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JIN-仁-, JIN-仁- #07

JIN - 仁 - #07

( 仁 ) 平成 二十二 年 …

てこ と は …

( 洪 庵 ) 私 に は …→

時間 が ない

( 勝 ) 医学 所 辞め ち まった か ( 橘 ) はい

「 一連の 騒動 は 自分 の 落ち度 だ 」 と 言い出して

≪( 勝 ) どこ 行く んだ ? 龍 の 字

( 龍 馬 ) 先生 の 護衛 に 行く ぜ よ

まだまだ どう なる か 分から ん

お前 さん 頼む よ ああ …

どう いて じゃ !?

そろそろ 海軍 を つくる 根回し を 始めよう と 思って よ

けん ど 今 は …

死に かかって る の は 人 ばかり じゃ ない んだ ぜ

この 国 だって 死に かかって んだ

( 山田 ) どうぞ

少し チクッ と し ます

( 野 風 ) 先生 から お 礼 の 文 を いただき ん した が

先生 は あ ちき の 文 そのもの は ご覧 に ?

( 咲 ) どうした もの か 私 も 判断 を いたし かね

あの … お 見せ した 方 が ?

いえ …

どうか そのまま 破り 捨てて おく ん なん し

あの … 野 風 様 は 先生 の こと を お 慕い して

あ ちき に も 情 人 の 一 人 ぐらい は お ざん して な

その お方 の こと を 考え 書いた まで の こと

南方 先生 の こと を お 慕い して る わけで は ご ざん せ ん

先生

ご 無事で 何より で

別人 な の は 分かって んだ けど な ~

あれ … いい んです か ? 咲 さ ん

一緒に 歩いて る こと に なっちゃ うんじゃ

つまら ぬ こと を 気 に する の は やめた のです

歩き たい ように 歩け ぬ 人 も いる のです から

は あ …

( 玄 朴 ) 無断 で ペニシリン を 持ち出す と は 何事 じゃ !

( 山田 ) ペニシリン は 南方 先生 が つくりだした もの です し …

薬 を つくる 施設 材 全て 医学 所 持ち であろう !

今回 の 件 に かんし まして は

全て 私 が 立て替え ます ゆえ

この こと は 南方 先生 に は 内密に

しかし 使用 の たび に これ で は …

やはり 一連の 下手人 を 捜した 方 が よろしい ので は

恨み は … 恨み を 買う だけ や と 思い ませ ん か ?

ああ …

ペニシリン を 守る ため に は もっと 別の 策 を 講じ ん と …

≪( 山田 ) 大丈夫で ございます か ?

ただ の 流行り 風邪 で ございます

( せき込む )

( 栄 ) どう なさる お つもりでしょう ね ? 先生 は

もう ずいぶん 何 を なされる でも なく

それ は 未来 の もの です か ?

ああ … はい 丘 に 落ちて て

では どなた か が 先生 の ように

いら した と いう こと で ございます か ?

誰 か が 来た の か

これ だけ が 落ちて きた の か 分から ない んです けど

戻れる 道 を お 捜し に なって いる のです か ?

今 戻って も 未来 さん の 手術 が

成功 する ような 世に は なって い ない と

案じて いらっしゃる ?

どうして 分かった んです か ?

先生 が 迷わ れる と したら それ し かない です から

でも ここ で ずっと 生きて く 覚悟 は ある の か って 言わ れる と …

ご 判断 を 急ぐ 必要 は ない ので は ない でしょう か

いつか 天命 も まいり ましょう し

天命 ?

人 に は いかに 生きる べき か

天命 を 授かる とき が くる と 言い ます から

〈 もし いつか 〉

〈 本当に 天命 なんて もの が 空 から 降って きた と して 〉

これ が ペニシリン で ございます

〈 それ が もし 〉

〈 この 時代 で 生きて いく こと だった と したら 〉

〈 俺 は あきらめきれる んだろう か 〉

〈 この 手 の 中 の 可能 性 を 〉

南方 仁 なる 医者 が つくり ました

〈 あきらめきれる んだろう か ?〉

〈 君 と の 未来 を 〉

≪( 喜市 ) 先生 !→

茜 ねえちゃん が !

揚げ物 の 油 を かぶ っち まって !

《≪ 茜 ちゃん 大丈夫 かい !?》

( 洪 庵 ) ペニシリン は すばらしい 薬 です が

管理 が 難しく 保存 が きか ぬ ゆえ

絶えず 人 の 手 を 必要 と し ます

その 上 に 我ら を 快う 思わ ん 連中 の 手 に よって

害 を なす と いう 事件 まで 起きて おり ます

( 客 ) 害 皆 恐ろしい ので ございます

南方 先生 の 医術 が 進み すぎて

( 客 ) 緒方 先生 は 恐ろしく は ない のです か ?

医術 に 命 を かけた 者 と して は 落胆 も いたし ました

が しかし か の 人 の 医術 が 広まれば

たちどころに 幾 万 … いや

幾 十万 の 人 の 命 を 救う こと が でき ます

南方 先生 と ペニシリン は

本邦 医学 界 が 守ら ねば なら ん

宝 で ございます

( 母親 ) 先生 茜 の 顔 は 元 に 戻り ます でしょう か ?

( 茜 ) 無理 言う な よ いくら 何でも こんな ヤケド …

まったく 元どおり と いう わけに は いか ない かも しれ ませ ん が

化粧 を すれば 分から ない 程度 に は できる と 思い ます

とりあえず 今日 は 消毒 を し ましょう

≪( 茜 ) はい

≪( 咲 ) どのような 治療 を なさる のです か ?

失った 皮膚 を 別の 部分 から 移して 植え 替え ます

そのような こと が できる のです か ?

でも … その ため に は 大量の ペニシリン が 必要な んです

では 医学 所 に

お 願い する しか あり ませ ん ね

は は ~ 皮膚 を 移植 なさる

はい 損傷 は 表皮 だけ で なく

真 皮 全 層 に まで 達して い ます

皮膚 の 再生 は 望め ない 状態 だ と 思い ます

ですから 他の 部分 から 皮膚 を 移植 する のです が

手術 後 約 二 週間 ほど

感染 症 予防 の ため に ペニシリン が 大量に 必要です

その ため の ペニシリン で ございます か

あの … 大量 と は どの 程度 に ?

必要な だけ どう か お 申しつけ ください

≪( 洪 庵 ) それ は それ と して

その 手術 私 の 知人 に 見せて いただく こと は でき ます か

かまい ませ ん が かた じ け のう ございます

で その 手術 どのように なさる のです か ?

はい まず 麻酔 を した あと

ヤケド で 壊死 した 部分 を カミソリ で 取り除き ます

それ を 「 デブリードマン 」 と いう のです が …

≪( 山田 ) 先生 先生 ?

大丈夫で ございます

≪( 山田 ) 風邪 を こじら して いらっしゃる ようです

この ところ 遅く まで 書き物 を して おる らしく

お 疲れ な ので ございましょう

山田 先生 も ペニシリン 管理 する の 大変です よ ね ?

え ッ ? それ を 大量に つくって くれ なんて

ペニシリン は 誰 が 何と 言おう と 南方 先生 の もの で ございます

存分に お 使い ください ませ

( 医師 B ) あの 連中 は 何も 反省 して おら ぬ ようじゃ の

( 瓦版 売り ) ついに やった よ 攘夷 だ

長 州 が メリケン の 船 を 攻撃 した って よ ~

ほんとに 幕末 な んだ な

≪( 洪 庵 ) 南方 先生

私 の 古い 恩人 で ございます

( 濱口 ) 今日 は よろしく お 願い し ます

はい

麻酔 導入 し ました

デブリードマン は い

あれ は 何 を して いる のです か ?

