう 音 が 湧き 起こり 、 言葉 が 途中 で かき消さ れた 。 大きな 黒い もの が ハリー を 囲んで ガサゴソ と 動いた 。

「 城 に 住む その物 は 」 アラゴグ が 答えた 。

「 わし ら 蜘妹 の 仲間 が 何より も 恐れる 、 太古 の 生物 だ 。 その 怪物 が 、 城 の 中 を 動き回って い る 気配 を 感じた とき 、 わし を 外 に 出して くれ と 、 ハグリッド に どんなに 必死で 頼んだ か 、 よ く 覚えて いる 」

「 いったい その 生物 は !」 ハリー は 急き込んで 尋ねた 。

また 大きな カシャカシャ と ザワザワ が 湧いた 。

蜘妹 が さらに 詰め寄って きた ようだ 。

「 わし ら は その 生物 の 話 を し ない !」 アラゴグ が 激しく 言った 。 「 わし ら は その 名前 さえ 口 に し ない ! ハグリッド に 何度 も 聞か れた が 、 わし は その 恐ろしい 生物 の 名前 を 、 決して ハグ リッド に 教え は し なかった 」

ハリー は それ 以上 追及 し なかった 。

巨大 蜘妹 が 、 四方八方 から 詰め寄って きて いる 。 今 は ダメだ 。

アラゴグ は 話す の に 疲れた 様子 だった 。 ゆっくり と また 蜘妹 の 巣 の ドーム へ と 戻って 行った 。 しかし 仲間 の 蜘妹 は 、 ジリッジリッ と 尐 し ずつ 二 人 に 詰め寄って くる 。

「 それ じゃ 、 僕たち は 帰ります 」 木 の 葉 を ガサゴソ いわ せる 音 を 背後 に 聞き ながら 、 ハリー は アラゴグ に 絶望 的な 声 で 呼びかけた 。 「 帰る !」 アラゴグ が ゆっくり と 言った 。 「 それ は なる まい ......」

「 でも ―― でも ――」

「 わし の 命令 で 、 娘 や 息子 たち は ハグリッド を 傷つけ は し ない 。 しかし 、 わし ら の まった だ 中 に 進んで ノコノコ 迷い 込んで きた 新鮮な 肉 を 、 おあずけ に は でき まい 。 さらば 、 ハグリッ ド の 友人 よ 」

ハリー は 、 体 を 回転 さ せて 上 を 見た 。

ほんの 数 十 センチ 上 に 聳 え 立つ 蜘珠 の 壁 が 、 鋏 を ガチャ つか せ 、 醜い 黒い 頭 に たくさんの 目 を ギラ つか せて いる ......。

杖 に 手 を かけ ながら も 、 ハリー に は 無駄な 抵抗 と わかって いた 。 多勢 に 無勢 だ 。

それ でも 戦って 死ぬ 覚悟 で 立ち上がろう と した その とき 、 高らかな 長い 音 と ともに 、 窪地 に 眩 い 光 が 射し込んだ 。

ウィーズリー 氏 の 車 が 、 荒々しく 斜面 を 走り 降りて くる 。 ヘッドライト を 輝か せ 、 クラク ション を 高々 と 鳴らし 、 蜘妹 を なぎ倒し ―― 何 匹 か は 仰向け に 引っくり返さ れ 、 何 本 も の 長 い 脚 を 空 に 泳が せて いた 。

車 は ハリー と ロン の 前 で キキーツ と 停 まり 、 ドア が パッと 開いた 。

「 ファング を !」

ハリー は 、 前 の 座席 に 飛び込み ながら 叫んだ 。

ロン は 、 ボアハウンド の 胴 の あたり を む ん ず と 抱きかかえ 、 キャンキャン 鳴いて いる の を 、 後ろ の 座席 に 放り込んだ 。

ドア が バタン と 閉まり 、 ロン が アクセル に 触り も し ない のに 、 車 は ロン の 助け も 借り ず 、 エ ンジン を 唸ら せ 、 またまた 蜘妹 を 引き 倒し ながら 発進 した 。

車 は 坂 を 猛 スピード で 駆け上がり 、 窪地 を 抜け出し 、 間もなく 森 の 中 へ と 突っ込んだ 。 車 は 勝手に 走った 。

太い 木 の 枝 が 窓 を 叩き は した が 、 車 は どうやら 自分 の 知っている 道 らしく 、 巧みに 空間 の 広 く 空いて いる ところ を 通った 。

ハリー は 隣 の ロン を 見た 。 まだ 口 は 開きっぱなし で 、 声 に なら ない 叫び の 形 の まま だった が 、 目 は もう 飛び出して は い なかった 。 「 大丈夫 かい !」 ロン は まっすぐ 前 を 見つめた まま 、 口 が きけ ない 。 森 の 下 生え を なぎ倒し ながら 草 は 突進 した 。

ファング は 後ろ の 席 で 大声 で 吼 えて いる 。

大きな 樫 の 木 の 脇 を 無理やり すり抜ける とき 、 ハリー の 目の前 で 、 サイドミラー が ポッキリ 折れた 。

ガタガタ と 騒々しい 凸凹 の 十 分間 が 過ぎた ころ 、 木立 が やや まばらに なり 、 茂み の 間 から ハ リー は 、 再び 空 を 垣間見る こと が できた 。

車 が 急 停車 し 、 二 人 は フロント ガラス に ぶつかり そうに なった 。

森 の 入口 に たどり着いた のだ 。 ファング は 早く 出 たくて 窓 に 飛びつき 、 ハリー が ドア を 開け て やる と 、 尻尾 を 巻いた まま 、 一目散に ハグリッド の 小屋 を 目指して 、 木立 の 中 を ダッシュ して 行った 。

ハリー も 車 を 降りた 。 それ から 一 分 ぐらい たって 、 ロン が ようやく 手足 の 感覚 を 取り戻した らしく 、 まだ 首 が 硬直 して 前 を 向いた まま だった が 、 降りて きた 。

ハリー は 感謝 を 込めて 車 を 撫で 、 車 は また 森 の 中 へ と バック して 、 やがて 姿 が 見え なく なった 。 ハリー は 「 透明 マント 」 を 取り に ハグリッド の 小屋 に 戻った 。 ファング は 寝床 の バスケット で 毛布 を 被って 震えて いた 。

