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火星の記憶 (The Memory of Mars) by Raymond F. Jones, パート12

パート 12

精神 科 医 の ドクタ ・マーチン は メル の 問題 に 強い 興味 を 感じた 。 「どうやら 幼少期 の トラウマ が 原因 らしい です ね 。 その後 、ずっと 意識 から 消されて いた んでしょう 。 起源 的 出来事 に どれ だけ 抑圧 が かけられて いる か で 、 回復 の 難易 度 が 決まります 」 「 起源 的 出来事 なんて どう でも いい ん です 」 と メル は 言った 。 「宇宙 空間 に 対する 、この 言いようのない 恐怖 を 取り除いて くれ さえ したら 。 ドクタ ・ウインタース は 復元 療法 が 必要 だろう と 言って いました が 」 「その 通り です 。 その 手 の 恐怖症 は どれ だけ 覆い を かぶせて 押さえ込もう と して も 、あなた に 取りついて 離れ ない のです 。 症状 を 分析 する ために 、まず 試験的な 検査 を やって みましょう 。 その ほう が 最終的に 成功 する か どうか 、より 正確に 判断 できます 」 メル ・ヘイスティングス は 新聞 記者 と して 精神 復元 療法 の こと を おぼろげに 聞いて いた が 、詳しい こと は 知ら なかった 。 なんでも ある 種 の 機械 を 使って 、人間 の 心 の 深奥 に 接続 し 、心 の 地下室 や 屋根裏部屋 に 蓄積 された 、隠れた 残骸 を ひきずりだす のだ そうだ 。 しかし 彼 は そうした もの に いつも 怖気 を ふるい 、避けて 通って きた のだった 。

ドクタ ・マーチン に 連れられ はじめて 精神 復元 治療室 に 入った とき 、彼 の 決心 は もう 少し で 消えて なく なる ところ だった 。 そこ は なにより も 、複雑な 電子 工学 の 実験室 といった おもむき が あった 。 操作 係 と 看護婦 の 制服 を 着た 助手 が 五人 ほど ひかえていた 。

「ここ に 横 に なって ください 」と ドクタ ・マーチン は 言った 。

メル は なに か 非人間的な 生物 実験 の 材料 に なった 気 が した 。 端子 の ついた かご形 の もの が 頭 に かぶせられ 、千 の 小さな 電極 が 頭部 に 取り付けられた 。 器具 から もれる かすかな うなり が 、彼 の 中 に 小さな 不安 の 波 を かきたてた 。

半 時間 後 、準備 は 完了 した 。 部屋 の 照明 が 落とさ れた 。 彼 は 操作 係 が パネル を 操作 する 気配 を 感じ 、そば に 腰かける ドクタ・マーチン の 姿 を ぼんやり と 認めた 。

「あなた が 話して くれた 悪夢 、あれ を 最後 に 見た とき の 記憶 を 、できる だけ 生き生き と 思い出して ください 。 こちら で 目標 に 照準 を 合わせ 、追跡 します から 」 それ は メル が この世 で いちばん やり たく ない こと だった 。 彼 は 決心 が つか ず 苦しみ ながら 横たわって いた 。 ほんの 少し 前 に 夢 を 見た こと は 覚えて いた が 、夢 の 内容 を 実際 に 思い出す こと は 拒んで いた 。

「抵抗 し ないで 」と ドクタ ・マーチン は やさしく 言った 。 「記憶 に あらがっちゃ いけない ―― 」

心 の 一部 が 、一瞬 、警戒 を 解いた 。 まるで 渦巻き の 表面 に 触れた か の ように 、彼 は 夢 の 深み へ 吸い込まれて いった 。 吸い込まれ る とき 、彼 は 恐怖 の 叫び を あげた ような 気 が した 。 しかし 聞いて いる もの は だれ も いない 。 彼 は ひとり 宇宙 空間 に 浮いて いた 。

恐怖 が 黒い 、ねっとり した 毛皮 の ように 彼 を 包んだ 。 怖れる こと すら まったく の 無意味 だ と 彼 は 感じた 。 ただ このまま の 状態 で いよう 。 じきに ぼく は 存在 し なく なる はずだ から 。

しかし 彼ら は ふたたび やってきた 。 彼 は その 姿 を 見た 、と いう より 、気配 を 感じた のだった 。 捜索 隊 。 彼ら に 対する 恐怖 は 、宇宙 空間 に ひとり で いる 恐怖 より も 大きかった 。 彼 は 移動 した 。 どういう 具合 に か 、彼 は その 場 を 離れ 、果てしない 虚無 の 中 を がむしゃら に 進んで いった 。 後ろ で は 光り の 点 が その 数 を 増して いった 。

「たいへん 結構 」と ドクタ ・マーチン が 言って いた 。 「非常に 満足 すべき 検査 に なりました 」 その 声 は 時空間 の 巨大な 障壁 の かなた から 聞こえて くる ようだった 。 メル は 身体 に びっしり 汗 を かいている こと に 気 が ついた 。 くたくた に なった 筋肉 が うずいた 。

「これ は とても しっかり した 分析 起点 に なります 」と ドクタ ・マーチン は 言った 。 「ここ から 経験 を 遡行 して 全体 を 掘り起こしましょう 。 準備 は いい です か 、ミスタ ・ヘイスティングス ? メル は 力 が 抜けて うなずく こと も でき なかった 。 「やって ください 」と 彼 は 弱々しく つぶやいた 。

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