壊死 した 皮膚 を →

けずり 取って おる ので ございましょう

( おばちゃん ) 山田 先生 ずっと 泊まり込み な んだ って ?

南方 先生 に よい ペニシリン を 持っていか ねば なら ぬ から

( 佐分利 ) 山田 先生 !

製造 所 から 火 が !

ペニシリン が …

うわ ~ ッ ! 山田 先生 !

≪( 佐分利 ) 山田 先生 !

採 皮 部分 を 縫 合し ます は い

南方 殿 は 誠に …

この世 の … 奇跡

≪( 横 松 ) 緒方 先生 南方 先生 !→

いらっしゃい ます か !?→

ペニシリン 製造 所 から 出火 し ました !→

ペニシリン を 全て 失い ました !

緒方 先生 !

ペニシリン が …

今日 は 蒸し ます ね 先生

はい

続け ます

( 八木 ) 誰 が こんな こと を

ええ 株 持ち出せて る じゃ ないで す か

ひと 株 で は …

どうにも

先生 !

( 山田 ) 先生 私 は …

私 は 南方 先生 に 合わす 顔 が ござ り ませ ぬ !

( 濱口 ) 南方 殿 ペニシリン と いう 薬 なし で →

今後 の 治療 は できる のです か ?

できる だけ 丁寧に 縫 合し ました

何とか なる のです か ?

皮膚 の 固定 に 気 を 配り まめに 消毒 を 続けて いき ます

《 お 願い が ございます 薬 を つくり たい んです 》

《 ペニシリン と 言い ます 》

《≪( 洪 庵 ) やり ました な 》

≪( 濱口 ) 緒方 先生

私 は … 頭取 失格 です

お 恥ずかしい こと で ございます

この 事件 の 裏側 に は 医学 所 内 の 派閥 争い が ございます

南方 先生 が 辞め なければ なら ん かった 理由 も

突きつめれば そこ に ございます

私 は … 何一つ でき ん かった

南方 先生 から 数 限りない 医術 を 与え られ ながら

私 は …

何一つ !

緒方 先生 … あ ッ !

濱口 様 後生 で ございます

( 洪 庵 ) お 願い いたし ます ! お 願い いたし ます

では 緒方 先生 に お 会い する こと は ?

今 は ちょっと …

ペニシリン を 再び つくる 目 処 は ?

全力 で やり ます それ は お 約束 し ます んで

早くて も 二 週間 は かかる か

先生 青 カビ を 集め ましょう

この 季節 です し カビ も 育ち やすう ございましょう

≪( 男 ) 山田 純 庵 殿 で ご ざる か ?

先生 カビ あり ました ありがとう ございます

おい ら に でき ん の は カビ を 集める くらい の 気 も する が

考えちゃ みる が よ お 願い し ます

坂本 殿 より の 文 で ございます か ?

ああ 海軍 塾 の お 足 越前 の 殿様 から

五千 両 借り られた って よ 五千 両 !?

殿様 の 前 で ペニシリン の 話 を した らしい ぜ

《( 龍 馬 ) その 南方 先生 っ ちゅう が は 》

《 ペニシリン っ ちゅう 秘密 兵器 を 持 っち ょる が じゃ 》

《 これ が あるき !》

《 腹 を か っ さばく っ ちゅう 大胆な 治療 が できる が じゃ 》

《 列強 に 負け ん ような 海軍 は 》

《 こん 国 の ペニシリン に なる ぜ よ !》

あの 口先 は 才能 だ な はい …

( 初音 ) よう 見え りん す

ありがとう ご ざん す 橘 様

それ で 少し は 暮らし やすく なろう

けん ど これ で は 客 はつ きんせん な

もう … つか ず と も よい で は ない か

もっと 早う 出会い たかった であり ん す

( 野 風 ) 他言 は いたし ん せんけん ど

女 郎 の 言葉 に は 必ず 嘘 が 入りまじって おり ん す

それ だけ は 心して おく ん なん し

説教 と は 花魁 と は ずいぶん 偉い もの である な

真 の 世 から は あ ちき など

蚊帳 の 外 で お ざん すよ

私 も だ

思う ように は 増え ませ ん ね

よかった んでしょう か ? これ で

同じ 過ち を おかして は なり ませ ん

あんまり よく ない んだ ろ ?

そんな こと ないで すよ

い いって あたい は 顔 で 売って た んじゃ ないし さ

感染 症 を 起こし かけて いる !? はい

このまま だ と まず い です

ペニシリン は まだ でき ぬ のです か ?

これ から 抽出 して も あと 一 週間 は

そう だ … 先生 ?

ちょっと 行って き ます !

先生 どこ へ !?

≪( 医者 ) 医学 館 の 名 を つぶして おいて →

よくも の この こ来 られた な ! お 願い し ます !

このまま で は 感染 症 に なる 危険 が あり ます

化膿 に 効く 生薬 か 何 か を ! お 願い し ます

( 医者 ) うるさい !

( 橘 ) 行き ましょう 先生

あの 程度 の ヤケド を 治せ ない なんて

「 神 は 乗り越え られる 試練 しか 与え ない 」

喜市 ちゃん が 以前 先生 に そう 言わ れた と

はい

どうぞ ありがとう ございます

南方 様 に お 荷物 が 届いて おり ます

私 に ?

( 山田 )「 まだ 少し です が ペニシリン を お 届け し ます 」

「 これ から 毎日 このように お 届け いたし ます ゆえ 」

「 ご 安堵 召さ れ ます よう 」

どう やった んでしょう ? たった 七 日間 で

分かり ませ ん

でも …

これ で 治 せる

上がった な ~

これ で 治った の か ?

傷あと は 時間 の 経過 と ともに どんどん 消えて き ます

ほんとに !? はい 大丈夫です よ

ねえちゃん 店 いつ から 出 れ んだ よ ?

ねえちゃん の 呼び込み が ない と 寂しくて いけ ねえ って

み ~ んな うるさく って

明日 に は 拝ま せて やる って そう 言 っと け !

よかった で すね は い

佐分利 先生

もう そろそろ 教えて いただけ ませ ん か ?

どう やって ペニシリン を つくった の か

( 橘 ) こんな 所 で つくって た んです か

放火 やった んで しばらく 場所 は ふせて おけ と 緒方 先生 が

でも 一 週間 じゃ カビ も 育た ない でしょう

そこ は 山田 先生 が 命からがら 株 を 持ち出して くれた んで

これ は …

ここ は もと 醤油 が 運ば れる 倉 だった 所 です

醤油 ? ええ

この 者 達 は 醤油 づくり の 職人 です →

もともと 培養 したり ろ過 したり →

そういった 作業 に は 慣れて る わけです

ゆえに 七 日間 で ペニシリン が ? ええ

でも どうして こんな こと が できて ?

手術 見学 して はった 方 あの 方 は →

濱口 様 っ ちゅう 醤油 づくり の ヤマサ の ご 当主 な んです よ

あった んだ この 時代 から

≪( 山田 ) 濱口 様 は 医学 所 の 前身 の 種痘 所 を 再興 したり

医学 の 研究 の ため に ばく大な 援助 を して くれて る 方 です

緒方 先生

どうして 言って くれ なかった んです か ?