小屋 の 外 に 出る と 、 ロン が かぼちゃ 畑 で ゲーゲー 吐いて いた 。 「 クモ の 跡 を つけろ だって 」 ロン は 袖 で 口 を 拭き ながら 弱々しく 言った 。 「 ハグリッド を 許さ ない ぞ 。 僕たち 、 生きて る の が 不思議だ よ 」 「 きっと 、 アラゴグ なら 自分 の 友達 を 傷つけ ない と 思った んだ よ 」 ハリー が 言った 。 「 だから ハグリッドって ダメな んだ !」 ロン が 小屋 の 壁 を ドンドン 叩き ながら 言った 。 「 怪物 は どうしたって 怪物 な のに 、 みんな が 、 怪物 を 悪者 に して しまった んだ と 考えて る 。 その つけ が どう なった か ! アズカバン の 独房 だ !」 ロン は 今に なって ガタガタ 震え が 止まら なく なって いた 。

「 僕たち を あんな ところ に 追いやって 、 いったい なんの 意味 が あった ! 何 が わかった か 教え て もらいたい よ 」 「 ハグリッド が 『 秘密の 部屋 』 を 開けた んじゃ な いって こと だ 」 ハリー は マント を ロン に かけて やり 、 腕 を 取って 、 歩く ように 促し ながら 言った 。 「 ハグリッド は 無実 だった 」

ロン は フン と 大きく 鼻 を 鳴らした 。 アラゴグ を 物置 の 中 で 解す なんて 、 どこ が 「 無実 」 な も ん か 、 と 言い た げ だ 。

城 が だんだん 近く に 見えて きた 。

ハリー は 「 透明 マント 」 を 引っ張って 足先 まで すっぽり 隠し 、 それ から 軋む 扉 を そ ーっと 半 開き に した 。 玄関 ホール を こっそり と 横切り 、 大理石 の 階段 を 上り 、 見張り 番 が 目 を 光らせて いる 廊下 を 、 息 を 殺して 通り過ぎた 。

ようやく 安全 地帯 の グリフィンドール の 談話 室 に たどり着いた 。 暖炉 の 火 は 燃え尽き 、 灰 に なった 残り 火 が 、 わずかに 赤み を 帯びて いた 。 二 人 は マント を 脱ぎ へ 曲がりくねった 階段 を 上って 寝室 に 向かった 。 ロン は 服 も 脱が ず に ベッド に 倒れ込んだ 。 しかし ハリー は あまり 眠く なかった 。 四 本 柱 付き の ベッド の 端に 腰掛け 、 アラゴグ が 言った こと を 一生懸命 考えた 。

城 の どこ か に 潜む 怪物 は 、 ヴォルデモート を 怪物 に した ような もの かも しれ ない 。

他の 怪物 で さえ 、 その 名前 を 口 に し た がら ない 。 しかし 、 ハリー も ロン も それ が な んな の か 、 襲った 者 を どんな 方法 で 石 に する の か 、 結局 の ところ 皆目 わから ない 。

ハグリッド で さえ 「 秘密の 部屋 」 に 、 何 が いた の か 知って は い なかった 。

ハリー は ベッド の 上 に 足 を 投げ出し 、 枕 に もたれて 、 寮 塔 の 窓 から 、 自分 の 上 に 射 し込む 月 明り を 眺めた 。

他 に 何 を したら よい の か わから ない 。 八方塞 り だ 。 リドル は まちがった 人間 を 捕まえた 。

スリザリン の 継承 者 は 逃れ 去り 、 今度 「 部屋 」 を 開けた の が 、 果たして その 人物 な の か 、 そ れ と も 他の 誰 か な の か 、 わから ず じまい だ 。 もう 誰 も 尋ねる べき 人 は いない 。 ハリー は 横 に なった まま 、 アラゴグ の 言った こと を また 考えた 。

とろとろ と 眠く なり かけた とき 、 最後 の 望み と も 思える 考え が ひらめいた 。 ハリー は 、 はっと 身 を 起こした 。

「 ロン 」 暗闇 の 中 で ハリー は 声 を ひそめて 呼んだ 。

「 ロン !」 ロン は ファング の ように キャン と いって 目 を 覚まし 、 キョロキョロ と あたり を 見回した 。 そして ハリー が 目 に 入った 。 「 ロン ―― 死んだ 女の子 だ けど 。 アラゴグ は トイレ で 見つかったって 言って た 」 ハリー は 部屋 の 隅 から 聞こえて くる 、 ネビル の 高いびき も 気 に せ ず 言葉 を 続けた 。 「 その 子 が それ から 一 度 も トイレ を 離れ なかった と したら ? まだ そこ に いる と したら ?」 ロン が 目 を 擦り 、 月 明かり の 中 で 眉 根 を 寄せた 。 そして 、 ピンと きた 。 「 もし かして ―― まさか 『 嘆き の マートル 』?」

15.2 アラゴグ - Aragog |aragog 15.2 Aragog - Aragog 15.2 Aragog - Aragog 15.2 Aragog - Aragog 15.2 Aragog - Aragog 15.2 Aragog - Aragog 15.2 Aragog - Aragog

ロン は 何も 言わ なかった 。 ||なにも|いわ| 身動き も し なかった 。 みうごき||| ハリー の すぐ 後ろ 、 地面 から 二 、 三 メート ル 上 の 一 点 に 、 目 が 釘付け に なって いる 。 |||うしろ|じめん||ふた|みっ|||うえ||ひと|てん||め||くぎづけ|||

顔 が 恐怖 で 土 気色 だ 。 かお||きょうふ||つち|けしき| The face is scary and earthy. 振り返る 間 も なかった 。 ふりかえる|あいだ|| I didn't have time to look back. カシャッカシャッ と 大きな 音 が した か と 思う と 、 何 か 長くて 毛 むくじゃ ら な もの が 、 ハリー の 体 を 鷲づかみ に して 持ち上げた 。 ||おおきな|おと|||||おもう||なん||ながくて|け||||||||からだ||わしづかみ|||もちあげた Then, something long and hairy grabbed Harry's body and lifted him up.

ハリー は 逆さまに 宙吊り に なっった 。 ||さかさまに|ちゅうづり||な っっ た Harry was suspended upside down in midair. 恐怖 に 囚 われ 、 もがき ながら も 、 ハリー は また 別の カシャッカシャッ と いう 音 を 聞いた 。 きょうふ||しゅう||||||||べつの||||おと||きいた Caught in fear, Harry heard another clanking sound as he struggled.

ロン の 足 が 宙 に 浮く の が 見え 、 ファング が クィンクィン 、 ワォンワオン 鳴き 喚 いて いる の が 聞こえた 。 ||あし||ちゅう||うく|||みえ|||||なき|かん|||||きこえた He saw Ron's feet floating in the air, heard Fang whimpering and howling.

―― 次の 瞬間 、 ハリー は 暗い 木立 の 中 に サーッ と 運び込ま れた 。 つぎの|しゅんかん|||くらい|こだち||なか||||はこびこま| -- The next moment, Harry was whisked away into a dark grove of trees.

