StarbucksAccident/スタバ 粗相
2012 年 2 月 13 日 、名古屋 にて
ウンチ を 漏らす の は 久しぶり だった 。 正確に 言う と 二 年 ぶり 。
しかし スターバックス で ウンチ を 漏らす の は 初めて だった 。
そう 、人生 初 の スタバ 粗相 。
穏やかな 冬 の 朝 だった 。
僕 が 透明な ドア を 潜る と 「いらっしゃいませ 」と 深緑 の エープロン を 着た 大学っぽい 女子 店員 に 言われ 、思わず 「どうも 」と 軽く 頭 を 下げた 。 そして カウンター に 行って いつも と 同じ ように 「ホットティー 、お 願いします 。 ん ? じゃあ 、スペアミント で お 願い します 。 そう です ね 、じゃあ 、えっと ッ ・・・グランデサイズ で お 願いします 。」 と 初めて その 飲み物 を 注文 する ふり を して お決まり の 相槌 を 打ち ながら 。
「なんで M サイズ と 言わ ないで グランデ なんて 言う んだろう 」と 思い つつ 。千 円 札 を アルミニアーム の トレイ に 乗せた 。
「では 、グランデ サイス の ホット スペアミント に なります 。」 店員 は 言い にくい 飲み物 を 渡し ながら 可愛い 笑み を 浮かべた 。
僕 は 思わず 視線 を 逸らして 「どうも 」と 言って から ・・・
安っぽい コーヒー の 香り が 漂う 空気 の 中 を 通りぬけ 、こげ茶色 の テーブル に 向って 歩き 始めた 。 「おはよう ございます 。 店内 で お 召し上がり です か 。」
と 後ろ から 店員 の 元気な 声 が 聞こえる 。
天井 の スピーカ から ユチューブ で 聞いた こと ある ような ドラム しか ない アフリカ 民族 音楽 みたいな 曲 が 流れている 。
殆ど の テーブル が 三十 代 と 思わ れ る 女性 で 埋まって いる 。
どこ に でも ある ような スターバックス の 風景 。
僕 は 窓際 の テーブル 席 に 座って IPhone を 取り出した 。
「・・・・や べー 。」 アプリ の セルズ を 確認 する と 思わず 言葉 が 出た 。
新作 「マヨネーズ 」が Ebook ウェブサイト パブー で 八 位 だ 。
「や ・・・(笑 )べ !」 興奮 の あまり 笑って しまった 。
と 、その 瞬間 ・・・ウンチ が 登場 した 。
クスクス 笑って いる と ポロッ と 出た 。
二 週間 以上 大阪 で 時間 を 過ごしたら つい 関西 弁 が 口 を ついて 漏れて しまった か の ように 。
びっくり する くらい 抵抗 なく 、すんなり と 。
「や べッ ! 」だ から 気付いた 時 は もう 遅すぎた 。 ウンチ は もはや 僕 の 一部 だ は なかった のだ 。
温かい 塊 が はっきり と パンツ の 中 で 独立 を 宣言 して いた 。
「あ 、いらっしゃい ませ 。 店内 で お 召し上がり です か 。」
ありがたい こと に 、バイク で スタバ に 来た 僕 は パンツ の 上 に ユニクロ の ヒートテック 、リーバイス の ジーンズ 、それ から 防水 ウインターパンツ も 履いて いた 。
「大丈夫 ・・・飛び上がって Kara の ミスター を 踊り出さない 限り しばらく は 誰 も 気 ない はず 。」
「次の お 客様 、どうぞ 」
しか し 、気 に なる 。
ウンチ の 領域 は どこ も で 広がった のだろう 。
気 に なって 仕方 が ない 。 財布 を 取り出す ふり を しつつ 、僕 は 右手 を 後ろ の ポケット に 突っ込み ・・・徹底的に 辺り を 探った 。
生ぬるい と は こういう こと か 。
そう 思い ながら 指先 を 素早く 鼻先 に 移した 。
「あ 、すみません 。」
ふと 顔 を 上げた 。
「日本語 出来ます か 」。 声 を かけて きた の は 鮮やかな ピンク 色 の ピーコート を 着た Rinka の そっくりさん だった 。
「あ ッ 、はい ・・・・少し は ・・・」
優雅な 動作 で 彼女 は 隣 の 席 に 腰 を かけて きた 。
バニラ に 似た 柔らかな 香り が した 。
「私 、今 外国人 の 友達 を 作ろう と してる の 、座って いい かしら ? 」確信 した 。 神様 は ど エス だ 。
「あ 、はっ 、はい ・・・」「ありがとう 。 私 みさき 。」
彼女 は ほっそり と した 手 を 出して きた 。
僕 は 思わず 尻 の 筋肉 に 力 を 入れた 。
「どう げん です 」と 言って 何気なく 手 を 伸ばした が 、自分 の 指先 が 視界 に 入った 瞬間 引っ込めた 。
「どうした の ?」
「あ 、いや 、さっき 蜂蜜 を こぼしちゃって ・・・」 みさき は 微笑んだ 。 「蜂蜜 好き 」
僕 は 更に 尻 に 力 を 入れた 。 「好き です 。」
「なんか 、可愛い ね 。」
「そう です か 。 ( 苦笑い )」
笑って いる と 生ぬるい 塊 が 足 の 領域 を 侵す の が 分かった 。
みさき は 再び 微笑んだ 。
「どう げん は 名古屋 で 何 を している の ? 英会話 と か ?」
一瞬 、古い 校舎 の 男子 トイレ の 臭い が 鼻 を ついた 。 僕 は ゾッと して 、思わず Iphone の 電源 ボタン を 三 回 も 押した 。
「う うん ・・・あ ? いや 、ま ぁ 、そんな 感じ で 」
「さっき から 携帯 で 何 を みてる の ? あたし に も 見して !」
にっこり と 笑い ながら そう 言う と 、みさき は 片手 を 僕 の 肩 に 乗せ 、体 を 乗り出して きた 。
一 秒 に して 僕 は スタバ で 出来る 自殺 の 方法 を 七つ も 思いついた 。
「見せて 、お 願い !」 「あ 、いや 、それ は ・・・」
と その 時 変な 音 が した 。
誰 でも 思わず 顔 を 上げて 辺り を 見回して しまい そうな 本当に 変な 音 。
空気 が ゆっくり と 大きな 風船 から 漏れる ような 、または 風邪 を 引いた 象 が 鼻 を かむ ような 音 。
それ が オナラ だ と 分かった 瞬間 、「遺書 を ナプキン に 書くって ありか な 」って 考えて 絶望 に 陥たが ・・・隣 では みさき が サッと 手 を 引っ込めて 体 を 強ばらせた 。 それ に 気づく と 絶望 は あっという間 に 得 も 言わ れ ぬ 興奮 に 生まれ変わった 。
臭い 罪 を 犯した の は 今度 は 僕 じゃ なかった のだ 。
「私 の 名前 ・・・みさき じゃ ない 。 ゆ か 。 田中 ゆか 。」
日本 一 ありふれた 名前 を 急に 使い出した 彼女 は サッと 立ち上がり 、透明な ドア へ と 走り去った 。
その 真っ赤な 頬 が 道 の 向こう に 消える と 、僕 は 熱い スペアミント を 一口 飲み 、ゆっくり と トイレ の 方 に 向かって 歩き 始めた 。
途中 で 「私 だけ ミスター 」と 腰 を 回す 奇麗な 韓国人 の 五人組 が 頭 を 過り 、僕 は 笑み を こぼした 。
神様 は どエス じゃ ない 。
ドタバタ 喜劇 の 演出家 だ 。