私 が 素性 を 明かさ ぬ ように お 願い した のです

あの とき は まだ ペニシリン に 対する 援助 を

決め かねて おり ました ので

でも 結局 あの とき は ペニシリン を 使わ ず に …

私 は あなた の 神業 の ような 医術 や

薬 の 威力 ゆえ に 心 を 決めた わけで は ございませ ぬ

あなた と あなた の 医術 を 守り たい と いう

緒方 先生 の お 心 に 打た れた ので ございます

緒方 先生 の お 心 ? はい →

先生 から は 数 ヵ 月 に わたって →

何度 も 丁寧な 文 を いただき 何度 も 足 を お 運び いただき →

その 熱心 さ は 少々 恐ろしい ほど で ございました

この 製造 所 は 緒方 先生 が 命 を けずって

お つくり に なら れた もの です

あなた の ため に

その後 緒方 先生 に は お 会い に なら れ ました か ?

いえ

では 一 日 も 早く

お 礼 を おっしゃり に 行って ください

緒方 先生 は 恐らく …

重い 労 咳 に

え ッ !?

( 橘 ) 先生 お 待ち ください 先生

《 何とぞ 我ら に コロリ の 治療 法 を ご 教授 願い たく 》

《 山田 を お 願い し ます 》

《 道 を 開く と いう こと は な 》

《 自分 だけ の 逃げ道 を つくる こと や ない !》

《 して … その 薬 の 名 は ?》

( 八重 ) 南方 様 と おっしゃる お方 が

着替え を

南方 殿 は 私 の 師 に も あたる お方 や

こんな 格好で は 無礼に あたる

ああ お 待た せ して 申し訳 ございませ ん

先生

ペニシリン の 件 で は 本当に お 世話に なり ました

いえいえ

あれ は 濱口 様 が いたれば こそ の こと

緒方 先生 は い

診察 を さ せて いただけ ます か ?

これ は これ は

お 見たて の ほど よろしゅう お 願い し ます

先生

先生 は 医 の 道 は どこ へ 通じる と お 思い です か ?

え ッ ?

私 に は …

私 は 医 の 道 は

平らな 世に 通じる と 思う てま す

武士 や 百姓 や と 人 に 勝手に

身分 の 上下 つけ とる 世の中 で は ございます が

腹 割れば 同じ もん が 入って ます

天 の 下 に 人 皆 等しき なり

医学 の 目指す べき 地平 は そこ や と 思う て

日々 精進 して まいり ました

未来 は … 平らな 世 で ございます か ?

先生 は 未来 から 来た お 人 でしょう ?

そんな こと は あり え ん

そんな バカな こと を 考える それ だけ で 蘭学 者 失格 や

でも … 何べん 考えて も

そう と しか 思え ん のです わ

冥土 の 土産 に し ます ゆえ 教えて ください

私 の 思う た と おりや ったら

先生 目 つぶって ください

お 恥ずかしい こと で ございます

一 年 前 住み慣れた 大坂 から

江戸 へ 召し 出さ れて

口 で は 「 国 の ため 道 の ため 」 など と 言う ており ました が

心 の 中 で は もう 寂しゅう て 寂しゅう て

たかが 大坂 から 江戸 へ 召し 出さ れた だけ で

恥ずかしい こと で ございます

南方 先生 の 寂し さ に 比べれば

私 など … いかほど の もんか

もう … 私 に できる こと は

何も ございませ ん

だから どうか

先生 の その 寂し さ

この 洪 庵 に お 分け ください

洪 庵 冥土 に 持っていき ます

心細く は あり ました が

私 は 孤独で は あり ませ ん でした

私 の ような 得体の知れない 者 を 信じ

支えて くださった 方 が い ました から

私 は …

決して 孤独で は あり ませ ん でした

緒方 先生

私 に も 一 つ お 教え 願え ます か ?

私 は この ご恩 に どう 報いれば よろしい のでしょう か ?

より よき 未来 を お つくり ください

未来 を ?

皆 が 楽しゅう 笑い 合う

平らな 世 を お つくり ください

国 の ため

道 の ため

はい

南方 先生

未来 で は この 労 咳 と いう 病 は

治 せる 病 に なって おる んです な ?

ああ … ああ …

〈 そして 1863 年 〉

〈7 月 25 日 〉

〈 緒方 先生 は 帰ら ぬ 人 と なった 〉

〈 俺 と かかわった こと で 〉

〈 寿命 が 延びた の か 縮んだ の か それとも 〉

〈 何も 変わら なかった の か は 分から ない 〉

〈 だけど 満足 そうに 〉

〈 微笑んで いか れた と いう 〉

〈 その 顔 は たとえ 歴史 が どう 変わって も 〉

〈 変わら なかった のだろう と 思う 〉

長 州 が アメリカ と フランス から

攘夷 の 報復 攻撃 を 受けた ちゅう 話 じゃ が

( 勝 ) これ で 奴 ら も 攘夷 なんて 絵 に 描いた 餅 だ と 分かった だろう

長 州 を たたき おった 異国 の 船 は 幕府 が 修理 し

再び 長 州 を たたき に 出て いった っ ちゅう 噂 は

誠 かい ? 怒って ん の かい ?

思う とこ は 違う けん ど 奴 ら は こん 国 を 守る ため に

戦 こうち ょる ぜ よ それ を …

これ を 理由 に 戦 なんか 仕掛け られて みろ

あっという間 に 占領 さ れて 終わり さ

先生 は それ で ええ が かえ !?

おい ら 幕 臣 だ よ

幕 臣 だ から できる こと は 山 の ように ある

が 幕 臣 だ から のま なきゃ な ん ねえ こと も ある

《 より よき 未来 を お つくり ください 》

より よき 未来 …

お 手紙 です

「 友 」?

( 龍 馬 )「 先生 元気に しち ょる かえ 」

龍 馬 さん

「 どうでも ええ こと じゃけん ど 」

「 今日 は 一 つ 聞いて ほしい ぜ よ 」

「 長 州 を 攻撃 した 異国 の 船 を 幕府 が 秘密裏 に 修理 し 」

「 その 船 が また 長 州 を たた い とる っ ちゅう 噂 は 」

「 聞 いち ょる かえ ?」

「 わしゃ 勝 先生 に 」

「 それ で ええ かえ と つめよった けん ど 」

「 先生 は 幕 臣 である が ゆえ に 」

「 どうにも なら ん こと が ある ち 言う が じゃ 」

「 ならば それ こそ が わし の 天命 で は ない か え 」

「 天 より する こと かも しれ ん と 思う た ぜ よ 」

「 わし に は 身分 も ない 」

「 その かわり に しがらみ も ない 」

「 何の 力 も ない けん ど この 身 一 つ 」

「 どうにでも 動ける き 」

「 わし は 日本 を いま 一 度 せんたく する ぜ よ 」

「 攘夷 派 も 開国 派 も まとめて みせる き 」

「 この 日 の 本 を 一 つ に する ぜ よ 」

「 一 つ 」

一 つ に …

する

〈 これ って もし かして 〉

〈 天命 って やつ じゃ ない か って 思った んだ よ 〉

未来

俺 さ 病院 を つくって みる よ

誰 も が 気軽に かかれる ような 値段 で

そこ で は 西洋 医学 と 漢方 と が 融合 した 治療 が 受け られる

その 二 つ を 一 つ に する こと で

新しい 医療 が 生まれる 可能 性 が ある と 思う んだ

その こと で 君 の 未来 が 一時的に 悪く なったり

いろいろ する んだろう けど

大きな うねり で は

絶対 に いい 方向 に 向かう と 思う んだ

未来 が 過去 の 結果 だ と する なら

最善 を 尽くした 結果 が 悪く なる はず は ない だろう し

俺 は そう 信じ たい

俺 は ここ から

君 の 腫瘍 を 治 せる ような 未来 を つくって み せる

〈 これ は 俺 の …〉

〈 新たな 船出 だ 〉

皆さん 改めて よろしく お 願い し ます !