逆さ 吊 り の まま 、 ハリー は 自分 を 捕らえて いる もの を 見た 。 さかさ|つり||||||じぶん||とらえて||||みた While hanging upside down, Harry saw what was capturing him.

六 本 の 恐ろしく 長い 、 毛 むくじゃ ら の 脚 が 、 ザック ザック と 突き進み 、 その 前 の 二 本 の 脚 で ハリー を がっちり 挟み 、 その 上 に 黒 光り する 一 対 の 鋏 が あった 。 むっ|ほん||おそろしく|ながい|け||||あし||ざっく|ざっく||つきすすみ||ぜん||ふた|ほん||あし|||||はさみ||うえ||くろ|ひかり||ひと|たい||やっとこ|| Six horribly long, hairy legs pierced Zack Zack, and the two legs in front of him firmly pinched Harry, with a pair of glowing black scissors on top. 後ろ に 、 もう 一 匹 同じ 生物 の 気配 が する 。 うしろ|||ひと|ひき|おなじ|せいぶつ||けはい|| Behind, there is a sign of another same creature.

ロン を 運んで いる に 違いない 。 ||はこんで|||ちがいない Ron must be carrying them. 森 の 奥 へ 奥 へ と 行進 して 行く 。 しげる||おく||おく|||こうしん||いく They march deeper and deeper into the forest. ファング が 三 匹 め の 怪物 から 逃れよう と 、 キャンキャン 鳴き ながら 、 ジタバタ もがいて いる の が 聞こえた 。 ||みっ|ひき|||かいぶつ||のがれよう|||なき||じたばた|||||きこえた I could hear Fang yelping and thrashing about, trying to escape from the third monster. ハリー は 叫び たくて も 叫べ なかった 。 ||さけび|||さけべ| Harry couldn't scream even if he wanted to. あの 空き地 の 、 車 の ところ に 声 を 置き忘れて きた らしい 。 |あきち||くるま||||こえ||おきわすれて|| It seems that he left his voice in the car in that vacant lot.

どの ぐらい の 間 、 怪物 に 挟まれて いた のだろう か 、 真っ暗闇 が 突然 薄 明るく なり 、 地面 を 覆う 木 の 葉 の 上 に 、 クモ が うじゃうじゃ いる の が 見えた 。 |||あいだ|かいぶつ||はさま れて||||まっくらやみ||とつぜん|うす|あかるく||じめん||おおう|き||は||うえ||くも||||||みえた I wondered how long I had been trapped between the monsters, when suddenly the darkness became dim and I could see spiders hovering above the leaves that covered the ground. 首 を 捻って 見る と 、 だだっ広い 窪地 の ふち に たどり着いた の が 見える 。 くび||ねじって|みる||だだっぴろい|くぼち||||たどりついた|||みえる I turned my head and saw that they had reached a large hollow frame.

木 を 切り払った 窪地 の 中 を 星 明り が 照らし出し 、 ハリー が これ まで に 目 に した こと が ない 、 世にも 恐ろしい 光景 が 飛び込んで きた 。 き||きりはらった|くぼち||なか||ほし|あかり||てらしだし||||||め||||||よにも|おそろしい|こうけい||とびこんで| Starlight illuminates the depressions that have been cut off from trees, and Harry has never seen it before, and a terrifying sight has jumped into the world.

蜘妹 だ 。 くもいもうと| It's my sister.

木 の 勢 の 上 に うじゃうじゃ して いる 細かい クモ と は モノ が 違う 。 き||ぜい||うえ|||||こまかい|くも|||もの||ちがう Things are different from the small spiders that are fluttering above the trees.

馬車 馬 の ような 、 八 つ 目 の 、 八 本 脚 の 、 黒々 と した 、 毛 むくじゃ ら の 、 巨大な 蜘味 が 数 匹 。 ばしゃ|うま|||やっ||め||やっ|ほん|あし||くろぐろ|||け||||きょだいな|くもあじ||すう|ひき Horse-drawn carriage, eight-eyed, eight-legged, dark, hairy, and a few giant spicy flavors. ハリー を 運んで きた 巨大 蜘味 の 見本 の ような の が 、 窪地 の ど真ん中 に ある 靄 の ような ドーム 型 の 蜘妹 の 巣 に 向かって 、 急な 傾斜 を 滑り 降りた 。 ||はこんで||きょだい|くもあじ||みほん|||||くぼち||どまんなか|||もや|||どーむ|かた||くもいもうと||す||むかって|きゅうな|けいしゃ||すべり|おりた Something like the giant spicy swatch that carried Harry slid down a steep slope towards the mist-like dome-shaped spider's nest in the middle of the depression.

仲間 の 巨大 蜘妹 が 、 獲物 を 見て 興奮 し 、 鋏 を ガチャ つかせ ながら 、 その 周り に 集結 した 。 なかま||きょだい|くもいもうと||えもの||みて|こうふん||やっとこ||||||まわり||しゅうけつ| My fellow giant spiders, excited to see their prey, rally around it, clattering with their shears.

巨大 蜘味 が 鋏 を 放し 、 ハリー は 四 つ ん 違い に なって 地面 に 落ちた 。 きょだい|くもあじ||やっとこ||はなし|||よっ|||ちがい|||じめん||おちた The giant spider let go of the scissors, and Harry fell to the ground in all four differences. ロン も ファング も 隣 に ド サッと 落ちて きた 。 ||||となり|||さっと|おちて| Ron and Fang both fell down with a thud next to each other.

ファング は もう 鳴く こと さえ でき ず 、 黙って その 場 に すくみ 上がって いた 。 |||なく|||||だまって||じょう|||あがって| Fang could no longer even squeal, so he just stood there silently.

ロン は ハリー の 気持ち を そっくり 顔 で 表現 して いた 。 ||||きもち|||かお||ひょうげん|| Ron expressed Harry's feelings with his face.

声 に なら ない 悲鳴 を あげ 、 口 が 大きく 叫び声 の 形 に 開いて いる 。 こえ||||ひめい|||くち||おおきく|さけびごえ||かた||あいて| He screams unvoiced, and his mouth is wide open in the form of a scream. 目 は 飛び出して いた 。 め||とびだして| His eyes were popping out.

ふと 気 が つく と 、 ハリー を 捕まえて いた 蜘妹 が 何 か 話して いる 。 |き||||||つかまえて||くもいもうと||なん||はなして| Suddenly, my sister, who was catching Harry, was talking about something.

一言 しゃべる たび に 鋏 を ガチャガチャ いわ せる ので 、 話して いる と いう こと に さえ 、 なか な か 気づか なかった 。 いちげん||||やっとこ||||||はなして||||||||||きづか| Every time I talked, I made a pair of scissors, so I didn't even notice that I was talking.

