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火星の記憶 (The Memory of Mars) by Raymond F. Jones, パート20

パート 20

はるか 遠く の ほう から ドクタ ・マーチン の 研究 室 の 壁 が 彼 の まわり に 迫って きた 。 明かり が じわじわ と その 強さ を 増した 。 ドクタ ・マーチン は 脇 に 座って いて 、頭 を ゆっくり 横 に 振って いた 。 「まことに 申し訳ない 、ミスタ ・ヘイスティングス 。 今度 こそ 本当の 出来事 の 全容 が 明らかに なる と 思って いた んです が ね 。 でも よく ある こと なんです が 、あなた の 場合 も 、空想 の 上 に 空想 が 折り重なって いて 、真実に 到達する には 、その いくつ も の 層 を 掘り下げる 必要が あるんです 。 でも あなた の 場合 は 、隠さ れた 真実 を 見いだす のに それ ほど 深く 進まなくて も いい ようだ 」

メル は 長い す に 横たわった まま 天井 を 見つめ つづけた 。 「それ じゃ 、宇宙 に 巨大な 黒い 宇宙船 など なかった と ? 「当然 です よ ! それ が この 手 の 分析 の 危険 の ひとつ なんです 、ミスタ ・ヘイスティングス 。 新しく 見つかった 空想 を 、求めている 真実 と 勘違い しちゃ いけません 。 また お 出で いただいて 、検査 を つづけ なければ なりません ね 」 「ええ 、そりゃ もう 」彼 は ゆっくり と 起き上がり 、医者 と 看護人 に 助けられて 控え室 へ 移った 。 看護 人 は 白くて 甘い 飲み物 の 入った グラス を 手渡した 。

「活力 増進 剤 です よ 」と ドクタ ・マーチン は 笑った 。 「深層 の 検査 を やった とき に まま ある 疲労感 を 取りのぞいて くれます 。 あさって も お 待ち して います よ 」 メル は うなずいて 廊下 に 出た 。

巨大な 宇宙 船 は 存在 し ない 。

ムチ の ように 飛び出す 触手 で 人間 を つかまえる 奇妙な 小型 ロボット 船 は 存在 し ない 。

外科医 の 格好 を した おかしな 三人組 は 存在 しない 。

そして アリス も ――。

突然 、ある 考え が 槍 の ように 頭 の 中 を つらぬいた 。 たぶん 、いま まで の すべて が 幻想 だった ので は ない か 。 いま 家 に 帰ったら 彼女 が 彼 を 待って いる ので は ない か 。 たぶん ―― 。

いい や 。 あれ は 現実 に 起きた のだ 。 事故 。 ドクタ ・ウインタース 。 病院 の 手術室 の 隣 に ある 、氷 の ような 部屋 の 光景 。 ドクタ ・マーチン は その こと を 知ら ない 。 メル が その こと を 話そう と して いたら 、それ も 空想 だ と 言った だろう 。

ちがう 。 あれ は どれ も 現実 だ 。

アリス の 信じられない 、異様な 内臓 。 巨大な 黒い 船 。

情け 容赦 ない ロボット の 捜索 隊 。

ぼく の 悪夢 は 宇宙 で 起きた こうした こと に 起因 している んだ 。 しかし それ は どういう わけ か 、意識的な 記憶 から ぬぐいさられて しまった 。 悪夢 は 、思って いた の と は ちがって 、少年 時代 に 起因 する もの で は ない 。 いま こそ 、はっきり した ぞ 。

しかし アリス に は いったい なに が 起きた のだろう 。 ドクタ ・マーチン に よって 掘り起こさ れた 記憶 の 中 に は なんの 手がかり も なかった 。 彼女 の 状態 は 異常な 遺伝 の 結果 な の か 、あるいは 遺伝子 が 突然 変異 した 結果 な の か 。

頭 の 中 に 押し寄せる 混乱 は いま まで 以上 に 大きかった 。 これ を 鎮める に は たった ひとつ の 方法 しか ない ――もともと 計画 していた ように 火星 に 行く のだ 。

もう 一 度 行って みよう 。 黒い 船 が 存在 する の か どう か 、確かめる のだ 。

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