はい !


JIN - 仁 - #07 |しとし

( 仁 ) 平成 二十二 年 … しとし|へいせい|にじゅうに|とし

てこ と は …

( 洪 庵 ) 私 に は …→ ひろし|いおり|わたくし||

時間 が ない じかん||

( 勝 ) 医学 所   辞め ち まった か ( 橘 ) はい か|いがく|しょ|やめ||||たちばな|

「 一連の 騒動 は   自分 の 落ち度 だ 」 と 言い出して いちれんの|そうどう||じぶん||おちど|||いいだして

≪( 勝 ) どこ 行く んだ ?  龍 の 字 か||いく||りゅう||あざ

( 龍 馬 ) 先生 の 護衛 に 行く ぜ よ りゅう|うま|せんせい||ごえい||いく||

まだまだ   どう なる か 分から ん ||||わから|

お前 さん   頼む よ ああ … おまえ||たのむ||

どう いて じゃ !?

そろそろ   海軍 を つくる 根回し を 始めよう と 思って よ |かいぐん|||ねまわし||はじめよう||おもって|

けん ど   今 は … ||いま|

死に かかって る の は 人 ばかり じゃ ない んだ ぜ しに|||||じん|||||

この 国 だって   死に かかって んだ |くに||しに||

( 山田 ) どうぞ やまだ|

少し チクッ と し ます すこし||||

( 野 風 ) 先生 から お 礼 の 文 を いただき ん した が の|かぜ|せんせい|||れい||ぶん|||||

先生 は   あ ちき の 文 そのもの は ご覧 に ? せんせい|||||ぶん|その もの||ごらん|

( 咲 ) どうした もの か 私 も 判断 を いたし かね さ||||わたくし||はんだん|||

あの …  お 見せ した 方 が ? ||みせ||かた|

いえ …

どうか   そのまま 破り 捨てて おく ん なん し ||やぶり|すてて||||

あの …  野 風 様 は 先生 の こと を お 慕い して |の|かぜ|さま||せんせい|||||したい|

あ ちき に も   情 人 の 一 人 ぐらい は お ざん して な ||||じょう|じん||ひと|じん||||||

その お方 の こと を 考え 書いた まで の こと |おかた||||かんがえ|かいた|||

南方 先生 の こと を お 慕い して る わけで は ご ざん せ ん なんぽう|せんせい|||||したい||||||||

先生 せんせい

ご 無事で 何より で |ぶじで|なにより|

別人 な の は   分かって んだ けど な ~ べつじん||||わかって|||

あれ …  いい んです か ? 咲 さ ん ||ん です||さ||

一緒に 歩いて る こと に なっちゃ うんじゃ いっしょに|あるいて|||||

つまら ぬ こと を 気 に する の は やめた のです ||||き||||||の です

歩き たい ように 歩け ぬ 人 も いる のです から あるき||よう に|あるけ||じん|||の です|

は あ …

( 玄 朴 ) 無断 で ペニシリン を 持ち出す と は 何事 じゃ ! げん|ぼく|むだん||||もちだす|||なにごと|

( 山田 ) ペニシリン は   南方 先生 が つくりだした もの です し … やまだ|||なんぽう|せんせい|||||

薬 を つくる 施設   材   全て 医学 所 持ち であろう ! くすり|||しせつ|ざい|すべて|いがく|しょ|もち|

今回 の 件 に かんし まして は こんかい||けん||||

全て 私 が 立て替え ます ゆえ すべて|わたくし||たてかえ||

この こと は   南方 先生 に は 内密に |||なんぽう|せんせい|||ないみつに

しかし   使用 の たび に これ で は … |しよう||||||

やはり   一連の 下手人 を 捜した 方 が よろしい ので は |いちれんの|げしゅにん||さがした|かた||||

恨み は …  恨み を 買う だけ や と 思い ませ ん か ? うらみ||うらみ||かう||||おもい|||

ああ …

ペニシリン を 守る ため に は もっと 別の 策 を 講じ ん と … ||まもる|||||べつの|さく||こうじ||

≪( 山田 ) 大丈夫で ございます か ? やまだ|だいじょうぶで||

ただ の 流行り 風邪 で ございます ||はやり|かぜ||

( せき込む ) せきこむ

( 栄 ) どう なさる お つもりでしょう ね ?  先生 は さかい||||||せんせい|

もう   ずいぶん 何 を なされる でも なく ||なん||||

それ は 未来 の もの です か ? ||みらい||||

ああ … はい   丘 に 落ちて て ||おか||おちて|

では   どなた か が 先生 の ように ||||せんせい||よう に

いら した と いう こと で ございます か ?