「 アラゴグ !」 と 呼んで いる 。 ||よんで|

「 アラゴグ !」

靄 の ような 蜘株 の 巣 の ドーム の 真ん中 から 、 小型の 象 ほど も ある 蜘味 が ゆらり と 現れた 。 もや|||くもかぶ||す||どーむ||まんなか||こがたの|ぞう||||くもあじ||ゆら り||あらわれた A spider the size of a small elephant emerged from the middle of the misty spiderweb dome.

胴体 と 脚 を 覆う 黒い 毛 に 白い もの が 混じり 、 鋏 の ついた 醜い 頭 に 、 八 つ の 自 濁した 目 が あった 。 どうたい||あし||おおう|くろい|け||しろい|||まじり|やっとこ|||みにくい|あたま||やっ|||じ|にごした|め|| The black hair covering the torso and legs was mixed with white stuff, and the ugly head with scissors had eight cloudy eyes. ―― 盲いて いる 。 もう いて| --I'm blind.

「 なんの 用 だ !」 鋏 を 激しく 鳴らし ながら 、 盲目の 蜘妹 が 言った 。 |よう||やっとこ||はげしく|ならし||もうもくの|くもいもうと||いった "What's the point!" Said the blind sister, whilst slamming the scissors.

「 人間 です 」 ハリー を 捕まえた 巨大 蜘妹 が 答えた 。 にんげん||||つかまえた|きょだい|くもいもうと||こたえた 「 ハグリッド か !」 アラゴグ が 近づいて きた 。 ||||ちかづいて|

八 つ の 濁った 目 が 虚 ろ に 動いて いる 。 やっ|||にごった|め||きょ|||うごいて| 「 知ら ない 人間 です 」 ロン を 運んだ 蜘味 が 、 カシャカシャ 言った 。 しら||にんげん||||はこんだ|くもあじ|||いった 「 殺せ 」 アラゴグ は イライラ と 鋏 を 鳴らした 。 ころせ|||いらいら||やっとこ||ならした

「 眠って いた のに ......」 ねむって|| "I was asleep and then I went to ......."

「 僕たち 、 ハグリッド の 友達 です 」 ハリー が 叫んだ 。 ぼくたち|||ともだち||||さけんだ 心臓 が 胸 から 飛び上がって 、 喉元 で 脈 を 打って いる ようだった 。 しんぞう||むね||とびあがって|のどもと||みゃく||うって|| It was as if his heart had jumped out of his chest and was beating in his throat. カシャッカシャッカシャッ 一 窪地 の 中 の 巨大 蜘味 の 鋏 が いっせいに 鳴った 。 |ひと|くぼち||なか||きょだい|くもあじ||やっとこ|||なった The giant scissors in the depression rang all at once. アラゴグ が 立ち止まった 。 ||たちどまった 「 ハグリッド は 一 度 も この 窪地 に 人 を 寄こした こと は ない 」 ゆっくり と アラゴグ が 言った 。 ||ひと|たび|||くぼち||じん||よこした||||||||いった "Hagrid has never sent anyone to this depression," said Aragog slowly. 「 ハグリッド が 大変な んです 」 息 を 切らし ながら ハリー が 言った 。 ||たいへんな||いき||きらし||||いった Hagrid is in trouble. Harry said, gasping for breath. 「 それ で 、 僕たち が 来た んです 」 ||ぼくたち||きた|

「 大変 !」 たいへん

年老いた 巨大 蜘味 の 鋏 の 音 が 気 遣わし げ な の を 、 ハリー は 聞き取った ように 思った 。 としおいた|きょだい|くもあじ||やっとこ||おと||き|つかわし|||||||ききとった||おもった Harry thought he had heard the sound of the old giant scissors being caring.

「 しかし 、 なぜ おまえ を 寄こした !」 ハリー は 立ち上がろう と した が 、 やめ に した 。 ||||よこした|||たちあがろう|||||| "But why did you come in!" Harry tried to stand up, but stopped.

とうてい 足 が 立た ない 。 |あし||たた| I can't stand my legs. そこ で 、 地べた に 這った まま 、 できる だけ 落ち着いて 話した 。 ||じべた||はった||||おちついて|はなした

「 学校 の みんな は 、 ハグリッド が けしかけて ―― か 、 怪 ―― 何物 か に 、 学生 を 襲わ せた と 思って いる んです 。 がっこう||||||||かい|なにもの|||がくせい||おそわ|||おもって|| "Everyone at school thinks that Hagrid struck-or something-that attacked the students. ハグリッド を 逮捕 して 、 アズカバン に 送りました 」  アラゴグ は 怒り狂って 鋏 を 鳴らした 。 ||たいほ||||おくり ました|||いかりくるって|はさみ||ならした 蜘妹 の 群れ が それ に 従い 、 窪地 中 に 音 が こだま した 。 くもいもうと||むれ||||したがい|くぼち|なか||おと||| A flock of younger sisters followed it, and a sound echoed throughout the depression.

ちょうど 拍手 喝采 の ようだった が 、 普通の 拍手 なら 、 ハリー も 恐怖 で 吐き気 を 催す こと は な かったろう 。 |はくしゅ|かっさい||||ふつうの|はくしゅ||||きょうふ||はきけ||もよおす|||| It was just like applause, but with normal applause, Harry wouldn't have been frightened and nauseated.

「 しかし 、 それ は 昔 の 話 だ 」 アラゴグ は 苛立った 。 |||むかし||はなし||||いらだった

「 何 年 も 何 年 も 前 の こと だ 。 なん|とし||なん|とし||ぜん||| よく 覚えて いる 。 |おぼえて| I remember it well. それ で ハグリッド は 退学 さ せられた 。 ||||たいがく||せら れた So Hagrid was expelled. みんな が わし の こと を 、 いわゆる 『 秘密の 部屋 』 に 住む 怪物 だ と 信じ込んだ 。 |||||||ひみつの|へや||すむ|かいぶつ|||しんじこんだ ハグリッド が 『 部 屋 』 を 開けて 、 わし を 自由に した のだ と 考えた 」 ||ぶ|や||あけて|||じゆうに||||かんがえた

「 それ じゃ 、 あなた は ...... あなた が 『 秘密の 部屋 』 から 出て きた ので は ない のです か ?」 ハリー は 、 額 に 冷 汗 が 流れる の が わかった 。 ||||||ひみつの|へや||でて|||||||||がく||ひや|あせ||ながれる||| 「 わし が !」 アラゴグ は 怒り で 鋏 を 打ち鳴らした 。 ||||いかり||やっとこ||うちならした

