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火星の記憶 (The Memory of Mars) by Raymond F. Jones, パート21

パート 21

切符 販売 担当 の 女性 は 親切 だった が 断固として 言った 。 「こちら の 記録 で は 、お客さま は つい 最近 、火星 へ 休暇 に いらっしゃって います 。 ご 利用 客 が 多い 上に 、宇宙船 の 収容能力 が たいへん 小さい ため 、休暇旅行 は 十年 に 一回 だけ と 制限 させて いただいて おります 」 彼 は 背 を むけて 廊下 を 渡り 、大理石 と 真鍮 で できた コネモーラ 宇宙 航空 会社 の ビル を 出た 。

街 の 中 を 六 ブロック ほど 歩いた とき 、ふと ジェイク ・ノートン の こと が 頭 に 浮かんだ 。 メル が 駆け出し だった ころ 、ジェイク は ローカルニュース 編集室 の ベテラン 記者 だった 。 ジェイク は ほんの 数 ケ 月 前 に 引退 して 、ほか の 大勢 の 老人 たち と 街 の とある 場所 に 住んで いた 。 メル は 手近 の タクシー に 合図 して 、ジェイク の 家 へ むかった 。

「よう 、メル 。 会い に 来て くれた と は うれしい な 」と ジェイク は 言った 。 「ロートル なん ざ 、消え ちまえば 、忘れられる もの と 思って いた が 」 「頼み が ある とき は すぐ 思い出す さ 」

「そう だ な 」と ジェイク は に やり と した 。 「だが 、もう 、おれ に して やれる こと なんか 、たいして ない ぜ 。 次の 給料 日 まで 十 ドル 貸して やる こと すら ムリ だ 」

「ジェイク 、あんた なら できる こと だ よ 。 これ から 先 、火星 に 旅行 しよう とは 思っちゃ いない だろう ? 「火星 だ と ! おまえ さん 、おつむ は 大丈夫 かい 、メル 」

「ぼく は 一 度 行った 。 もう 一 度 行か なきゃ ならない んだ 。 アリス の こと で ね 。 ところが 行か せて くれ ない んだ 。 十 年 に 一回 しか 行け ない なんて 知ら なかった よ 」

ジェイク は 思い出した 。 アリス は この 前 戻ってきた とき 、彼 や ほか の 記者 連中 に 電話 を かけた のだ 。 メル は 病気 だ 、と 彼女 は 言った 。 旅行 の こと は 覚えて いない 、その こと に ついて は 彼 に なにも しゃべら ないで ほしい 、と 口止め さ れた のだ 。 いま メル は 記憶 を 回復 し 、ふたたび 行こう と している 。 ジェイク は どうして いい か 、わから なかった 。

「おれ に なに が できる って いう ん だい ? 「金 を 渡す から 、あんた の 名前 で 切符 を 買って くれ 。 ぼく は ジェイク ・ノートン と して 旅行 する 。 それ で うまく いく と 思う んだ 。 細かい こと は いちいち チェック し ない だろう から 」

「そりゃ かまわん さ ――それ が おまえ の ため に なる ん なら 」と ジェイク は ためらい がち に 言った 。 彼 は 、あの 日 、メル に 火星 の 話し は し ないで くれ と 電話 で 頼んで きた アリス の 不安そうな 声 を 思い出して いた 。 ジェイク の 知る かぎり 、だれ も 話した 人間 は いない 。 彼 は 金 を 受け取り 、メル は 老人 の 家 で 待った 。 一 時間 後 、ジェイク から 電話 が あった 。 「通常 料金 じゃ 、いちばん 早くて も 八 ケ月 後 の 予約 に なる んだが 、五十 パーセント の 料金 上乗せ で 切符 を 取ってくれる ダフ屋 を 知ってる んだ 」

メル は うめいた 。 「いくら かかって も いい から 買って くれ 。 すぐ 行か なきゃ ならない んだ ! 」これ から 十 年間 、彼 は 素寒貧 に なる わけだ 。

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