誰 か が 来た の か だれ|||きた||

これ だけ が 落ちて きた の か 分から ない んです けど |||おちて||||わから||ん です|

戻れる 道 を お 捜し に なって いる のです か ? もどれる|どう|||さがし||||の です|

今   戻って も 未来 さん の 手術 が いま|もどって||みらい|||しゅじゅつ|

成功 する ような 世に は なって い ない と せいこう|||よに|||||

案じて いらっしゃる ? あんじて|

どうして 分かった んです か ? |わかった|ん です|

先生 が 迷わ れる と したら それ し かない です から せんせい||まよわ||||||か ない||

でも   ここ で ずっと 生きて く 覚悟 は ある の か って 言わ れる と … ||||いきて||かくご||||||いわ||

ご 判断 を 急ぐ 必要 は ない ので は ない でしょう か |はんだん||いそぐ|ひつよう|||||||

いつか   天命 も まいり ましょう し |てんめい||||

天命 ? てんめい

人 に は いかに 生きる べき か じん||||いきる||

天命 を 授かる とき が くる と 言い ます から てんめい||さずかる|||||いい||

〈 もし   いつか 〉

〈 本当に 天命 なんて もの が 空 から 降って きた と して 〉 ほんとうに|てんめい||||から||ふって|||

これ が ペニシリン で ございます

〈 それ が   もし 〉

〈 この 時代 で 生きて いく こと だった と したら 〉 |じだい||いきて|||||

〈 俺 は   あきらめきれる んだろう か 〉 おれ||||

〈 この 手 の 中 の 可能 性 を 〉 |て||なか||かのう|せい|

南方 仁 なる 医者 が つくり ました なんぽう|しとし||いしゃ|||

〈 あきらめきれる んだろう か ?〉

〈 君 と の 未来 を 〉 きみ|||みらい|

≪( 喜市 ) 先生 !→ きいち|せんせい

茜 ねえちゃん が ! あかね||

揚げ物 の 油 を   かぶ っち まって ! あげもの||あぶら||||

《≪ 茜 ちゃん   大丈夫 かい !?》 あかね||だいじょうぶ|

( 洪 庵 ) ペニシリン は すばらしい 薬 です が ひろし|いおり||||くすり||

管理 が 難しく   保存 が きか ぬ ゆえ かんり||むずかしく|ほぞん||||

絶えず   人 の 手 を 必要 と し ます たえず|じん||て||ひつよう|||

その 上 に   我ら を 快う 思わ ん 連中 の 手 に よって |うえ||われら||こころよう|おもわ||れんちゅう||て||

害 を なす と いう 事件 まで 起きて おり ます がい|||||じけん||おきて||

( 客 ) 害 皆   恐ろしい ので ございます きゃく|がい|みな|おそろしい||

南方 先生 の 医術 が 進み すぎて なんぽう|せんせい||いじゅつ||すすみ|

( 客 ) 緒方 先生 は 恐ろしく は ない のです か ? きゃく|おがた|せんせい||おそろしく|||の です|

医術 に 命 を かけた 者 と して は 落胆 も いたし ました いじゅつ||いのち|||もの||||らくたん|||

が   しかし か の 人 の 医術 が 広まれば ||||じん||いじゅつ||ひろまれば

たちどころに   幾 万 …  いや |いく|よろず|

幾 十万 の 人 の 命 を 救う こと が でき ます いく|じゅうまん||じん||いのち||すくう||||

南方 先生 と ペニシリン は なんぽう|せんせい|||

本邦   医学 界 が 守ら ねば なら ん ほんぽう|いがく|かい||まもら|||

宝 で ございます たから||

( 母親 ) 先生   茜 の 顔 は 元 に 戻り ます でしょう か ? ははおや|せんせい|あかね||かお||もと||もどり|||

( 茜 ) 無理 言う な よ   いくら 何でも こんな ヤケド … あかね|むり|いう||||なんでも||

まったく   元どおり と いう わけに は いか ない かも しれ ませ ん が |もとどおり|||||||||||

化粧 を すれば   分から ない 程度 に は できる と 思い ます けしょう|||わから||ていど|||||おもい|

とりあえず 今日 は 消毒 を し ましょう |きょう||しょうどく|||

≪( 茜 ) はい あかね|

≪( 咲 ) どのような 治療 を なさる のです か ? さ||ちりょう|||の です|

失った 皮膚 を 別の 部分 から 移して 植え 替え ます うしなった|ひふ||べつの|ぶぶん||うつして|うえ|かえ|

そのような こと が できる のです か ? ||||の です|

でも …  その ため に は 大量の ペニシリン が 必要な んです |||||たいりょうの|||ひつような|ん です

では   医学 所 に |いがく|しょ|

お 願い する しか あり ませ ん ね |ねがい||||||

は は ~  皮膚 を 移植 なさる ||ひふ||いしょく|

はい   損傷 は 表皮 だけ で なく |そんしょう||ひょうひ|||

真 皮 全 層 に まで 達して い ます まこと|かわ|ぜん|そう|||たっして||

皮膚 の 再生 は 望め ない 状態 だ と 思い ます ひふ||さいせい||のぞめ||じょうたい|||おもい|

ですから   他の 部分 から 皮膚 を 移植 する のです が |たの|ぶぶん||ひふ||いしょく||の です|

手術 後   約 二 週間 ほど しゅじゅつ|あと|やく|ふた|しゅうかん|

感染 症 予防 の ため に ペニシリン が 大量に 必要です かんせん|しょう|よぼう||||||たいりょうに|ひつよう です

その ため の ペニシリン で ございます か

あの … 大量 と は   どの 程度 に ? |たいりょう||||ていど|

必要な だけ どう か   お 申しつけ ください ひつような|||||もうしつけ|

≪( 洪 庵 ) それ は   それ と して ひろし|いおり|||||

その 手術   私 の 知人 に 見せて いただく こと は でき ます か |しゅじゅつ|わたくし||ちじん||みせて||||||

かまい ませ ん が かた じ け のう ございます

で   その 手術 どのように なさる のです か ? ||しゅじゅつ|どのよう に||の です|

はい   まず   麻酔 を した あと ||ますい|||

ヤケド で 壊死 した 部分 を カミソリ で 取り除き ます ||えし||ぶぶん||かみそり||とりのぞき|

それ を  「 デブリードマン 」 と いう のです が … |||||の です|

≪( 山田 ) 先生 先生 ? やまだ|せんせい|せんせい

大丈夫で ございます だいじょうぶで|

≪( 山田 ) 風邪 を こじら して いらっしゃる ようです やまだ|かぜ|||||よう です

この ところ 遅く まで 書き物 を して おる らしく ||おそく||かきもの||||

お 疲れ な ので ございましょう |つかれ|||

山田 先生 も   ペニシリン 管理 する の 大変です よ ね ? やまだ|せんせい|||かんり|||たいへん です||

え ッ ? それ を   大量に つくって くれ なんて ||||たいりょうに|||

ペニシリン は   誰 が 何と 言おう と 南方 先生 の もの で ございます ||だれ||なんと|いおう||なんぽう|せんせい||||

存分に   お 使い ください ませ ぞんぶんに||つかい||

( 医師 B ) あの 連中 は 何も 反省 して おら ぬ ようじゃ の いし|||れんちゅう||なにも|はんせい|||||

( 瓦版 売り ) ついに やった よ   攘夷 だ かわらばん|うり||||じょうい|

長 州 が メリケン の 船 を 攻撃 した って よ ~ ちょう|しゅう||||せん||こうげき|||

ほんとに   幕末 な んだ な |ばくまつ|||

≪( 洪 庵 ) 南方 先生 ひろし|いおり|なんぽう|せんせい

私 の 古い 恩人 で ございます わたくし||ふるい|おんじん||

( 濱口 ) 今日 は   よろしく お 願い し ます はまぐち|きょう||||ねがい||

はい

麻酔   導入 し ました ますい|どうにゅう||

デブリードマン は い

あれ は 何 を して いる のです か ? ||なん||||の です|

壊死 した 皮膚 を → えし||ひふ|

けずり 取って おる ので ございましょう |とって|||

( おばちゃん ) 山田 先生 ずっと 泊まり込み な んだ って ? |やまだ|せんせい||とまりこみ|||

南方 先生 に   よい ペニシリン を 持っていか ねば なら ぬ から なんぽう|せんせい|||||もっていか||||

( 佐分利 ) 山田 先生 ! さぶり|やまだ|せんせい

製造 所 から   火 が ! せいぞう|しょ||ひ|

ペニシリン が …

うわ ~ ッ ! 山田 先生 ! ||やまだ|せんせい

≪( 佐分利 ) 山田 先生 ! さぶり|やまだ|せんせい

採 皮 部分 を 縫 合し ます は い と|かわ|ぶぶん||ぬ|ごうし|||

南方 殿 は   誠に … なんぽう|しんがり||まことに

この世 の …  奇跡 このよ||きせき

≪( 横 松 ) 緒方 先生   南方 先生 !→ よこ|まつ|おがた|せんせい|なんぽう|せんせい

いらっしゃい ます か !?→

ペニシリン 製造 所 から 出火 し ました !→ |せいぞう|しょ||しゅっか||

ペニシリン を   全て 失い ました ! ||すべて|うしない|

緒方 先生 ! おがた|せんせい

ペニシリン が …

今日 は 蒸し ます ね   先生 きょう||むし|||せんせい

はい

続け ます つづけ|

( 八木 ) 誰 が   こんな こと を やぎ|だれ||||

ええ 株 持ち出せて る じゃ ないで す か |かぶ|もちだせて|||||