「 わし は この 城 で 生まれた ので は ない 。 |||しろ||うまれた||| 遠い ところ から やってきた 。 とおい||| まだ 卵 だった とき に 、 旅人 が わし を ハグリッド に 与えた 。 |たまご||||たびびと||||||あたえた ハグリッド は まだ 尐年 だった が 、 わし の 面倒 を 見て くれ た 。 |||尐ねん|||||めんどう||みて|| Hagrid was only a few years old, but he took care of me. 城 の 物置 に 隠し 、 食事 の 残り物 を 集めて 食べ させて くれた 。 しろ||ものおき||かくし|しょくじ||のこりもの||あつめて|たべ|さ せて| He hid them in a storeroom in the castle, and made us eat them by collecting the leftovers of our meals. ハグリッド は わし の 親友 だ 。 ||||しんゆう| いい やつ だ 。 わし が 見つかって しまい 、 女の子 を 殺した 罪 を 着せられた とき 、 ハグリッ   ド は わし を 護って くれた 。 ||みつかって||おんなのこ||ころした|つみ||きせ られた|||||||まもる って| When I was found and condemned to kill the girl, Hagrid protected me. その とき 以来 、 わし は この 森 に 住み 続けた 。 ||いらい||||しげる||すみ|つづけた ハグリッド は 今 でも 時々 訪ねて きて くれる 。 ||いま||ときどき|たずねて|| 妻 も 探して きて くれた 。 つま||さがして|| I was looking for my wife too. モサグ を 。 Mossag . 見ろ 。 みろ わし ら の 家族 は こんなに 大きく なった 。 |||かぞく|||おおきく| Our family has grown so big. みんな ハグリッド の おかげ だ ......」

ハリー は ありったけ の 勇気 を 搾り 出した 。 ||||ゆうき||しぼり|だした Harry gathered all the courage he could muster.

「 それ じゃ 、 一 度 も ―― 誰 も 襲った こと は ない のです か ?」 ||ひと|たび||だれ||おそった|||||

「 一 度 も ない 」 年老いた 蜘妹 は しわがれ 声 を 出した 。 ひと|たび|||としおいた|くもいもうと|||こえ||だした

「 襲う の は わし の 本能 だ 。 おそう|||||ほんのう| しかし 、 ハグリッド の 名誉 の ため に 、 わし は 決して 人間 を 傷つけ は し なかった 。 |||めいよ||||||けっして|にんげん||きずつけ||| 殺さ れた 女の子 の 死体 は 、 トイレ で 発見 さ れた 。 ころさ||おんなのこ||したい||といれ||はっけん|| The corpse of the murdered girl was found in the bathroom. わし は 自分 の 育った 物置 の 中 以外 、 城 の 他 の 場所 は どこ も 見た こと が ない 。 ||じぶん||そだった|ものおき||なか|いがい|しろ||た||ばしょ||||みた||| I have never seen any other place in the castle except in the storeroom where I grew up. わし ら の 仲間 は 、 暗くて 静かな ところ を 好む ......」 |||なかま||くらくて|しずかな|||このむ Our companions prefer a dark and quiet place ... "

「 それ なら ...... いったい 何 が 女の子 を 殺した の か 知りません か ? 何者 であれ 、 そいつ は 今 戻って きて 、 また みんな を 襲って ――」 カシャカシャ と いう 大きな 音 と 、 何 本もの 長い 脚 が 怒り で 擦れ 合う 、 ザワザワ と いう 音 が 湧き 起こり 、 言葉 が 途中 で かき消さ れた 。 |||なん||おんなのこ||ころした|||しり ませ ん||なにもの||そい つ||いま|もどって|||||おそって||||おおきな|おと||なん|ほんもの|ながい|あし||いかり||すれ|あう||||おと||わき|おこり|ことば||とちゅう||かきけさ| "Then ... don't you know what killed the girl? Whoever it is, it's back now and it's hitting everyone again--" with a loud noise. , Many long legs rubbed against each other with anger, a rustling sound arose, and the words were drowned out in the middle. 大きな 黒い もの が ハリー を 囲んで ガサゴソ と 動いた 。 おおきな|くろい|||||かこんで|||うごいた A big black thing fluttered around Harry.

「 城 に 住む その物 は 」 アラゴグ が 答えた 。 しろ||すむ|そのもの||||こたえた The thing that lives in the castle," Aragog replied.

「 わし ら 蜘妹 の 仲間 が 何より も 恐れる 、 太古 の 生物 だ 。 ||くもいもうと||なかま||なにより||おそれる|たいこ||せいぶつ| I am the prehistoric creature that my fellow spiders fear more than anything else. その 怪物 が 、 城 の 中 を 動き回って い る 気配 を 感じた とき 、 わし を 外 に 出して くれ と 、 ハグリッド に どんなに 必死で 頼んだ か 、 よ く 覚えて いる 」 |かいぶつ||しろ||なか||うごきまわって|||けはい||かんじた||||がい||だして||||||ひっしで|たのんだ||||おぼえて| When I felt that the monster was moving around in the castle, I remember how desperately I asked Hagrid to take me out. "

「 いったい その 生物 は !」 ハリー は 急き込んで 尋ねた 。 ||せいぶつ||||せきこんで|たずねた What the hell is that creature? Harry hurriedly asked.

また 大きな カシャカシャ と ザワザワ が 湧いた 。 |おおきな|||||わいた There was another loud crackling and rustling.

蜘妹 が さらに 詰め寄って きた ようだ 。 くもいもうと|||つめよって|| It seems that the spider sister is closing in on us even more.

「 わし ら は その 生物 の 話 を し ない !」 アラゴグ が 激しく 言った 。 ||||せいぶつ||はなし||||||はげしく|いった "We are not talking about that creature!" Aragog said angrily. 「 わし ら は その 名前 さえ 口 に し ない ! ハグリッド に 何度 も 聞か れた が 、 わし は その 恐ろしい 生物 の 名前 を 、 決して ハグ リッド に 教え は し なかった 」 ||||なまえ||くち||||||なんど||きか||||||おそろしい|せいぶつ||なまえ||けっして||||おしえ||| "We don't even say the name! I've been asked by Hagrid many times, but I never told Hagrid the name of the terrifying creature."

ハリー は それ 以上 追及 し なかった 。 |||いじょう|ついきゅう|| Harry did not pursue this further.

巨大 蜘妹 が 、 四方八方 から 詰め寄って きて いる 。 きょだい|くもいもうと||しほうはっぽう||つめよって|| Giant spiders are closing in from all directions. 今 は ダメだ 。 いま||だめだ It's no good now.