ひと 株 で は … |かぶ||

どうにも

先生 ! せんせい

( 山田 ) 先生   私 は … やまだ|せんせい|わたくし|

私 は 南方 先生 に 合わす 顔 が ござ り ませ ぬ ! わたくし||なんぽう|せんせい||あわす|かお|||||

( 濱口 ) 南方 殿 ペニシリン と いう 薬 なし で → はまぐち|なんぽう|しんがり||||くすり||

今後 の 治療 は   できる のです か ? こんご||ちりょう|||の です|

できる だけ   丁寧に 縫 合し ました ||ていねいに|ぬ|ごうし|

何とか なる のです か ? なんとか||の です|

皮膚 の 固定 に 気 を 配り まめに 消毒 を 続けて いき ます ひふ||こてい||き||くばり||しょうどく||つづけて||

《 お 願い が ございます 薬 を つくり たい んです 》 |ねがい|||くすり||||ん です

《 ペニシリン と 言い ます 》 ||いい|

《≪( 洪 庵 ) やり ました な 》 ひろし|いおり|||

≪( 濱口 ) 緒方 先生 はまぐち|おがた|せんせい

私 は …  頭取 失格 です わたくし||とうどり|しっかく|

お 恥ずかしい こと で ございます |はずかしい|||

この 事件 の 裏側 に は 医学 所 内 の 派閥 争い が ございます |じけん||うらがわ|||いがく|しょ|うち||はばつ|あらそい||

南方 先生 が 辞め なければ なら ん かった 理由 も なんぽう|せんせい||やめ|||||りゆう|

突きつめれば そこ に ございます つきつめれば|||

私 は …  何一つ でき ん かった わたくし||なにひとつ|||

南方 先生 から 数 限りない 医術 を 与え られ ながら なんぽう|せんせい||すう|かぎりない|いじゅつ||あたえ||

私 は … わたくし|

何一つ ! なにひとつ

緒方 先生 …  あ ッ ! おがた|せんせい||

濱口 様   後生 で ございます はまぐち|さま|ごしょう||

( 洪 庵 ) お 願い いたし ます ! お 願い いたし ます ひろし|いおり||ねがい||||ねがい||

では   緒方 先生 に お 会い する こと は ? |おがた|せんせい|||あい|||

今 は   ちょっと … いま||

ペニシリン を   再び つくる 目 処 は ? ||ふたたび||め|しょ|

全力 で やり ます それ は   お 約束 し ます んで ぜんりょく|||||||やくそく|||

早くて も   二 週間 は かかる か はやくて||ふた|しゅうかん|||

先生   青 カビ を 集め ましょう せんせい|あお|かび||あつめ|

この 季節 です し カビ も 育ち やすう ございましょう |きせつ|||かび||そだち||

≪( 男 ) 山田 純 庵 殿 で ご ざる か ? おとこ|やまだ|じゅん|いおり|しんがり||||

先生   カビ あり ました ありがとう ございます せんせい|かび||||

おい ら に でき ん の は カビ を 集める くらい の 気 も する が |||||||かび||あつめる|||き|||

考えちゃ みる が よ お 願い し ます かんがえちゃ|||||ねがい||

坂本 殿 より の 文 で ございます か ? さかもと|しんがり|||ぶん|||

ああ   海軍 塾 の お 足 越前 の 殿様 から |かいぐん|じゅく|||あし|えちぜん||とのさま|

五千 両   借り られた って よ 五千 両 !? ごせん|りょう|かり||||ごせん|りょう

殿様 の 前 で ペニシリン の 話 を した らしい ぜ とのさま||ぜん||||はなし||||

《( 龍 馬 ) その 南方 先生 っ ちゅう が は 》 りゅう|うま||なんぽう|せんせい||||

《 ペニシリン っ ちゅう 秘密 兵器 を 持 っち ょる が じゃ 》 |||ひみつ|へいき||じ||||

《 これ が   あるき !》

《 腹 を か っ さばく っ ちゅう 大胆な 治療 が できる が じゃ 》 はら|||||||だいたんな|ちりょう||||

《 列強 に 負け ん ような 海軍 は 》 れっきょう||まけ|||かいぐん|

《 こん 国 の ペニシリン に なる ぜ よ !》 |くに||||||

あの 口先 は 才能 だ な はい … |くちさき||さいのう|||

( 初音 ) よう   見え りん す はつね||みえ||

ありがとう ご ざん す   橘 様 ||||たちばな|さま

それ で   少し は 暮らし やすく なろう ||すこし||くらし||

けん ど これ で は   客 はつ きんせん な |||||きゃく|||

もう … つか ず と も   よい で は ない か

もっと   早う 出会い たかった であり ん す |はやう|であい||||

( 野 風 ) 他言 は   いたし ん せんけん ど の|かぜ|たごん|||||

女 郎 の 言葉 に は 必ず 嘘 が 入りまじって おり ん す おんな|ろう||ことば|||かならず|うそ||いりまじって|||

それ だけ は 心して おく ん なん し |||こころして||||

説教 と は   花魁 と は ずいぶん 偉い もの である な せっきょう|||おいらん||||えらい|||

真 の 世 から は   あ ちき など まこと||よ|||||

蚊帳 の 外 で お ざん すよ かや||がい||||

私 も だ わたくし||

思う ように は 増え ませ ん ね おもう|よう に||ふえ|||

よかった んでしょう か ?  これ で

同じ 過ち を   おかして は なり ませ ん おなじ|あやまち||||||

あんまり   よく ない んだ ろ ?

そんな こと ないで すよ

い いって   あたい は 顔 で 売って た んじゃ ないし さ ||||かお||うって||||

感染 症 を 起こし かけて いる !? はい かんせん|しょう||おこし|||

このまま だ と   まず い です

ペニシリン は   まだ   でき ぬ のです か ? |||||の です|

これ から 抽出 して も あと 一 週間 は ||ちゅうしゅつ||||ひと|しゅうかん|

そう だ … 先生 ? ||せんせい

ちょっと   行って き ます ! |おこなって||

先生   どこ へ !? せんせい||

≪( 医者 ) 医学 館 の 名 を つぶして おいて → いしゃ|いがく|かん||な|||

よくも   の この こ来 られた な ! お 願い し ます ! |||こらい||||ねがい||

このまま で は 感染 症 に なる 危険 が あり ます |||かんせん|しょう|||きけん|||

化膿 に 効く 生薬 か 何 か を ! お 願い し ます かのう||きく|しょうやく||なん||||ねがい||

( 医者 ) うるさい ! いしゃ|

( 橘 ) 行き ましょう   先生 たちばな|いき||せんせい

あの 程度 の ヤケド を 治せ ない なんて |ていど||||なおせ||

「 神 は 乗り越え られる 試練 しか 与え ない 」 かみ||のりこえ||しれん||あたえ|

喜市 ちゃん が 以前 先生 に そう 言わ れた と きいち|||いぜん|せんせい|||いわ||

はい

どうぞ ありがとう ございます

南方 様 に   お 荷物 が 届いて おり ます なんぽう|さま|||にもつ||とどいて||

私 に ? わたくし|

( 山田 )「 まだ 少し です が ペニシリン を お 届け し ます 」 やまだ||すこし||||||とどけ||

「 これ から   毎日   このように お 届け いたし ます ゆえ 」 ||まいにち|このよう に||とどけ|||

「 ご 安堵   召さ れ ます よう 」 |あんど|めさ|||

どう やった んでしょう ? たった 七 日間 で ||||なな|にち かん|

分かり ませ ん わかり||

でも …

これ で 治 せる ||ち|

上がった な ~ あがった|

これ で 治った の か ? ||なおった||

傷あと は 時間 の 経過 と ともに どんどん 消えて き ます きずあと||じかん||けいか||||きえて||

ほんとに !? はい   大丈夫です よ ||だいじょうぶ です|

ねえちゃん 店   いつ から 出 れ んだ よ ? |てん|||だ|||

ねえちゃん の 呼び込み が ない と 寂しくて いけ ねえ って ||よびこみ||||さびしくて|||

み ~ んな   うるさく って

明日 に は 拝ま せて やる って そう 言 っと け ! あした|||おがま|||||げん||

よかった で すね は い

佐分利 先生 さぶり|せんせい

もう   そろそろ 教えて いただけ ませ ん か ? ||おしえて||||

どう やって ペニシリン を つくった の か

( 橘 ) こんな 所 で つくって た んです か たちばな||しょ||||ん です|

放火 やった んで   しばらく 場所 は ふせて おけ と 緒方 先生 が ほうか||||ばしょ|||||おがた|せんせい|

でも   一 週間 じゃ カビ も 育た ない でしょう |ひと|しゅうかん||かび||そだた||

そこ は   山田 先生 が 命からがら 株 を 持ち出して くれた んで ||やまだ|せんせい||いのちからがら|かぶ||もちだして||

これ は …

ここ は   もと 醤油 が 運ば れる 倉 だった 所 です |||しょうゆ||はこば||くら||しょ|

醤油 ? ええ しょうゆ|

この 者 達 は 醤油 づくり の 職人 です → |もの|さとる||しょうゆ|||しょくにん|

もともと 培養 したり   ろ過 したり → |ばいよう||ろか|

そういった 作業 に は 慣れて る わけです |さぎょう|||なれて||わけ です

ゆえに   七 日間 で ペニシリン が ? ええ |なな|にち かん||||

でも   どうして こんな こと が できて ?