アラゴグ は 話す の に 疲れた 様子 だった 。 ||はなす|||つかれた|ようす| Aragog looked tired of talking. ゆっくり と また 蜘妹 の 巣 の ドーム へ と 戻って 行った 。 |||くもいもうと||す||どーむ|||もどって|おこなった Slowly, they returned to the dome of the spider's nest. しかし 仲間 の 蜘妹 は 、 ジリッジリッ と 尐 し ずつ 二 人 に 詰め寄って くる 。 |なかま||くもいもうと|||||||ふた|じん||つめよって|

「 それ じゃ 、 僕たち は 帰ります 」 木 の 葉 を ガサゴソ いわ せる 音 を 背後 に 聞き ながら 、 ハリー は アラゴグ に 絶望 的な 声 で 呼びかけた 。 ||ぼくたち||かえり ます|き||は|||||おと||はいご||きき||||||ぜつぼう|てきな|こえ||よびかけた "Then we're going home." Harry called Aragog in a desperate voice, listening to the rattling noise of the leaves of the tree behind him. 「 帰る !」 アラゴグ が ゆっくり と 言った 。 かえる|||||いった "I'm going home!" Aragog said slowly. 「 それ は なる まい ......」 "It won't be ..."

「 でも ―― でも ――」

「 わし の 命令 で 、 娘 や 息子 たち は ハグリッド を 傷つけ は し ない 。 ||めいれい||むすめ||むすこ|||||きずつけ||| "At my command, my daughters and sons do not hurt Hagrid. しかし 、 わし ら の まった だ 中 に 進んで ノコノコ 迷い 込んで きた 新鮮な 肉 を 、 おあずけ に は でき まい 。 ||||||なか||すすんで||まよい|こんで||しんせんな|にく|||||| However, we can't leave behind the fresh meat that has willingly wandered into our midst. さらば 、 ハグリッ ド の 友人 よ 」 ||||ゆうじん|

ハリー は 、 体 を 回転 さ せて 上 を 見た 。 ||からだ||かいてん|||うえ||みた

ほんの 数 十 センチ 上 に 聳 え 立つ 蜘珠 の 壁 が 、 鋏 を ガチャ つか せ 、 醜い 黒い 頭 に たくさんの 目 を ギラ つか せて いる ......。 |すう|じゅう|せんち|うえ||しょう||たつ|くもしゅ||かべ||やっとこ|||||みにくい|くろい|あたま|||め||||| Just a few dozen centimeters above, a wall of spidery beads rises, scissors clattering, eyes glinting off its ugly black head. ......

杖 に 手 を かけ ながら も 、 ハリー に は 無駄な 抵抗 と わかって いた 。 つえ||て||||||||むだな|ていこう||| Despite his hand on the cane, Harry knew it was futile to resist. 多勢 に 無勢 だ 。 たぜい||ぶぜい|

それ でも 戦って 死ぬ 覚悟 で 立ち上がろう と した その とき 、 高らかな 長い 音 と ともに 、 窪地 に 眩 い 光 が 射し込んだ 。 ||たたかって|しぬ|かくご||たちあがろう|||||たからかな|ながい|おと|||くぼち||くら||ひかり||い しこんだ

ウィーズリー 氏 の 車 が 、 荒々しく 斜面 を 走り 降りて くる 。 |うじ||くるま||あらあらしく|しゃめん||はしり|おりて| Mr. Weasley's car runs down a rough slope. ヘッドライト を 輝か せ 、 クラク ション を 高々 と 鳴らし 、 蜘妹 を なぎ倒し ―― 何 匹 か は 仰向け に 引っくり返さ れ 、 何 本 も の 長 い 脚 を 空 に 泳が せて いた 。 へっどらいと||かがやか|||||たかだか||ならし|くもいもうと||なぎたおし|なん|ひき|||あおむけ||ひっくりかえさ||なん|ほん|||ちょう||あし||から||えい が|| The headlights shined, the cracks rang high, and the spider sister was knocked down--some were turned over on their backs, and many long legs were swimming in the sky.

車 は ハリー と ロン の 前 で キキーツ と 停 まり 、 ドア が パッと 開いた 。 くるま||||||ぜん||||てい||どあ||ぱっと|あいた

「 ファング を !」

ハリー は 、 前 の 座席 に 飛び込み ながら 叫んだ 。 ||ぜん||ざせき||とびこみ||さけんだ

ロン は 、 ボアハウンド の 胴 の あたり を む ん ず と 抱きかかえ 、 キャンキャン 鳴いて いる の を 、 後ろ の 座席 に 放り込んだ 。 ||||どう||||||||だきかかえ||ないて||||うしろ||ざせき||ほうりこんだ Ron held the boarhound by the torso and threw it into the back seat as it cried out for help.

ドア が バタン と 閉まり 、 ロン が アクセル に 触り も し ない のに 、 車 は ロン の 助け も 借り ず 、 エ ンジン を 唸ら せ 、 またまた 蜘妹 を 引き 倒し ながら 発進 した 。 どあ||||しまり|||あくせる||さわり|||||くるま||||たすけ||かり|||||うなら|||くもいもうと||ひき|たおし||はっしん| The doors slammed shut, Ron didn't even touch the gas pedal, and without his help, the car roared into action, snorting its engines and pulling its sister down again.

車 は 坂 を 猛 スピード で 駆け上がり 、 窪地 を 抜け出し 、 間もなく 森 の 中 へ と 突っ込んだ 。 くるま||さか||もう|すぴーど||かけあがり|くぼち||ぬけだし|まもなく|しげる||なか|||つっこんだ 車 は 勝手に 走った 。 くるま||かってに|はしった

太い 木 の 枝 が 窓 を 叩き は した が 、 車 は どうやら 自分 の 知っている 道 らしく 、 巧みに 空間 の 広 く 空いて いる ところ を 通った 。 ふとい|き||えだ||まど||たたき||||くるま|||じぶん||しっている|どう||たくみに|くうかん||ひろ||あいて||||かよった A thick tree limb smacked against the window, but the car seemed to know its way around and deftly passed through a wide open space.

ハリー は 隣 の ロン を 見た 。 ||となり||||みた まだ 口 は 開きっぱなし で 、 声 に なら ない 叫び の 形 の まま だった が 、 目 は もう 飛び出して は い なかった 。 |くち||あき っぱなし||こえ||||さけび||かた|||||め|||とびだして||| His mouth was still open, in the form of an inarticulate scream, but his eyes were no longer popping out. 「 大丈夫 かい !」 ロン は まっすぐ 前 を 見つめた まま 、 口 が きけ ない 。 だいじょうぶ|||||ぜん||みつめた||くち||| "Are you okay!" Ron can't speak, staring straight ahead. 森 の 下 生え を なぎ倒し ながら 草 は 突進 した 。 しげる||した|はえ||なぎたおし||くさ||とっしん| The grass rushed while knocking down the undergrowth of the forest.