手術 見学 して はった 方 あの 方 は → しゅじゅつ|けんがく|||かた||かた|

濱口 様 っ ちゅう   醤油 づくり の ヤマサ の ご 当主 な んです よ はまぐち|さま|||しょうゆ||||||とうしゅ||ん です|

あった んだ   この 時代 から |||じだい|

≪( 山田 ) 濱口 様 は   医学 所 の 前身 の 種痘 所 を 再興 したり やまだ|はまぐち|さま||いがく|しょ||ぜんしん||しゅとう|しょ||さいこう|

医学 の 研究 の ため に   ばく大な 援助 を して くれて る 方 です いがく||けんきゅう||||ばくだいな|えんじょ|||||かた|

緒方 先生 おがた|せんせい

どうして 言って くれ なかった んです か ? |いって|||ん です|

私 が 素性 を 明かさ ぬ ように お 願い した のです わたくし||すじょう||あかさ||よう に||ねがい||の です

あの とき は まだ ペニシリン に 対する 援助 を ||||||たいする|えんじょ|

決め かねて おり ました ので きめ||||

でも   結局   あの とき は ペニシリン を 使わ ず に … |けっきょく||||||つかわ||

私 は   あなた の 神業 の ような 医術 や わたくし||||かみわざ|||いじゅつ|

薬 の 威力 ゆえ に 心 を 決めた わけで は ございませ ぬ くすり||いりょく|||こころ||きめた||||

あなた と あなた の 医術 を 守り たい と いう ||||いじゅつ||まもり|||

緒方 先生 の お 心 に 打た れた ので ございます おがた|せんせい|||こころ||うた|||

緒方 先生 の お 心 ? はい → おがた|せんせい|||こころ|

先生 から は   数 ヵ 月 に わたって → せんせい|||すう||つき||

何度 も 丁寧な 文 を いただき 何度 も 足 を お 運び いただき → なんど||ていねいな|ぶん|||なんど||あし|||はこび|

その 熱心 さ は   少々 恐ろしい ほど で ございました |ねっしん|||しょうしょう|おそろしい|||

この 製造 所 は 緒方 先生 が 命 を けずって |せいぞう|しょ||おがた|せんせい||いのち||

お つくり に なら れた もの です

あなた の ため に

その後   緒方 先生 に は お 会い に なら れ ました か ? そのご|おがた|せんせい||||あい|||||

いえ

では   一 日 も 早く |ひと|ひ||はやく

お 礼 を おっしゃり に 行って ください |れい||||おこなって|

緒方 先生 は 恐らく … おがた|せんせい||おそらく

重い 労 咳 に おもい|ろう|せき|

え ッ !?

( 橘 ) 先生   お 待ち ください   先生 たちばな|せんせい||まち||せんせい

《 何とぞ   我ら に   コロリ の 治療 法 を ご 教授   願い たく 》 なにとぞ|われら||||ちりょう|ほう|||きょうじゅ|ねがい|

《 山田 を   お 願い し ます 》 やまだ|||ねがい||

《 道 を 開く と いう こと は な 》 どう||あく|||||

《 自分 だけ の 逃げ道 を つくる こと や ない !》 じぶん|||にげみち|||||

《 して …  その 薬 の 名 は ?》 ||くすり||な|

( 八重 ) 南方 様 と おっしゃる   お方 が やえ|なんぽう|さま|||おかた|

着替え を きがえ|

南方 殿 は   私 の 師 に も あたる お方 や なんぽう|しんがり||わたくし||し||||おかた|

こんな 格好で は 無礼に あたる |かっこうで||ぶれいに|

ああ   お 待た せ して 申し訳 ございませ ん ||また|||もうし わけ||

先生 せんせい

ペニシリン の 件 で は 本当に お 世話に なり ました ||けん|||ほんとうに||せわに||

いえいえ

あれ は 濱口 様 が いたれば こそ の こと ||はまぐち|さま|||||

緒方 先生 は い おがた|せんせい||

診察 を さ せて いただけ ます か ? しんさつ||||||

これ は   これ は

お 見たて の ほど よろしゅう お 願い し ます |みたて|||||ねがい||

先生 せんせい

先生 は   医 の 道 は どこ へ 通じる と お 思い です か ? せんせい||い||どう||||つうじる|||おもい||

え ッ ?