ファング は 後ろ の 席 で 大声 で 吼 えて いる 。 ||うしろ||せき||おおごえ||こう||

大きな 樫 の 木 の 脇 を 無理やり すり抜ける とき 、 ハリー の 目の前 で 、 サイドミラー が ポッキリ 折れた 。 おおきな|かし||き||わき||むりやり|すりぬける||||めのまえ|||||おれた When Harry was forced to pass by a large oak tree, the side mirror snapped off right in front of his eyes.

ガタガタ と 騒々しい 凸凹 の 十 分間 が 過ぎた ころ 、 木立 が やや まばらに なり 、 茂み の 間 から ハ リー は 、 再び 空 を 垣間見る こと が できた 。 がたがた||そうぞうしい|でこぼこ||じゅう|ぶん かん||すぎた||こだち|||||しげみ||あいだ|||||ふたたび|から||かいまみる||| After ten minutes of rattling and noisy bumps, the groves became somewhat sparse, and Harry was able to glimpse the sky again through the bushes.

車 が 急 停車 し 、 二 人 は フロント ガラス に ぶつかり そうに なった 。 くるま||きゅう|ていしゃ||ふた|じん||ふろんと|がらす|||そう に| The car stopped suddenly and they almost hit the windshield.

森 の 入口 に たどり着いた のだ 。 しげる||いりぐち||たどりついた| ファング は 早く 出 たくて 窓 に 飛びつき 、 ハリー が ドア を 開け て やる と 、 尻尾 を 巻いた まま 、 一目散に ハグリッド の 小屋 を 目指して 、 木立 の 中 を ダッシュ して 行った 。 ||はやく|だ||まど||とびつき|||どあ||あけ||||しっぽ||まいた||いちもくさんに|||こや||めざして|こだち||なか||だっしゅ||おこなった Fang jumped to the window to get out, and when Harry opened the door, he dashed through the trees, tail tucked, toward Hagrid's cabin.

ハリー も 車 を 降りた 。 ||くるま||おりた Harry also got out of the car. それ から 一 分 ぐらい たって 、 ロン が ようやく 手足 の 感覚 を 取り戻した らしく 、 まだ 首 が 硬直 して 前 を 向いた まま だった が 、 降りて きた 。 ||ひと|ぶん||||||てあし||かんかく||とりもどした|||くび||こうちょく||ぜん||むいた||||おりて| About a minute later, Ron finally seemed to regain feeling in his limbs, and although his neck was still stiff and he was looking forward, he was able to come down.

ハリー は 感謝 を 込めて 車 を 撫で 、 車 は また 森 の 中 へ と バック して 、 やがて 姿 が 見え なく なった 。 ||かんしゃ||こめて|くるま||なで|くるま|||しげる||なか|||ばっく|||すがた||みえ|| Harry patted the car gratefully, and the car backed into the woods, and was soon out of sight. ハリー は 「 透明 マント 」 を 取り に ハグリッド の 小屋 に 戻った 。 ||とうめい|まんと||とり||||こや||もどった ファング は 寝床 の バスケット で 毛布 を 被って 震えて いた 。 ||ねどこ||ばすけっと||もうふ||おおって|ふるえて|

小屋 の 外 に 出る と 、 ロン が かぼちゃ 畑 で ゲーゲー 吐いて いた 。 こや||がい||でる|||||はたけ|||はいて| When I came out of the hut, I found Ron vomiting in the pumpkin patch. 「 クモ の 跡 を つけろ だって 」 ロン は 袖 で 口 を 拭き ながら 弱々しく 言った 。 くも||あと||||||そで||くち||ふき||よわよわしく|いった "Keep a spider's mark," Ron said weakly, wiping his mouth with his sleeves. 「 ハグリッド を 許さ ない ぞ 。 ||ゆるさ|| "I won't forgive Hagrid. 僕たち 、 生きて る の が 不思議だ よ 」 「 きっと 、 アラゴグ なら 自分 の 友達 を 傷つけ ない と 思った んだ よ 」 ハリー が 言った 。 ぼくたち|いきて||||ふしぎだ|||||じぶん||ともだち||きずつけ|||おもった|||||いった It's a wonder we're still alive," Harry said, "I guess Aragog thought he wouldn't hurt his friends. 「 だから ハグリッドって ダメな んだ !」 ロン が 小屋 の 壁 を ドンドン 叩き ながら 言った 。 |ハグリッド って|だめな||||こや||かべ||どんどん|たたき||いった That's why Hagrid's so bad! Ron said, banging on the wall of the cabin. 「 怪物 は どうしたって 怪物 な のに 、 みんな が 、 怪物 を 悪者 に して しまった んだ と 考えて る 。 かいぶつ||どうした って|かいぶつ|||||かいぶつ||わるもの||||||かんがえて| "Everyone thinks that a monster is a monster, but everyone has turned it into a villain. その つけ が どう なった か ! アズカバン の 独房 だ !」 ロン は 今に なって ガタガタ 震え が 止まら なく なって いた 。 ||||||||どくぼう||||いまに||がたがた|ふるえ||とまら||| What happened to that! It's Azkaban's prison cell! ”Ron's rattling tremors haven't stopped.

「 僕たち を あんな ところ に 追いやって 、 いったい なんの 意味 が あった ! 何 が わかった か 教え て もらいたい よ 」 「 ハグリッド が 『 秘密の 部屋 』 を 開けた んじゃ な いって こと だ 」 ハリー は マント を ロン に かけて やり 、 腕 を 取って 、 歩く ように 促し ながら 言った 。 ぼくたち|||||おいやって|||いみ|||なん||||おしえ||もらい たい||||ひみつの|へや||あけた||||||||まんと||||||うで||とって|あるく||うながし||いった "What did it mean to drive us to such a place! I want you to tell me what you found." "Hagrid didn't open the'secret room'." Harry said the cloak. He went to Ron, took his arm, and urged him to walk. 「 ハグリッド は 無実 だった 」 ||むじつ|

ロン は フン と 大きく 鼻 を 鳴らした 。 ||ふん||おおきく|はな||ならした Ron snorted loudly. アラゴグ を 物置 の 中 で 解す なんて 、 どこ が 「 無実 」 な も ん か 、 と 言い た げ だ 。 ||ものおき||なか||かいす||||むじつ||||||いい||| He wanted to know how Aragog could be "innocent" if he had to be dismantled in a storeroom.

城 が だんだん 近く に 見えて きた 。 しろ|||ちかく||みえて|

ハリー は 「 透明 マント 」 を 引っ張って 足先 まで すっぽり 隠し 、 それ から 軋む 扉 を そ ーっと 半 開き に した 。 ||とうめい|まんと||ひっぱって|あしさき|||かくし|||きしむ|とびら|||- っと|はん|あき|| Harry pulled on his "invisibility cloak," which concealed his toes, and gently opened the creaking door halfway. 玄関 ホール を こっそり と 横切り 、 大理石 の 階段 を 上り 、 見張り 番 が 目 を 光らせて いる 廊下 を 、 息 を 殺して 通り過ぎた 。 げんかん|ほーる||||よこぎり|だいりせき||かいだん||のぼり|みはり|ばん||め||ひからせて||ろうか||いき||ころして|とおりすぎた I sneaked across the entrance hall, climbed the marble stairs, and breathlessly passed through the hallway where the lookout was on the lookout.

ようやく 安全 地帯 の グリフィンドール の 談話 室 に たどり着いた 。 |あんぜん|ちたい||||だんわ|しつ||たどりついた Finally, I reached Gryffindor's common room in the Safety Zone. 暖炉 の 火 は 燃え尽き 、 灰 に なった 残り 火 が 、 わずかに 赤み を 帯びて いた 。 だんろ||ひ||もえつき|はい|||のこり|ひ|||あかみ||おびて| The fireplace had burned out, and the ashes of the remaining flames had a slight reddish tinge. 二 人 は マント を 脱ぎ へ 曲がりくねった 階段 を 上って 寝室 に 向かった 。 ふた|じん||まんと||ぬぎ||まがりくねった|かいだん||のぼって|しんしつ||むかった They took off their cloaks and headed up the winding staircase to their bedrooms. ロン は 服 も 脱が ず に ベッド に 倒れ込んだ 。 ||ふく||だつ が|||べっど||たおれこんだ しかし ハリー は あまり 眠く なかった 。 ||||ねむく| 四 本 柱 付き の ベッド の 端に 腰掛け 、 アラゴグ が 言った こと を 一生懸命 考えた 。 よっ|ほん|ちゅう|つき||べっど||はしたに|こしかけ|||いった|||いっしょうけんめい|かんがえた Sitting on the edge of a bed with four pillars, I thought hard about what Aragog said.

城 の どこ か に 潜む 怪物 は 、 ヴォルデモート を 怪物 に した ような もの かも しれ ない 。 しろ|||||ひそむ|かいぶつ||||かいぶつ||||||| A monster lurking somewhere in the castle may be like Voldemort's monster.

他の 怪物 で さえ 、 その 名前 を 口 に し た がら ない 。 たの|かいぶつ||||なまえ||くち||||| Even other monsters don't want to say their name. しかし 、 ハリー も ロン も それ が な んな の か 、 襲った 者 を どんな 方法 で 石 に する の か 、 結局 の ところ 皆目 わから ない 。 |||||||||||おそった|もの|||ほうほう||いし|||||けっきょく|||かいもく|| However, neither Harry nor Ron had any idea what it was or how to turn their attackers to stone.

ハグリッド で さえ 「 秘密の 部屋 」 に 、 何 が いた の か 知って は い なかった 。 |||ひみつの|へや||なん|||||しって||| Not even Hagrid knew what was in the "secret room.

ハリー は ベッド の 上 に 足 を 投げ出し 、 枕 に もたれて 、 寮 塔 の 窓 から 、 自分 の 上 に 射 し込む 月 明り を 眺めた 。 ||べっど||うえ||あし||なげだし|まくら||もた れて|りょう|とう||まど||じぶん||うえ||い|しこむ|つき|あかり||ながめた Harry threw his feet on the bed, leaned against his pillow, and watched the moonlight shining over him from the window of the dorm tower.

他 に 何 を したら よい の か わから ない 。 た||なん||||||| I don't know what else to do. 八方塞 り だ 。 はっぽうふさがり|| We are in a bind. リドル は まちがった 人間 を 捕まえた 。 |||にんげん||つかまえた Riddle catches the errant human.

スリザリン の 継承 者 は 逃れ 去り 、 今度 「 部屋 」 を 開けた の が 、 果たして その 人物 な の か 、 そ れ と も 他の 誰 か な の か 、 わから ず じまい だ 。 ||けいしょう|もの||のがれ|さり|こんど|へや||あけた|||はたして||じんぶつ||||||||たの|だれ|||||||| The heir to Slytherin has escaped, and it is unclear whether it was the person who opened the "room" this time, or who else it was. もう 誰 も 尋ねる べき 人 は いない 。 |だれ||たずねる||じん|| There is no one left to ask. ハリー は 横 に なった まま 、 アラゴグ の 言った こと を また 考えた 。 ||よこ||||||いった||||かんがえた Harry lay down and thought again about what Aragog had said.

とろとろ と 眠く なり かけた とき 、 最後 の 望み と も 思える 考え が ひらめいた 。 ||ねむく||||さいご||のぞみ|||おもえる|かんがえ|| When I was getting sleepy, I had an idea that seemed to be my last hope. ハリー は 、 はっと 身 を 起こした 。 |||み||おこした Harry got up.

「 ロン 」 暗闇 の 中 で ハリー は 声 を ひそめて 呼んだ 。 |くらやみ||なか||||こえ|||よんだ

「 ロン !」 ロン は ファング の ように キャン と いって 目 を 覚まし 、 キョロキョロ と あたり を 見回した 。 |||||||||め||さまし|||||みまわした Ron! Ron woke up with a Fang-like yelp and looked around. そして ハリー が 目 に 入った 。 |||め||はいった Then I saw Harry. 「 ロン ―― 死んだ 女の子 だ けど 。 |しんだ|おんなのこ|| "Ron-I'm a dead girl. アラゴグ は トイレ で 見つかったって 言って た 」 ハリー は 部屋 の 隅 から 聞こえて くる 、 ネビル の 高いびき も 気 に せ ず 言葉 を 続けた 。 ||といれ||みつかった って|いって||||へや||すみ||きこえて||||たかいびき||き||||ことば||つづけた Harry continued, oblivious to Neville's high-pitched snoring coming from the corner of the room. 「 その 子 が それ から 一 度 も トイレ を 離れ なかった と したら ? まだ そこ に いる と したら ?」 ロン が 目 を 擦り 、 月 明かり の 中 で 眉 根 を 寄せた 。 |こ||||ひと|たび||といれ||はなれ||||||||||||め||かすり|つき|あかり||なか||まゆ|ね||よせた "What if the child never left the bathroom again? What if he's still there? Ron rubbed his eyes and raised an eyebrow in the moonlight. そして 、 ピンと きた 。 |ぴんと| And, it came with a pin. 「 もし かして ―― まさか 『 嘆き の マートル 』?」 |||なげき|| "If I may -- you don't mean Myrtle of Sorrows, do you?"