私 に は … わたくし||

私 は   医 の 道 は わたくし||い||どう|

平らな 世に 通じる と 思う てま す たいらな|よに|つうじる||おもう||

武士 や 百姓 や と 人 に 勝手に ぶし||ひゃくしょう|||じん||かってに

身分 の 上下 つけ とる 世の中 で は ございます が みぶん||じょうげ|||よのなか||||

腹 割れば   同じ もん が 入って ます はら|われば|おなじ|||はいって|

天 の 下 に 人   皆   等しき なり てん||した||じん|みな|ひとしき|

医学 の 目指す べき 地平 は そこ や と 思う て いがく||めざす||ちへい|||||おもう|

日々   精進 して まいり ました ひび|しょうじん|||

未来 は … 平らな 世 で ございます か ? みらい||たいらな|よ|||

先生 は   未来 から 来た お 人 でしょう ? せんせい||みらい||きた||じん|

そんな こと は あり え ん

そんな バカな こと を 考える それ だけ で 蘭学 者 失格 や |ばかな|||かんがえる||||らんがく|もの|しっかく|

でも …  何べん 考えて も |なんべん|かんがえて|

そう と しか 思え ん のです わ |||おもえ||の です|

冥土 の 土産 に し ます ゆえ 教えて ください めいど||みやげ|||||おしえて|

私 の 思う た と おりや ったら わたくし||おもう||||

先生   目 つぶって ください せんせい|め||

お 恥ずかしい こと で ございます |はずかしい|||

一 年 前   住み慣れた 大坂 から ひと|とし|ぜん|すみなれた|おおさか|

江戸 へ 召し 出さ れて えど||めし|ださ|

口 で は  「 国 の ため   道 の ため 」 など と 言う ており ました が くち|||くに|||どう|||||いう|||

心 の 中 で は もう   寂しゅう て   寂しゅう て こころ||なか||||さびしゅう||さびしゅう|

たかが   大坂 から 江戸 へ 召し 出さ れた だけ で |おおさか||えど||めし|ださ|||

恥ずかしい こと で ございます はずかしい|||

南方 先生 の 寂し さ に 比べれば なんぽう|せんせい||さびし|||くらべれば

私 など …  いかほど の もんか わたくし||||

もう …  私 に できる こと は |わたくし||||

何も ございませ ん なにも||

だから   どうか

先生 の   その 寂し さ せんせい|||さびし|

この 洪 庵 に   お 分け ください |ひろし|いおり|||わけ|

洪 庵   冥土 に 持っていき ます ひろし|いおり|めいど||もっていき|

心細く は あり ました が こころぼそく||||

私 は   孤独で は あり ませ ん でした わたくし||こどくで|||||

私 の ような 得体の知れない 者 を 信じ わたくし|||えたいのしれない|もの||しんじ

支えて くださった 方 が い ました から ささえて||かた||||

私 は … わたくし|

決して   孤独で は あり ませ ん でした けっして|こどくで|||||

緒方 先生 おがた|せんせい

私 に も 一 つ   お 教え 願え ます か ? わたくし|||ひと|||おしえ|ねがえ||

私 は   この ご恩 に どう 報いれば よろしい のでしょう か ? わたくし|||ごおん|||むくいれば|||

より よき 未来 を   お つくり ください ||みらい||||

未来 を ? みらい|

皆 が 楽しゅう 笑い 合う みな||たのしゅう|わらい|あう

平らな 世 を   お つくり ください たいらな|よ||||

国 の ため くに||

道 の ため どう||

はい

南方 先生 なんぽう|せんせい

未来 で は   この 労 咳 と いう 病 は みらい||||ろう|せき|||びょう|

治 せる 病 に   なって おる んです な ? ち||びょう||||ん です|

ああ …  ああ …

〈 そして  1863 年 〉 |とし

〈7 月 25 日 〉 つき|ひ

〈 緒方 先生 は   帰ら ぬ 人 と なった 〉 おがた|せんせい||かえら||じん||

〈 俺 と   かかわった こと で 〉 おれ||||

〈 寿命 が 延びた の か 縮んだ の か それとも 〉 じゅみょう||のびた|||ちぢんだ|||

〈 何も 変わら なかった の か は 分から ない 〉 なにも|かわら|||||わから|

〈 だけど   満足 そうに 〉 |まんぞく|そう に

〈 微笑んで   いか れた と いう 〉 ほおえんで||||

〈 その 顔 は たとえ 歴史 が どう 変わって も 〉 |かお|||れきし|||かわって|

〈 変わら なかった のだろう と 思う 〉 かわら||||おもう

長 州 が   アメリカ と フランス から ちょう|しゅう||あめりか||ふらんす|

攘夷 の 報復 攻撃 を 受けた ちゅう 話 じゃ が じょうい||ほうふく|こうげき||うけた||はなし||

( 勝 ) これ で 奴 ら も 攘夷 なんて 絵 に 描いた 餅 だ と 分かった だろう か|||やつ|||じょうい||え||えがいた|もち|||わかった|

長 州 を たたき おった 異国 の 船 は 幕府 が 修理 し ちょう|しゅう||||いこく||せん||ばくふ||しゅうり|

再び   長 州 を たたき に 出て いった っ ちゅう 噂 は ふたたび|ちょう|しゅう||||でて||||うわさ|

誠 かい ? 怒って ん の かい ? まこと||いかって|||

思う とこ は 違う けん ど 奴 ら は   こん 国 を 守る ため に おもう|||ちがう|||やつ||||くに||まもる||

戦 こうち ょる ぜ よ それ を … いくさ||||||

これ を 理由 に 戦 なんか 仕掛け られて みろ ||りゆう||いくさ||しかけ||

あっという間 に 占領 さ れて 終わり さ あっというま||せんりょう|||おわり|

先生 は それ で   ええ が かえ !? せんせい||||||

おい ら   幕 臣 だ よ ||まく|しん||

幕 臣 だ から   できる こと は 山 の ように ある まく|しん||||||やま||よう に|

が   幕 臣 だ から のま なきゃ な ん ねえ こと も ある |まく|しん||||||||||

《 より よき 未来 を お つくり ください 》 ||みらい||||

より よき 未来 … ||みらい

お 手紙 です |てがみ|

「 友 」? とも

( 龍 馬 )「 先生   元気に しち ょる かえ 」 りゅう|うま|せんせい|げんきに|||

龍 馬 さん りゅう|うま|

「 どうでも ええ こと じゃけん ど 」

「 今日 は 一 つ   聞いて ほしい ぜ よ 」 きょう||ひと||きいて|||

「 長 州 を 攻撃 した 異国 の 船 を 幕府 が 秘密裏 に 修理 し 」 ちょう|しゅう||こうげき||いこく||せん||ばくふ||ひみつり||しゅうり|

「 その 船 が   また 長 州 を たた い とる っ ちゅう 噂 は 」 |せん|||ちょう|しゅう|||||||うわさ|

「 聞 いち ょる かえ ?」 き|||

「 わしゃ   勝 先生 に 」 |か|せんせい|

「 それ で ええ かえ と つめよった けん ど 」

「 先生 は 幕 臣 である が ゆえ に 」 せんせい||まく|しん||||

「 どうにも なら ん こと が ある ち 言う が じゃ 」 |||||||いう||

「 ならば   それ こそ が わし の 天命 で は ない か え 」 ||||||てんめい|||||

「 天 より する こと かも しれ ん と 思う た ぜ よ 」 てん||||||||おもう|||

「 わし に は 身分 も ない 」 |||みぶん||

「 その かわり に   しがらみ も ない 」

「 何の 力 も ない けん ど   この 身 一 つ 」 なんの|ちから||||||み|ひと|

「 どうにでも 動ける き 」 |うごける|

「 わし は 日本 を   いま 一 度 せんたく する ぜ よ 」 ||にっぽん|||ひと|たび||||

「 攘夷 派 も 開国 派 も まとめて みせる き 」 じょうい|は||かいこく|は||||

「 この 日 の 本 を   一 つ に する ぜ よ 」 |ひ||ほん||ひと|||||

「 一 つ 」 ひと|

一 つ に … ひと||

する

〈 これ って   もし かして 〉

〈 天命 って やつ じゃ ない か って 思った んだ よ 〉 てんめい|||||||おもった||

未来 みらい

俺 さ   病院 を つくって みる よ おれ||びょういん||||

誰 も が 気軽に かかれる ような 値段 で だれ|||きがるに|||ねだん|

そこ で は   西洋 医学 と 漢方 と が 融合 した 治療 が 受け られる |||せいよう|いがく||かんぽう|||ゆうごう||ちりょう||うけ|

その 二 つ を 一 つ に する こと で |ふた|||ひと|||||

新しい 医療 が 生まれる 可能 性 が ある と 思う んだ あたらしい|いりょう||うまれる|かのう|せい||||おもう|

その こと で 君 の 未来 が 一時的に 悪く なったり |||きみ||みらい||いちじてきに|わるく|

いろいろ   する んだろう けど

大きな   うねり で は おおきな|||

絶対 に いい 方向 に 向かう と 思う んだ ぜったい|||ほうこう||むかう||おもう|

未来 が 過去 の 結果 だ と する なら みらい||かこ||けっか||||

最善 を 尽くした 結果 が 悪く なる はず は ない だろう し さいぜん||つくした|けっか||わるく||||||

俺 は   そう 信じ たい おれ|||しんじ|

俺 は   ここ から おれ|||

君 の 腫瘍 を 治 せる ような 未来 を つくって み せる きみ||しゅよう||ち|||みらい||||

〈 これ は   俺 の …〉 ||おれ|

〈 新たな 船出 だ 〉 あらたな|ふなで|

皆さん   改めて よろしく お 願い し ます ! みなさん|あらためて|||ねがい||

はい !